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ギルバート・オサリヴァン 再発特集

ギルバート・オサリヴァン 再発特集

 73年の米ビルボード・チャートで6週連続1位となった「アローン・アゲイン」で一躍スターダムにのし上がったアイルランド出身のシンガーソングライター、ギルバート・オサリヴァン。その後も「クレア」、「そよ風にキッス」、「トゥモロウ・トゥデイ」など、ポップス史上に残る名曲の数々を紡ぎ続ける稀代のメロディ・メイカーの一人となった彼。昨年には、4年ぶりの最新作『ギルバートヴィル』をリリース、アルバムを引っさげた来日公演も大盛況に終わり、未だに現役として珠玉の作品作りを続けている彼のデビュー作『ヒムセルフ』『バック・トゥ・フロント』『アイム・ア・ライター・ナット・ア・ファイター』の初期の3作が、シングルのB面などを含むボーナス・トラックと共に、そしてレーベル超えてコンパイルされた日本独自のベスト・アルバム『アルティメイト・コレクション』が高音質で蘇り、先月24日にリリースされた。本特集では、デビューから3作品をパッケージに含まれる本人による楽曲解説を通じて振り返る。

『ヒムセルフ +8』本人解説

ギルバート・オサリヴァン『ヒムセルフ +8』

『ヒムセルフ +8』

ギルバート・オサリヴァン
¥2,800(税込)/ VICP-75086
高音質K2HD+HQCD盤/本人による楽曲解説/
ライナーノーツ/全曲歌詞・対訳付
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 1971年にリリースされ全英5位を記録し、86週間にわたってチャートインした記念すべきデビュー・アルバム。幼い頃から、ビートルズの作品、とくにポール・マッカートニーの幅広い音楽性に影響され楽曲作りを行っていたこともあり、解説の中でも何度か彼の名前を挙げている。1970年にリリースされたシングル「ナッシング・ライムド」は、全英8位を記録しており、ボーナス・トラックには、この曲のB面に収録された「エヴリバディ・ノウズ」を含む8曲が追加され、全22曲が収録されている。

01. イントロ
「あれは僕のトレードマークみたいなもので、要するにほかのミュージシャンと違ったことをやりたかったんだ。それにアルバムにああいう手法を取り入れることで、より私的な雰囲気を演出できると思った。僕は"SOUTHPAW"(1977年)まであのスタイルを貫いた。」

02. ジャニュアリー・ギット
「一種の言葉遊びで、たとえば"Jan, you hairy git"っていうのはリヴァプールの人たちが使用する表現だけど、たとえ歌詞を理解できなくても、充分に楽しめる曲になっていると思う。今も昔も僕は真剣に作詞に取り組んでいるけれども、ときどき歌詞はそれほど重要じゃないんじゃないかと思うこともある。だからってこの歌詞が適当にでっち上げたものってことじゃない。僕はいちどだってそんな真似をしたことはない。理解し難いものかもしれないけれど、この曲の歌詞は僕の理想通りに仕上がっている。」

03. バイ・バイ
「歌詞にとげのある言葉を挿みたいと思っている。そういう表現を忍ばせることで楽曲全体が締まるというのが僕の考えなんだ。僕は愛ってものが持つ暗い側面をしばしば歌で取り上げる。恋人同士の関係の破綻とか、浮気とか情事とか、たとえばそういうものだ。」

04. パーミシヴ・トゥイット
「いかにも60年代らしい歌詞だ。"permissive(寛容な)"なんて言葉は時代を感じさせる。実際、こんな表現は今の人たちにはピンと来ないだろうね。僕はユーモアのある歌詞が好きだし、テーマが深刻であればあるほどそこにユーモアを取り入れようとする傾向がある。両親はカトリックを信仰していたけれども、"Unless she raises the money/ she'll have to let it out"なんてくだりはカトリック信者なら本当はとても歌えないだろうね。歌をうたっていると、自分を忘れ、その歌の世界や主人公になり切ってしまう。妊娠した娘になり切り彼女の苦しみを自分のこととして感じる。そこが面白いところだ。」

05. マトリモニー
「僕個人は結婚というしきたりはとても大切なものだと思っているし、教会で結婚式を挙げるというのも意味のあることだと思っている。だけどここで歌っている"matrimony(結婚式)"は互いの両親のことも家のことも忘れ籍を入れる行為だ。歌の主人公になり切るっていうのはつまりそういうことだ。たとえ自分とは違う意見でも、立場を超えて感情移入できるんだ。」

