Billboard JAPAN


Special

<連続インタビュー:第4回>3年振りの来日、ソン・シギョンが歌う“オフコース”



 1982年6月30日、オフコースは前人未到の武道館10日間公演の最終日を迎えた。それから40年後の同じ日同じ場所で、同じ曲目がオーケストラと珠玉のシンガーたちにより甦る……

 2019年に制作されたアルバム『オフコース・クラシックス』の発売記念コンサートとしてスタートした【オフコース・クラシックス・コンサート】。2021年は東京/福岡/名古屋/大阪/横浜の5都市を巡るツアーとして開催され、各地で様々なアーティストが熱演を繰り広げた。そして2022年、伝説の地・武道館に舞台を移して集大成のコンサートとなる【オフコース・クラシックス・コンサート2022・6・30 -in Budokan-】の開催を前に、複数回にわたりオフコースにゆかりある方々に話を訊いていく。最終回は、2019年の出演から3年振りの来日となるソン・シギョンに、武道館公演に向けての想いを語ってもらった。

 
3年振りの来日

――ソンさんは今回3年振りの来日になりますが、5月27日から3日間、韓国で【2022 ソン・シギョンコンサート 祝歌】を開催し、3万人が集まったとお聞きしました。久々の大規模なコンサートはいかがでしたか?

ソン・シギョン:この「祝歌」コンサートは約3年ぶりで、お客さんの前で歌ったのは2年振りでした。このコンサートは8年間続いていて、いつもは8千人規模の会場だったのですが、今回はその会場が使えなかったので、1万人動員できるソウル蚕室(チャムシル)総合運動場で行ないました。ちょっと大きすぎるので、お客さんが集まってくれなかったらどうしようって不安だったし、チャレンジでした。幸いなことに3日間で3万人ものお客さんが集まってくださって、無事に終えることができました。

――コロナ前とコロナ後では、歌う伝えるということに何か心境の変化はありましたか?

ソン:アーティストによってそれぞれだと思いますが、僕は歌う時の心構えは変わりませんでした。歌手はステージの上で歌っていなければいけないのに、コロナによってそんな当たり前のことを奪われて、久しぶりにステージに立った時の瞬間の感動、感謝の気持ちは大きかったです。この舞台に立てること、ここまで観に来てくれたことで十分で、みんなで泣きそうになりました。それは長く付き合ってる恋人と久々に会えた時のような感覚と同じだと思います。しばらく会えなかったからこそ、思いが熱くなるのと同じです。

――2022年で4回目になる【オフコース・クラシックス・コンサート】への出演が発表されて、ファンの方の喜びの声がSNSで飛び交っています。

ソン:とても嬉しいです。今回は僕のコンサートではなく、ゲストで出させていただくので、一生懸命歌わせていただきます。3年振りに日本に行くので、待っていてくださる方も多いと思うので、僕のソロコンサートだとよかったのですが(笑)。まずこのコンサートを観ていただきたいですが、僕のファンの方が全員来てくれないでしょ?(笑) また改めて僕のコンサートで“ちゃんと”お会いしましょう。

オフコースとの出会い

――ソンさんとオフコースとの出会いはいつだったのでしょうか?

ソン:J-POPは元々安全地帯が好きでよく聴いていました。オフコースを聴き始めたのは、日本で活動を始めて、友達に勧められて聴いたのが最初です。韓国の歌手は歌が上手い人が多いですが、小田さんと玉置浩二さんの歌を聴いて、別格だと思いました。オフコースの曲は全部聴きました。もちろん「さよなら」や「YES-NO」などの名曲もいいのですが、日本語の先生に勧められて、小田さんの「さよならは言わない」を聴いた時に、感動して泣いてしまいました。この曲を歌いたいと思いました。小田さんのコンサートにもお邪魔したことがありますが、キーもオフコース時代と変わらないし、もうあり得ないくらいすごかったです。小田さんのヒストリーも全部調べて、本も読んで、勉強しました。

――ソンさんはアルバム『オフコース・クラシックス』(2019年)で「君住む街へ」をカバーして、同年開催された【オフコース・クラシックス・コンサート】でも披露しました。この曲を歌った時、どんな感じでしたか?

