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<インタビュー>AAAMYYYが語る、小袋成彬やanoらを招いたコラボEP『ECHO CHAMBER』の“研究結果”

インタビューバナー

 AAAMYYYがコラボレーションを中心とした新作EP『ECHO CHAMBER』を完成させた。自身のソロとTempalayでの活動を軸にしつつ、これまでも多彩なアーティストとのコラボレーションを行い、現代的なアイコン像を体現してきたAAAMYYYだが、本作ではYaffle、小袋成彬、Foux、ano、Gliiico、(sic)boyという新鮮な顔触れを迎え、音楽家としてのさらなるステップアップを目指したような、非常に意欲的な作品となっている。また、自らの内面を深く見つめながら、社会との距離を測る“研究家”としての側面もしっかり刻まれた作品だと言えよう。本作の制作について、AAAMYYYに語ってもらった。(Interview & Text:金子厚武 / Photo:Yuma Totsuka)

「自由研究の発表みたい」

――前作『Annihilation』は、制作によって本来の自分を取り戻すような、自浄作用のある作品だったとお話しされていましたが、そこからどんな心の動きを経て、今回のコラボレーションを軸としたEPへと向かっていったのでしょうか?

AAAMYYY:前作の制作は長い時間をかけてじっくり内省して、コンプレックスも受け入れてアイデンティティを確立するための期間だったと今は思っていて。それを経て、またいろんな人と会えるようになったり、ライブが再開されていったなかで、過去の自分と今の自分を比較するようになったというか。大学の研究みたいな感じで、過去の自分と今の自分の考え方を経た自らの精神的反応や他者との関わり合いを分析したりするような、そういうタームに入っていったんですよね。そんななかで、たまたま去年の夏くらいに、フジパシフィックのソング・ライティング・キャンプに参加する機会があって。

――EPでもコラボしている小袋さんとYaffleさんが設立したTOKA(元Tokyo Recordings)とフジパシフィックミュージックが共同で開催しているソング・ライティング・キャンプですね。

AAAMYYY:そうです。「生きてみるわ」と「Ignition」はそのキャンプのときにできた曲で、それもあってフィーチャリングで作るの面白いなと思って、今回のEPに向けての取り組みを始めました。

――「大学の研究みたいな感じ」という話もありましたけど、AAAMYYYさんは常に制作を通じて“自分とは何者なのか?”を考えたり、他者との関わり方を見つめている印象があります。

AAAMYYY:生きていくなかでかっこいい人になりたいっていう目標はあるんですけど、“自分らしさ”みたいなことはあくまで自分にとって満足できるものであればいいと思っていて。ただ、価値観は常に変化していくものなので、来年も変化してるだろうし、再来年はまたさらに変化してるだろうから、今は今の見方でいろいろ比較したりするのが面白いなって。





――アルバムやEPはそのタームごとの研究発表?

AAAMYYY:たしかに、夏休みの自由研究の発表みたいなものかもしれない。

――コロナ禍で内省の時期を過ごして、でも徐々に視線を外に向けて、今年コラボレーションの作品をリリースしてる人は多い印象があります。ただ、もともと近しい関係性だったり、音楽的な接点のある人とコラボする作品が多いなかで、このEPはすごく挑戦的だなと感じて。単純に外側と接続するだけではなく、音楽家としてもう一段階上に行くための、非常に意欲的な作品だと感じました。

AAAMYYY:このコラボ作を作ろうとなったとき最初はもっと近しい人とやろうかなと思ったけど、「思い切って誰とでも、大御所の人でも行っちゃっていいんじゃない?」って背中を押してくれるようなアイデアがいっぱい出たので、「いいんですか?」と思いつつ飛び込むことにしました。

――結果的にはいわゆる大御所という感じの人はいないけど、「この角度で来たか」っていう面白い人選になってますよね。

AAAMYYY:それぞれのアーティストのイメージってあると思うんですけど、今回一緒に曲を作ってみて、みんないい意味でギャップがあるなと思いました。考え方や感覚の部分で近いところを感じて、同じ人間なんだなと思って、それはすごく嬉しかったです。例えばCharaさんとかYUKIさんにお会いしたときも、すごい方たちだっていうのはもちろんわかってるんですけど、でもやっぱり同じ人間なんだと思うと、表面的なものじゃなくて内面の共通点が見えてきたりして。今回の作品はそうやって内面の部分で繋がって、セッションをしながら曲を作れて、そういうプロセスを踏めたことがすごく面白かったです。

――小袋さんとYaffleさんとは以前から繋がりがあったんですか?