06. インディペンデント・エアー
「物書きならきっと皆同じことを言うと思うけれども、僕も物事の暗部に惹かれる。僕が歌っているのは詩じゃなく"歌詞"だ。歌詞は詩とはまったく違った一個の芸術表現なんだ。僕は言葉を普段とはちょっと違った意味合いで使うのが好きだ。それがどういう意味か、僕にしかわからなかったとしても構わない。わかりやすい曲とはいえないけれども、当時も今も、この"Independent Air"がお気に入りだと言ってくれる人は少なくない。万人受けする曲じゃないけれど、これには独特な魅力があるんだと思う。」

07. ナッシング・ライムド
「"Nothing Rhymed"のメロディが好きだという人もあれば歌詞がいいと言ってくれる人もいた。僕はメロディにも歌詞にも些かも手を抜かなかった。だから郵便局員があの曲のメロディを口ずさんでいるのを聞いても、誰かが歌詞について語っているのを見ても同じくらい嬉しく思う。」

08. トゥー・マッチ・アテンション
「自分が思っていることをはっきり口に出すっていうのは気持ちのいいものだ。説教じみた調子の歌をうたうのは好きじゃないけれど、この曲はとてもさりげなく要点を伝えようとしている。なかなかの出来のロック・ナンバーだと思う。マイナー・キーからからメジャー・キーに移行するというコード進行は今でこそいろいろなレコードで聴くことができるけれども、当時はまだめずらしかった。コンサートでは今もときどきこの曲を取り上げる。ただしオリジナル・ヴァージョンよりぐっとテンポを落としたジャズ・ナンバーみたいなアレンジに変えているけどね。」

09. スーザン・ヴァン・ヒューゼン
「"Susan Van Heusen"っていうのはオランダの名前だ。"Nothing Rhymed"は数週間に亘ってオランダのヒット・チャートの首位を独占した。そんなわけで、当時、僕は暫くオランダに滞在していたんだ。これはとても変化に富んだ曲で、チェロのソロのフレーズは特に気に入っている。音楽的に非常に面白い曲だけど、今、この曲をリクエストされても応えられない。だってとても再現できそうにないんだ。」

10. イフ・アイ・ドント・ゲット・ユー(バック・アゲイン)
「誰かに出会い、相手を知るうちに思いもよらないことが起こるってことはめずらしくない。これはそんなことを歌った曲だ。"Ooh, I won't half feel the pain"というくだりのいかにもイギリスっぽい感じは凄く気に入っている。それに、何よりもメロディがいいし、カウンター・メロディも効いていると思う。ポップ・ソングにこの手の手法を持ち込むソングライターは珍しいし、実際、僕もポール・マッカートニーの曲で初めて耳にした。」

11. サンダー・アンド・ライトニング
「リック・デイヴィス(のちにスーパートランプを結成)からブルース・コードってやつを教わった。彼はお勧めのブルースのレコードも僕に何枚かくれたよ。で、僕はその手の曲をいくつか書いてみた。そのうちのひとつが"Thunder And Lightning"だ。今年(2011年)のコンサートではこの曲をオープニングに演奏した。とにかく盛り上がる曲だからね。」

12. フーディーニ・セッド
「今そこで起きていることを観察し、それを歌にするっていうのはごく自然なことだし、現代の状況にも間違いなくあてはまる歌詞になっていると思う。そして僕はここでも冷笑的な意見を持つ語り手になり切っている。」

13. ドゥーイング・ザ・ベスト・アイ・キャン
「一風変わったコード進行がビートルズの影響を感じさせるマッカートニー風のトラックだ。この手ものは探り出そうとしても、必ず見つかるわけじゃないが、思いがけず発見できたときは嬉しいものだ。」

14. アウトロ
「"Intro"と同様、パーソナルな小曲。今はこうした"Outro"に代えてアルバム本編が終わったあとに隠しトラックを入れるようにしている。僕が演奏している最中に突然、邪魔をしにくる娘とか、真夜中に苦情を言いにきて窓を叩く隣人とかが題材になるんだ。」

