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<インタビュー>平井 大、ライフスタイルと音楽はつながっている――どこまでも自然体なニューアルバム『HOPE / WISH』を語る



平井 大から約3年ぶりとなるCDアルバム『HOPE / WISH』が届けられた。
「Life goes on」(2020年5月)から「「いつも通り」のキセキ。」(2022年4月)まで、この2年の間に配信された楽曲に加え、新曲「HOPE」「WISH」を収録。全39曲を収めた本作には、コロナ禍のなかで数多くの楽曲を途切れることなくリリースを続けた彼の軌跡が刻まれている。
リラクシング&オーガニックなサウンド、日常に彩りを与えるリリック、心地よいフロウを放つボーカル。本作によって、アーティスト・平井 大の魅力はさらに多くのリスナーに浸透することになりそうだ。

Interview:森朋之

出来た順にリリースすることで
生活のなかのストーリーが自然と出てきた

――ニューアルバム『HOPE / WISH』がリリースされます。CDアルバムは2019年の『THE GIFT』以来、3年ぶりですね。

平井 大:そうみたいですね。そんなにあいた感じはしないんだけど、気が付いたら出来てました(笑)。しかも39曲収録。「そんなに作ったんだ?」って自分でビックリしましたね。

――2020年5月に配信された「Life goes on」からはじまって、この2年間に発表した楽曲がリリース順に収録されていて。まさにこの2年の軌跡が詰まったアルバムだなと。

平井 大:1曲1曲、そのときの情景が浮かんでくるし、いろんな思いが込められてますね。「出来た順にリリースする」というやり方は、ずっと前からやってみたいと思ってたんです。アルバムのためにまとめて曲を作って、その中から(シングルを)ピックアップするというスタイルが、どうもフィットしなくて。(コロナの影響で)社会が一変したことで、「じゃあ、前からやりたかったことをやってみよう」と思ったんですよね。それがいちばん、リスナーのみなさんに寄り添えるリリース方法じゃないかなと。

▲「Life goes on」

――曲順通りに聴くと、自然とストーリーが滲んでくる感覚もあります。

平井 大:それはたぶん、日常のなかで音楽を作ってるからでしょうね。生活のなかにストーリーがあるから、それが自然と出てくるというか。同じことをやると飽きちゃうから、「次はこんな感じでやってみよう」「その次はこんなテイストで」という感じもあるんですけどね。いつ止まってもいいと思いながらやってたら、意外と続きました(笑)。

――平井さん自身が飽きないことが大事だと。

平井 大:もちろんです。出来た曲をすぐにリリースすることで、新鮮なままお届けできるし。

――なかなか曲が出来ないとか、締め切りのプレッシャーはなかったですか?

平井 大:ないんですよ、それが(笑)。たぶん、悩みだすとダメなんでしょうね。たとえば曲を作ってからリリースまで何か月かあると、「アレンジをこうしよう」とかいろいろやっちゃうと思うんです。でも、(連続リリースの場合)考える暇もないので(笑)。まあ、もし出来なかったら出さなきゃいいだけだし。2020年は夏休みも取ったんですよ。2年前の夏はコロナの影響でフェスもなかったし、2週間ちょっとくらい休んで。もちろん海外には行けなかったけど、日本の夏の素晴らしさを久しぶりに実感したし、リラックスした時間を過ごせました。

――素晴らしい。曲はどんなスタイルで作ってるんですか?

平井 大:最近は弾き語りから作ることが多いですね。以前はトラックから作ったりもしてたんだけど、めんどくさくなっちゃって。今はギターやウクレレの弾き語りをiPhoneで録って、それをもとにリズムを打ち込んでます。10年くらい一緒にやってるエンジニアと作業してますね。

――言葉とメロディが先にあるんですね。トラックやサウンドメイクもすごく多彩ですよね。

平井 大:曲によっても自然と変化するし、そのときの自分のテンションや気分も入ってると思います。ふだんからいろんな音楽を聴いてるので、その影響もあるかも。 古いものも新しいものも聴くし、アコースティックなサウンドからヒップホップ、四つ打ち系も好きで。そのなかで「こういうアプローチも面白いな」と思うこともありますからね。もちろん、好きなものしか聴かないですけどね(笑)。気分がよくなったり、リラックスできる曲を聴いて、ポジティブな気持ちで曲を作って、それが聴いてくださる方にも伝わって。それがいちばんいいループだと思うんですよね。

――確かに。平井さんの曲、切ないイメージの曲はありますが、痛みや苦しみ、怒りなどフォーカスした歌はないですよね。

平井 大:そう言えばそうかも。普段からあんまり怒らないし、めちゃくちゃ悲しいこともそんなにないし。あと、痛いのが嫌いなんですよ(笑)。「タトゥーかっこいいな」と思ったりするけど、痛そうだからイヤだなって。ピアスを開けるのも怖かったですから(笑)。

――(笑)。ちなみにリスナーの反応をチェックすることはあるんですか?

