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<コラム>SNSでの新たな接点、ファンとの共有、聴き方の提示、そして楽曲――BUMP OF CHICKEN「クロノスタシス」がチャート上でも特別な理由
昨年活動25周年を迎えたBUMP OF CHICKEN
最新曲「クロノスタシス」をリリースした彼ら、実は音楽ストリーミング、ダウンロード上で現在このような状況にいることはご存知だろうか。
●音楽ストリーミングサービスであるApple Music、Spotifyで彼らの曲を聴いている人の数(リスナー数)は過去最高値を更新中
●「クロノスタシス」はサブスク上で自身最速のスピードで1000万回再生を突破
●毎リリースごとにダウンロード数は減少傾向ではあるが、ストリーミングは継続して増加中。売上ベースで換算してもダウンロードの減少分を完全に補完
BUMP OF CHICKENの新曲「クロノスタシス」は4月11日にリリース(CDは未発売)、同曲は4月15日に公開された『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』の主題歌であり、興行収入は75億円(公開後31日間)で動員も541万人(5月16日現在)。
これだけみると大型映画のタイアップだから再生されている?と思うかもしれないが、実はそれだけではない、BUMPらしい姿が見え隠れしている。
Text:松島 功
25周年を迎えたBUMPの新たなチャートアクション
「クロノスタシス」は2022年4月20日公開(集計期間:2022年4月11日~4月17日)のBillboard JAPAN“Download Songs”で初登場1位、さらにダウンロード、Twitter(ツイート数が前週比1199%)、MV指標からなる ”Hot Buzz Song” も1位。
Billboard JAPANの総合チャートである“HOT 100”では3位。
翌週以降は着々とストリーミングの指標を上げ、下がり止めしつつ現在まで推移。チャートの構成比も初週のダウンロード、ラジオ主体だったところから現在は青いストリーミングの指標が構成比を上げている。
▲“HOT 100”の各指標の推移(集計期間:2022年5月11日公開分まで)
ストリーミング数においてはBillboard JAPANへ提供しているGfK Japanの数値を見ても初週、2週目は「アカシア」のほうが高いが以降は「クロノスタシス」がテイクオーバーし、結果として自身最速のスピードで1000万回再生を突破。「クロノスタシス」が「アカシア」よりはるかにハイペースで伸びているのは非常に興味深い。
音楽ストリーミングで聴くユーザーが増えていることもあり、多くのアーティストと同じように毎リリースごとにダウンロード数は減少傾向ではあるが、ストリーミングは継続して増加中。売上ベースで換算でもダウンロードの減少分を完全に補完する量となり、ダウンロード中心からストリーミングへ移行に成功している。
特に長年活動しているアーティストにおいてはダウンロードの数字が以前から強いままで、Billboard JAPANの初週、2週目は高い指標を稼げても、ストリーミングの数字が週を重ねても伸びてこないことは非常に多い。
熱心なファンが楽曲をダウンロード購入し、その音楽ファイルを再生するため、サブスクに加入して聴く必要がないからである。
良くも悪くも250円の買い切り状態になるためであり、一方サブスク型は月額費を支払い、1再生ごとに権利者へ払い出される。同じデジタルの売上といってもダウンロードは仮想フィジカル商品のような接触方であるため、ビジネスモデルは完全に異なる。
熱心なファンのダウンロードからストリーミングへの移行、ないし両方の併用利用、そしてファン以外のグレー層へのストリーミング上でのアプローチ。
この2軸を形にしていくことが本当に難しいことは特に20年選手以上の音楽アーティストやレーベル関係者の共通の悩みであろう。
変化してきたSNSへの姿勢
BUMP OF CHICKENはInstagram、Twitterのアカウントでもあまり本人たちのダイレクトなエンゲージメントは比較的少ないタイプのアーティストである。これは同年代、ないしそれ以上のアーティストで多くみられることであり、SNSでファンと密接につくりあげていく今のアーティストとは少し異なる。