15. ディサピア〔オリジナル・デモ〕(1967年に録音されたデモ・ヴァージョン)
「ボブ・ディランに影響されてあんな風にしわがれた声で歌っていた。で、レコード会社の連中にアピールしようとしたんだ。『僕はほかのヴォーカリストとは違う。こんな外見で年寄りみたいに歌う若いシンガーがほかにいるかい』ってね。ことヴォーカルに関しては、あのころはディランに多大な影響を受けていた。ただしソングライティングに関してはジョン・レノンとポール・マッカートニーの影響が強い。この"Disappear"もビートルズの"RUBBER SOUL"に入っていた"Girl"にヒントを得た曲だ。」

16. ホワット・キャン・アイ・ドゥ〔オリジナル・デモ〕(1967年に録音されたデモ・ヴァージョン)
「この曲も同じく次回作の為に書いた曲。一人スタジオで作り込んでいった『Art』とは打って変って、また生のミュージシャンとレコーディングするのが、とても楽しいんだ。」

17. ミスター・ムーディーズ・ガーデン(1971年8月にリリースされたシングル"I Wish I Could Cry"のB面)
「時代を感じさせる作品だ。"Down among the partridge trees/ lives a man who loves his knees"のくだりでは当時人気のあったドン・パートリッジのことを歌っているし、ほかにあの"ビルとベン"やジョン・ウェズリー・ハーディンなんかも登場する。そんなことを知らなくても楽しめる曲だけど、ともあれ作っていて凄く楽しい曲だった。」

18. エヴリバディ・ノウズ(1971年10月にリリースされたシングル"Nothing Rhymed"のB面)
「乗りのいいただただ楽しい曲だ。」

19. アンダーニース・ザ・ブランケット・ゴー(1970年2月にリリースされたシングルのA面)
「僕は少しも心配してはいなかった。"Nothing Rhymed"に続くシングルを求められたとき、思いついたのが、ラムゼイ・ルイスの影響を受けたこの曲だった。レコードは僕が望んでいた通りの仕上がりにはならなかったけれど、型破りなところが気に入っている。」

20. ウィ・ウィル(1971年7月にリリースされたシングルのA面)
「この曲を聴けば僕とポール・マッカートニーの共通点がよくわかると思う。この歌からは家族の影響――特に僕の母親の影響が強く感じられるはずだ。歌詞にある"Bagsy being in goal"っていう一節は特に気に入っている。」

21. アイ・ディドゥント・ノウ・ホワット・トゥ・ドゥ ("We Will"のB面)
「ときどきギターを弾くようにピアノを弾こうとしてみる。ギターをかき鳴らしたり、爪弾いたりするみたいにね。大概のピアニストはそんな真似はしないけれど、僕は自分をリズム・プレイヤーだと思っている。左手でベースとドラムズ、右手でコードを奏でる。そのコンビネイションが僕のスタイルなんだ。僕はピアノを弾くブルース・ウェルチを自称しているよ。」

22. さよならが言えない(1971年11月にリリースされたシングルのA面)
「ミドル・セクションでビッグ・ジム・サリヴァンが奏でるカウンター・メロディはとてもいいと思う。それは最後のバースでも聴くことができる。ヴォーカル・パートをダブル・トラックにした僕の初めてのレコードでもある。ゴードンはそうすることでより多くの聴き手にアピールできると考えたんだ。ダブル・トラックを有名にしたのはジョージ・マーティンだ。彼がビートルズの初期のレコーディングで彼らのヴォーカル・パートに頻繁に使用して、以来、多くのシングルに同じ手法が取り入れられるようになったんだよ。」

(訳:若月眞人・高橋崇 for KR Advisory Co., Ltd.)

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『バック・トゥ・フロント +3』本人解説

ギルバート・オサリヴァン『バック・トゥ・フロント +3』

『バック・トゥ・フロント +3』

ギルバート・オサリヴァン
¥2,800(税込)/ VICP-75087
高音質K2HD+HQCD盤/本人による楽曲解説/
ライナーノーツ/全曲歌詞・対訳付
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 イギリスでの名声を手にし、バスター・キートン風のイメージも一変、セクシー路線で女性からも一目をおかれるようになるが、本人は構わず作曲活動を続け、全英1位、全米2位を記録した「クレア」などを収録した1972年リリースの2ndアルバム。今回の再発では、彼を世界的シンガーソングライターにのしあげた全米1位、全英3位の大ヒットシングルでありつつも当時シングルのみの発売だった「アローン・アゲイン」をボーナス・トラックとして収録している。

