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「しんどいことも乗り越えて、楽しく生きられる人でありたい」24歳のeillが贈るセルフラブソング「HAPPY BIRTHDAY 2 ME」<インタビュー>



インタビューバナー

 2月にリリースされたメジャーからのファーストアルバム『PALETTE』も好評なeillが新曲「HAPPY BIRTHDAY 2 ME」を、自身の24歳の誕生日である6月17日にデジタルリリースした。ネクストシーズンの始まりを告げるこの曲は、これまでもeillが訴えてきた「いかに自分を愛せるか」というテーマを、少しだけ肩の力を抜いて、サンバを基調とした遊び心のあるアレンジで聴かせる一曲。様々なメディアへの露出に加え、ジャニーズWESTやBE:FIRSTに曲提供もするなど、アーティストとしてステップアップし続けるeillに、新曲とこの半年の活動について話を聞いた。(Interview & Text:金子厚武 / Photo:堀内彩香)

改めて自分の進む道を確認できた『PALETTE』

――2月にリリースされた『PALETTE』に対する反響や手応えをどのように感じていますか?

eill:『PALETTE』にはいろんなカラーの曲が入っていて、その曲たちが届いている先もいろいろで、アルバムなんだけどプレイリストみたいな感じでもあり、その人が欲してる曲がダイレクトにその人に届いてる感じがすごくしてます。これまでインディーズで出したアルバムだと、「この曲が好き」ってみんなが言う曲が集中しがちだったけど、今回は一人一人全然違って、それは初めての感触で。本当に『PALETTE』というタイトルにふさわしいアルバムだったんだなって、出してみてあらためて思いました。

――TVCMからTikTokまで、どの曲がどこにハマってどんなバズを起こすのか予想できないからこその面白さもありますよね。実際、予想外の反応もあったりしましたか?

eill:アルバムの収録曲のうち、よく耳にすることが多いのが「palette」で、多様性だったり、自分らしく生きることを肯定したり、そういう歌詞に惹かれる人が多いんだなというのは思いました。もちろん、いろんな曲を聴いてもらえるのは嬉しいんだけど、「やっぱり私はこの道なんだ」って、しっかりそう思えました。

eill「palette」

――それは嬉しい予想外ですよね。アルバム『PALETTE』は曲調は幅広いんだけど、「いかに自分を肯定できるか」「いかに自分を愛してあげられるか」というメッセージの軸はデビュー当時からぶれていなくて、その部分がちゃんと届いてることを実感できたっていう。

eill:そんな感覚がありました。あらためて、自分の進む道を確認できて、「ありがとう、みんな。ありがとう、『PALETTE』」って感じでしたね(笑)。


Photo:堀内彩香

――2月に開催予定だった【BLUE ROSE TOUR 2022】は大阪と名古屋が延期になってしまいましたが、2月6日に東京公演が開催されました。感想を聞かせてください。

eill:ライブもまさに『PALETTE』って感じでしたね。ダンスもあったし、初めてピアノの弾き語りで一曲やったり、初挑戦が多いライブで、だからあんまり記憶がなくて(笑)。でも、ただマイクを持って歌うだけじゃなくて、自分の体を使ったいろんな表現の仕方をあの日に覚えた感じがあったので、それをこれから普段のライブでも生かせるようにしたいです。新しい自分のスタイルを確立できるように、もっと頑張れるなって思いました。

――特に何が大変でしたか?

eill:ダンスはホントにきつかったです。ライブの2週間前くらいにリハに入り始めたんですけど、プロモーションや制作もあったので、振り入れの時間がホントになくて。なので、全然踊れなくて、夜中に泣きながら自主練したりして。曲を作ったりライブをするなかで、ひさしぶりにこういう悔しさを感じて、「もうダメだ」みたいな気持ちになって……それが結構楽しくて(笑)。

――出た、逆境だと燃えるタイプ(笑)。

eill:なのでホントに頑張って、今思うとよくやったなって思います。初めてやる曲も多かったわりに、リハの回数自体そんなになかったんですけど、イメトレを重ねてやったライブでした。

