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<ライブレポート>レッド・ホット・チリ・ペッパーズ 歓声が止まらなかった東京ドーム公演
レッド・ホット・チリ・ペッパーズの約16年ぶりの単独来日公演【Red Hot Chili Peppers WORLD TOUR 2023 LIVE IN JAPAN】の東京公演が2月19日に東京ドームで開催。注目を浴びたその公演のライブレポートを掲載する。
また、本公演の開催を記念して、レッチリをこよなく愛するアーティストからレッチリ愛溢れるメッセージも公開中。2月26日に控えるWOWOW独占放送・配信まで、随時公開していく。
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Text:ノイ村
Photos:Kazumichi Kokei
今年で結成40周年を迎え、老若男女を問わず世界中の人々に「ロック・レジェンド」として親しまれているレッド・ホット・チリ・ペッパーズ。ともすれば大ベテランらしい円熟味や安定感といった言葉を使って今回の約4年ぶり(単独公演としては約16年ぶり)となる来日公演を語ることになるのだろうかと思いながら開演までの時間を過ごしていたのだが、実際に目の当たりにしたのはロック・モンスターとしか言いようのない4人による圧倒的なパフォーマンスであり、これまでに経験したことのない壮絶な体験にただただ唖然とするばかりだった。
今回の公演における最も重要なトピックといえば、40年のキャリアの中でも特に絶大な人気を誇るギタリスト、ジョン・フルシアンテが二度目の復帰を果たして以来、初の来日公演であるということだろう。その期待は、冒頭を飾るお馴染みのジャム・セッションが披露された時点で興奮と熱狂へと変わり、惜しげもなく繰り出される数々のテクニックや、フリー、チャド・スミスとの絶妙な絡みに、観客も思わず拳を振り上げ、拍手をしてしまう。その熱量のまま、お馴染みのフレーズとともにアンソニー・キーディスも合流し、定番のオープニング・ナンバー「キャント・ストップ」が炸裂した瞬間の興奮といったらもう、全身に電撃が走るかのような壮絶なものだった。
多くの人々に親しまれているレッチリのイメージといえば、人気曲「バイ・ザ・ウェイ」に代表される大合唱必至のメロディックなアンセムと、ファンク/ヒップ・ホップを大胆に取り入れたノリの良いミクスチャー・サウンドだろうが、実際のライブを目の当たりにすると、その核である「4人の演奏のぶつかり合い」がいかにとんでもないのかを改めて痛感させられる。
基本的に彼らのパフォーマンスは、「観客の方を向き、メロディなどの聞かせどころを意識して演奏を披露する」というよりは「個々人が100%の力で演奏をぶつけ合い、それらが衝突した結果、とんでもないスケールのサウンドになっている」というストイック極まりないものであり、少しでもバランスに乱れが生じた瞬間に成立しなくなってしまうスリリングなものだ。きっとバンドがジョンを必要とした理由もそこにあるのだろう。近年のレッチリを支えたジョシュ・クリングホッファーも極めて魅力的なギタリストではあったのだが、今回、(筆者は初めて)ジョンを交えた4人での演奏を目の当たりにして、「キャント・ストップ」や「サック・マイ・キッス」といった楽曲で幾度となく訪れるビッグバンのような瞬間の連打にただただ圧倒されてしまう。
一方で、今回のレッチリが単にジョシュ加入以前の状態に戻ったのかというと、決してそういうわけではない。ジョシュ時代の作品で培われた、楽曲の聞かせどころをしっかりと引き立たせるスタイルや、それに伴うアンソニーの大幅な歌唱力の向上は現在の体制にも受け継がれており、「ザ・ゼファー・ソング」や「カリフォルニケイション」といった美しいメロディを誇る名曲では、適度に演奏を絡ませながらもしっかりとアンソニーの歌声やジョンのギターソロを引き立たせるような絶妙なバランスのパフォーマンスによって音源以上に楽曲の美しさに魅了されるような瞬間をもたらしていた。
このような「今のレッチリ」の魅力を最も象徴していたのが最新作からの楽曲であったというのがまた、彼らの凄まじさに拍車をかけていく。「ヒア・エヴァー・アフター」では各メンバーのフレーズの絡みが更に複雑化しており、それぞれが必死でグルーヴに食らいつくという戦いのような光景が繰り広げられ、「エディ」ではアンソニーの歌い上げる哀愁と儚さに満ちた美しい歌声からジョンの奏でるエモーショナルで壮絶なギターソロへと繋いでいくフォーメーションの鮮やかさに圧倒される。40年のキャリアを誇っているのにもかかわらず、今もなお成長を続けているのだ。その事実にもはや畏敬の念すら抱いてしまう。本編のラストは「ブラック・サマー」からの「バイ・ザ・ウェイ」という、まさにジョン時代を繋ぎ、新たな歴史を紡ぐことを宣言するかのような圧巻のクライマックス。幾度となくグルーヴのビッグバンを引き起こしながら、アンセミックなメロディでスタジアムに一体感をもたらすという、今のレッチリにしか実現できない凄みがここに凝縮されていた。
