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<インタビュー>TAKUROが今、ヒーリングアルバムを制作した理由 「自分も救いながら誰かの救いになればいい」



インタビューバナー

この人の頭の中では、そして身体の中では、いつも音が鳴っている。生きている間に、呼吸をする間に、そして何かを考え、感じる間、つねに。それがよくわかるインタビューになったと思う。

GLAYのTAKUROにとって3作目となるソロアルバム『The Sound Of Life』は、2022年の彼が生きる中で紡ぎ出した……それも、苦しみ、もがき、悲しみにくれる中で産み落としたインスト作品である。ジャズやブルースの爆音とともにギターを鳴らした『Journey without a map』の2作から一転、今回の彼は弾き慣れないピアノに向かい、ヒーリング~アンビエント・ミュージックの領域にアプローチ。静けさや穏やかさ、それに鳥や風の音の中で、悲嘆に暮れる思いを呑み込みながら奏でたこのアルバムは、しかし聴くほどにTAKUROらしさが感じられる一作になっている。

今回の彼の話にはやや抽象的な部分があり、その多分に感覚的な、目に見えない何かに触れようとする意識は、今までのGLAYの表現領域ではあまり語られなかったものである。そんなこと考えてたのか、そんなところまでやろうとしているのか、と驚くファンも多いことだろう。また、この対話の中で、TAKURO自身は元より、GLAYや北海道についての話がうかがえたことはとても有意義で、豊かな時間だった。

そしてそのすべての根底で、現実に対峙しようとする姿勢を失わず、それでも夢を見ることを絶対に忘れない生き方は、やはり彼はGLAYのリーダーだと痛感した。素晴らしい音楽家だと思う。(Interview & Text:青木優/Photo:池村隆司)

自分も救いながら誰かの救いになればいい

――この取材に向けて、アルバムを聴いてきたわけですが……聴くたびに寝落ちしてしまうんですよ。

TAKURO:それは最高の褒め言葉です! ほんとに俺が一番欲しい言葉ですね。

――そうですか? しっかり聴かなきゃと思いながら、ついつい。

TAKURO:いやぁ青木さん、それはもう大正解です。このアルバムは自分自身もそうですし、世界を何かしら癒したいなと思って作ったんですけど、究極の癒しだったりリラックスって、寝ることじゃないですか? その橋渡しができているなら、俺の中ではすでに大成功なんです。もしその眠りの先に素敵な夢など見たとしたら、もうこのアルバムの生まれた価値はあると言いますか。だから「寝ちゃうんだよね」というのは褒め言葉なんですよ。だって僕も2曲目まで、聴いたことないですよ。1曲目の途中でグァ~ッと寝ちゃう(笑)。

――そうなんですね(笑)。TAKUROさん自身、それだけ癒しを求めていた日々があったんですか?

TAKURO:はい。このアルバムを作るきっかけになった2月は、まさにロシアがウクライナに軍事侵攻を始めていて。その時はロスにいたんですけど、ロスではコロナのニュースはほとんどやってなくて、日々変わる戦況を流していたんです。そのニュースを浴び続けると……気持ちが沈むのもあったし、かたや日本ではコロナの影響がまだまだ大きかったし。その意味では、自分の心は相当疲れていたのだろうと思います。で、その時思っていたのは……GLAYの音楽が気持ちをグッと持ち上げて元気にしてくれるものだとしたら、そうでない、戦争という究極の有事と、大自然という、言わば平穏な時、その橋渡しになるような音楽についてですね。自分の心をどちらかに振り切るのではなくて、穏やかに、正常値に……真ん中に、フラットにしてくれる音楽は作れないものだろうか?と。それを目指して2月に曲作りをして。3月まで、4日ぐらいで全曲作りました。


Photo:池村隆司

――ではその2月から3月にかけて、TAKUROさん自身も眠れなかったですか?