平井 大:うん、ありますよ。SNSを通して、「この曲をこんなシチュエーションで聴いてます」みたいなメッセージを受け取ると、「聴いてもらえてるんだな」って幸せな気持ちになるので。あと「切ない曲が聴きたいです」みたいな意見を見て、「Sayonara」を作ったり。そのあたりも自由にやってます。

▲「Sayonara」

――みなさんが聴きたい曲を作ることもある、と。

平井 大:もちろんありますけど、思ったような反応が戻ってこないことも当然ありますからね。だからこそ、いろんな曲を出して、好きな曲を自由に聴いてもらえたらいいのかなと。そうやってみなさんの記憶に刻まれて、曲が成長して、広がって。そういう意味でも、これがいちばんいいリリースの方法だと思うんですよね。

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意思や希望、ときには葛藤も素直に表現したかった

――2022年に入ってからも、既に6曲(「もしも、僕がいなくても。」「バレンタインソング」「3月の帰り道」「I’ll be by your side」「願いごと」「「いつも通り」のキセキ。」)をリリース。

平井 大:けっこう出してますね(笑)。

――はい(笑)。「願いごと」は「言いづらいけど、ゆーね/欲しいのは「どうかこの気持ちを…キミに伝えられる勇気」/なんだってことを」というフレーズが印象的なラブソング。

平井 大:この曲はパートナーと出会った頃のことを歌ってるんですよ。よく海に星を見に行ってたんですけど、モジモジしちゃって、自分の本心をなかなか伝えられなくて。いま振り返ると「バカみたいだな」って思うんですけど(笑)、その頃の思い出だったり、甘酸っぱい感じを曲にしたくて。

――「「いつも通り」のキセキ。」にも、パートナーとの日々が描かれていて。今年の8月に父親になることも投影されてますね。

平井 大:かなりパーソナルな歌ですよね。子どものこともそうだし、なんてことのない、いつも通りの日常の大切さを描いていて。そこにはもちろん感謝もあるし、奇跡を感じるんですよね。とにかく日々が楽しいんですよ、本当に。

▲「「いつも通り」のキセキ。」

――素晴らしいですね、それは。日々を楽しくするのが上手いのかも。

平井 大:嫌いなものをどんどん遠ざけてますからね(笑)。食べ物もそうだし、好きな映画を観て、好きな人と一緒にいて。曲作りも大好きなので、ぜんぜん苦じゃないんですよ。深夜までやるときついかもしれないけど、夕食の時間までには帰るようにしているので。

――ライフスタイルと音楽がつながっているんですね。アルバムのタイトルにもなっている「HOPE」「WISH」については?

平井 大:この2曲は、アルバムのために書きました。特に「WISH」には、今、僕が伝えたいことがたくさん詰まっていて。この2年で社会が大きく変化して、ダメージを受ける人も多かったと思うんです。でも、その一方では、目標に向かって走り続けている人もいて。いろんなところで“願い”や“希望”のことを考えたし、僕自身も根本的なことーー幸せとは何か、愛とは何かーーに思いを馳せることもあって。そういうことをこのアルバムに詰め込みたかったんですよね。

――社会の変化に対する影響を受けなかった人はいないですからね。

平井 大:そうなんですよね。自分の内側にこもってしまいがちな時代でもあるし、海外に目を向けると、大変な事態になっていて。僕らは日本から世界を眺めるしかないし、そのなかで日常の生活がある。そこで感じたことをメロディや言葉として素直に表現したかったんですよね。そこには意思や希望、ときには葛藤もあったんですけど、ずっと曲を作り続けて、リリースすることによって、みなさんの近くにいられたのかなと。

――平井さん自身も、希望や願いを見失いそうなることも?

平井 大:どうだったかな……。自分の場合は、曲を作っていれば、見失うことはなかったかもしれないですね。ありがたいことに、曲を聴いて喜んでくれる人たちがいるので。それは恵まれているし、感謝ですね。

▲「HOPE」

「リスナーをハッピーにできている」という自負さえあれば、
あとは自由でいいんじゃないかな

――アルバムのBlu-ray Discには、2020年11月に開催されたオンラインライブ【HIRAIDAI presents The Stay Groovy Show supported by Corona Extra】の映像を収録。

平井 大:海のそばでやったライブですね。オンラインライブも楽しいですよ。インスタやTikTokを使った配信ライブもやってますけど、観てる方が送ってくれるコメントを読むのも好きで。「こんなふうに感じてくれてるんだな」っていう心の声が聞こえるというのかな。生のライブでは感じられないですからね、それは。

――去年から今年にかけて、ビルボードライブでの【Premium Acoustic Live 2021】、全国ツアー【HIRAIDAI Concert Tour 2021-22】などリアルライブも積極的に行ってきました。手ごたえはどうでした?

