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<Billboard JAPAN×NTTデータ>活況のボーイズ・グループ新時代を脳科学する



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ボーイズ・グループ新時代

 Billboard JAPANの2022年の年間チャートが発表された。TVアニメ『鬼滅の刃』遊郭編オープニング・テーマのAimer「残響散歌」が首位を獲得した総合ソング・チャート“HOT 100”を見てみると、ほかにも優里「ベテルギウス」、Official髭男dism「ミックスナッツ」、Ado「新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)」など、ドラマやアニメ作品とのタイアップによる強力な露出効果が後押ししたヒット・ソングは依然として多い。

 一方で、今年大きな存在感を放ったのは、オーディション番組出身のボーイズ・グループたち。年間総合29位に「Bye-Good-Bye」を送り込んだBE:FIRSTは、SKY-HIによる株式会社BMSGが主催したオーディション『THE FIRST』から2021年8月に始動した7人組で、このボーイズ・グループ新時代を牽引する存在の一角。そのBE:FIRSTと並び、年末の『第73回NHK紅白歌合戦』出場を決めたJO1や、彼らの弟分的グループでもあるINIらの躍進も無視できない。

 当然、降って湧いたムーブメントというわけではない。サバイバル形式のオーディション番組は近年、韓国で大きな人気を博しており、その潮流が日本にも流れてきたかたちだ。ご存じの通り、日本でもBTSを筆頭にK-POPグループは絶大な支持を得ている。また、日本ではさらに、EXILEや三代目J SOUL BROTHERSらを擁するLDH JAPANからも、次世代のグループが続々とデビューしている。

 そこで今回は、Billboard JAPANとNTTデータおよびNTTデータ経営研究所の共同企画として、オーディション系、K-POP系、LDH系の計9グループを対象とし、それぞれのファンに向けたアンケート調査を実施。その結果をもとにしたファンダム分析と、脳科学を活用した分析技術『NeuroAI』(※1)を用い、各グループの楽曲特徴とファンダム特徴の相関性を調べてみた。

<調査対象グループ(※アルファベット順)>
BE:FIRST
BTS
FANTASTICS from EXILE TRIBE
GENERATIONS from EXILE TRIBE
INI
JO1
NCT 127
THE RAMPAGE from EXILE TRIBE
TOMORROW X TOGETHER

※1 「NeuroAI」は株式会社NTTデータの登録商標です。その他の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。


各グループのファンダム分析

 以下に、各グループのファンの特徴を分析した結果を記す。様々な項目の中で、そのグループのファンの得点が高かった上位5項目を抽出している。



各グループ×各質問項目のトップ5



 BE:FIRST、JO1、INIらオーディション系は、言わずもがな「オーディション番組がきっかけ」でファンになったというユーザーが多い。同時にJO1、INIのファンは、推している理由に「売れてほしい・人気になってほしい」と答えている。サバイバル形式のオーディション番組は、なんといってもメンバーの成長過程が見られるのが楽しく、魅力的だ。視聴者は感情移入し、応援したい気持ちになる。そういったエンゲージメントの高さが熱狂的なファン心理に結びつくのだろう。

 LDH系だとGENERATIONS、THE RAMPAGEは、ファンになったきっかけが「ドラマ」や「映画」だと答えるユーザーが多かった。また、FANTASTICSのファンは「推しの映画を重視」している。俳優として活躍するメンバーが多いこともLDH系の特徴だが、そうした多面的な活動がしっかりとグループへ還元されている。同時に、いずれも「LDHの楽曲をよく聞く」という回答が多い。特定のグループだけに留まらず、LDH全体を推しているファンが多数を占めていることが分かる。

 少し似た動向として、TOMORROW X TOGETHERとNCT 127のファンの多くは、推しのきっかけに「他アイドルとの関わり」を挙げており、こちらも同事務所の先輩後輩をはじめ、同じK-POP系グループを複数応援しているユーザーが多いようだ。BTSとTOMORROW X TOGETHERのファンは、さらに「ヒット曲がきっかけ」「音楽番組を見たのがきっかけ」「アニメを見たのがきっかけ」と複数挙げている。BTSは「Butter」が“HOT 100”の年間総合12位に堂々チャートイン。TOMORROW X TOGETHERは過去に『ブラッククローバー』と『ワールドトリガー』の二作品でアニメ主題歌を担当している。3系統の中で最も幅広いファン層を獲得しているのがK-POP系だろう。


ファンダム特徴と楽曲特徴の相関

 次に、音楽や映像を知覚した際に起こる脳活動を予測するAI技術『NeuroAI』を用い、9グループの主要楽曲(※2)を分析、それぞれの楽曲特徴をアーティスト単位で算出してマッピングした図が以下だ。比較しやすいように、前段で紹介したファンダム特徴のマップ図も置いておく。



各アーティストの楽曲特徴マップ



各アーティストのファンダム特徴マップ



 K-POP系はファンダム特徴が似ていた一方、楽曲特徴ではBTSとTOMORROW X TOGETHERの2グループと比べ、NCT 127が非常にユニークなポジションに位置している。また、オーディション系もファンダム特徴は類似していたが、楽曲特徴は3グループそれぞれ独立している。LDH系はファンダム特徴がそれぞれ個性的だったが、楽曲特徴ではTHE RAMPAGEがユニークで、残り2グループは類似している。

 円の大きさは2022年の楽曲のチャート・ポイントを示すもの。つまり、BTSとBE:FIRSTは近い楽曲特徴を備えたグループでありながら、なおかつ高いチャート・ポイントを獲得していることから、この2グループ近辺がある意味でのトレンド楽曲特徴エリアだといえる。

 これらの結果から、各グループがファンを増やすために、ほかのボーイズ・グループのファンにどうアプローチするべきかが見えてくる。LDH系のファンダム特徴はそれぞれ個性的で、「LDHの楽曲をよく聞く」傾向も強いわけだが、GENERATIONSとFANTASTICSの楽曲特徴はBTSらと近い。つまり、トレンド楽曲特徴を有するグループのファンにアプローチすることで、LDH系グループはリスナー層をさらに広げることができるかもしれない。逆に「男性J-POPをよく聞く」というファンの回答が強く出たBE:FIRSTも、近い楽曲特徴を持つGENERATIONSやFANTASTICSのリスナー層と親和性が高いのではないだろうか。

 興味深いのはJO1とINIだ。冒頭にも記した通り、K-POP発祥の潮流を汲んでおり、楽曲やパフォーマンスもK-POPのトレンドを踏まえたものが多いような印象もある。しかし、楽曲を聴いたときの脳活動という観点では、K-POP系やLDH系とは似ておらず、トレンド楽曲特徴エリアからも離れている。楽曲戦略において狙うべきターゲット層は、必ずしもほかのボーイズ・グループのファンであるとは限らないかもしれない。

 日本でボーイズ・グループと言えば、いわゆるジャニーズ系の人気も強い。デジタル・メディアを介して気軽に楽曲に触れることができる、という前提条件から今回は分析対象外としたが、今後彼らの楽曲がダウンロードやストリーミングでも配信されたら、活況を見せるボーイズ・グループ・シーンの盛り上がりは一層加熱するだろう。そんなとき、今回用いたチャート・データやAI技術が音楽マーケティングの一助となるよう、Billboard JAPANとNTTデータは引き続き研究を続けていく。

※2 各グループ、2022年の獲得チャート・ポイントが高い楽曲から5曲以上を分析。

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