TAKURO:そうですね。うん、眠れないのもありますし、毎日、朝起きた時に「今日ロシア軍が撤退しました」とか「和平条約が結ばれました」となってるように期待して寝るんですけど、その期待は叶うことはなくて……今でもそうですもんね。で、今回は、その「世界平和を祈って」みたいに、わかりやすく言語化できないような感情を掬った感じです。もちろん戦争なんかないほうがいいんだけど……いつも見逃しているような、何気ない自然の姿が人々にもたらす安心感は大きいので。そういうところで、頭の中に浮かんだ風景画を音でスケッチするような感じで作りました。

――なるほど。風の音や鳥のさえずりのような環境音が聴こえるのは、その自然というモチーフがあったからなんですね。

TAKURO:そうですね。裏テーマとしては、その大自然に対するある種のリスペクト、尊敬みたいなことと、それから時間の定義、このふたつがありました。自然に対しては、たとえば疲れた時でも、海に行って波の音を聞いてるだけで癒されるという体験があるとしたら、それと音楽は何が違うんだ?と考えて。そこからのスタートですね。そこで「波の音にふたつの音を足すだけで名曲になりうるんじゃないか?」とか「ふたつの音に鳥の声を入れるだけで名曲になるかもしれない」と思った。僕はずーっと商業音楽、いわゆるJ-POPの中で生きてきたから、Aメロがあってサビがあって、Bメロ、Dメロも、弦のソロなんてあって!みたいに、5分間の中のドラマ作りをしてきたけれども。

――今回はそうじゃない枠組みで音楽を作ってみたかったんですね。

TAKURO:そうです。それからもうひとつは、時間軸というものを意識しないことです。たとえば「ひと晩中海を見ていた」なんて言うけど、そこで「ひと晩中」なんて、人間しか持ちえない概念じゃないですか。50年前のナイアガラの滝も、50年後のナイアガラの滝も、そこにただあるだけで。もしかしたら100年後は涸れてる滝かもしれないけど、でもそんなことは人間以外は気にしないですよね。それをやめることで気持ちが解放されるのなら、僕の音楽がもうちょっと違ったものに響くんじゃないかな?っていう。

――時間の流れにとらわれない感覚、ということですか。

TAKURO:うん。それにとらわれなければ、究極言うと、死に対する恐怖が軽減される、みたいな。だって、たとえば動物たちの死骸は朽ちていくのに、人間の生死がそれとまったく違う形で取り沙汰されるのは、やっぱり人間が文化とか時間とか風習とかにとらわれるからですよね。そのおかげで文化も発展しているわけだけど、そうじゃないところ……人間が考えないところの成分を音楽に取り込めたらいいんじゃないか、って。そうしたら、それは癒す効果になるんじゃないかなと思ったんです。この時間軸からの解放と自然との共鳴みたいなところを音にできないか?と。おかげで今回は、音にとどまらず、自分のこれからの生き方にもすごく影響を与えるようなレコーディングの日々を送れました。

――そうなんですね。ずいぶんと壮大なことを考えていたんですね。

TAKURO:それぐらいウクライナへの侵攻についていろいろ考えてて、「うわぁ~」と思ってたからなんです。「あ、このままだとヤバいな、自分」と思って。そこでスイッチを替えていくことで、今の世の中の悲しい出来事に対しての自分の立ち位置を……簡単に言うと、ちゃんとしたい。大人としてあるべき立ち位置に戻したかった。嘆いていたところで……憂いていたとて、とくに何も変わらないんだけれども。ただ、自分が生きる上でもずいぶんたくさん音楽に救われたので、今回は自分も救いながら誰かの救いになればいいなあって。だからその曲作りは、いわゆる商業的なものからちょっと逸脱する必要があった。

――それで先ほどのAメロやサビみたいな構造ではない曲が並んでいるんですね。たしかに解き放たれた状態で書かれている気がします。

TAKURO:そう、だからテンポなんかもなくていい。ドラマの起承転結もなくていいんです。

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人間味が出ることを、俺の中ではフォークって言うんですよね

――つまり、そのぐらいこの作品の背景には悲しくて重たい、さまざまな感情があって。それだけの感情のうねりがあったから生まれたアルバムということですね。

TAKURO:ありましたね。あれに近かったです……3.11(2011年の東日本大震災)のあとの、人としての無力感……ミュージシャンとしての敗北感。それに近いものがありましたね。そこからなんとか作ったこのアルバムは、決して派手なものにはならなかったです。