――でもその練習やイメトレの成果ははっきりと本番に出ていたと思います。

eill:ありがとうございます。私はずっとK-POPが大好きで、歌って踊るのに憧れていて。まだまだ全然完璧じゃないけど、いいスタートダッシュが切れたかなと思うので、これを一回限りで終わらせないで、パワーアップしていけたらいいなと思います。


Photo:堀内彩香

――いろんなパフォーマンスの一方で、後半ではしっかりとメッセージを伝えるパートもあって、軸の部分にブレがないことはあの日のライブからも伝わってきました。

eill:思い出したんですけど、私ライブの翌日号泣しました(笑)。いつも「SPOTLIGHT」の前にMCをするんですけど、あの日は初めてライブに来てくれた方が結構多くて、(私が)ああいう風に熱を込めて話す人だってことを知らなかった人も多かったみたいで。それもあってか、ライブの後に「最近こういうことがあって辛かったけど、MCで救われました」みたいなメッセージがめちゃめちゃいっぱい来て、それを見て自分も救われて、号泣しちゃって。とにかく一生懸命に話したから、自分でも何を言ったか細かくは覚えてなかったりするんですけど、でもちゃんと伝わってよかったなと思いました。

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しんどいことも乗り越えて、楽しく生きられる人でありたい

――アルバムリリース以降もいろんな活動があった中で、4月にはBE:FIRSTに楽曲提供した「Betrayal Game」の配信リリースもありました。SKY-HIとは以前から交流があって、だからこそのオファーだと思うのですが、彼らにとってデビュー間もない大事な時期に曲提供のオファーがあるというのは、eillさんに対する信頼の表れのように感じました。

eill:日高さんがよく言ってくれるのは「バランスがいい」「ポップだけど、ちゃんとかっこいいところを残してくれる、それがeillのよさだと思う」ということ。「Betrayal Game」はいろんな作り方をしたんですけど、LEFTYさんと一緒に曲を作ってるところに日高さんも来てくれて、一緒にセッションをして、方向性を決めていきました。探偵のドラマ(『探偵が早すぎる~春のトリック返し祭り~』)の曲だったから、ちょっと探るような、怪しげな感じを出しつつ、ドラマの曲だからといって派手なサビにするというよりは、あえてローな感じでかっこよく、声がよく聴こえるような楽曲を目指しました。

――「バランスがいい」というのは納得です。eillさんの曲はJ-POP的な親しみやすさと、USのメインストリームやK-POPのようなかっこよさが同居していて、BE:FIRSTにもそんなイメージがあるから、そもそも相性がいいんだろうなって。これまでの日本の音楽業界に当てはめずに、その人自身の個性を光らせるという意味でも、eillさんとBE:FIRSTには通じる部分があると思うし、それはSKY-HIという人もそうだし。

eill:BE:FIRSTも毎回出す曲ごとに全然カラーが違いますよね。「Betrayal Game」にしても、これまでとはまた違う、新しいBE:FIRSTの感じを出せたんじゃないかなと思います。

――BE:FIRSTはまだそんなにたくさんの曲を発表してるわけじゃないけど、でもすでにPALETTE的ですよね。「ジャンルレス」という言葉もずっと言われてますけど、一組のアーティストがPALETTE的にいろんなカラーの曲を発表することが、すでに現代のポップミュージックのスタンダードになっていることの表れとも言えるかもしれない。

eill:たしかに。周りの反応を見ても、毎回違う曲を出すことに昔ほど違和感を覚えなくなってる気がするし、それはそういうことなのかもしれないですね。

eill「HAPPY BIRTHDAY 2 ME」

――では、新曲の「HAPPY BIRTHDAY 2 ME」について聞かせてください。誕生日ソングを誕生日にリリースして、しかも当日にライブまであるというのはいろんなタイミングが重ならないと実現しないと思うのですが、この曲はどのようにできた曲なのでしょうか?

