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<インタビュー>キム・ヒョンジュンが主人公を思って書いた最新曲「Song for a dreamer」/今後の活動について語る



キム・ヒョンジュンインタビュー

 ワールドツアーの一環で久々の来日を果たしたキム・ヒョンジュン。9月3日・4日に神奈川・パシフィコ横浜で行われたライブには、彼の再来を首を長くして待っていた多くのファンが足を運び、コロナ禍も変わらぬ愛を届けてくれるファンたちの姿に彼も心を揺さぶられたようだ。

 大盛況に終わったライブ翌日に、そのライブの感想と最新シングル『Song for a dreamer』、水際対策の緩和により、以前より日本での活動がしやすくなった現在に彼が考えている今後について、話を聞いた。取材待機中にメイク室から聞こえるハミング、そしてじっくり丁寧に答える姿など、なんとも落ち着いた雰囲気のなかで、インタビューは進んだ。(Interview:坂本ゆかり / Photo:Yuma Totsuka)

――2年半ぶりの来日となった【22/23 KIM HYUN JOONG WORLD TOUR<The end of a dream>in Japan】の初日では、ヒョンジュンさんの涙が見られましたが、どのような思いがあったのでしょう。

キム・ヒョンジュン:ファンの皆さんを恋しく思っていた気持ちが、表に溢れ出てしまって……。会場に来てくださった皆さんも同じ思いだったんじゃないでしょうか? でも初日がお互いの恋しかった気持ちを確かめ合う時間だったとすれば、2日目は、一緒に前へ進んでいこうという希望的な雰囲気に変わった気がします。

――ツアーの【The end of a dream】というタイトルの意味は?

キム・ヒョンジュン:コロナが始まってから2年半、「自分の夢は何か」をずっと考えていたんです。子どものころから歌手になりたかったので、今は夢を叶えたと言えますけど、叶えたからといって夢の終わりではありません。次の夢のスタートラインでもあるな……と感じています。

――子どものころの夢を叶えられるって素敵ですよね。大人になった今の夢って何でしょう。

キム・ヒョンジュン:プロの歌手になると、音楽とビジネスが切り離せなくなります。子どものころのようなピュアな気持ちのまま音楽を作って届けていくのが難しくなるんですよ。でも、それを認めた上で、音楽を心から愛し、人々に届けるにはどうしたらいいのか悩んでいるところです。それで8月にリリースした韓国のアルバム『MY SUN』に収録した「Childlike(담벼락)」で、子どものころの気持ちに戻りたいという思いを曲にしました。

――解決策は見えてきましたか?

キム・ヒョンジュン:自分の中で導き出した結論は、僕の心からの音楽をきちんと伝えられる場を設けていくこと、そして、そういう場ができた時に、皆さんと一緒に楽しむことですね。

――久々にライブを拝見しましたが、入隊前(2015年)とは表現される音楽がだいぶ変わりましたよね。昔はスター キム・ヒョンジュンのライブという感じでしたが、今はバンドのボーカル キム・ヒョンジュンという感じでした。

キム・ヒョンジュン:あのころ(入隊前)はまだ、自分がやりたい音楽を模索していましたが、コロナ禍を経て、僕がやりたい音楽はバンドだと気づきました。そのために自粛期間はギターの練習に励んで、今、ようやく自分の進むべき道、やりたかった方向にたどり着けたような気がしています。

――一緒にやっているジェミニ・バンドは、どのような経緯で結成されたのでしょう。

キム・ヒョンジュン:きっかけは、今、バンドマスターをしてくれている、ベースのソヒョンさんです。

――日本でソロ活動を始めたときは、ソヒョンさんが在籍するバンドとツアーを回っていましたよね。

キム・ヒョンジュン:そうなんです。その縁もあって、僕が同世代の人たちとバンドをやりたいと言ったときに、メンバーたちを集めてくれたんです。僕が本当に辛い時期に、彼女のおかげでこんなに素晴らしい仲間たちに巡り合えました。これは、天が作ってくれたご縁なんじゃないかと思っています。バンドのメンバーはチームなので、長い時間をかけて心の通い合うコミュニケーションを作り上げてきました。もちろん僕はこれからも演技をしますが、音楽をやるときは、キム・ヒョンジュン=バンドだと認識していただけたら嬉しいです。