AAAMYYY:Yaffleとちゃんと対話をしたのは今回が初めてなんですけど、エンジニアの小森(雅仁)さんだったり、もともと周りに共通の知り合いが多かったんです。小袋くんと知り合ったのはけっこう昔、まだTokyo Recordingsの発足前で、N.O.R.K.をやってたころ。SuchmosとかYogee New Wavesが新宿MARZでやってた頃に出会っていて。

――じゃあ、AAAMYYYさんもTempalay加入前ですよね?

AAAMYYY:そうですね。当時の自分はまだ自分のアイデンティティがよくわかってなくてすごい空回りして、小袋くんにもうざ絡みしてたので、たぶん私のこと嫌いだったと思います。

――わからないですけどね(笑)。

AAAMYYY:その頃に知り合った人はみんな私のこと怖がるんですよ(笑)。一応人見知りなんですけど、そのときはそう見えないように振る舞っていて、自分だけど自分じゃない、みたいな感じで。でも、今回は“大人になった二人で対話できた”みたいなところがあったと思います。

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Yaffle、小袋成彬との共作について

――EPの1曲目に収録されているYaffleとの「生きてみるわ」はどのように作っていったのでしょうか?

AAAMYYY:これは私がProphet-6とオムニコードを持って行って、まずコードを入れて、そこにYaffleがベースとかドラムを入れて、同時進行で進めながら構成を作りました。それからリリックと一緒にメロディーを考えて、そのまま録っちゃう、みたいな。

――1コーラスじゃなくて、その日のうちに最後まで?

AAAMYYY:そうです。Yaffleはホントにすごくて、これまでずっとコライトをやってきたからか、作業がめちゃくちゃ速くて5時間くらいでできました。ミックスまで全部やって、最初のデモの時点でかなりのハイクオリティで「すご!」って。




――しかも、決してシンプルな構成の曲ではないじゃないですか? 展開にしろビートにしろ目まぐるしく変化する。そんな曲をその短時間でっていうのはかなり驚きです。

AAAMYYY:私、変な展開にしちゃう癖があって、コードの移り変わりの合ってる合ってないとかもよくわからず、なんとなく合ってる、みたいな感じで。でも、それを持っていくとYaffleは「そんなふうに行く?」とか言いながら、楽しんで作業をしてくれて。展開にしても「ここ4つ打ちにしたい」とか言うと、そういうのも得意だからすぐやってくれるし、さらにフレーズの上にフレーズを足したり、サイドチェインをかけたり、そういうところまで詰めてくれて、それで目まぐるしい曲になりました。

――もともと相性が良かったんでしょうね。以前、Yaffleさんにインタビューをしたときに「曲に違う世界に連れていってほしい」ということを言っていて。だから、Yaffleプロデュースの曲はもともとサウンドや展開が曲中でガラッと変わる曲が多かったりする。そういう相性の良さがあったからこそ、5時間で最後まで行ったのかなって。

AAAMYYY:たしかに、サクサクと行きました。初対面の人とコライトをすると、相手がどういう感じかわからないから最初は様子見しちゃうんですけど、Yaffleは「何でもカモン!」みたいな感じで。すごく器が広くてドシンとした感じだから、安心してできました。

――「生きてみるわ」の歌詞はメロディーと一緒に考えたそうで、つまりはわりと直感的に出てきた言葉?