平井 大:以前のライブとあまり変わらないですね、僕の場合は。もちろんお客さんはマスクをしてるんだけど、特にやりづらいこともなくて。何よりもバンドの仲間と一緒に大きい音で演奏できるのが楽しいし、「やっぱりいいもんだな」って実感しました。ミュージシャンとしてやりがいを感じたし、有意義な時間でしたね。

――ライブにおいても自由度の高さを大事していますよね。

平井 大:そうですね。セットリストは決まってますけど、そのときのテンションが自然と出てくるので。早く帰りたいときはギターソロが短くなったり(笑)。

――えっ!?(笑)

平井 大:それは冗談ですけど(笑)、アンコールでお客さんに「何を聴きたいですか?」って質問して、その場で演奏したり。始まったら誰にも止められないし(笑)、自由ですね。

――そういうライブを楽しめるメンバーが揃っている、と。

平井 大:もう10年くらい一緒にやってますからね。“あ・うん”の呼吸というか、家族みたいな存在です。

――アルバムの初回盤には、プライベートな姿を映した写真をたっぷり収録したブックレットも。

平井 大:はい。アルバムを手に取ってくれる方は、たぶん平井 大を好きでいてくれてると思うし、写真を通して楽曲の背景を感じてもらえるのはいいことなのかなと。そういうものがないと、CDを作る意味がないですからね。曲だけだったら、サブスクなどでも聴けるわけだから。ブックレットの写真もパートナーのLady Brown Picturesに撮ってもらったんですよ。

――そうなんですね! 自然体の写真が楽しめそうですね。

平井 大:メイクもお願いしているし、アーティスト写真も彼女に撮ってもらっていて。そのほうが僕も楽しいし、ストレスがないですからね。


▲Lady Brown Pictures撮影のアーティスト写真

――ストレスフリーな活動の環境、本当にすごいと思います。今の状況を作るまでに時間はかかってるんですか?

平井 大:そうですね。バンドメンバーやスタッフもそうですけど、ここまで来るまでにはいろいろあったので。デビュー当初は、自分自身もどういうスタンスで音楽と向かえばいいか、はっきりしてなかったし……。もともとフロントマンになるとは思ってなかったんですよ。音楽に携わる仕事がしたいとは思ってたけど、楽器を演奏するのが好きで、歌うのは好きじゃなかったので。ところがあれよあれよという間に人前で歌うことになって、「フロントマンって何だろう?」って悩んでしまって。

――「こうしなくちゃいけない」と頭で考えたり?

平井 大:そういうこともあったし、人から「こうすればもっと伝わるんじゃない?」と言われたり。その通りにやっても、上手くいかないんですよ(笑)。いろいろ試行錯誤したんですけど、だんだん「自分が思うようにやったほうがいいな」という感じになって。それが自分らしいパフォーマンスにつながるし、お客さんにも伝わると思ったんですよね。今はありのままで自分の音楽を表現できているし、いい感じですね。

――いい意味で“好きなようにやる”ということですよね。「羨ましい」と思うアーティストも多そうですね……。

平井 大:(笑)。みなさん、好きなようにやればいいと思いますけどね。「(自分の音楽で)リスナーをハッピーにできている」という自負さえあれば、あとは自由でいいんじゃないかなって。自分の場合、曲を作っていれば没頭できるし、余計なことを考えないんですよ。朝起きて、日光浴をして、身体を動かして、アコギを持って曲を作って。それを続けてれば、メンタルも大丈夫(笑)。もちろん、音楽が好きっていうのが大前提ですけど、仕事とプライベートの区別もあまりないんですよ。晴れた日とかだと、「もうちょっと外にいたいから、仕事を夕方にずらそう」とか(笑)。寝ようとしてるときに曲を思いついて、いきなり作りはじめることもあるし。

――そういう日常も含めて、すべてが音楽になっていて。その自然で自由な感じも、リスナーのみなさんを惹きつける理由だと思います。

平井 大:ありがとうございます。自分が作る曲によって、聴いてくれる方の日常が少しでもカラフルになったら嬉しいですね。

平井大「HOPE / WISH」

HOPE / WISH

2022/05/09 RELEASE
AVCD-96911/2 ¥ 2,970(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.タカラモノ
  2. 02.honey, don’t you worry
  3. 03.Hero
  4. 04.Buddy
  5. 05.Malibu Girl
  6. 06.小さな丘の木の下で
  7. 07.Good One
  8. 08.MIRROR MIRROR
  9. 09.ワイキキロンリーボーイ
  10. 10.素晴らしき人生
  11. 11.Peek-A-Boo
  12. 12.ily...
  13. 13.Anniversary
  14. 14.King & Queen
  15. 15.愛しき日々の真ん中で
  16. 16.もしも、僕がいなくても。
  17. 17.バレンタインソング
  18. 18.3月の帰り道
  19. 19.I’ll be by your side
  20. 20.願いごと
  21. 21.「いつも通り」のキセキ。
  22. 22.HOPE
  23. 23.WISH

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