――僕が聴いて思ったのは、ほぼ歌詞はないけれども、これはたしかにソロアルバムだということです。内省的だし、とても繊細で、感受性が鋭くなっている状態で。TAKUROさんのルーツのひとつにフォークミュージックがあると思うんですけど、すごくフォーク的に聴こえるんです。

TAKURO:そうですよね。だからフォークミュージックというものは、たとえばアコギ1本でラッパズボンにデニムでポロポロ、みたいなイメージだと思いますけど(笑)。そういうわかりやすいアイコンを抜いていくと、たぶんこんな感じになっていくんだろうな。

――だから人間味がにじみ出てると思うんですよ。あなたの。

TAKURO:そう。人間味が出ることを、俺の中ではフォークって言うんですよね。ロック的な虚栄ではなくて。

――はい。曲の仕上がりも、ところどころラフに聴こえます。

TAKURO:そう、そこはジョン(=プロデューサーのジョン・ギルティン/映画音楽や環境音楽の世界で知られる大物)が、ちゃんと作ろうとすると「いやいやいや」って言うんです。ズレをコンピューターで直そうとすると、「いいじゃん、これで」というのが彼のやり方でした。「だってズレたんだから」って。それを聴きやすくするのは、ある意味、自然ではないですよね。

――だから音色や響きはきれいでも、洗練されきってないですよね。

TAKURO:うん。「直してえな」とか思うけど、でも2022年の自分はこうであった、という。そういうアルバムですね。


Photo:池村隆司

――わかりました。で、TAKUROさんは過去2枚のソロアルバムを出しているわけですが、以前からこの3作目に対してのアイディアはあったんですか?

TAKURO:うん、もし3枚目のソロアルバムを作るんだったら『Journey~』の流れじゃなくて、作曲家・TAKUROとしての原点を真っ向から見つめながら、今後も示唆できるようなもの、作曲家としての自分の資質を問うものを作りたい、という気持ちはずっと持っていました。「ポップ・ミュージックとして曲作りでいろいろと遊んできたけど、ほんとに人の心を揺さぶる、ほんとに自分の心を癒すようなメロディってあったかな?」というのが長年疑問だったから。俺は何をしたくて音楽を作ってるのかというと、第一はバンドがやりたいんですけど、いち作曲家としては……『HEAVY GAUGE』(GLAYが1999年にリリースしたメジャー5thアルバム)の中でも「Savile Row ~サヴィル ロウ 3番地~」という曲を書いたけど、人の心を癒せるような曲が作れればいいなぁと思って生きてきたので。だから作曲を見直そう、その方向として、人の気持ちを癒せるようなアルバムに真剣に取り組んでみよう、と。それが今回作ですね。

――そうですか。そこまで立ち返ってるんですね。

TAKURO:うん。まあ前の2作のソロアルバムは「自分が一番未熟だったギターをなんとかしないとGLAYから振り落とされるな」と思ったから作ったんですけどね。毎回、GLAYでいるのは大変なんですよ。振り落とされないように。

――そうですか? GLAYはTAKUROさんが中心にいるように見えますが。

TAKURO:いや、全然! リハーサルとかレコーディングの時の俺なんか、ちっちゃいものですよ。もう「TAKUROだけ録り直しだ」「ごめん」みたいな(笑)。プレイヤーとしては、ほかの3人と俺の間には、深くて長い川が流れてるのをすごく感じるので。

――そうですか(笑)。そんな中で今回、ピアノが中心になったのはなぜですか?

TAKURO:ギターだとなまじ知識があるもんだから、その知識から離れる作業が面倒くさいんです。それでさっき言ったような、まったく違う作曲方法をしてみようと。そこで親しんでない楽器、ピアノですね。もうひとつは、さっきも言いましたけど、頭の中にあるイメージ……明確に、1枚の絵ですね。そこに描かれている絵と、そこで鳴っている自然の音に対して、このピアノで何を足していけば、充分なのか? そこで聴く人の想像を奪うようなものであれば、やりすぎ。逆にその想像を膨らませるようだったら正解っていう、漠然とした基準を設けて。

