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<コラム>共感の嵐が止まらない、ヤングスキニー「本当はね、」



コラム

Text:森朋之

 2020年初春からはじまったコロナ禍により、音楽業界は大きな影響を受けた。特にライブを中心に活動している若いバンドへのダメージは大きく、 “配信ライブや楽曲制作以外にできることがない”という時期があったことは周知の通りだ。

 しかし、この2年間で頭角を現したバンドも多い。その代表はマカロニえんぴつとSaucy Dog。この2バンドはいずれも2021年~2022年に初の日本武道館公演を成功させている。その他にも、Kroi、ハンブレッダーズ、マルシィ、Ochunismといったバンドがメジャーシーンに進出。今年に入ってから本格的に再開した全国各地のフェス、サーキットイベントでも存在感を発揮している。

 これらのバンドに共通しているのは、“歌”の強さだ。

 コロナ前は、フェスでオーディエンスを盛り上げられるバンドに注目が集まる傾向があった。わかりやすく言うと“初めてライブを見たお客さんを踊らせられるかどうか”がポイントだったのだが、ライブやイベントができない時期が続いたことで潮流が変わり、SNSやTikTokなどの媒体を通し、“いかに歌の魅力で惹きつけられるか”が重要になってきたのだ。ここで紹介するヤングスキニーも、この“歌のパワー”で急速に知名度を高めているバンドだ。


 シンガーソングライターとして活動していた“かやゆー。”(Vo./Gt.)がSNSでメンバーを集め、2020年夏に活動をスタートさせた4ピースバンド、ヤングスキニーは、音楽配信サイトEggsで発表した「世界が僕を嫌いになっても」が早耳のバンドキッズを中心に話題を集め、翌年5月にミニアルバム『嘘だらけの日常の中で』をリリース。同年7月に現在のラインナップ(かやゆー。/ゴンザレス(G.)/りょうと(Ba.)/しおん(Dr.))が揃い、12月に初の全国流通盤『演じるくらいなら、ありのままでいいけどね』を発表し、さらに注目度を高めた。


 ヤングスキニーの楽曲の軸を担っているのは、かやゆー。の歌詞だ。学校にもろくに行かず、バンドも上手くいかず、バイトに明け暮れる日々を描いた「憂鬱とバイト」、都会のなかで自分を見失いそうになりながらも、目標や夢を掴み取ろうとする姿を映し出した「東京」、夏の夜のコインランドリーをモチーフに、揺らぎ続ける恋人との関係を歌った「コインランドリー」。そう、まるで短編映画のようなリアルな物語性、繊細にして濃密な感情を反映した歌こそがこのバンドの武器であり、幅広いリスナーの共感を得ている理由なのだと思う。

 10月5日にリリースされた新曲「本当はね、」は、“ヤンスキ”の魅力がさらに増幅された楽曲だ。

 エッジーかつメロディアスなギターフレーズ、軽やかなバンドグルーヴ、そして、<本当はね、あなたが好き/最低なことを言っちゃってごめんね>という歌詞。冒頭の数秒でグッと引き込まれるこの曲の主人公は、好きな人に対して素直になれない女の子だ。<メイクもヘアセットも全部あなたのため>なのに、本人を目の前にするとどうしても意地を張ってしまい、甘えられない。恋心はどんどんこんがらがるが、その根底にあるのは<本当はね、/私気づいてほしかったの>という切実な願いだ。

 歌詞に反映された感情の変化とリンクしたバンドサウンドも「本当はね、」の聴きどころ。ピアノ、オルガンを取り入れた色彩豊かな音像、テンポチェンジや転調によって“私”の気持ちの移り変わりを表現するアレンジからは、このバンドの音楽的な成長が感じられる。また、原因は自分にある。の小泉光咲が出演したミュージック・ビデオも話題を集めている(ラストの驚きの展開にもぜひ注目してほしい)。


 TwitterやYouTubeに「私の心情を死ぬほど表していて聞くたびに泣ける」「共感の嵐すぎる」「絶妙なツンデレがたまらなく好き」といったコメントが殺到している「本当はね、」は、チャートアクションも好調。10月19日公開のBillboard JAPANストリーミング・ソング・チャートで66位に初登場し、総合ソングチャート“HOT 100”で91位にチャートイン(10月26日公開チャートで総合67位にアップ)、配信直後の10月8日付からLINE MUSIC「邦楽Rock Top 100」で10日連続1位を獲得するなど、キャリアハイを更新している。TikTokでも、おおしま兄妹、ローカルカンピオーネなどがダンス動画を公開。弾き語り動画も右肩上がりで増えていて、SNSでも大きな反響を集めている。

@oshima_siblings #ヤングスキニー (@ヤングスキニー ) さんの『 #本当はね 、 』の振付をつくってみました!📖✨| #オリジナル振付 #踊ってみた ♬ Hontowane, - yangskinny


@localcampione メイクもヘアセットも全部あなたのためよ💄💇‍♀️あなた好みのかわいい女になりたいわぁ🥰って思ってくれてる全世界の女子が僕たちは大好きです。はい、心の底から。@ヤングスキニー #ヤングスキニー #本当はね #ローカルカンピオーネ ♬ オリジナル楽曲 - ローカルカンピオーネ🗾👑

 10月から行われている初の東名阪ツアー【保証はないけどあなたを幸せにできる気がするワンマンツアー】(10月8日 愛知・名古屋CLUB UPSET、10月14日 東京・SHIBUYA CLUB QUATTRO、10月30日 大阪・umeda TRAD)をはじめ、これまでに行った自主企画ライブはすべてソールドアウト。サーキットイベントなどでも入場規制を連発するなど、ヤングスキニーはライブバンドとしても評価され始めている。SNS、ライブシーンの両方で支持されている4人は、「本当はね、」のヒットをきっかけに、さらに大きなフィールドに突き進むことになるはず。ネクストブレイク・バンドの最右翼であることは間違いないだろう。

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