ソン:僕はインタビューで、歌手として一番大事なことはなんですかという質問をよくされるのですが、「それはメッセージです」と答えます。その人がどんな人物になって何を演じ切るかその感情を、どう伝えようとしているのかということが大切だと思う。小田さんの曲は、小田さんの歌を聴いているという感じではなく、小田さんが僕に何かを語りかけてくれている、という感じが強いんです。だから慰められる。そういう歌詞が多いじゃないですか。「君住む街へ」も、あなたなら大丈夫、一人じゃないから、もし本当に大変だったら、僕が君住む街まで飛んでいくからって言ってくれて、もう泣きそうになって元気もらいました。でも小田さん、韓国に飛んできてくれないでしょ?(笑)。絶対に来ないでしょ、だって飛行機大嫌いなんですから(笑)。君の住む街へ飛んでいくって飛んでこないじゃん(笑)。でも歌を聴いていると、僕にはこの人がいる、大変な時、失敗した時、隣で手を繋いでくれる、話を聞いてくれるこの人がいるって思えるんです。小田さんが作る曲も、もちろんコード進行とかアレンジ、演奏の素晴らしさ、歌のうまさはいわずもがなですが、それよりに先にくるのが、メッセージをきちんと届けることができる凄さなんです。<あなたに会えて本当によかった 嬉しくて嬉しくて言葉にできない>って言われると、こんなに自分のことを考えてくれる人がいたら、どんなに幸せだろうって思えるじゃないですか。

――小田さんが作る曲についてはどう感じていますか?

ソン:確かなことは、小田さんは和音好きだと思います。オフコースはロックバンドなのにパワーだけではなく繊細さを持ち合わせていて、そういう楽しみを曲に入れています。小田さんのソロになってからの曲もそう。パワーと柔軟性両方持っている音楽だと思います。バンド出身だから、ダイナミックなところはよりダイナミックに、優しい表現の時はすごく繊細に作られています。それもあの声があるから表現できると思います。

オフコース・クラシックス・コンサート

――第1回目の【オフコース・クラシックス・コンサート】に出演した時のことは覚えていますか?

ソン:覚えています。僕ひとりだけ外国人で、大丈夫かなと不安な気持ちもありましたが、出演者のみなさんが優しくて救われました。あの時「君住む街」と「YES-NO」を歌ったのですが、小田さんはいつも<君を抱いていいの>って歌って、客席にマイクを向けるので僕もやってみたくて、でも自信がないというか、いいのかなって悩みました。服部隆之さんに相談したら「自由にやって大丈夫」って言っていただけました。

――服部隆之さんのアレンジはどう感じましたか?

ソン:やっぱりクラシック音楽は繊細なタッチを感じることができます。オーケストラをバックに歌うのと、バンド、カラオケで歌うのとは全く違います。オーケストラはバンドと違ってリズムを取るのが難しいので別物です。だからまるでデュエットしているような感覚です。プレイヤーの繊細な感情の動きをきちんと感じて、合わせないとバラバラになって綺麗に聴こえないと思います。そのオーケストラの音がどんな性格なのかとか、特徴をちゃんと理解しないと、歌う時に合いません。でもオーケストラをバックに歌うことは、本当に贅沢なことです。60人を超える演奏家が作った音をバックに、一人で歌うことは、音楽をやっている人間として、これ以上の贅沢はないと思っています。こんな機会を作ってくださって。本当に感謝しています。

――ちなみにソンさんは、オフコースの曲でご自身が歌った「君住む街へ」の他に、好きな曲はなんですか?