AAAMYYY:そうですね。歌詞を書くときはそのとき考えてることがどうしても反映されちゃうんですけど、これを書いたときは人間関係がゴタゴタしていて、けっこう絶望してた時期というか、自分の行動を反省してた時期で。その一方で、みんなが持ってる正義って難しくて、誰も間違ってはいないのに合ってる合ってないで傷つけ合うみたいなことに疲れちゃって、何も考えたくない時期でもあって。<戦場のクリスマス>っていう歌詞が出てくるのは、『戦場のメリークリスマス』の登場人物も誰が悪いとかじゃないから、今の状況とリンクするなって。そんなことを思いながら、一方で自分を癒さないとずっと重い状態でいるのは疲れちゃうから、<きれいな景色でも見に行こう>とか、そういう自分の要望も反映させました。

――内省しつつも最終的に<楽しく元気に生きてみるわ>で締め括ってるのは、『Annihilation』で一度自分のアイデンティティを確立できたからな気がします。

AAAMYYY:そうかもしれない。『Annihilation』のときは「もうこれ以上、下に行くことはない」みたいな気持ちがあって、今は誰かから見て自分が悪者になってもしょうがないというか、そうなって自分を傷つけたりしないで、「ちゃんと美味しいものを食べて、元気出していこう」みたいな、そういう気持ちになれました。





――小袋さんとFouxとの「Ignition」はどのように作っていったのでしょうか?

AAAMYYY:「最近どんな音楽聴いてる?」みたいな会話から始まって、みんなの共通してる部分を探りつつ、ビートから作っていって、交代で音を入れて展開を作って。それと同時進行で小袋くんがリリックとメロディー・ラインを考えて、私とFouxでトラックを1コーラス詰めて、最初に小袋くんに入れてもらった仮歌を私が歌い直しました。小袋くんの歌い回しとか音が切れるところとかってすごく独特で、宇多田ヒカルさんやDAOKOちゃんの曲を聴いても「これ絶対小袋くんだ」ってわかるくらい、いい意味での癖があるから歌うことが楽しかったです。

――そうやって自分になかったものを吸収できるのもコライトの醍醐味ですよね。

AAAMYYY:小袋くんは昔に出会ったころの感じからすごく変わって、リラックスしていて、よりクリエイションに貪欲というか、音楽に注力する人だなって思いました。昔からそうだったとは思うけど、より洗練されて、引き算も上手ですごいなって。

――「昔は自分のことがわかってなかった」という話がありましたけど、当時はきっと小袋さんもそうだったと思うんですよね。でも、その後にそれぞれがまったく違うルートで、でも同じような喜びや内省を経験して、音楽との距離を縮めていって。だからこそ、今回一緒にコラボレーションをすることができたんじゃないかと思います。

AAAMYYY:そうだと思います。なんか感動しちゃいました。面白い世界線にいたんだなって。

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「誰かの正義に“No”を言える自由を」

――3曲目はanoちゃんをフィーチャーした「あの笑み」。意外な組み合わせでびっくりしました。

AAAMYYY:anoちゃんはゆるめるモ!のころからずっと好きで、去年一度たまたま会う機会があったんですけど、そのときはあんまりしゃべれなくて。で、そのあとに『Annihilation』ツアーのステージの下見でリキッドルームに行ったら、ちょうどのその日、anoちゃんがTime Out Caféで写真集発売記念のミニライブをしていて、マネージャーさんに「会う?」って言ってもらえて。そしたらanoちゃんも私の曲を聴いてくれてたみたいで、そこで一緒にやりたいっていう話をしました。

――すごいタイミングですね。曲自体はどのように作っていったのでしょうか?

AAAMYYY:anoちゃんの曲は邦ロックが多い印象だったんですけど、もうちょっとグランジとか海外の感じを取り入れても面白そうだなと思って。<異常なこの世はディストピア as fuck>とか言ってますけど、そういう汚い言葉も言ってほしいなって。でも、曲を書いてるうちに、anoちゃんはスクリームもきれいなんだけど、もうちょっと淡々と歌うほうが面白いと思ったんです。anoちゃんに曲を書くとみんな叫ばせたがると思うんですけど、そうじゃなくていつものしゃべり方に近い歌い方にして、そのぶんオケを激しくしました。




――演奏はどなたが参加してるんですか?

