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The Biscats『ハジけちゃって!Summertime』インタビュー
BLACK CATSやMAGICのメンバーとして日本ロカビリー界を牽引してきた久米浩司の娘であり、2020年代に新しいロカビリームーヴメントを起こすべく奔走中のMisaki率いるハイブリッド・ロカビリーバンド、The Biscatsに1年半ぶりのインタビューを敢行!
メンバー脱退時の想い~全国ツアー中止を覆した激動ストーリーから始まり、日本のロカビリーシーンを背負っていく気概を感じさせた初主催イベント【ROCKABILLY FESTIVAL 2022】(通称ロカフェス)に世界最大のロカビリーイベント【VIVA LAS VEGAS ROCKABILLY WEEKEND】でのリベンジ達成! そして、大勝負の2022年第一弾作品『ハジけちゃって!Summertime』について等々、まるで1本のドキュメンタリー映画のような内容となっているので、ぜひご覧頂きたい。
◎The Biscatsメンバー
Misaki(Vocal)
Kenji(Guiter)
Suke(W.Bass)
メンバー脱退時の想い~全国ツアー中止を覆した激動ストーリー
--The Biscatsにこうしてお話を伺わせて頂くのは、2020年10月『Teddy Boy(feat. TeddyLoid)』発売時インタビュー以来になるのですが、この1年半は激動でしたよね。まず4人いたメンバーが3人になりましたが、あの当時はどんな心境だったんでしょう?
Misaki:Ikuo(Drums)が耳の治療に専念しなくちゃいけなくなって「このまま続けるのは難しい」と最初に言われたときは……私の中では「この4人がThe Biscats、それ以外は考えられない」と思っていたし、これからもっとギアを上げていろんなことに挑戦していこうとしていた時期だったから「このタイミングでこんなこと起こる?」みたいな。でも、理由が理由だし、Ikuoの人生のことを考えたら送り出してあげるべきだし……すごく葛藤して、みんなで何度も話し合いを重ねていった結果、自分たちはここで止まるわけにはいかないから「4人のThe Biscatsは最高な形で終わらせて、3人のThe Biscatsとして新しい形をつくっていこう」と。そう思えるまではどんよりしちゃったりもしたんですけど、最終的には「これからの人生、がんばれ! 私たちもがんばるから!」みたいな感じで明るく送り出すことが出来ました。--その後の全国ツアー【The Biscats TOUR 2021 ~Sweet Jukebox~】東京公演(ライブレポート)では、Misakiさんが「今回のツアー、実は中止にすることが決定していたんですよ。でも、みんなから日々たくさん送られてくるメッセージを見て「こんなにThe Biscatsを待っててくれる人がいるんだ。こんなところで止まってちゃダメだよね。やっぱりツアーはやろう!」って決めたんです」と語られる場面がありました。
Misaki:Ikuoが辞めてからあのツアーまで1ヶ月しか時間がなくて、その中でサポートメンバーを探してライブが出来る状態にまで持っていかなきゃいけなかったんですよね。でも、4人のときのベストよりレベルを落とすわけにはいかない。そう考えると「さすがに無理だよね」という結論に至って、今回のツアーは中止にして、2022年に仕切り直そうと一度は決めたんです。でも、それだとファンの皆さんは不安に感じちゃうだろうし、最終的に「ここで立ち止まるわけにはいかないよね」と中止をひっくり返しちゃって。 Suke:あれは賭けでしたね。無事にツアーを終えられたから、結果的には良かったんですけど。 Misaki:私が「やると決めれば、どんなことでもできる」と思うタイプなんですよ。だから「1ヶ月しかないけど、本気で頑張れば絶対に上手くいく」という自信が急に生まれて(笑)。結果、本当に素晴らしいサポートメンバーと出逢えて、4人体制時のベストより成長したThe Biscatsをお届けすることが出来たんじゃないかなって。--The Biscatsの大きなターニングポイントになりましたよね。
Misaki:あのツアーは、見事に全公演泣きましたね(笑)。やっぱり「さすがに無理だよね」という状況を乗り越えてのツアーだったので、今まで以上に思い入れも強くて、感情がとにかく溢れちゃって。それこそ短期間の中で上がったり下がったりいろんなことがあったので、まさに激動の中でやり切ったツアーになりました。あと、同期を使わなくなったのも大きい変化だったよね? Suke:同期は同期の良さがあるんですけど、やっぱりロカビリーの本質はグルーヴ感なので、それをみんなと共有できたことはすごくデカかったですね。 Misaki:自分たちのノリや表現の幅も広がって、それによっていろいろ出来ることも増えたツアーだったから楽しかったです。--そこから年を明けて2022年。The Biscatsの初主催イベント【ROCKABILLY FESTIVAL 2022】(通称ロカフェス/ライブレポート)がロカビリーの日である2月8日に行われました。
