「『トーキング・ブック』は、わたしの人生の中でもっとも好きなアルバムの1枚で、スティーヴィーはもちろんわたしの大好きなアーティスト。2012年はその『トーキング・ブック』の40回目の誕生日にあたる年。これはわたしからのスティーヴィーにあてた誕生日プレゼントみたいなものなの。わたしが彼から学んだもの、わたしがこの作品を聴くたびに生き方を変えられた素晴らしい楽曲に対する返答みたいな。これはトリビュート作品ではなくて、ラヴレター、感謝の意味を込めたカードみたいなもの。」（商品内ブックレット対訳）

　前作に引き続き、チャールズ・ミンガスやレナード・コーエンのトリビュート・アルバムなどを手掛けたハル・ウィルナーがプロデュースした本作。中には「メイビー・ユア・ベイビー」、「ブレイム・イット・オン・ザ・サン」、「ビッグ・ブラザー」などオリジナルに忠実に再現しているものもあるが、もっとも印象的で驚くべきカヴァーは、名曲「迷信」だろう。様々なアーティストにカヴァーされている楽曲だが、ファンキーなディスコ調のナンバーもメイシ—の手に掛かると一変、妖艶なヴォーカルが印象的なブルージーでムーディーな雰囲気が漂う一曲に生まれ変わっている。この曲のB面に収録されたラテンのリズムとスティーヴィーの暖かいヴォーカルが心地よく絡み合う「バッド・ガール」もグル—ヴィーなダンス・チューンへ変身している。単なるカヴァー集ではなく、スティーヴィー・ワンダーを敬愛する彼女ならではの見事なオリジナリティが際立つ、魂がこもった力作である。

トラックリスト

01.サンシャイン
02.メイビー・ユア・ベイビー
03.ユー・アンド・アイ
04.チューズデイ・ハートブレイク
05.バッド・ガール
06.迷信 試聴する
07.ビッグ・ブラザー
08.ブレイム・イット・オン・ザ・サン
09.アナザー・ピュア・ラヴ
10.アイ・ビリーヴ

メイシー・グレイ：プロフィール

　7歳でピアノをはじめ、スティーヴィー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ、アレサ・フランクリンやオールド・スクール・ヒップホップといった様々な音楽に感化されミュージシャンになることを決意する。1999年にエピック・レコードよりリリースされたデビュー・アルバム『オン・ハウ・ライフ・イズ』でメイシーはそのハスキーな歌声、スタイルからニーナ・シモン、ビリー・ホリデイの再来と謳われ、シングル「アイ・トライ」で"ベスト・ニュー・アーティスト"としてグラミー賞を受賞、アルバムは700万枚というセールスをたたき出した。
　続く2001年に発表したセカンド・アルバム『ジ・イド』でも、「サイコパス」、「セクシュアル・レヴォリューション」、そして「スウィート・ベイビー」を通し彼女のソウル、ロック、ファンク、ヒップホップといった音楽背景から来る幅広い音楽性が受け入れられ驚異的な成功を収めた。2003年7月には待望のサード・アルバム『ザ・トラブル・ウィズ・ビーング・マイセルフ』をリリース。シングル「ウェン・アイ・シー・ユー」、「シー・エイント・ライト・フォー・ユー」は、彼女の代表曲となった。
2007年ブラックアイド・ピーズの頭脳、ウィル・アイ・アムのレーベル＝ウィル・アイ・アム・ミュージックへの移籍。ジャスティン・ティンバーレイクやファーギーらをゲストに招き、期待のコラボレーションを実現したアルバム『BIG』をリリース。
　まさに順風満帆といったキャリアを謳歌した彼女であったが、この『BIG』リリース以後更に売れるために「一番売れっ子のプロデューサーとソングライターを雇って、私は痩せればいい」というアイデアが脳裏をよぎったものの、音楽業界のスター製造工場の中で知らず知らずのうちに自分を売ってしまった事に気付き、自分らしさとは何かと思い悩んだ。「人からこうあるべきだという人間ではなく、如何にして自分らしくやっていくか」。自分のインスピレーションに従い、そしてそれを理解してくれる人間とのみ制作活動をする。2010年、レーベルをコンコードに変え原点に立ち戻って作り上げた、メイシーの"自分らしさ"の結晶『ザ・セルアウト』をリリース、2012年には、『カヴァード』、『トーキング・ブック』の２枚のカヴァー作をリリースしている。

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