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<特集>【LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL】開催まであと少し “ドリカムだけど、ドリカムじゃない”スペシャルステージは必見
2年越しの初開催が近づく【LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL JAPAN】。イギリスでは、イースト・サセックスで2013年から毎年7月に開催されているヨーロッパ最大規模の野外ジャズフェスティバルだ。日本初上陸のアナウンスがされた一昨年、そして去年と、新型コロナウイルス感染症の影響で開催が見送られ、ついに今年満を持して開催を迎える。すでにチケットを手にしたファンの多くが「今年こそは!」という意気込みで会場となる埼玉・秩父ミューズパークでのライブを楽しみにしていることだろう。
5月14日・15日の2日間を彩る国内外の精鋭が集まったラインナップは改めて紹介する必要もないほど豪華だ。海外からは、セルジオ・メンデス(14日)、ロバート・グラスパー(15日)がラインナップ。ジャズ、ボサノバ、ソフトロック、ヒップホップ、R&Bとジャンルを横断、超越して第一線で活躍を続ける新旧の巨匠の存在がこのジャズフェスにおける自由さと音楽愛を象徴している。さらに、国内アーティストも他のフェスでは見られないようなバラエティの豊かさと深みに富んだシーンの注目株を中心に強力な面々が揃った。
今回注目したいのが、14日のヘッドライナーとして登場するDREAMS COME TRUEだ。すでに発表されて話題となっている通り、今回は【LOVE SUPREME】のためのスペシャルな編成で臨む。ドラマーにはチャカ・カーンやプリンスのサポート・メンバーとしても知られるクリス・コールマン、ギタリストに古川昌義、サックスにJ-SQUADのメンバーである馬場智章と豪華なメンバーが集結。そして何と言っても音楽ファンを歓喜させたのが、世界的ピアニスト上原ひろみを迎えることだ。
2011年の【第53回グラミー賞】で自身が参加したアルバム『スタンリー・クラーク・バンド フィーチャリング 上原ひろみ』が<最優秀コンテンポラリー・ジャズ・アルバム賞(Best Contemporary Jazz Album)>を受賞するなど、世界の舞台で活躍を続ける上原ひろみは、デビューして3年後の2006年にイベント【SWITCH ON LIVE Vol.04 DREAMS COME TRUE ×上原ひろみ】(恵比寿・LIQUIDROOM)に出演し、ドリカムと初共演を果たしている。さらにその3年後となる2009年3月に行われたDREAMS COME TRUEの20周年アニバーサリーイベント【みんなでドリする? DO YOU DREAMS COME TRUE? SPECIAL LIVE!】で再び共演が実現。表現力を増した上原のピアノとそれを真っ向から受けて立つような吉田美和のヴォーカルとのセッションが多くのオーディエンスを魅了した。
それ以来の共演となる両者。しかし、13年という時間的な隔たりよりも、この2年間で世界の誰もが等しく経験した記憶や感情を挟むことによって、今回のステージでのセッションがより貴重で意味のあるものとして目の前に現れるはずだ。
ミュージシャンにとって、ライブの場を奪われるという事態は体が半分引きちぎられるような状況であるのと同時に、ライブを共に創っている仲間とのつながりがなくなる緊急事態に他ならない。そんな中で、DREAMS COME TRUEも上原ひろみも、自分たちのやれることをやれるだけやってきた2年間を過ごしてきた。
先日、4月24日にファイナルを迎えたDREAMS COME TRUEのツアー【DREAMS COME TRUE ACOUSTIC風味 LIVE 総仕上げの夕べ 2021/2022~仕上がりがよろしいようで~】は、ビッグバンドではなくベース、アコースティックギター、アコースティックピアノ、DJ+マニピュレーターという最少編成で全国のアリーナを回るという、彼らにとっては初めての試みとなるものだった。ただ、いきなりアリーナツアーに出たのではなく、コロナ禍でのオンラインライブで培ったコミュニケーションをもとに継続された活動のひとつの完成形として、また、コロナの状況がどうなっても対応できる形態として考え抜かれたタフなものだった。そのライブの中で最も驚かされたのが吉田美和の詩世界だった。いつもより音数が少ない中でより高い解像度を伴って響く彼女の歌声は言葉ひとつひとつに物語と感情をしっかりと乗せてオーディエンスに手渡すような感覚があった。そしてそれこそが、今求められる形の音楽だったのだと思う。
一方、上原ひろみも2020年8月からコロナ禍で苦境に立つライブ業界の救済を願って「SAVE LIVE MUSIC」プロジェクトを始動させた。今年の1月まで計4度にわたって開催した長期公演となった。その中で2021年9月には、自身初となる弦楽四重奏との共演アルバム『シルヴァー・ライニング・スイート』を発表。コロナ禍での感情や今だからこそ生まれる共感を生々しくも美しいグルーヴで表現しきった。