――今までしたことがない作り方ですね。

TAKURO:ないですね。今までは、GLAYであるとか、日本であるとか、「洋楽のああいうカッコいい雰囲気で」とか、いろいろな知識や確固たる条件が存在していたので。でも本来の音楽作りというものは、たぶんこんな感じになるんじゃないかな。究極を言うと、黒人が労働の時のツラさを慰めるブルースだったり、母親が赤ちゃんの寝かしつけの時に唄う子守唄だったり、そのレベルまで行けないかなって。そこまで行ったら国境も時間も飛び越えられる、心の旅ができるような気がしていて。それは人の心を何かしら癒すのではないかと仮説を立てています。

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  2. 北海道で培った考え方が今も役に立っている
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北海道で培った考え方が今も役に立っている

――では曲についていくつか聞きたいんですが、まず1曲目の「Sound of Rain」から、お話にあったように雨や雷の音から始まります。こういう環境音を入れる発想は最初からあったんですか?

TAKURO:最初はなかったです。ただ、人の心を癒す要素は楽器だけにこだわらなくていいんじゃないかと思って。それが誰かにとってはふるさとの海の音でもいいだろうし、また誰かにとっては軒下の風鈴の音でもいいだろうし。それも音楽になりうるから、今回はそれを徹底してやろうと。ベタと言われようが、このジャケットにあるような北海道の冬の厳しさみたいなものを表現しようと思うと、楽器の音でどうやっても、風の音ひとつには叶わないから。みんな心の中に、厳しい冬とか、優しい春とか、持ってると思うので、そこに訴えかける必要があるなと思ったんです。あの夏の、あの日の思い出とかが呼び起されたり……。

――「Early Summer」は、まさにそれですね。川のせせらぎや鳥の声が聴こえます。

TAKURO:そう。そうすれば今、目の前の、2022年のきつい現実みたいなところからちょっと逃れられるかも、って。聴いてくれる人もね。

――とてもアンビエント的です。今、ジャケットの話があったんですが、これはTERUさんが描いたんですね。

TAKURO:そうなんです。彼はここ1年ぐらいものすごく絵を描いてて、それを見て毎回「素晴らしい才能だな」と思っていたので。今回はふたりに共通してある北海道の風景みたいな曲がたくさんあるし、これを聴いてもらったら、たぶんいいのを描いてくれるんじゃないかなと思って。そしたら頼んで2日後に来ましたよ。


▲TERUが描いた『The Sound Of Life』ジャケット

――この絵が? それは早いですね。何か「こういう絵を」みたいなオファーの仕方はしたんですか?

TAKURO:いや、べつに。「これを聴いて、思うまま描いて」って感じで。でも、これはまさに、「Ice on the Trees」か何かの自分の頭の中の風景がぴったり一致する絵なんです。もし「どういうのを描いてほしいの?」って言われたら、言葉にしてこういうのって言ってたでしょうね。でも言う前にできてきたから。すごいなと思いましたよ! 彼には理解しやすかったんじゃないですかね。

――そこで北海道の寒さというのはあったんですか? このアルバムのイメージのひとつに。

TAKURO:ありますし、北海道に生まれ育ったことで、良かったなと思うことがいくつかありまして。ひとつは、東京の人たちが抱える悩みって、たいてい人間関係なんだけど、北海道の自分なんかは、何割かは対自然の課題というか問題だったんです。だから東京に来てからも「人間関係のこじれ方だけが問題のすべてじゃない」ということは思っていて、それを北海道時代に学べたことは、その後のバンド活動にものすごく役に立っています。だからメンバーがいまだにのんびりやれているのは、「最終的には人間も自然の一部だし、そこで何かあったら一緒になって戦わなきゃいけないから、今ここでいがみ合ってもね」と思ってるからじゃないかな。たぶん子供の頃からしみついてる、何かしらの心理なんじゃないですかね。

――なるほど。今日何度か話されている自然に対する意識は、そのころから根付いていたんでしょうね。

TAKURO:そうですね。まあ東京には電車があるけど、俺の小さい頃なんかは、6~7歳で、40分ぐらいかけて学校に行くんですよ。

――歩きで? それは遠いですね。

TAKURO:冬なんか雪道で一列になって下校するんだけど、俺んちは遠かったんで、真っ暗の中、「これ、どっかにズボッと落ちたら、しばらく助からねえな」みたいに思ったりして。