eill:6月に新曲を出すことが決まって、『PLAETTE』の手応えも踏まえて、今自分にしか発信できないメッセージが何かを考えたときに、6月は自分の誕生日があるから、「HAPPY BIRTHDAY 2 MEじゃね?」と思って。自分で自分のことを祝うって、ちょっとサイコっぽい、ハッピー野郎な感じですけど(笑)、それはそれで面白いというか。私はインディーズの頃からちょいちょい自由度の高い曲を作ってたんですけど、『PALETTE』でそういう曲は「ただのギャル」くらいだったから、ひさしぶりにやっちゃおうかなって。なので、これはポニーキャニオンさんから私への誕生日プレゼントということで、好きに自由度高く作らせてくれて、本当に楽しかったです。

――ハッピーな曲ですけど、やっぱり「いかに自分を愛するか」というメッセージの軸はここでも貫かれていますよね。

eill:もともとなんでこれを書いたかって、私去年の誕生日がちょうど「花のように」のレコーディングだったんですよ。

――大変だったときだ。(参照:<インタビュー>eillなりの日本語詞との向き合い方 “一人ひとりでなきゃいけない”世代が綴る「花」の意味│https://www.billboard-japan.com/special/detail/3272

eill:そう、夜中歌詞が全然書けなくて、気づいたら誕生日になってて、友達からLINEが来たり、SNSで「おめでとう」って上げてくれてるんだけど、でも私は部屋の隅で泣いてて、「終わった」みたいな感じで。私もともと超ハッピー野郎だから、「誕生日はみんなでお祝いしてディスニー行って」みたいな(笑)、最高のものだと思ってたんですけど、誕生日だからってハッピーじゃないときもあるんだなって、初めて思ったんですよね。その日は結局朝まで歌詞が書けなくて、自分が生まれた日に自分の中の正解が見えないなんて悲しすぎるだろ、みたいに思ってて。

――しんどいですね。

eill:で、スタジオに行ってもやっぱり歌詞が書けなくて、みんなに迷惑かけて、「私ダメじゃん」と思って……それでもなんとかレコーディングをして、その日が終わったときに、こういう感情に出会えてよかったなって思えたんです。人生は山あり谷ありで、嬉しいことも悲しいことも起こるから、それに対して何も感じられないわけじゃないんだなって、今日という日がそういう日でよかったなって思えたんですよね。むしろこういうときこそ、自分のことをちゃんと抱きしめてあげられる自分になりたいと思ったし、こういうことも乗り越えて、楽しく生きられる人でありたいと思ったんです。


Photo:堀内彩香

――【BLUE ROSE TOUR 2022】東京公演のMCでも「怖いも辛いも苦しいも痛いも全部、自分だからこそ感じられる特別な、かけがえのない感情だ」ということを話していましたよね。

eill:そうですね。さっきの誕生日の話は去年のことですけど、この曲の歌詞を書いてるときも結構てんてこまいというか、ずっと曲を書き続けていて、アウトプットも多くて、「つらっ!」と思いながら書いてたんです。でも今回不思議だったのが、実際に歌詞を書いてるときは最初から最後までずっと楽しかったんですよね。辛いこともいろんなところに転がってて、やらなきゃいけないこともたくさんあったけど、それを全部「ハッピー」に詰めていくみたいな、そんな感覚で書いた歌詞なので、それはすごくよかったなって。誕生日はみんなにあるものだから、ちょうどその日に戦争が始まることだってあるだろうし、人それぞれいろんな日があると思う。でもその日にどんなことがあったとしても、「HAPPY BIRTHDAY 2 ME」の気持ちを一瞬でも持ってもらえたらいいなって思います。

――しっかりとメッセージが込められつつ、やはりこの曲は遊び心もたっぷりなのがいいですよね。天使と悪魔が会話してたりとか(笑)。

eill:〈ポテチ!!!!アニメ!!!!コーラ!!!!ピザー!!!!〉とか(笑)。シリアスな部分もあるけど、「楽しんでこうよ!」みたいな感じで受け止めてくれたらなって。