Kenji:自分たちがそういうフェスを「ちゃんとまわせるのか?」という不安もありましたし、しかも平日開催だったので「みんな遊びに来てくれるのか?」とビビったりもしていたんですけど、いざフタを開けてみたらたくさんの人が来てくれて、出演者の皆さんが素晴らしいライブをしてくださったので、本当にやってよかったなと思いました。日本でもアメリカの【VIVA LAS VEGAS ROCKABILLY WEEKEND】のようなフェスがやがて出来るようになるんじゃないか。そんな希望が見えた日でしたね。- 初主催イベント~世界最大のロカビリーイベントでリベンジ達成!
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リリース情報
関連リンク
Interviewer:平賀哲雄
初主催イベント~世界最大のロカビリーイベントでリベンジ達成!
--出演者はどのような流れで決めていったんでしょう?
Misaki:ソロの時代から数えるとデビューから6年。それまで「お父さん(久米浩司/BLACK CATS、MAGIC)とは共演しない」というスタンスだったんですけど、でも「今だったら良いな」と思って、初めて正式にライブで共演させてもらおうと。それで、あの日初お披露目となったTHE KING CATSに出演してもらう話からスタートして、同じく日本ロカビリー界のレジェンドと言われているMAGICの山口憲一さんや高橋琢実さん擁するTHE BRAND NEW FIFTIESさんにもお声がけさせて頂いて。で、私たちと同世代で「これから一緒にロカビリーシーンを盛り上げたいよね」とよく話している仲間にも出てもらいたいと思って、Good Spiritsにも声をかけました。--日本のロカビリーシーンの歴史そのものと言っても過言ではない、豪華な顔ぶれでしたよね。ゆえに「これからの日本のロカビリーシーンを背負っていく」そんなThe Biscatsの気概も感じさせられました。
Suke:THE KING CATS然り、THE BRAND NEW FIFTIES然り、凄い人たちを差し置いて大トリを務めるのは恐縮でしたし、もちろん胸を借りるつもりでやらせてもらったんですけど、主催は僕らなので「負けないぞ」という気持ちもありました。そういう闘志は自然と溢れてきましたね。 Kenji:正直、最初は「イヤだな」と思いましたけどね(笑)。大先輩たちにあれだけのライブをやられちゃうと「まだそこまで深いグルーヴを自分には出せないな。敵わないな」と思いますし。それでもなんとか「勢いだけは負けちゃダメだ」と思って必死に挑ませてもらいました。そういう意味では、めちゃくちゃ鍛えられましたね。良い経験をさせてもらったと思っています。--あと、忘れちゃいけないのが「Sweet Jukebox」のMVや前回のツアーに引き続き、ロカフェスにも出演してくれたロカビリー芸人・TAIGAさん。
Misaki:TAIGAさんはThe Biscatsのことを以前から知って下さっていて、私たちももちろん知っていて、MVの撮影をきっかけに仲良くさせて頂いているんですけど、ロカフェスをやるんだったら「初回の司会はTAIGAさん以外にいないだろう」ということで出演してもらったんです。 Suke:僕、TAIGAさんのことをお会いする前からずっと好きだったので、ロカビリー繋がりの巡り合わせでご一緒できて、記念すべき初回のロカフェスにも出てもらえて嬉しかったですね。ただ、TAIGAさん、楽屋でずっとウケるかどうか心配していました(笑)。--そして、つい先日、渡米して世界最大のロカビリーイベント【VIVA LAS VEGAS ROCKABILLY WEEKEND】への凱旋出演を果たしました。
Suke:The Biscatsとして初めてのステージも【VIVA LAS VEGAS ROCKABILLY WEEKEND】だったんですけど、そのときはまだバンドとして音が一丸となっていなかったんですよね。さらにトラブルもあったので、正直、納得できるようなライブじゃなかったんです。でも、今回はそれをひっくり返して、アンコールも頂いたぐらい盛り上げられたことを誇りに感じましたし、良いライブが出来たなって。なので、次回はもっと大きいステージに立ちたいなと思いましたね。--通常、アンコールはないイベントなんですよね?
