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<インタビュー>「フェスシーンをぶち上げたい」Tani Yuukiが語る新曲「夢喰」と代表曲「W/X/Y」
「W/X/Y」が現在ヒットしているTani Yuuki。2021年5月のデジタル配信時は目立った形跡はなかったが、12月からTikTokでじわじわと人気に火が付き、今年1月にストリーミング再生回数が爆発、上半期チャートでは総合17位、ストリーミング10位という功績を残した。
現在も「W/X/Y」が週平均で840万回ストリーミングされているチャートトッパーの新曲「夢喰」(読み方:ばく)は、自身初のバンドサウンドで、ライフワークとなっているライブを大いに盛り上がる一曲だ。ヒットを実感しているという現在の心境と新曲、そして、この1~2年で培ったアーティストとしての成長を語ってもらった。
――「W/X/Y」のヒットおめでとうございます。
Tani Yuuki:ありがとうございます。ストリーミングがかなり好調だと聞いていて、多くの方々に聴いてもらえて、嬉しい限りです。
――TikTokでは短尺で使用されることが多いですが、曲として最初から最後まで聞かれることがアーティストさんにとって本望だと思います。
Tani Yuuki:そうですね。Bメロの部分だけ流れているのを見ると、作り手としては、やっぱり切なくて。たくさん聞かれていて、すごく嬉しいですし、「(Bメロもいいけど)全部いいでしょ!?」って感じです(笑)。
――TikTokでバズった曲がBillboard JAPANのメインチャート“Hot 100”に必ずしも入るわけでなく、しかもトップ10入りするのはそれほど多くはありません。Taniさんは「Myra」(Hot 100最高14位)もヒットされましたし、「W/X/Y」は「Myra」以上のヒットなので、TikTokのバズが他プラットフォームでもヒットする稀なアーティストだと言えます。
Tani Yuuki:ありがとうございます!
――初めてお会いした時はコロナ禍真っ只中の2020年9月で、当時はライブもテレビ番組も自粛ムードでした。その際のインタビューでおっしゃっていた「ライブがしたい、音楽フェスで『Life is beautiful』を歌って盛り上がりたい」が今、実現していますね。
Tani Yuuki:自分がどんなふうになっていくのか、当時は全く想像できていなかったのですが、良い方向に向かっていることは感じています。「僕には何ができるんだろう? どうしていけばいいんだろう?」という不安が大きかったので、それが払拭できたと思います。ただ、その不安が今は「どれだけ息の長いアーティストでいられるか」に変わってきていて。あの時はいろいろと手探りでしたが、制作やライブ、活動環境が整ってきたので、着実に前に進んでいると思います。
――自分の成長をきちんと実感できているんですね。
Tani Yuuki:ライブ映像を見返したり、スタッフの意見を聞いてみたりすると、客観的に、自分では気づけないところに気づくことができます。そういうやり取りをしてきたからこそ、自分の伸びしろも確認できているんだと思います。
――現時点で思う改善点はどんなところでしょうか?
Tani Yuuki:自分のプレイスタイルを模索する時期はもう終わって、今はメリハリや洗練さ、より細かいところを伸ばしたいと思っています。しっかり準備ができたのか不安になって、ライブ前に疲弊してしまうので、余裕をもってライブに対峙したいですね。
――テレビやイベント出演も増えて、アーティストとお話する機会も増えたんじゃないでしょうか?
Tani Yuuki:シンガーだけじゃなく、クリエイターさんともお友達になる機会が増えました。最近はTikTokとソニー・ミュージックの「#アトリエプロジェクト」でコラボした足立佳奈ちゃんと話をしますし、YouTuberのほーみーずのるかとはよく一緒にジムに行きますし、ちばしんの家に遊びに行ったこともあります。優里君とはこの前サウナに行きましたね。
――そういった方々との交流で刺激を受けたことはありますか?
Tani Yuuki:この前、対バンした映秀。君とご飯に行ったんですけど、「僕がもっと売れていたら、セッション界隈の才能あるプレイヤーたちを引っ張っていくことができるのに」って言っていて。僕よりも年が3つ下の彼が、未来のこととかスケールのデカいプランを考えていて、衝撃でした。「そんな思想、僕にはないよ」って。それからは、自分がダサいと思っていることも自信を持って言っていこうって影響を受けました。
――「夢喰」には、ヒトリエのイガラシ(Ba)とゆーまお(Dr)が参加しています。ほかのアーティストさんが楽器に参加するのは今回が初めてだと思いますが、楽曲制作のお話を聞かせてください。
Tani Yuuki:アレンジャーのCarlos K.さんに「ギターは生音で録りたい」という要望を伝えたところ、ヒトリエのおふたりにお願いすることになりました。いつものトラック調、シークエンス多めの楽曲ではなく、ほぼ生音のバンドサウンドで仕上げている部分がこれまでと違うところです。
――史上最速かつロックな曲に仕上がっていますね。
Tani Yuuki:過去一早い曲ですね。ライブを重ねてきて、「こういう曲がないとダメだ!」と思って作った曲です。Twitterかインスタのストーリーだったか定かではないんですが、今年の新年一発目に投稿したフレーズが元になっていて、その時はもっと遅い曲だったんですよ。「Life is beautiful」もアッパーですけど、ランニング中に聴いていると遅すぎて。この曲ならランニングしながらでも聞けますね(笑)。「Life is beautiful」の時に抱えていた不安が吹き飛んで、少しずつ夢が花開いてきたときに、今度はその夢が壁となり、「夢に喰われてしまいそう」っていう状況から、夢にしがみついて食らいついていくことを表現した曲で、“夢”に“喰らう”で「夢喰」というタイトルにしました。
――「Life is beautiful」からの過程が見られて、Taniさんも感慨深いのでは?