ドリカムと上原が継続して行ってきたそれぞれの活動、想いが秩父で邂逅(かいこう)する。
セットリストの中心を成すのは、吉田美和のソロアルバム『beauty and harmony』(1995年)と『beauty and harmony 2』(2003年)の2作の楽曲だ。この2作の参加ミュージシャンには、デヴィッド・T.ウォーカー(Gt)、デヴィッド・スピノザ(Gt)チャック・レイニー(Ba)、ウィル・リー(Ba)、ハーヴィー・メイソン(Dr)、オマー・ハキム(Dr)、ジェイ・ワインディング(Pf)、ジョー・サンプル(Pf)、ボブ・ジェームス(Pf)、ランディ・ブレッカー(Tp)、グレッグ・アダムス(Tp)、マイケル・ブレッカー(Sax)、エリック・マリエンサル(Sax)ラルフ・マクドナルド(Per)、パウリーニョ・ダ・コスタ(Per)など、アメリカのジャズ、フュージョンシーンにおける錚々たる顔ぶれが集まったことでも話題となった。セッションをしながらレコーディングをしたような緊張感と自由さがある演奏の上で吉田美和のヴォーカルも随所にアドリヴを交えながらジャズ的なアプローチになっているのも特徴だ。
おそらく、この2つの吉田美和ソロ作品をベースとした選曲でのライブ、しかもそこに盟友である上原ひろみが加わっての演奏というのは今後も実現しないだろう。先に当サイトで公開となった中村正人へのインタビューで彼は今回のライブに関してこんなコメントを残している。
「ドリカムだけど、ドリカムじゃないんだよ。吉田美和VS上原ひろみだよ」
吉田美和のヴォーカルと詩世界、そこに上原ひろみの極彩色のピアノが合わさるとき、我々が目にするものはいったい何なんだろう? 想像はつかないが、きっと“LOVE”で“SUPREME(最高)”な生の音楽体験に違いない。やっと、その日がやってくるのだ。
ここで、秩父のチケットが取れなかった!という人に朗報。DREAMS COME TRUE(featuring 上原ひろみ、クリス・コールマン、古川昌義、馬場智章)、WONKの2組による、東京・神戸公演が決定。5月21日に神戸ワールド記念ホール、5月26日に東京ガーデンシアターで開催される。貴重なセットリスト&バンドメンバーで臨むDREAMS COME TRUE、そしてメンバー個々がそれぞれのフィールドで活躍するエクスペリメンタル・ソウルバンドWONKとの2マン、こちらもスリリングな夜となりそうだ。
公演情報
【LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL JAPAN 2022】
- 2022年5月14日(土)、5月15日(日)
- 埼玉・秩父ミューズパーク
- <5月14日>
- DREAMS COME TRUE featuring 上原ひろみ、Chris Coleman、古川昌義、馬場智章/セルジオ・メンデス(ゲスト:SKY-HI)/SIRUP/Ovall(ゲスト:SIRUP、さかいゆう、佐藤竹善(Sing Like Talking))/aTak/kiki vivi lily/チョーキューメイ/沖野修也(KYOTO JAZZ MASSIVE / KYOTO JAZZ SEXTET)/松浦俊夫/YonYon/Licaxxx
- <5月15日>
- ロバート・グラスパー/SOIL&“PIMP”SESSIONS(ゲスト:SKY-HI、Awich、長塚健斗(WONK))/Nulbarich/Vaundy/WONK/Answer to Remember(ゲスト:KID FRESINO、ermhoi、Jua、黒田卓也)/Aile The Shota/DJ Mitsu the Beats/DJ To-i (from DISH//)/柳樂光隆(Jazz The New Chapter)/みの
- チケット:一般・指定席(前方エリア)1日券16,000円(※両日ソールドアウト)、一般・芝生自由1日券13,000円、中学生高校生・芝生自由1日券6,000円、駐車場1日券3,000円(※両日ソールドアウト)
- シャトルバス利用券(往復):2,000円(西武秩父駅⇔会場、約15分)
- ※小学生以下は、芝生自由エリアに限り保護者1名に付き1名まで入場可。
- ※駐車券はイープラスのみで販売。
- ※シャトルバス利用券は、当日、西武秩父駅で販売。
【LOVE SUPREME presents DREAMS COME TRUE featuring 上原ひろみ、Chris Coleman、古川昌義、馬場智章/WONK】
- 2022年5月21日(土)開場17:00/開演18:00
- 神戸ワールド記念ホール
- 2022年5月26日(木)開場18:00/開演19:00
- 東京ガーデンシアター
- チケット:一般チケット14,000円、学生チケット7,000円(※小学生~高校生対象)
- ※すべて税込み
- ※全席指定、未就学児入場不可 チケット購入はこちら
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Live photo by Mikio HASUI
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