――アレンジもいろいろ遊んでますよね。イントロからして時報になってたり。

eill:ちゃんとリアルな感じを出したかったんですよね。12時になって、「誕生日だけど普通に仕事……でもきっといい日になるでしょ」みたいな。あとサンバっぽい曲調は今回初めてで、パーカッションを自分でやりたいって言って、アゴゴとティンバレスとサンバホイッスルを教えてもらいながら自分で演奏しました。途中で「ハッピーバースデー」を歌ってるのもリアルな感じにしたくて、一人で誕生日をお祝いする、ちょっと寂しげな感じで歌ってるんですけど、でもその後にパーカッションが来て、「やっぱり楽しもうぜ」みたいなアレンジっていうか。歌詞と曲だけで伝わり切らない感情を、アレンジでもちゃんと出せたんじゃないかなって思います。


Photo:堀内彩香

――最後がくしゃみで終わってるのは?

eill:かわいいなと思って(笑)。すごい人間っぽいなと思ったんですよね。よく「どうやったら強くなれますか?」って聞かれるんですけど、私結構ダメ人間で、いつもジャージだし、部屋も汚いし、よく遅刻するし……でもそういう部分を今まであんまり出してこなかったなと思って。この曲の主人公も自分の人生が決まらなくて、やりたいことがわからなくて、めちゃめちゃ優柔不断なんだけど、でもそこもコミカルに描いて、人間らしいところ、ダメなところも肯定してあげる曲にしたくて。そういう意味でも、くしゃみで終わったら人間っぽくてかわいいかなって。

――決して強いeillだけじゃない、誰だって完璧じゃないっていうのも、大事なメッセージだと思います。

eill:2番の歌詞では〈使命感はないよりマシよ でもストレスフリーに生きれなきゃ Not my business〉と言ってるんですけど、実際は私もこれできてなくて。「何か残さなきゃ」みたいに思い過ぎると、それがいつか自分の首を絞めるだろうなとは思うんです。だから、やりたくないことはやらなきゃいいじゃんと思うんだけど、でもそれだと負けた気がする(笑)。人の気持ちは難しいなって思うんですけど、それを「よしよし」ってしてあげたくて、「誕生日くらいグータラしていいんだよ」って言いたかった。今回も自分でミュージックビデオを撮ったんですけど、そこではそういうグータラした自分、今までだったら絶対見せてないジャージ姿で出てたり、「それでもいいじゃん!」ってことを楽しく伝えたくて。

――『PALETTE』で十分な手応えがあったからこそ、そういう自分もさらけ出せるようになったということかもしれないですね。

eill:たしかに。さっきも言った通り、この曲を書いてるときは悩んでじりじりする感じじゃなくて、すごく気持ち的には楽で、それはそういうことなのかもしれないですね。


Photo:堀内彩香

――今後もいろいろな活動が予定されているかと思いますが、最後に2022年の下半期に向けた展望を話していただけますか?

eill:最近思うのは、去年は自分に対しても周りに対しても結構甘えちゃってたなって。でも、eillは自分自身だから、自分が先陣を切って、旗を持って、走っていかなきゃ意味がないなってすごく思ったんです。なので、eillを始めた頃の初心に帰って、音楽を作ることはもちろん、一人の人間として、一人の女性として、自分にできることは何でもやっていきたい。自分で自分の道を掴みとるんだっていう気持ちを忘れないで過ごす一年にしたいと思います。

――それこそ「HAPPY BIRTHDAY 2 ME」じゃないけど、もう一度生まれ変わって、新しい章を始めるような気持ちがある?

eill:そうですね。今はちょっと背負い過ぎちゃって、それで苦しくなっちゃうこともあるけど、いつかはこの曲のように、そういうことも楽しめる自分になりたいと思います。音楽に関しては『PALETTE』を出したことによって、自分のパレットを手に入れられたから、あとは色を増やしていくだけなので、新しいリスナーの人とも、昔から聴いてくれてる人とも、ずっと一緒に笑って泣けるような音楽を作り続けたいと思います。

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