Tani Yuuki:ですね。リリース前からライブですでに歌っていて、お客さんと一緒にタオルをガンガン振り回して、めちゃくちゃ楽しかったです。あとはお客さんが声を出せたら完璧ですね。お客さんの声に自分の声がかき消されそうになる日を待ち望んでいます。
――“五月蝿い”や“掻っ攫ってゆけ”など、歌詞を読んで「ここは漢字で書いていたんだ」と気付く部分がいくつかありました。
Tani Yuuki:五月蝿いはRADWIMPSの「五月の蝿」で知ってたんです。プライベートでは全然使わない書き方ですけど。
――これまで通り、韻をたくさん踏んでますし、タイトルとテーマがマッチしていて、完成度の高い一曲ですね。
Tani Yuuki:ありがとうございます。韻が自分の強みであり、スタイルだと思っているので、リスナーさんに届いたら嬉しいです。タイトルは最初、「100万回」だったんですけど、ちょっとバカっぽいかなと思って変えました(笑)。サビに“100万”っていうバカっぽさを立て続けに入れることで、勢いが生まれていいと思っていて。夢と喰らうの2文字が1番で出てくるところも、上手くできたなって思っています。めちゃくちゃ早くてアッパーでアホっぽく聞こえるかもしれないですけど、意外とちゃんと書いているので、歌詞を読んでもらえたら、尚嬉しいです。
――アルバム『Memories』の歌詞ブックレットも、曲によってフォントが違う楽しみもありました。
Tani Yuuki:「百鬼夜行」だけユラユラしていて、デザイナーさんのこだわりが入っています。嬉しいことに、親世代の方の「このアルバムは買ったほうがいい。名盤だから」ってツイートを見たことがあって。1年以上前にリリースした「W/X/Y」が今たくさんの方々に聞かれていたり、収録曲の「愛言葉」や「おかえり」がちょくちょくバズったり、「W/X/Y」のおかげで4月からタワレコさんでパッケージ販売されるようにもなりました。
――個人的には、「曖昧ミーマイン」が好きです。
Tani Yuuki:母も「曖昧ミーマイン」がいいって言ってくれていて、僕もすごく上手くできた曲だと思いますし、コアなファンができつつある曲でもあるんです。
――少し変わった質問かもしれないんですが……「夢喰」のタイトルを見たときに『賭ケグルイ』の蛇喰夢子が頭に浮かんだんです。「百鬼夜行」も『呪術廻戦』に出てくるワードで、両方とも原作にリンクしない楽曲ではありますが、Taniさんはアニメや漫画はお好きですか?
Tani Yuuki:好きですし、アニメの影響は受けていると思います。「夢喰」と蛇喰夢子は関係ないですけど(笑)、いつかアニメのタイアップができたら最高ですね。昨日TikTokで『ブラッククローバー』の映像が流れてきて、「あ、『夢喰』と合うな~」って思いましたし、Vaundyさんが『ONE PIECE FILM RED』に楽曲提供したっていうニュースを読んで、「いいな~」って(笑)。
――リリース以降にフェスの出演も控えていますし、8月には【SUMMER SONIC 2022】初出演もあるので、「夢喰」の今後の動きに注目したいと思っています。
Tani Yuuki:「夢喰」でフェスシーンをぶち上げたいと思っています。あと、「夢喰」からの「Life is beautiful」の流れが最高だと思うんです。「夢喰」でタオルを回してアイスブレイクした後に「Life is beautiful」で飛んでもらおうかと。ライブや学園祭、フェスで経験を積んで、ライブアーティストとして成長できるように頑張ります。
――「夢喰」の次の楽曲制作も進んでいるんでしょうか?
Tani Yuuki:まだ完成していないんですけど、曲自体はなんとなくできていて、あとは詰めていくだけですね。「たくさん聞いてもらうには、どうしたらいいんだろう?」って、曲と向き合っているところです。
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