一方で、楽曲面以外の「レッチリらしさ」である純粋な遊び心も健在だ。フリーが「昨日、科学者と一緒に宇宙でもっとも遅い演奏をする方法を編み出したんだ」と語ってから超高速の「ノーバディ・ウィアード・ライク・ミー」を披露してみせたり、アンソニーがおもむろにTシャツを頭に被りだしたり、メンバーがドラムセットの周りに集まってもなかなか演奏を始めずにあーだこーだ話していたりと、相変わらず自由気ままにステージを楽しんでいる。フリーもMCで語っていたが、あくまで彼らはガレージに集まってバンドに夢中になっている、音楽が大好きな友達同士の集まりであり、色々な出来事がありながらも、そのことだけは忘れることなく40年という年月を過ごしてきたのだろう。だが、だからこそ彼らは偉大であり、アンコールのラストで繰り広げられた「ギヴ・イット・アウェイ」の思わず笑ってしまうようなモンスター級のグルーヴは、彼らが最強のロック・レジェンドであることをこれ以上ないほどに証明していた。
2月26日には、WOWOWにて今回の東京ドーム公演の放送・配信が予定されている。今回のライブに参加した方はもちろん、見逃してしまったという方も是非、これをチェックして今のレッチリを体験してほしい。きっと度肝を抜かれるはずだ。
放送・配信情報
『レッド・ホット・チリ・ペッパーズ ライブ・アット・東京ドーム 2023』
2023年2月26日(日)17:30~、WOWOWプライムで初回放送(WOWOWオンデマンドで同時配信)
※放送終了後、2週間アーカイブ配信あり
番組詳細はこちら
リリース情報
アルバム『アンリミテッド・ラヴ』
2022/4/1 RELEASE
WPCR-18503 2,860円(tax in)
※ボーナス・トラック1曲追加収録
購入・ストリーミングはこちら
1. Black Summer / ブラック・サマー
2. Here Ever After / ヒア・エヴァー・アフター
3. Aquatic Mouth Dance / アクアティック・マウス・ダンス
4. Not The One / ノット・ジ・ワン
5. Poster Child / ポスター・チャイルド
6. The Great Apes / ザ・グレイト・エイプス
7. It’s Only Natural / イッツ・オンリー・ナチュラル
8. She’s A Lover / シーズ・ア・ラヴァー
9. These Are The Ways / ジーズ・アー・ザ・ウェイズ
10. Whatchu Thinkin’ / ワッチュ・シンキング
11. Bastards of Light / バスタード・オブ・ライト
12. White Braids & Pillow Chair / ホワイト・ブレイズ・アンド・ピロー・チェアー
13. One Way Traffic / ワン・ウェイ・トラフィック
14. Veronica / ヴェロニカ
15. Let ‘Em Cry / レット・エム・クライ
16. The Heavy Wing / ザ・ヘヴィ・ウィング
17. Tangelo / タンジェロ
18. Nerve Flip / ナーヴ・フリップ ※日本盤ボーナス・トラック
アルバム『リターン・オブ・ザ・ドリーム・カンティーン』
2022/10/14 RELEASE
WPCR-18552 2,860円(tax in)
※ボーナス・トラック1曲追加収録
購入・ストリーミングはこちら
1. Tippa My Tongue / ティッパ・マイ・タング
2. Peace And Love / ピース・アンド・ラヴ
3. Reach Out / リーチ・アウト
4. Eddie / エディ
5. Fake As Fu@k / フェイク・アズ・ファック
6. Bella / ベラ
7. Roulette / ルーレット
8. My Cigarette / マイ・シガレット
9. Afterlife / アフターライフ
10. Shoot Me A Smile / シュート・ミー・ア・スマイル
11. Handful / ハンドフル
12. The Drummer / ザ・ドラマー
13. Bag Of Grins / バッグ・オブ・グリンズ
14. La La La La La La La La / ラ・ラ・ラ・ラ・ラ・ラ・ラ・ラ
15. Copperbelly / カッパーべリー
16. Carry Me Home / キャリー・ミー・ホーム
17. In The Snow / イン・ザ・スノウ
18. The Shape I’m Takin’ / ザ・シェイプ・アイム・ テイキン ※日本盤ボーナス・トラック
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