――ヒョンジュンさんは現在、公式YouTubeチャンネルで「MUSIC IN KOREA」という韓国の美しい自然の前で、バンドと共に自曲をアンプラグド・バージョンで歌うシリーズ企画を行っていますが、この企画を重ねることでバンドとしてのチームワークが固まっていたのではないでしょうか。

キム・ヒョンジュン:そうですね、「MUSIC IN KOREA」をやることでバンドとしての鍛錬ができましたし、音楽的な方向性も固まったと思います。【The end of a dream】というライブタイトルのように、夢を現実にすることが、音楽をやる上での醍醐味ではないかと思います。

――日本での新曲「Song for a dreamer」のお話もうかがいたいと思います。この曲は橋本環奈さん主演のアクション映画『バイオレンス・アクション』の挿入歌として書き下ろされたそうですが、どんな思いが込められているのでしょう。

キム・ヒョンジュン:映画サイドから「友情や青春というイメージで作ってほしい」というリクエストがありました。それで、映画の主人公と橋本環奈さんの姿を重ね合わせて、「橋本環奈さんの青春とは何だろう?」と考えたんです。子供のころにデビューして芸能活動を長くしていても、まだ23歳。スターとして生きていくのは素敵ですが、いつか傷を抱えたり、孤独や寂しさを感じたりすることもあると思うんです。僕は人生の先輩として、それらに打ち勝ってほしい、主人公と環奈さんの青春を応援したいという思いで作った曲なんです。


――10代からスターとして歩んできたヒョンジュンさんだから書ける曲ですね。

キム・ヒョンジュン:「Song for a dreamer」は、夢に向かって進んでいく船をイメージしています。グイグイ進むというより、流れに身を任せてゆっくりと進む。夢に向かってゆらりゆらりと進んでほしいという思いを込めています。

――ジェミニ・バンドのギターのパク・ジュンヒョンさん、パク・ウンチョンさんとの共作なんですね。

キム・ヒョンジュン:僕たちは同世代。同じ時代を生きて、同じ音楽を聴いて育っているので、すごく合うんですよ。もちろんヨーロッパの音楽なども聴きますが、X JAPANの再結成ライブにも行ったくらい、日本の音楽が好きという共通点もあります。最近は3人でOfficial髭男dismの話をしたり(笑)。

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――個人的に最近聴いている日本の曲は何ですか?

キム・ヒョンジュン:GReeeeNの「キセキ」がすごく好きです。本当に曲がいいですよね。年を重ねるごとに、華やかな音楽よりも、真摯なメッセージが伝わる音楽が刺さるようになりました。

――『バイオレンス・アクション』の劇中音楽は、[Alexandros]やMAN WITH A MISSIONなども参加しています。日本の音楽ファンの反応も楽しみですね。

キム・ヒョンジュン:参加されているバンドのファンの皆さんは、僕らと同じように音楽とロックを愛している方たちだと思うので、「Song for a dreamer」もロックの一つの形として聴いていただけると嬉しいです。

――9月発売の押尾コータローさんのメジャーデビュー20周年アルバム『20th Anniversary "My Guitar, My Life"』で「誰そ彼 ~黄昏~」をコラボされていますが、その経緯は?

キム・ヒョンジュン:押尾さんは、僕の憧れの人です。もしかしたら、日本以上に韓国で有名なアーティストかもしれません。彼の「黄昏」という曲は、韓国ではギターを学ぶ人が必ず練習する、ギター弾きなら誰もが知っている曲。「黄昏」で挫折すると、そのままギターも止めてしまうという関門なんです。もちろん僕も「黄昏」を練習した一人ですし、入隊中に押尾さんの「風の詩」をたくさん練習して、曲から励まされることも多かったです。押尾さんの曲が、心の拠り所になっていたんです。その後、2020年に僕が開催した音楽イベント【KIM HYUN JOONG meets...Vol.2】に出演を依頼し、初対面を果たしました。

――今回は、押尾さんの逆オファーで?