Suke:そうですね。でも、やらなきゃお客さんが収まりのつかない興奮状態だったので、司会の方に「しょうがないから一発やってくれ!」と言って頂いて……映画だったらいちばん熱いシーンですよ(笑)。日本から来てくれていたお客さんもいたので、誇りに思ってくれていたら嬉しいですね。 Kenji:朝4時までのイベントなんですけど、4時を迎えると強制的に電源をバン!と切られるんですよ。しかも、僕らの出番の前に30分ぐらい押していたんですよね。だから「絶対にアンコールはないだろう」と思っていたんですけど、まさかの展開になって。だから「めっちゃよかった!」と思いつつ、その一方で「僕らのあとの出番の人たち、大丈夫かな?」と思いました(笑)。 Suke:前回の俺らみたいに途中で電源落とされないかなって(笑)。--きっと、その方は「The Biscats、良いですよ」と主催チームの皆さんに伝えていたわけですもんね。
Misaki:そうなんですよ。だから、前回出演してからの3年間、ずっと悔しさと申し訳なさでいっぱいだったんですけど、今回ようやくリベンジを果たすことが出来て……ただ、自分たちの出番を迎えるまでは、海外の出演者たちのグルーヴが凄すぎちゃって「このあとに自分たちが出て行って、受け入れてもらえるんだろうか?」という不安でいっぱいだったんですよ。でも、いざステージに立ってみたら爆発的に盛り上がって、自分たちがこの3年間追求してきた音楽は間違いじゃなかったんだと思いましたし、改めて「音楽に国境はないんだ」と実感しました。リリース情報
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Interviewer:平賀哲雄
大勝負の2022年一発目の新作『ハジけちゃって!Summertime』
--前回のインタビューからの1年半を振り返って頂きましたが、1本の映画に出来るストーリーですね。着実に「ロカビリーブームをもう一度起こしたい」という夢に向けて歩んで来ている。
Misaki:本当にちょっとずつですけど、ロカビリーや私たちに興味を持ってくれる人たちは増えているのかなって。特にYouTubeの効果の大きさは感じていて、コロナ禍になってからオリジナル曲のMVなどとは別に、毎週のようにカバー曲の動画も公開しているんですけど、それによってロカビリーや私たちを知ってくれる人がたくさん増えて、今はライブに新たに来てくださる方の半分以上は「YouTubeで知ったよ」と言ってくれていて。それで「ロカビリーって知らなかったけど、こんなに楽しい音楽なんだね」とか「ロカビリーって格好良いね」とか伝えてくれるんですよね。チャンネル登録者も2年で8万人近くまで増えてきたので、YouTubeを通しての活動も引き続き頑張っていきたいなと思っています。 Suke:今年中に銀の盾を手に入れたい! Misaki:チャンネル登録10万人でもらえるんで! Kenji:本当にやってきてよかったと思います。あれによって自分たちのレベルも上がっていると思うんで。 Misaki:シビアなんですよね。毎回「せーの」で演奏スタートして、誰かがちょっとでも失敗したら撮り直しなので。一同:(爆笑)
--そんなThe Biscatsの2ndシングル『ハジけちゃって!Summertime』が完成しました。本作はどんな想いやイメージから生まれた曲なんでしょう?