――誰も見つけてくれなさそうな場所なんですね。

TAKURO:「見つけてくれないだろうな」というような街だったから。ああいう圧倒的な自然に対する畏怖の念というんですかね。で、圧倒的に大きなものに対する無力感みたいなものが根底にあると、人間関係のトラブルもまたちょっと違って見えるというか。それを感じることは多々ありますね。

――いろいろつながってきますね。曲の話に戻ると、「Red Sky」にはせつなさや苦みを強く感じます。赤い空という表現は、戦火を思わせますけど。

TAKURO:そうですね、赤い空……知り合いにイランから日本に来て長い人がいるんだけど、その人は夜の花火が怖いんだって。夏なんて、きついって言うんですよ。子供の頃に自分の街がミサイルで破壊されて、家族が亡くなって、命からがら日本に来て。それから25年ぐらいになるんだけど、いまだに花火が上がって空が赤く染まると、いたたまれない気持ちになると。この曲の頭の中の風景画は、自然とは違った、ちょっと文明の感じがします。それだけにポップス寄りですよね。前後の曲の雄大さに比べると、鬼気迫る感じがある。

TAKURO「Red Sky」

――「Pray for Ukraine」はストレートなタイトルですね。非常に感情的なものを感じます。

TAKURO:そうですね。日本は戦時下ではないけれども、地球規模の戦争状態の中で作ったアルバムなので。インストの曲にタイトルつけるの、苦手なんですよ(笑)。だけど、こういったことを意識しながらやってるミュージシャンが日本にいるよということが伝われば。で、聴いてる人たちにも、ちょっとでも考えてもらうきっかけになればと思って、このタイトルをつけました。

TAKURO「Pray for Ukraine(ヒーリング映像)」

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諦めたら生きていけない

――「Bercy」は、パリのベルシーのことなんですか?

TAKURO:そうです。どっかのカフェか何かでその写真か何かを見て。で、調べたら、そこだったんです。そんな些細なきっかけでできた曲ですね。先ほど自然と時間の話をしたけど、僕が見たその写真はいつのものか知らないんです。もしかしたら200年前なんじゃないか?とか、100年前じゃないか?とか。そうして想像したほうがメロディが勝手に出てくるというか。

――「In the Twilight of Life」は心に深くしみる曲です。唯一のヴォーカル曲であるこの曲は、ドナ・デロリーの歌が、大切な人への呼びかけから始まりますね。

TAKURO:一時、戦争に行った人や家族はそのあとにどうなったかということに興味があって、そういう本を読みあさったんです。たとえばウクライナのおばあちゃんなんかは「私は1回も引っ越してないのに、私の国は4回変わった」とか言って、ガハハと笑うわけです。たくましいなと思う。で、僕がこの曲のモチーフにしたのは、夫と子供を戦争に送って、だけど訃報もないまま、何10年も帰りを待つ女性の話です。浮かんだ絵は、家の前のイスに座って、愛する者の帰りを何10年も待っている老婆のイメージ。そこから詞を書きました。ドナは俺の10個ぐらい上なのかな。彼女にこの話をしたら、ほんとに理解してくれて。

――すごくいい歌ですよね。

TAKURO:はい。ほんとに心を込めて唄ってくれて……すごく大切な曲になりましたね。

――この曲を聴いて思い起こしたのは、GLAYの「Only One,Only You」なんです。あれは戦地に行く兵士の心情を描写した曲ですよね。だからあの曲と、このアルバムのこの曲に、2022年のTAKUROさんのリアルな思いが込められていると感じました。

TAKURO:はい……たぶん、どっちも同じ月に書いてますよ。3月だったと思う、両方とも。うん。

GLAY「Only One,Only You」

――その時期は、それぐらい揺らいでいたわけですね。

TAKURO:そうですね。だから……音楽があってよかったなと思いましたね。ある種の逃げ場にもなったし、ある種の包帯的な役割もしてくれたし。

――でも、それがこうして作品になっているのは、素晴らしいなと思います。もちろん悲しい事実があることは、本当に悲しいわけですが。

TAKURO:そうですね。僕がアーティストとかロック・バンドから学んだことは、今あるリアルをちゃんと、それぞれ伝えていくこと。もちろん、夢を見ることも……GLAYは「夢見ていこうぜ」って言って、夢の中にいるようなイメージもあるんだけれども。