ソン:選ぶのは難しいです。さっき出てきた小田さんの「さよならは言わない」は大好きですし、「ラブ・ストーリーは突然に」や「YES-YES-YES」は酔っぱらってカラオケで歌うと気持ちいいですが(笑)、オフコースの作品だと、僕はバラード歌手なので「心はなれて」をいつか歌ってみたいです。

――2022年の【オフコース・クラシックス・コンサート】はついに武道館です。ちょうど40年前の6月30日、ここで5人のオフコースとしてのラストライブが行われました。それだけにファンも特別な思いで足を運ぶと思います。

ソン:プレッシャーですね(笑)。でもそういう特別な日の特別なステージで歌えるのはとても光栄だし、精一杯歌わせていただきます。3年振りの日本なので、皆さんの顔をみたら胸がいっぱいになりそうです。

関連キーワード

TAG

関連商品

こんなに君を
ソン・シギョン「こんなに君を」

2023/11/22

[CD]

¥8,800(税込)

こんなに君を
ソン・シギョン「こんなに君を」

2023/11/22

[CD]

¥3,080(税込)

君がいるよ
ソン・シギョン「君がいるよ」

2018/11/21

[CD]

¥3,300(税込)

君がいるよ
ソン・シギョン「君がいるよ」

2018/11/21

[CD]

¥4,400(税込)

君がいるよ
ソン・シギョン「君がいるよ」

2018/11/21

[CD]

¥4,400(税込)

幸せならそばにある
ソン・シギョン「幸せならそばにある」

2018/07/04

[CD]

¥1,324(税込)

幸せならそばにある
ソン・シギョン「幸せならそばにある」

2018/07/04

[CD]

¥1,834(税込)

DRAMA
ソン・シギョン「DRAMA」

2017/12/20

[CD]

¥3,300(税込)

DRAMA
ソン・シギョン「DRAMA」

2017/12/20

[CD]

¥4,180(税込)

こんなに君を
ソン・シギョン「こんなに君を」

2023/11/22

[CD]

¥8,800(税込)

こんなに君を
ソン・シギョン「こんなに君を」

2023/11/22

[CD]

¥3,080(税込)

君がいるよ
ソン・シギョン「君がいるよ」

2018/11/21

[CD]

¥3,300(税込)

君がいるよ
ソン・シギョン「君がいるよ」

2018/11/21

[CD]

¥4,400(税込)

君がいるよ
ソン・シギョン「君がいるよ」

2018/11/21

[CD]

¥4,400(税込)

幸せならそばにある
ソン・シギョン「幸せならそばにある」

2018/07/04

[CD]

¥1,324(税込)

幸せならそばにある
ソン・シギョン「幸せならそばにある」

2018/07/04

[CD]

¥1,834(税込)

DRAMA
ソン・シギョン「DRAMA」

2017/12/20

[CD]

¥3,300(税込)

DRAMA
ソン・シギョン「DRAMA」

2017/12/20

[CD]

¥4,180(税込)

DRAMA
ソン・シギョン「DRAMA」

2017/12/20

[CD]

¥4,180(税込)

ソン・シギョン ベストバラード
ソン・シギョン「ソン・シギョン ベストバラード」

2015/11/25

[CD]

¥4,584(税込)

ソン・シギョン ベストバラード
ソン・シギョン「ソン・シギョン ベストバラード」

2015/11/25

[CD]

¥3,362(税込)

ACCESS RANKING

アクセスランキング

  1. 1

    <インタビュー>YUTA(NCT) ミニアルバム『Depth』に込めたソロアーティストとしての挑戦――「たくさんの経験があったから今がある」

  2. 2

    和楽器バンド、活休前最後のツアーが開幕 10年分の感謝をこめた渾身のステージ

  3. 3

    <インタビュー>米津玄師 新曲「Azalea」で向き合った、恋愛における“距離”――「愛情」の源にある“剥き身の生”とは

  4. 4

    <ライブレポート>ano「次に会う時まで必ず生きて」――ツアー追加公演完走、音楽でたどり着いた“絶対聖域”

  5. 5

    ロゼ&ブルーノ・マーズ、11/22大阪開催【MAMA】で「APT.」世界初披露へ

HOT IMAGES

注目の画像