Misaki:2022年はThe Biscatsにとって大勝負の年なんですけど、その一発目の新作をどうするか考えたときに「夏にツアーをやろう」という話もしていたので、だったら「The Biscatsの夏ソングと言えばコレ!」みたいな曲を作ろうと。それが今回のニューシングル『ハジけちゃって!Summertime』なんです。最初は「ハジけちゃって! コワれちゃって!♪」ってふざけすぎかなと一瞬思ったんですけど(笑)、聴く方にインパクトを与えられるだろうし、すごくポップでキャッチーだなと思って。あと、歌い出しはそんな感じなんですけど、2番から急にすごく切ない歌詞になっていたりするんですよ。夏の楽しさと切なさを感じられる、The Biscatsらしい夏ソングになっていると思うので、キャッさん(The Biscatsファンの呼称)にもぜひ聴いたり歌ったりしてほしいです。 Kenji:今回のMVでは、シボレーベルエア1956という外車をピンクにカラーリングして走らせているんですけど、ドライブソングとしても良い曲になっていると思いますね。ポップだし、爽やかだし、かわいいパリピをイメージしながらレコーディングしたんですけど(笑)、ロカビリーファンに限らず、若い女の子にも好きになってもらえる曲なんじゃないかなって。 Misaki:渋谷とかであのピンクの車を走らせていると、女の子たちに「見て、見て! かわいい!」って言われるんですよ(笑)。 Kenji:ロカビリーカルチャーには、あの車も含めていわゆる「映える」ものというか、女の子が好きそうなモノがいっぱいあるんですよね。最近は日本のレトロも流行っていますし、そういうところから上手く若い層にも……つけこめられたらなって。 Suke:言い方(笑)。でも、こういう可愛らしい、楽しい世界観もロカビリーのひとつの武器なんで、今回の『ハジけちゃって!Summertime』を通して上の世代の人たちには懐かしんでもらって、下の世代の人たちには「こんなに楽しい世界があるんだよ」ということを伝えられたらいいなと思いますね。 Misaki:あと、今作は「ハジけちゃって!Summertime」で女の子の恋心を描いているんですけど、そのお相手の男の子の気持ちをカップリング曲の「Twist Again」で描いていて、そこまで聴いて初めて「あ、彼はこういう気持ちだったんだな」と分かる流れになっているんです。なので、2曲あわせてひとつのストーリーとしても聴いてもらえたら嬉しいです。--そんな新作『ハジけちゃって!Summertime』の反応も楽しみな2022年。先程「大勝負の1年」と仰っていましたが、どんな1年にしたいなと思っていますか?
Kenji:今よりさらに上へ上へ。演奏力もそうなんですけど、The Biscatsを世に広めるという意味でも上を目指し続けて、本物のロカビリーのグルーヴを追求しつつ、新しくThe Biscatsとロカビリーをたくさんの人に知ってもらえる年にしたいです。 Suke:【VIVA LAS VEGAS ROCKABILLY WEEKEND】には出たんですけど、アメリカ以外の海外ではまだライブをしていないので、もっとワールドワイドな活動がしたいです。イギリスとかアジアとかでもロカビリーのフェスはあるので、そういうところにも出て行って、ジャパニーズ・ロカビリーとThe Biscatsの存在を世界中に広めていきたいですね。 Misaki:私は小さい頃から音楽がいつも近くにあって、悲しいときも楽しいときも音楽と過ごしてきたんですけど、The Biscatsの音楽もそんな風に誰かのそばにいられる、それで「明日もがんばろう」と思ってもらえるような存在にしていきたいので、その為にも今年は自分たちが感じたことや経験したことをどんどん曲にしていきたいです。そして、その曲たちをライブでもどんどん広めていけたらなって思います!リリース情報
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Interviewer:平賀哲雄
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