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<コラム>CMソングで耳にするバンド、Newspeakの魅力とは



コラム

Text:黒田隆憲

 Newspeakという3人組のロックバンドをご存知の方はどのくらいいるだろうか。もし彼らの名前を知らなくても、現在Honda FITのCMソングとして流れている楽曲「Leviathan」を、聴いたことがある人なら多いはずだ。広大な大地を彷彿とさせる躍動的なリズムセクションの上で、高揚感たっぷりのメロディを伸びやかなボーカルが歌い上げる。Newspeakの持つ魅力を凝縮したようなこの楽曲は、11月2日にリリースされたEP『Leviathan』の表題曲である。





 Hondaがこれまで起用してきたCMソングといえば、SuchmosやKing Gnu、藤井風、SIRUP、米津玄師など名だたるアーティストの楽曲がずらりと並ぶ。それを鑑みれば、Newspeakが現在周囲からどれほど期待されているかも分かるはずだ。

 イギリスの作家ジョージ・オーウェルによる小説『1984』(1949年)に登場する、人々の思考を制限するための仮想言語から拝借したというバンド名を持つ彼らは2017年、東京にて結成されたバンドである。メンバーはRei(ボーカル&キーボード&ギター)、Steven(ドラムス)、Yohey(ベース)の3人。

 Reiは、一度ステージに上がればロックスター然としたカリスマ的なオーラを放つ人物。音楽への情熱と憧憬に真っ直ぐ突き進む力強さを持つ、情緒豊かで繊細な人間味の溢れるボーカリストだ。過去にイギリスのリバプールで音楽活動をしていたことがあり、BBC Radio Merseysideへの出演も果たしている。クリスチャン一家に育ち、両親に隠れてメロコアバンドを聴いていたというStevenは音楽プロデューサーとしての顔も持ち、音楽に対して真面目でストイックだが、3人の中ではムードメーカー的な役割も担っている。そして、バンドを常に俯瞰で見ながら進むべき方向を見定めているYoheyは、周囲への心遣いも忘れない職人気質。ロックからレアグルーヴまで、ジャンルを問わず幅広い音楽的趣向から生み出されるグルーヴ感のあるベースと同様、バンドの「屋台骨」となる頼れる存在だ。

 生まれ育った場所も性格も、おそらく聴いてきた音楽も全くバラバラの3人が、絶妙なバランスで調和しているからこそNewspeakのサウンドスケープが生み出されているのだろう。

 東京を拠点にライブハウスなどでの音楽活動を始めたNewspeakは、瞬く間に話題となる。結成初年度からSUMMER SONICなど日本を代表する音楽フェスへの出演を果たし、イギリスはグラスゴー出身のオルタナティブバンドであるザ・フラテリスや、スウェーデン出身のガレージロックバンドであるマンドゥ・ディアオといった海外バンドのオープニングアクトを務めることができたのは、前述したようにデビュー前から既にミュージシャン/プロデューサー/エンジニアとして一定のキャリアを積んできたこと、そして国境を超えて集まったメンバーたちが自然とインターナショナルな感覚を育んできたことも大きな要因であろう。





 2019年にはファーストアルバム『No Man's Empire』を同年リリース。第一次世界大戦中に生まれた、どの勢力からも占有されない土地“No Man's Land”をアルバムタイトルに冠したように、ジャンル的な統一感やシーンにおける立ち位置などに一切縛られることなく自由に作り上げたこのアルバムは、Newspeakにとってマニュフェスト的な作品といえるもの。2021年には、フルアルバムとしては前作『No Man's Empire』からおよそ2年ぶりとなるセカンドアルバム『TURN』をリリース。コロナ禍で人々の“対立”や“分断”がさらに深刻化していく中、揺れ動く喜怒哀楽の感情をそのまま投影したような楽曲が、ここにはずらりと並んでいる。また、ベックやベル&セバスチャンとの仕事でも知られるトニー・ホッファー、ニック・ハキムやウォー・オン・ドラッグスの作品を手掛けたダニエル・シュレットら気鋭のエンジニアをミックスダウンに起用し、奥行きと広がりのあるサウンドスケープも印象的だった。





 音楽だけでなく映像やアートにも意識的な3人は、アートワークやミュージックビデオの世界観にも強いこだわりを持っている。特にバンドの一連のジャケットデザインを担当している河島遼太郎の、ケレン味あふれるコラージュセンスはNewspeakの音楽性を見事に象徴している。彼がアートディレクションを務めた「Leviathan」のミュージックビデオの、疾走感あふれる映像も印象的だった。




Newspeak - Leviathan (Official Music Video)


 Newspeakの魅力は、前述したようにStevenとYoheyが作り出す骨太なグルーブと、主に英米のロックから影響を受けた高密度なアレンジ、そしてReiによるカリスマティックなボーカルが織りなす唯一無二の音楽性にある。筆者も一度、彼らのステージを目撃したことがあるが、確かな演奏力に裏打ちされた、多幸感あふれる「ライブ体験」は、他では味わえない特別なものだった。しかも、英語の歌詞は海外のリスナーにも幅広くアピールするポテンシャルを内包しており、例えば11月25日リリースしたバンドとして初のクリスマスソング「Ocean Wind & Violet Waves」がSpotifyの公式クリスマスプレイリストや海外のプレイリストにも入るなど、着実にファンベースを広げているところだ。さらに、EP『Leviathan』に収録されている楽曲「Bonfire」が、東京国際映画祭のフェスティバルソングにも起用されるなど(昨年はmillennium paradeの楽曲「Bon Dance」が起用されていた)、注目度の高さは音楽シーンだけでなく映画界にも及んでいる。

 いつブレイクしてもおかしくない状況にあるNewspeak。2023年は彼らの年になるのか。期待は高まる一方だ。

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