AAAMYYY:ドラムはTempalayの(藤本)夏樹で、途中で叫んでるのも夏樹です。ギターはリードをODD Foot Worksのキイチに入れてもらって、バッキングやDメロの広がる感じのアコギはBREIMENの高木祥太に入れてもらいました。

――歌詞はクレジット上ではAAAMYYYさんとanoちゃんの共作になっていますね。

AAAMYYY:基本的には私が書いたんですけど、Aメロの<飴玉>とか<おかしくなっちゃいそう>とかは、anoちゃんがデモからインスピレーションを受けて出してくれた言葉で、そこから派生させて書いたりもしました。最初からanoちゃんと自分は共通する部分があると感じていて、案の定似てるところがあったというか、この歌詞にもすごく共感してくれて、意味を言わずとも汲んでくれて。もともと暗い歌詞だったんですけど、そこにanoちゃん救いになるような要素を入れてくれて、絶望で終わらない曲になったのもよかったなって。

――ダークでエッジーな部分と、ガーリーで甘い部分の両面が楽曲に落とし込まれていて、そこはまさにお二人の共通する部分だと思うから、バッチリな組み合わせだと思いました。「あの笑み」っていうタイトルもいいですよね。

AAAMYYY:もともとパソコンで二人の名前を打って、変換したらたまたまこうなったんですけど、意味的にも面白いなって。他人の心に土足で入ってくる人をすごく嫌だなと思いつつ、でもやっぱりいろんな正義があって、誰も悪くはなくて、その人もその人なりの正義で、私たちのためを思っていろいろ言ってるのかもしれない。「あの笑み」っていうのは、そういう人たちの“笑み”のイメージ。ただ、じゃあ何でも受け入れるのかというと、そういうことではなくて。誰かの正義に“No”を言える自由を肯定したかったんです。


AAAMYYY - あの笑み feat. ano [Official Music Video]

――4曲目は3ピースバンドGliiicoとコラボした「Come and go」。

AAAMYYY:Gliiicoは私がファンだったんです。彼らは3人兄弟のバンドで、もともとカナダに住んでいて、私もカナダに留学してたことがあったから親近感があって。実際すごく対等に、人間として接してくれる感じがありました。

――曲はどのように作っていったのでしょうか?

AAAMYYY:この曲はお兄ちゃんのNicoが全体を書いてくれました。最初から音作りにすごくこだわって、シンセの音色作りに何時間もかけたり、ミックスも同時進行で進めてかなり面白かったです。テーム・インパラやゴリラズやトロイモアをリファレンスで聴きながら作っていたので、まさにそういう人たちの音作りを垣間見てるような感じがしました。

――Nicoはエンジニアでもあるんですよね。

AAAMYYY:そうなんです。最近ヤフオクで買ったローランドの古い機材を使って、「DAWの中でプラグインかますとレトロな質感が出て、太くていいんだよ」みたいな、そういうやりとりも楽しかったですね。そうやって初日にオケを作って、2日目に兄弟全員揃ってIKEAで買ったリンゴとかバナナのシェイカーを入れたりして(笑)、一番下のKaiがボーカルだから一緒にリリックとメロディーを考えて。でも、途中でちょっと飽きちゃって、違う曲をやったりもして、そうしたらLootaが遊びに来て、「今Lootaと一緒に作ってるのはこんな感じ」って同時に3曲を並行して進めたり、そういうのも楽しかったです。

――システマチックな感じではなく、友人たちとリラックスして曲を作るような雰囲気だったと。

AAAMYYY:そのぶん時間は一番かかりました(笑)。なので、Yaffleの曲とはいろんな意味で真逆かもしれない。Yaffleの曲は短い時間でできて、すごくハイファイな感じだけど、こっちは隙間だらけで、リラックスして聴ける。この対比もすごく面白いなって。

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今回の研究結果

――最後は(sic)boyを迎えた「雨」。(sic)boyとは『vanitas』に収録されている「水風船」でもコラボレーションをしていましたね。

AAAMYYY:トレードみたいな感じもありつつ、(sic)boyのアルバムとは違う感じにしたくて、最初に浮かんだのが演歌だったんです。

――演歌!?

AAAMYYY:演歌と相性いいのって、レゲエとドラムンベースなんじゃないかと勝手に思っていて……。

――ちょっと待って、いきなり演歌が出てきたところからついていけてない。

AAAMYYY:私のルーツが演歌なんです。カーペンターズやビートルズもルーツだけど、よくよく考えたら、おじいちゃんおばあちゃんと見てた歌謡ショーがホントのルーツだなと思って、(sic)boyが演歌を歌ったら面白いんじゃないかなって。で、演歌の良さは生楽器で、ストリングスが壮大に入ってる感じだと思ったから、象民舎で一緒だった林田順平さんにチェロを入れてもらって、それがすごく感動的で。

――ビートのかっこよさも際立ちますが、ドラマーはどなたなんですか?

