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<インタビュー>大黒摩季がデビュー30周年に挑戦する指揮者・栁澤寿男とのシンフォニックツアー

インタビューバナー

 「ら・ら・ら」「夏が来る」「あなただけ見つめてる」など、そのパワフルな歌声で90年代から数多くのミリオンセラーを放ち、活躍を続ける大黒摩季が、デビュー30周年スペシャルとして、初のシンフォニックツアーを敢行する。満を持して全国4都市で開催される【Symphonic Tour 2022 ~SPARKLE~】は、彼女にとっては初のオーケストラとの単独ツアーとなる。

 指揮を務めるのは世界的指揮者・栁澤寿男。2019年の【billboard classics festival】での共演以来、互いにリスペクトしあっている二人がオーケストラと共にどんな新しい扉を開けてくれるのか? また、「MAKI's Formal」に込めた大黒からのメッセージとは? 30周年の節目に実現する本ツアーにかける大黒摩季の熱い想いを、全幅の信頼を寄せる栁澤寿男さんとともに語っていただいた。(Interview & Text: 佐野響子 / Photo: Junichi Itabashi)

(※2021年Billboard Live News 11月号「Style」初出)

クラシックとの出会い

――お二人が初めて共演されたのは2019年の【billboard classics festival】でしたが、そのときの印象は?

栁澤寿男【billboard classics festival】は複数のシンガーの方々がステージに立つので摩季さんは2、3曲歌われたんですが、そのパワフルな歌声を聴いて、いつか単独公演でご一緒してみたいと思っていました。

大黒摩季:栁澤さんにそう言っていただけて光栄です。フェスは個性の異なるシンガーの皆さんがそれぞれの代表曲やヒット曲をオーケストラで歌う構成で、それはそれでとても楽しい体験でした。


――大黒さんはオーケストラで歌ってみていかがでしたか?

大黒:私は3歳からピアノを習っていて、ロックに出会わなければ違う道もあったんじゃないかと思うほどクラシックに親しんできた方なので、<ビルボードクラシックス>にお誘いいただいた時はとても嬉しかったし、マエストロが栁澤さんと聞いたときは、心の中でダンスしたくらいです。オーケストラで歌うのは本当に気持ちがよかった。


――オーケストラとの共演であらためて気がついたことはありましたか?

大黒:やはり、オーケストラは演奏の迫力が圧倒的なので、シンガーは往々にしてオーケストラに「ついて行きます」という風になりがちなんですが、栁澤さんは私が気持ち良く歌えるようにちゃんと歌に寄り添ってくれたので、私も安心して歌うことができました。


オーケストラでの“大黒摩季大全集”

――今回のデビュー30周年スペシャルとして開催される【Symphonic Tour 2022 ~SPARKLE~】は、大黒さんにとって初のオーケストラでのツアーになりますね。

大黒:30周年にようやく実現することになりました。栁澤さんの存在はTV番組などを通して知り、音楽は人種や言葉の壁を乗り越えてひとつになれる力があることを活動を通して体現されていて、以前からリスペクトしていたんです。

栁澤:僕は摩季さんのコンサートを拝見して、最後の最後までハイトーンで歌い続け、お客さんの心を掴んで鼓舞するステージングに鳥肌が立ちました。このエネルギーは一体どこから湧き出てくるんだろうと。

大黒:ありがとうございます。

栁澤:単独のコンサートには起承転結があって、そこにはストーリーがありますよね。僕は音楽は人生だと思っているので、喜怒哀楽があって、盛り上げるところと泣けるところをコンサートでつくれる摩季さんなら、クライマックスまで一緒にたどり着ける気がしたんです。そこで今回のツアーに向けて、摩季さんのこれまでの曲を聴き直しているんです。

大黒:有り難いことに、私ですら忘れているような曲を栁澤さんは引っ張り出してくるんですよ。もうコアなファン顔負けです。

栁澤:いつもなら小編成のロックバンドで演っているバラードなどもオーケストラで想像を超える世界になるし、それを摩季さんがどう表現するのかを楽しみにしているんです。



大黒摩季

――オーケストラならではのセットリストも期待できそうですね。

大黒:期待してください! 私も栁澤さんのムチャブリを引き受ける覚悟はできていますから(笑)。私が生演奏で歌うのが何よりも好きなのは、ミュージシャンがごきげんな音で私を盛り上げてくれるからなんですね。そこに乗っかって歌っていると、自分でも知らない不思議な力、フォースが出てくる。それが栁澤さんの指揮とオーケストラでさらにパワーアップするような気がしているんです。

栁澤:僕らも、30周年にふさわしい“大黒摩季大全集”をつくるつもりでいますから、今まで聴いたことがない、観たことがない摩季さんを期待してほしいですね。


――今回のツアーは30年に及ぶキャリアの中でも新たなトライアルになりそうですね。

大黒:そうですね。私がいろんなことに挑戦し続けるのは、まだ知らない自分に私自身が会いたいし、せっかくの一度きりの人生で自分の力をとことん使い果たしたいからなんです。歌い手としては、実は51歳の今がいちばん成長期だと感じているので、栁澤さんと一緒に新しい世界をつくることにワクワクしています。

栁澤:僕も51歳になって、少し体力の衰えを感じて落ち込むこともあるんですが、同世代の摩季さんの前向きなパワーには驚くばかりです。


――大黒さんは1992年のデビュー以来、沢山のヒットソングを生み、精力的に活動されていましたが、2010年には活動を一時休止されたこともありました。

大黒:2010年から6年間、病気の治療のために活動を休止したときは、自分は終わったと思ったこともあるほど苦しい時期がありました。だから、再始動してからは「歌えるだけで儲けもん」という意識があるんです。それからは、今を生きたい、今を歌いたいと素直に思えるようになったんです。

栁澤:そういう摩季さんの強さと明るさ、柔軟性は音楽にも反映されていますね。クラシック、ポップスに限らず、誰でも知っているメロディーって、つまり誰の心にも入っていくんです。それが摩季さんには何曲もあるんですから、これは強力ですよ。

大黒:自分の曲はリスナーに届いた時点で、彼ら、彼女たちのハートの中に棲んでいるものだと思っているんです。そんな歌を今回はいつものロックバンド編成とは違うオーケストラアレンジでどうなるのかを一緒になって楽しんでほしいですね。


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