01. イントロ~アイ・ホープ・ユール・ステイ
「1971年から1972年にかけて100万もの人たちが失業し、とても無視できない問題になっていた。僕は以前から自分の周りで起きていることを創作に反映してきた。シンプルな曲にさりげなく取り入れてきたんだ。」

02. イン・マイ・ホール
「"In My Hole"は僕のお気に入りだ。ひとりぽっちで部屋に閉じこもっていた自分の有様がうまく表現されていると思うから。ブライアン・ウィルソンが書いた"In My Room"に似ているよね。僕流の英国版"In My Room"と言ってもいい。フリーストーンっていうのはC&Aに勤めていたころの同僚のひとりの名前だ。メイジーの由来は僕にもわからない。"デイジー"に音が似ているっていう以上のことはないと思う。」

03. クレア
「この曲はあらゆる点で申し分のない作品に仕上がった。かつてイギリスきってのハーモニカ奏者として鳴らしたゴードンがソロを披露してくれたし、クレアもエンディングに愛らしい笑い声を加えてくれたからね。とても私的で純粋な曲だ。それにある瞬間を見事にとらえていると思う。だけど、よくこんな風に考える。今、僕たちが暮らしているこの社会では"Clair"みたいな曲を書くことは許されないんじゃないかってね。」

04. ザッツ・ラヴ
「はじめ、" That's Love"にはまったく違った歌詞(そこでは眼力の喪失や、子供に対する両親の身体的虐待が歌われている)を乗せていた。だけどゴードンは、そこで扱っているテーマが深刻過ぎて、この曲の人懐こいメロディに合わないと思ったらしい。で、より明るいテーマを選んで歌詞を書き換えてみたんだ。」

05. キャン・アイ・ゴー・ウィズ・ユー
「ビートルズの1stアルバムは、僕たちみんなに、それまで気付かずにいたことを教えてくれた。僕は、あのアルバムを聴く前から、音楽は大好きだった。だけど自分たちにも大好きだったミュージシャンと同じことができるんじゃないかと思うようになったのはあのレコードを聴いてからだった。僕はソロ・シンガーだから、普段は誰かの歌にハーモニーを付けることはないけれど、ステージでこの曲を取り上げるときは、バック・ヴォーカルを担当する女性シンガーのひとりとジョン・レノンとマッカートニーになり切って歌うんだ。」

06. バット・アイム・ナット~アウトロ
「自分という人間にまったく自信を持てずにいたころがあった。あのころは、自分が出ているテレビ番組は遠くから見るようにしていたし、鏡に映る姿を信用できなかった。自分の声も、レコーディング・スタジオで聴く分には何の問題もなかったけれど、ラジオから流れてくるとすぐにスイッチを消した。自分が無力だと感じることは誰にだってある。それは何も僕に限ったことじゃないし、そういう思いは決して消えるものじゃない。だけど自分の成し遂げたことや自分の作品に自信を持てたなら、そんな気持ちに打ち克つこともできる。」

07. アイム・イン・ラヴ・ウィズ・ユー
「("Thunder And Lightening"や"Tell Me Why"といった曲と同様)リック・デイヴィスとの交流から生まれたブルージーなナンバーのひとつ。当時はステープル・シンガーズのレコードもよく聞いていた。特に"Respect Yourself"が好きだったな。」

08. フー・ワズ・イット
「最初は単なるアルバムの収録曲のひとつに過ぎなかった。僕自身のヴァージョンはそれほどいいと思わなかったんだ。この曲に込めたユーモアは気に入っているし、ステージで演奏するのは楽しい。だけど特に力を入れてレコーディングしたわけじゃない。3時間刻みのセッションで2トラックのレコーディング・マシンに録音した楽曲のひとつでしかなかったんだ。シングルとしてリリースしようなんてことは考えていなかったからね。ノーマン・スミスのヴァージョンは面白かった。彼とはヨーロッパで何度か彼と共演したことがあるけれど、とてもいい人だったよ。」

09. スーザン・ヴァン・ヒューゼン
「家庭の様子を日常的な言葉で描いたとてもイギリスらしい歌詞だ。こうしたタイプの曲が気に入らなくて僕を批判する頭の固い評論家もいたけれど、ごく普通の人たちが会話を交わすような調子で歌詞を書くのが僕は得意だし、とても好きだった。歌っている内容がごくありふれたことだって構わないんだ。この曲のメロディはとても印象的だと思う。特にミドル・セクションのメロディがいい。"What Could Be Nicer"は今でもコンサートでよく取り上げる。レゲイ風のアレンジでね。」