キム・ヒョンジュン:はい。押尾さんから声をかけてくださったんです! 今回20周年を迎えられたということで、レコーディングしたボーカル音源と一緒に未熟な絵ではありますが、僕が描いた絵をプレゼントしました。

――制作の過程は、どんな感じだったのですか?

キム・ヒョンジュン:コロナ禍だったので、リモートでレコーディングを行いました。押尾さんが「僕が初めて曲を作ったギブソン(のギター)で演奏したデモを送りますね」というメッセージと共に曲を送ってくださったんです。そんな思い出の詰まった大切なギターで、当時の気持ちに戻って弾いてくださったと思うと、感動しました。押尾さんも昔を恋しく思って、20周年というタイミングでこの楽曲を収録されようとしてるんだと伝わりました。だから僕も、渾身の思いでレコーディングに臨みました。

――【The end of a dream】の2日目に押尾さんが来場されて、大きな拍手を送っていらっしゃいました。

キム・ヒョンジュン:ステージの上からも見えました。終演後にお会いしたら「感動しました」とおっしゃっていて。僕がずっと尊敬してきた方が、僕のステージに拍手を送ってくださる姿を見て、「夢がまたひとつ叶ったな」という気持ちになりました。

――成功したオタクですね(笑)。

キム・ヒョンジュン:そうですね(笑)。韓国では、成功したオタクをソンドクと言うのですが、最近はその上をいく、ワンドク(完成したオタク)という言葉があるんですよ! 成功したオタクの完成系ってことで。

――それは初めて聞きました(笑)。ところで、ギターといえばヒョンジュンさんのギターに、飼われている2匹の犬のステッカーが貼ってありますよね。レコーディングにも犬を連れて行っているようですが、ヒョンジュンさんにとって犬はどんな存在なのでしょう。

キム・ヒョンジュン:韓国でリリースした『MY SUN』というアルバムは、8月、11月、来年2月の3回に分けて4曲ずつ配信されます。11月リリースの中に、「Hello, My Daddy」という曲が入るのですが、これはうちの犬たちの曲なんです。犬の時間は人間よりも早く流れるため、僕たちよりも早く天に旅立ってしまいます。それはすごく悲しいことだけれど、「天国に行ったら僕のことを待っていてね。また会うことができたら、『Hello, My Daddy(お父さん、こんにちは)』と言ってね」という内容です。

――もう、家族ですね。

キム・ヒョンジュン:はい。自分の子供みたいな、大切な存在です。なので、僕が持っているギターのすべてに彼らの写真が貼ってあります。「離れていても、いつも一緒にいるよ」という気持ちを込めてギターに貼っているんです。

――犬を飼いはじめるきっかけは何だったのですか?

キム・ヒョンジュン:言葉で伝えるよりも11月にリリースされる「Hello, My Daddy」のミュージック・ビデオを見ていただくのがいいと思いますね。彼らがどうやって僕の元へ来たのか、そしてどんなふうに一緒に過ごし、どんな人生を送っているのかがわかると思います。韓国では伴侶犬、パートナー犬と言うのですが、犬を育てている全ての方々に共感してもらえる、癒しのような作品になればという思いで作っています。

――来日できるようになり、ここから新たにまた日本での活動が始まると思います。今後は、どのような活動をしていきたいと考えていらっしゃるのでしょう。

キム・ヒョンジュン:個人的には、日本に2か月くらい滞在しながら、47都道府県すべてでサプライズライブ、フリーライブをやってみたいんですよね……。僕のファンじゃない方とも触れ合ってみたくて。そして日本全国を回った後、東京に戻って大勢のファンの皆さんとライブをするのが夢ですね。最近はチケット代が高いじゃないですか。フリーライブをすれば、皆さんの経済的負担もちょっとは減りますからね(笑)。

――今回の来日では、横浜でサプライズライブされましたが。

キム・ヒョンジュン:はい。僕にとって日本でのサプライズライブは、新しい夢の第一歩なんです。「夢ではなく、現実のものとしてできるんだな」という手応えを感じました。ドキュメンタリー映像にできればという思いもあります。歌手キム・ヒョンジュンではなく、夢を追い求めている1人の男が47都道府県を回る、旅人のドキュメンタリーとして。夢は見るものではなく、一歩一歩近づいていくものだというメッセージを伝えられたらいいですね。

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