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<コラム>デヴィッド・ボウイやイギー・ポップとの共演で知られるベーシスト トニー・フォックス・セイルズ、来日公演を目前にその長い音楽キャリアを紐解く



コラム

 50年以上にわたり音楽シーンの第一線で活躍し続けるアーティスト、トニー・フォックス・セイルズ。デヴィッド・ボウイやイギー・ポップとの共演や、ボウイ率いるバンドTine Machineのベーシストとしての活躍で知られる彼が、70年代から80年代にかけてのNYニューウェイヴシーンを代表するバンドBlondieのドラマー、クレム・バークをフィーチャーした来日公演を2月下旬に開催する。

 本稿ではトニーのキャリアを振り返りつつ、来たる来日公演の注目ポイントについて解説していく。このテキストを通して、一時代を築いたレジェンドたちによる夢の共演をぜひ楽しみにしてもらいたい。

Text:西廣智一
Photo:Paul McAlpine

 トニー・フォックス・セイルズは1951年9月生まれの、現在71歳。1950〜60年代に活躍したアメリカのコメディアン、スーピー・セイルズを父に持ち、3つ離れた弟のハントとともにミシガン州デトロイトにて育つ。1960年代半ばから弟のハントとともに音楽活動を開始するのだが、キャリアにおける最初の大きなトピックはトッド・ラングレンのデビューアルバム『Runt』(1970年)への参加だった。全米20位を記録したヒットシングル「We Gotta Get You A Woman」を含むこのアルバムに続き、ハント兄弟は次作『Runt. The Ballad Of Todd Rundgren』(1971年)や3作目『Something/Anything?』(1972年)にも一部参加を果たし、さらにはトッドが結成したロックバンドUtopiaにも関わるなど、着々とキャリアを重ねていく。

 そんなトニーにとってさらに大きな転機となったのが、1977年8月に発表されたイギー・ポップの2ndアルバム『Lust For Life』への参加だった。トニーはもともと、イギーがIggy & The Stooges時代の盟友ジェイムズ・ウィリアムソン(Gt)と1975年にレコーディングした音源の一部に、弟ハントとともに参加しており(この音源を含むアルバム『Kill City』は1977年11月発売)、その縁でイギーの1stアルバム『The Idiot』(1977年3月発売)を携えたツアーでも兄弟でリズムセクションを固めていた。『Lust For Life』は短期間で制作を済ませる必要があったため、ギタリスト2名はプロデュースを務めたデヴィッド・ボウイのツアーメンバーから、リズム隊はイギーのツアーメンバーから採用する形になったそうだ。トニーはベーシストとしてレコーディングに携わったほか、アルバムのラストを飾る「Fall In Love With Me」の共作者としてもクレジットされている(同曲ではギターもプレイ)。その後、セイルズ兄弟は『Lust For Life』を引っ提げたツアーにも加わり、この模様は1978年にライブアルバム『TV Eye Live 1977』と題してリリース。当初こそセールス的に大きな成功を収めることのなかったアルバム『Lust For Life』だが、1996年に映画『トレインスポッティング』に「Lust For Life」が使用されたことでリバイバルヒットを果たし、この曲を含むアルバム『Lust For Life』は年を追うごとに神格化されていくことになる。




Iggy Pop - Lust For Life


 その後、1982年には元Sex Pistolsのスティーヴ・ジョーンズ(Gt)、Blondieのナイジェル・ハリソン(Ba)&クレム・バーク(Dr)、元Silverheadのマイケル・デ・バレス(Vo)とパンク/ニューウェイヴ界隈のスーパースターが一堂に会した新バンドChequered Pastを結成。トニーはギタリストとして同バンドに参加し、1985年の解散までにアルバム1枚を残している。そして、1988年になるとデヴィッド・ボウイ(Vo, Gt)、リーヴス・ガブレルズ(Gt)を中心とする新たなバンドTin Machineに、弟のハントとともに加入。ボウイはイギーの『Lust For Life』制作時における貢献度の高さが記憶に残っていたことから、トニーを含むセイルズ兄弟に声をかけたという。Tin Machineは『Tin Machine』(1989年)、『Tine Machine II』(1991年)と2枚のスタジオアルバム、ライブアルバム『Tin Machine Live: Oy Vey, Baby』(1992年)を制作し、1992年2月には日本武道館公演を含む唯一のジャパンツアーも実現させている。しかし、ボウイの過去のキャリアからかけ離れたハードロック・サウンドはファンから敬遠され、チャート的に成功を収めることができず、バンドは短命に終わってしまった。




Tin Machine - Nine Track Compilation [Official Video]


 その後もトニーはマイペースに音楽活動を展開。特に90年代はアメリカの俳優ハリー・ディーン・スタントン(Vo)や、Steely DanやThe Doobie Brothersで活躍したジェフ・バクスター(Gt)、Stray Catsのスリム・ジム・ファントム(Dr)とカバーバンドThe Cheap Datesを結成しており、当時録音した音源が2021年にアルバム『October 1993』として発表されている。また、2008年には弟ハントとのThe Sales Bros.名義によるアルバム『Hired Guns』もリリース。これは1970年代後半に制作されたものだが、1979年にトニーが致命的な自動車事故に遭い、8ヶ月以上もの昏睡状態に陥るトラブルに見舞われ、その後30年近くもの間お蔵入りされていた。セッションには当時Blondieのメンバーだったフランク・インファンテ(Gt)やナイジェル・ハリソン(Ba)なども参加しており、トニーや弟ハントのルーツにあるR&Bやソウルミュージックを下地にしたご機嫌なナンバーを堪能することができる。現在はサブスクでも聴くことができるので、機会があったらチェックしてみてほしい。





 さて、ここまでトニー・フォックス・セイルズというミュージシャンのキャリアを振り返ってきたが、この2月に実施される来日公演では彼のキャリアにおける大きなターニングポイントとなったイギー・ポップの名作『Lust For Life』のリリース45周年を記念して、同作をフル演奏することが事前にアナウンスされている。イギー自身もこの1月に3年以上ぶりとなる新作『Every Loser』をリリースしたばかりとあって、界隈がざわつき始めているタイミング。この名盤をBlondieの屋台骨を支え続けるクレム・バーク(Dr)、イギーやデヴィッド・ボウイとの共演で知られるケヴィン・アームストロング(Gt)、著名なアナウンサーにしてPet Shop Boysとのコラボレーション経験を持つケイティ・パックリック(Vo)など豪華な面々で再現することになる。





 このライブに先立ち、トニーは『Lust For Life』収録曲の「Success」を上記のメンバーたちとともに再レコーディング。トニーが「『Lust For Life』は私にとって大きな意味を持つ作品であり、ベルリンでデヴィッドとイギーと一緒に作業したことは私のキャリアのハイライト。とても創造的で刺激的なプロジェクトでした」と語る名作の再演を、まずはこの音源を聴いて心待ちにしていてほしい。




Tony Fox Sales feat. Clem Burke from Blondie and Katie Puckrik - Success


 なお、ライブでは『Lust For Life』収録曲以外にも、ボウイやBlondieを含むファン垂涎の楽曲群を披露予定。70年代後半から80年代初頭のニューウェイヴ・シーンを支え続けた名手たちによる夢のような一夜を、ぜひ生で体感してもらいたい。

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