10. アウト・オブ・ザ・クエスチョン
「自分の書いた曲が誰かに影響を与えるっていうのは何も特別なことじゃない。たとえばプロデューサーのトム・ダウドから"Tie a Yellow Ribbon Round the Ole Oak Tree"のメロディに"Alone Again"の影響がはっきり聴き取れると聞かされたこともあったけど、誰かに自分の曲が影響を与えるっているのはむしろ嬉しいことなんだ。そもそもその手のことは曲を作る者なら大抵はやっている。人の曲を意識的に真似るわけじゃないし、もちろんそうするべきじゃないけれどバーリンだってビートルズだって、皆、いちどは経験があるはずだ。」

11. ゴールデン・ルール
「"The Golden Rule"は心から満足できる曲だった。いい歌だと思うし、言葉遊びが散りばめられているところも気に入っている。あの手の曲をアルバムに入れるのは凄く楽しい。そういえばあの曲にはゴードン・ミルズも参加している。バック・ヴォーカルを担当しているのがゴードンだ。」

12. アイム・リーヴィング~アウトロ
「いかにも僕らしいファッツ・ドミノ風のロック・ナンバーのひとつ。スウィンドンという街が大都市になれなかったということを意識して作ったようにも思う。僕はスウィンドンで育ったし、あの街の住人だったことを誇りにも思っている。それに母親や姉妹は、今もまだスウィンドンで暮らしている。そんなこともあって、僕にとっては心安らげる故郷みたいな街なんだ。」

13. アローン・アゲイン
「この歌詞を書いたとき僕は上機嫌だった。だけど歌詞は深刻な内容だったから、そんな状況に置かれた人の心理を僕なりにしっかり理解した上で表現した。これは僕自身のことを歌った曲じゃない。自身の経験や自分が感じたことだけを歌にすべきだという人もいるだろうけれども、僕はそうは思わないんだ。大勢の人たちが"Alone Again"は彼らにとって特別な曲だと言ってくれる。もちろん、ほかの曲に強い思い入れを抱いていてくれる人もいるけれども、ともあれ、そんな風に聴き手が大切に思ってくれる曲っていうのがある。そして何よりすばらしいのは、それを書いた当の本人はなぜその曲がそれほどまでに愛されるのか知らないし、知る必要もないってこといなんだ。」

14. セイヴ・イット
「同じような曲はいくつかある。たとえば"Mary And Me"なんかがそうだ。あの曲は"She's A Woman"や"She's About A Mover"みたいな感じを狙った曲で、あの2曲のベース・ラインを基調にしている。」

15. ウー・ワッカ・ドゥー・ワッカ・デイ
「"wakka-doo-wakka-doo"っていうのはイギリスのミュージック・ホールの伝統を汲むフレーズだ。僕はポール・マッカートニーの音楽を通じてミュージック・ホールの音楽に興味を持ち、そこから影響を受けた。レイ・デイヴィスの作品の中にも、ミュージック・ホールの影響が感じられる曲があるだろう?僕はアイルランドで生まれたアイルランド人だ。だけどイギリスのソングライターのひとりとして、こうした曲のルーツに誇りに思っている。」

(訳:若月眞人・高橋崇 for KR Advisory Co., Ltd.)

『アイム・ア・ライター・ナット・ア・ファイター +4』本人解説

ギルバート・オサリヴァン『アイム・ア・ライター・ナット・ア・ファイター +4』

『アイム・ア・ライター・ナット・ア・ファイター +4』

ギルバート・オサリヴァン
¥2,800(税込)/ VICP-75088
高音質K2HD+HQCD盤/本人による楽曲解説/
ライナーノーツ/全曲歌詞・対訳付
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 前作2作では複数のスタジオでレコーディングを行っていたが、今作はマネージャであるゴードン・ミルズが建てたスタジオにて行われ、スティーヴィー・ワンダーに影響を受けシンセサイザーやクラヴィネットを取り入れた1973年リリースの意欲作。全英1位、全米7位の「ゲット・ダウン」などを収録し、ボーナス・トラックには、全英6位のシングル「ホワイ・オー・ホワイ・オー・ホワイ」等4曲が追加されている。