だがBUMP OF CHICKENからのメッセージ、そしてSNSへの姿勢はここ最近少しずつ変化している。今年4月に唐突にアップロードされたこの動画、これまでのBUMPには全くなかったことでファンは驚いたであろう。藤原基央による弾き語りとメッセージ。
お祝いのメッセージをありがとう。
— BUMP OF CHICKEN (@boc_official_) April 12, 2022
今日まで音楽を続けて来られたのは、
皆さんの、あなたの応援のおかげです。
これからもよろしくお願いします。
昨日新曲「クロノスタシス」がリリースされました。
ぜひいっぱい聴いてほしいです。
ちょっと歌ってみたよ、冒頭こんな感じです。
藤原 pic.twitter.com/B6dtZ90iJ0
また「クロノスタシス」では同楽曲をTwitterに投稿して、同曲の感想をみんなでシェアしようという趣旨のことも行われていた。感想は「テキストでもイラストでも自由に」という自由さもあって、応募は3万件を越えている。
画像を投稿し、その画像の説明追加の箇所に感想を書き込むファンも出たり(これだと1000文字書ける)伝えたい気持ちの高さを感じた。
そして、明日4/11(月)の配信リリースから「クロノスタシス」のTwitterシェアキャンペーンもスタートします。抽選で1,000名様に「クロノスタシス」バージョンのロゴステッカーをプレゼントさせて頂きます。詳細は以下の画像とHPをご確認のうえ、ご参加ください。#BUMPOFCHICKEN#クロノスタシス pic.twitter.com/8hy2wipQmW
— BUMP OF CHICKEN (@boc_official_) April 10, 2022
リリース情報
BUMP OF CHICKEN
「クロノスタシス」
2022/04/11 DIGITAL RELEASEStreaming/Download:
https://bumpofchicken.lnk.to/chronostasis
BUMP OF CHICKEN 関連リンク
耐久性が高い楽曲を20年以上つくり続けてきたBUMPが
時代にフィットしていってる
聴く手段の新たな提示も要因の1つだろう。
今年の3月からは2001年の楽曲「天体観測」の2022 Rerecording VersionとしてApple MusicではDolby Atmosによる空間オーディオ版も配信されており、BUMPの新しい聴き方を提示している。
Apple Music、Spotify共に彼らの曲を聴いている人の数(リスナー数)は過去最高値を更新中である(※)。サブスクユーザーの人口増加傾向比を差し引いても非常に大きな成長幅で伸びている。
SNSでのファンとの新たな接点、ファンとの共有、聴き方の提示。
そして、やはり楽曲の持つ力だろうか。
定量的な話ではなく、あくまで主観になってしまうが、BUMPの強さには曲の強度が大きく影響していると考えている。
「クロノスタシス」は耐久性がとても高い。いや、BUMPの楽曲は全体を通じて耐久性が高い楽曲が多い。
聴き方が変わってしまった今の時代において、繰り返し長く、広く、多くの人に聴いてもらうという中で、曲そのものがもつ「耐久性」がストリーム数に大きく影響するのではないかと日々感じている。
様々な価値観の人達へ、寄り添いながら、何度も聴きたくなる、何度も聴ける耐久性が高い楽曲が強い時代。
そんな耐久性が高い楽曲を20年以上つくり続けてきたBUMP OF CHICKENが今こうやって時代にフィットしていってるのはとても興味深い。
音楽を広め聴いてもらうために
今の世代、時代に自分たちが合わせていくチャレンジをするアーティストもいれば、BUMPのように、ファンと並走を続けながらも少しずつ 少しずつ健やかに前進をし続けるスタイルもある。
バズという言葉で称されてしまうような派手さはなくとも、ファンとの並走、それに寄り添う耐久性の高い楽曲達。
最後に個人的な話で恐縮ではあるが、彼ら4人と同い年の筆者からすると、今のBUMPには ”健やかさ” を感じる。生き方、活動の仕方が、健やかであることに、同じ40代として羨ましさと尊敬を心から感じる。
(※)TOY'S FACTORY提供
リリース情報
BUMP OF CHICKEN
「クロノスタシス」
2022/04/11 DIGITAL RELEASEStreaming/Download:
https://bumpofchicken.lnk.to/chronostasis
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