――(笑)ボーカルの方がよく叫んでる言葉ですね。

TAKURO:でも実はメンバーみんな、それぞれ、すごいリアリストだったりするので。俺たちがファンの人たちやリスナーに伝えたいことは、目をそむけてはいけないことに対しては、そむけちゃいけないし。大人のあり方として、叫ばなきゃいけないことは叫ばないといけないということです。小さな音楽の世界に逃げ込んで、そのスターシステムの中で活動をくり返すことは、俺は学んでこなかったので。だから自分がそう受け取ったように、今より、より良くなるために、なにかしらのメッセージを込めたいな、と。より良くならないんだけど。なかなか。

――うーん、そうですね。難しいですよね。

TAKURO:それでも、少しずつだけど、人の痛みがわかるような、そういった世界が広がってるような気もしますからね。だから、そこだけは諦めない。だけど、有史以来、戦争がなくなった日はないので……それも理解しながらですけどね。

――その「諦めない」というのは、やはりGLAYらしいと思います。

TAKURO:うん、諦めない。諦めたら、生きていけないんじゃないですかね。そこまで人は強くなれないんじゃないですか。だからどこかで、夢を見ます。「明日もいい日になりますように」みたいな思いもそうですけど、どっかで前向きであらねばとは思いますね。たぶん後ろ向きな人がいたら「前向けよ」って言うもんね(笑)。「こっちも持ってかれるから勘弁してくれ」って。だから、この歳になって、人に見られるような仕事してるわけですから。そこで、何かしら明日の楽しい話題になるようなことを提供し続けていくのがある種この仕事なのかなぁ、と思います。


Photo:池村隆司

――ちなみにTERUさんはこのアルバムの感想、何て言ってました?

TAKURO:……何か言ってたっけな? JIROは「新しいことに挑戦して、リーダーはすごいね」って、あのペカペカの顔で言ってくれたよ。HISASHIさんは……「聴いてねえ」。TERUさんは……「眠くなる」つってたかな?

――あ、ということは。

TAKURO:うん(笑)、最高の褒め言葉ですね。

――それは良かったです(笑)。あと、ソロの過去2作はすごくいい雰囲気のバンド編成でライブをしていたんですが、このアルバムでのライブは考えてます?

TAKURO:ライブという音楽的なフォーマットにハマるかどうか、わかんないんですよね。イメージがちょっと……だってライブに来て「寝ろ」というのは、矛盾することなので。

――(笑)そうですね。たしかに。

TAKURO:インストって、たとえばジブリの音楽もあるし、坂本龍一さんの音楽とかもあるんだけど、このアルバムってもうちょっと生活に近いというか。非日常としてのクラシックコンサートみたいなものは違うだろうし、それを望んでないので。だから今、たとえばリラクゼーションサロンのBGMとして使ってもらうような動きをスタッフがしてくれたり、プラネタリウムと組んだりね。星を見る行為とこの音楽はとても親和性が高いというのは、作ってる途中で思ったから。だからライブが全然浮かばないんですよ……演者のほうを見ながら聴くものではないしね。そうやって(その場の)主役になったら、このアルバムの魅力が変わってくるんじゃないかと思っていまして。ジョンはツアーをやりたいと言うんですけど、まったくイメージが湧かないです。『Journey~』の曲と混ぜて、1曲ぐらい演奏する場ならいいかもしれないですね。だからたぶん、ヨガレッスンクラスだったり、プラネタリウムだったりの片隅のスピーカーで鳴ってるのが、たぶんこいつが一番生きる場所ではないかと思います。

――わかりました、ではどこかで、何らかの形で聴けるのも楽しみにしています。今日はいろいろなお話が聞けて、楽しかったです。

TAKURO:こちらこそ! どうもありがとうございました。


Photo:池村隆司

TAKURO「The Sound Of Life」

The Sound Of Life

2022/12/14 RELEASE
PCCN-53 ¥ 2,750(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.Sound of Rain
  2. 02.Letter from S
  3. 03.Red Sky
  4. 04.When I Comb Her Hair
  5. 05.Pray for Ukraine
  6. 06.Ice on the Trees
  7. 07.A Man Has No Place
  8. 08.Bercy
  9. 09.Early Summer
  10. 10.In the Twilight of Life (featuring Donna De Lory)

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