01. アイム・ア・ライター・ナット・ア・ファイター
「僕にしてはめずらしく、ピアノを弾かないで歌だけをうたっている。ヴォーカリストに専念するのも嫌いじゃない。自由に歌えるからね。面白いオープニング・ナンバーになったと思うし、曲名も、これ以上ないアルバム・タイトルになった。」

02. アイム・ア・ライター・ナット・ア・ファイター
「この曲は本当に気に入っているんだよ。今でもコンサートで演奏するしね。特にスカンジナビアのファンに人気が高い。サラ・ジェーンっていうのは、ジョニー・スペンサー(アレンジャー兼コンダクター)の娘の名前だけれども、何か特別な意味があってその娘の名前を出しているわけじゃない。メアリー・アンはジャージー島のビールの名前だ。」

03. ゼイヴ・オンリー・ゼムセルヴス・トゥ・ブレイム
「僕は登場人物の気持ちになって歌っている。状況をイメージする上でこの曲のメロディはとても有効だった。」

04. フー・ノウズ・パーハプス・メイビー
「とてもいいロック・ナンバーだと思う。僕のお気に入りだ。予定されていた発売日やゴードンのスケジュールとの兼ね合いで、一部のオーヴァーダビングはアメリカで行った。ロサンゼルスを拠点に活動するパーカッショニスト、ボビー・ホールが、論理的にはとても説明のつかないようなすばらしいタンバリンさばきを披露してくれた。」

05. ホエア・ピースフル・ウォータース・フロウ
「僕自身がベストと思える楽曲のいくつかはヒットとは無縁だった作品の中にある。ヒットはしなかったとしても、そういう曲には深みがあるんだ。たとえばこの曲もそのひとつで。普遍的な感情が歌われている。きっとそこが聴き手にも訴えるんだと思う。コンサートでは観客に一緒に歌ってもらう。"Where Peaceful Waters Flow"は、そんな風にみんなで声を揃えて歌うと凄くいい感じなんだ。僕の母親もこの曲を特に気に入ってくれている。」

06. ウー・ベイビー
「"Ooh Baby"は、アメリカではブラック・ミュージックのチャートにも入った。当時としては、これは快挙といってよかった。すごく誇らしい気分だったよ。あるテレビ番組で、イギリスの有名なソウル・シンガー、エレン・デルマーがこの曲の凄くセクシーなヴァージョンを披露してくれたことは今でも覚えている。そのとき僕は彼女のバックで演奏したけれども、僕自身のステージで取り上げたことはない。"Ooh Baby"っていうフレーズの繰り返しが鬱陶しいからね。」

07. アイ・ハヴ・ネヴァー・ラヴド・ユー・アズ・マッチ・アズ・アイ・ラヴ・ユー・トゥデイ
「僕はヴィブラートをかけて歌う方じゃないから、語りかけるような感じの歌詞を書くことが多い。結果、自然と言葉数が多くなる傾向がある。ヴィブラートや、語尾を伸ばして歌うのを好むヴォーカリストなら歌詞が長過ぎると感じるかもしれない。僕はこの曲を戦争をテーマにした歌だと考えている。最近リリースしたアルバム"GILBERTSVILLE(ギルバートヴィル)"に入っている"Missing You Already"なんかも同じだ。"I've Have Never Loved You As Much As I Love You Today"の主人公の感情は理解できるし、とても気に入っている。」

08. ナット・イン・ア・ミリオン・イヤーズ
「これは"エコロジー・ソング"だ。当たり前だと思っていたことが覆ったならどうなるだろうと考えてみる。音楽的に複雑過ぎて、今の僕にはとてもステージで再現できそうにない。あとになってわかったんだけれど、このタイトルには文法的な誤りがあるらしい。"Not"ではなく、"Never In A Million Years"とするのが正しいらしい。」

09. イフ・ユー・ラヴ・ミー・ライク・ユー・ラヴ・ミー
「個人的な経験に基づいているわけじゃないんだ。それでも、こんな相手を求めているのかと考えてみたりもした。"Who can roll me over, knock me down and pick me up"――こんな人を求めているのだろうかってね。この曲はラブソングの範疇に入るだろうね。僕は恋や重大な問題を扱う曲や、明るい感じの曲が好きなんだ。作詞家としての僕の役割はそんな曲を生み出すところにあると思うし、おかげで日々の仕事を楽しむことができる。」