AAAMYYY:BREIMENの(菅野)颯ちゃんに叩いてもらいました。「ドラムンベース叩ける?」って訊いたら「やる」と言ってくれて。で、この曲にもキイチと祥太に参加してもらって、ミックスはイリシット・ツボイさん。「聴いた人全員を絶望させるミックスにしてください」って要望を出したんですけど、(sic)boyの声の処理とかさすがのかっこよさでした。

――ボーカルのミックスも全体のコーラスも印象的ですよね。

AAAMYYY:演歌はコーラスがなくて歌一本で勝負の世界ですけど、私の特徴はコーラスだったりするから盛りだくさんになっちゃいました。


AAAMYYY - 雨 feat. (sic)boy [Official Music Video]

――マイク一本で勝負する感じは演歌とラッパーって近いかも(笑)。「雨」というモチーフは「水風船」とのリンクもあると思うけど、「雨と涙と…」みたいな演歌っぽいニュアンスも感じます。

AAAMYYY:この曲の英語タイトルは「RAIN」じゃなくて「HAIL」なんです。“罵声を浴びる”みたいな意味で、このEPを通じたテーマとも関係するんですけど、「雨」を「HAIL」と解釈すると「なるほど」と思ってもらえる歌詞になってると思います。

――今の話はきっと『ECHO CHAMBER』というタイトルともかかわる話ですよね。

AAAMYYY:そうです。メロディーズ・エコー・チャンバーがめっちゃ好きっていうのもありつつ、最近はネットでのエコーチェンバー現象という言葉があるのを知って、作品のテーマとリンクすると思って。

――SNSで自分と似た興味関心を持つ人たちをフォローすることで、自分と似た意見ばかりに囲まれる現象ですね。

AAAMYYY:私がSNSをあんまりやらなくなって、仲のいい気の許せる人としかつるまなくなったから、自分自身もエコーチェンバー化してるけど、でもそれで自助できてるからいいかなと今は思っていて。その一方で、今もいろんな罵声や罵倒がソーシャルメディアの中にあって、それはその人たちが見たい世界を見てる、エコーチェンバー化してるって客観的に見える。そういう状況に対して、「come and go」では<わからないままでいたい><まだ見えないままでいたい>と歌っていて。コロナの情報もロシアとウクライナの戦争の情報も、自分から見える場所でしか知り得ないから、何を信じるかは自分次第。いろんな情報が錯綜していて真実が見えないなかで、知らないままのほうが幸せなこともけっこうあるなって今は思っていて。





――それこそ今回のコラボレーションのように、いろんな価値観に触れることがエコーチェンバー化しない一助になるとも言えますよね。

AAAMYYY:今回の作品は好きに聴いてほしいとは思うんですけど、批判とも肯定とも取れるようないろんな意見が出るとは思うんです。ただ、最近思うのは、テレビがその人自身を可視化するの色々な意味でいいなって。anoちゃんもバラエティに出ることで、イメージに捉われない“あのちゃん”っていう人がちゃんと可視化されるし、勝手にイメージを押し付けられたりもする。私も『関ジャム』に出て、やっと地元の人が私が音楽をやってることを肯定してくれたりもして。そういう現象を見ると、テレビの力はやっぱりすごいなと思って、anoちゃんと一緒に歌うのは今のテレビメディアの負のバイアスと、本来わたしたちが持っているアイデンティティの多様性を露呈するパワーがあるんだろうなって。だから、小さいエコーチェンバーへの批判っていうのもあるけど、それごと全部飲み込んで新しい状況を作っていければっていう願いもあります。

――ひと昔前はテレビは旧メディアで、ネットやSNSが称賛されたけど、今はその反作用でテレビもまた重要な役割を果たすようになり、個人のアイデンティティや価値観を巡る新たな状況が生まれつつある。それが『ECHO CHAMBER』のタームにおけるAAAMYYYさんの研究結果ですね。

AAAMYYY:選挙関連の報道やソーシャルメディアのエコーチェンバー現象も含め、社会的価値観における正義論ですべてを決めつけるのが段々と合理的じゃないという私なりの研究結果になったと思います。このEPも色んな解釈で好きに聴いてもらえたらうれしいです。

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