10. ゲット・ダウン
「これはロッド・スチュワートのいたフェイシズにヒントを得て書いた曲だ。この曲を携えてスタジオに入ったとき、すぐにレコーディングに臨めるミージシャンはほんの数人しかいなかった。ベーシスト、ドラマー、そしてピアノの僕と、フェンダー・ローズを弾いたローリー・ホロウェイの4人だけだった。この曲にはギター・ソロを入れるつもりで、そのためのパートもあったけれども、肝心のギタリストがいなかった。で、僕は急遽、ヴァ―スを増やすことにした。結果的に抜群の仕上がりになった。あとからオーヴァーダビング・セッションを行う必要もなかったし、特にローリーのピアノが凄く効いている。この曲が犬を歌った曲だと思っている人もいるようだけど、まるで見当違いだ。"TOP OF THE POOS"でやったときはあの番組に出ていたダンサー・チーム、パンズ・ピープルが音楽に合わせて踊っていたのを覚えている人も多いと思うけど、どうやら司会のポール・ガンバッチーニはセクシャルな含みのある歌だと思っていたらしい。」

11. ヴェリー・エクストラオーディナリー・ソート・オブ・ガール(彼女は変わった少女です)(シングル"Get Down"のB面)
「この曲はゴードンと僕だけで演奏している。僕はドラムズとピアノ、ゴードンはキーボードとシンセ・ベースを演奏したんだ。キーボード・ソロの奇妙なサウンドはレコーディング・エンジニアの技術の賜物だ。」

12. グッド・カンパニー("Ooh Baby"のシングルB面)
「おかしな歌詞だけど、曲の流れは実にスムースだ。日本で2004年にリリースされた" THE OTHER SIDE OF GILBERT O'SULLIVAN"というCDをきっかけにこの曲の存在を思い出した。ステージで取り上げてみたいと思ってはいるけれど、それもコードを覚えていたらの話だ。」

13. ホワイ・オー・ホワイ・オー・ホワイ
「当時、僕は決してふしあわせではなかったけれども、ソングライターとしてこの曲の語り手に心を重ねてみた。僕は物事の暗い側面や決してしあわせとはいえない状況を歌にしようとするところがある。この曲にもそんな傾向が表われている。悲しい曲には違いないけれども"Why, Oh Why, Oh Why"が好きだと言ってくれる人は決して少なくないし、コンサートのハイライトにもなっている。もっとも最近はアップテンポなレゲエ調にアレンジしているけどね。」

14. ユー・ドント・ハフ・トゥ・テル・ミー(言いだしかねて)("Why, Oh why, Oh Why"のシングルB面)
「B面っていうのが好きなんだ。シングルを買って、B面曲に新鮮な感動を覚える――そんな経験をした人は多いはずだ。ラジオではほとんど流れないからね。実際、クリフ・リチャード&ザ・シャドウズの初期のシングルやビートルズのほとんどのシングルのB面は名曲揃いだった。だから僕もB面を蔑ろにしたことはない。これも僕とゴードンの2人だけでレコーディングした曲だった。意図的に誤った表現を入れた歌詞は我ながら気に入っている。"is you implying that this time I'm…"と歌って、"I"と言うべきだったことに気付き、謝罪して"I have gone too far"と続けるくだりだ。僕の知る限り、歌詞に故意に間違いを入れてその場で謝るっていう曲を書いたソングライターはほかにはいない。」

(訳:狩野ハイディ・石山栄二 for KR Advisory Co., Ltd.)

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レーベルを超えたベスト・アルバム『アルティメイト・コレクション』

ギルバート・オサリヴァン『アルティメイト・コレクション』

『アルティメイト・コレクション』

ギルバート・オサリヴァン
¥3,500(税込)
VICP-75084/5
CD2枚組/全36曲/高音質K2HD+HQCD盤/
ライナーノーツ/全曲歌詞・対訳付
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 40年に渡るキャリアの中で残してきた膨大な作品の中から選りすぐりの36曲を2枚のディスクにほぼ年代順に収めた、レーベルを超えたベスト・アルバム。国内初音源化となる楽曲やデモ・ヴァージョン、リミックス、1991年にリリースされた来生たかおとのデュエット「キャント・シンク・ストレート」などを収録。彼のシンガーソングライターとしての揺るぎない姿勢と個性が堪能できるファン必聴の1枚となっている。

トラックリスト

CD1
01. ディサピア〔オリジナル・デモ〕
02. ホワット・キャン・アイ・ドゥ
03. ナッシング・ライムド
04. ウィ・ウィル〔ガス・ダッジョン・リミックス〕
05. さよならが言えない
06. アローン・アゲイン
07. ウー・ワッカ・ドゥー・ワッカ・デイ
08. クレア
09. アウト・オブ・ザ・クエスチョン
10. ゲット・ダウン
11. ウー・ベイビー
12. ホワイ・オー・ホワイ・オー・ホワイ
13. ハピネス
14. クリスマス・ソング
15. マリッジ・マシーン〔リミックス・ヴァージョン〕
16. ユー・アー・ユー
17. アイ・ドント・ラヴ・ユー・バット・アイ・シンク・アイ・ライク・ユー
18. アイル・ビリーヴ・イット・ホエン・アイ・シー・イット

CD2
01. ドゥーイング・ホワット・アイ・ノウ
02. ミス・マイ・ラヴ・トゥデイ
03. そよ風にキッス〔オルタネイト・ヴァージョン〕
04. アイ・ラヴ・イット・バット
05. ミニット・オブ・ユア・タイム
06. ソー・ホワット
07. 君との想い出
08. ぼくときみのラヴ・ソング(デュエット with 来生たかお)
09. イット・エイント・フォー・ミー
10. エニタイム
11. ディア・ドリーム
12. キャント・ファインド・マイ・ウェイ・ホーム
13. メイク・ユー・シック
14. アイ・ウィッシュ・アイ・クッド・クライ〔シングル・ヴァージョン〕
15. セイ・グッバイ
16. メイク・マイ・デイ
17. ユー・キャント・コンクリート
18. オール・ゼイ・ウォンテッド・トゥ・セイ

ギルバート・オサリヴァン:プロフィール

 1946年、アイルランドのウォーターフォード生まれ。大学在学中にバンド活動をはじめ、自ら作詞作曲したデモ・テープをレコード会社などに売り込む。67年、シングル 「DISAPPEAR/YOU」 を発表し、71年『HIMSELF』 でアルバム・デビュー。72年に発表したシングル 「ALONE AGAIN」 が全英3位、全米では6週連続1位(この年の米年間チャートでも2位)というスーパー・ヒットを記録する。続いて発表した2ndアルバム 『BACK TO FRONT』 も全英1位、全米2位を獲得、一躍トップ・アーティストの仲間入りを果たす。初のセルフ・プロデュース・アルバム『SOUTHPAW』(5作目)を77 年にリリース。91年には、プロモーションのため初来日し、来生たかおとのコラボレーション・シングル 「WHAT A WAY/出会えてよかった」 をリリース。95年、本人も出演した自伝的要素の強いミュージカルのオリジナル・サウンドト ラック「EVERY SONG HAS ITS PLAY/ギルバート・オサリバン物語」発表。念願だったプライベート・スタジオがイギリスの小島、ジャージー島の自宅敷地内に96年に完成。その後も精力的に作品作りを行い、最新作『GIBERTVILLE』を昨年2月に約4年ぶりにリリースした。

ギルバート・オサリバン「アルティメイト・コレクション」

アルティメイト・コレクション

2012/10/24 RELEASE
VICP-75084/5 ¥ 3,666(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.ディサピア 〔オリジナル・デモ〕
  2. 02.ホワット・キャン・アイ・ドゥ
  3. 03.ナッシング・ライムド
  4. 04.ウィ・ウィル 〔ガス・ダッジョン・リミックス〕
  5. 05.さよならが言えない
  6. 06.アローン・アゲイン
  7. 07.ウー・ワッカ・ドゥー・ワッカ・デイ
  8. 08.クレア
  9. 09.アウト・オブ・ザ・クエスチョン
  10. 10.ゲット・ダウン
  11. 11.ウー・ベイビー
  12. 12.ホワイ・オー・ホワイ・オー・ホワイ
  13. 13.ハピネス
  14. 14.クリスマス・ソング
  15. 15.マリッジ・マシーン 〔リミックス・ヴァージョン〕
  16. 16.ユー・アー・ユー
  17. 17.アイ・ドント・ラヴ・ユー・バット・アイ・シンク・アイ・ライク・ユー
  18. 18.アイル・ビリーヴ・イット・ホエン・アイ・シー・イット

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