日本デビューのきっかけは“小林武史との出会い”

　3月23日公開の“Billboard Japan Heatseekers Songs”（ラジオ、ダウンロード、ストリーミング、週間動画再生数を集計し、その中から急上昇中の新人アーティストを抽出したチャート）で、Lizabetの「Another Day Goes By」が1位を獲得した。

　この楽曲は、Lizabetが3月9日にリリースしたデビュー・シングルのタイトル曲。TBS系日曜劇場『DCU』の主題歌として話題を集め、1月31日の配信初週からダウンロード・チャートで好セールスを記録。“Heatseekers Songs”でも2月23日公開のチャートで20位に初登場、その後も順調に伸ばしてきた。そして、『DCU』の最終回のタイミングでさらに注目を集め、ついに1位に上り詰めたという格好だ。

　最新の3月23日付の“HOT 100”ではラジオ8位、CDセールス30位、ダウンロード5位をそれぞれマーク。幅広いメディアで支持されたことも、チャート・アクションの好調ぶりを支えている。ドラマ『DCU』最終回の放送直前に配信されたインスタライブでは、初めて生歌を披露。ドラマ視聴者を中心にSNSでも大きな話題となった。

　Lizabetは、イギリス人とベトナム人の両親のもと、香港で生まれ育った16歳のアーティストだ。 3歳で音楽活動をスタートさせ、7歳のときに北京音楽フェスティバルに出演。その4年後には中国では最年少となる11歳でオーケストラと共演し、マカオ、上海、シンガポールを含むアジア地域で30公演以上ソロ・パフォーマンスを披露し、現地メディアの注目を集めた。さらに香港でジャクソン5を育てたことで知られるボビー・テイラー（2017年没）とも共演。クラシックからポップス、ソウル・ミュージックまで幅広いジャンルで才能を発揮してきた。

　彼女の日本デビューのきっかけは、小林武史との出会い。小林はLizabetに対し「“歌うために生まれてきたような才能”と初めて会ったかもしれないと思った。」「アジアから世界と繋がっていく新しい音楽の役割を、彼女が果たせるのではないかと期待している。」と最大級の賛辞を送っている。アジアから世界を見据える若き才能と、数多くのヒット曲を送り出してきたトップ・プロデューサーによる最初の楽曲が「Another Day Goes By」だ。

愛と悲哀、力強い決意の歌

　美しくも繊細なシンセの旋律、荘厳なスケールを感じさせるストリングスから始まる「Another Day Goes By」。1分を過ぎたタイミングで心地よい響きをたたえたキックが加わり、それが楽曲の推進力につながる。奥深い物語性を備えたメロディライン、ホーリーな雰囲気のコーラスも絶品。アジア的なエキゾチズムとクラシカルな手触りを兼ね備えたバラード・ナンバーは、グローバルを視野に入れた彼女のデビューにふさわしい。

　英語による歌詞は、Lizabet自身が手がけている。この楽曲に向けて彼女は「愛と悲哀について、そして何より、希望と困難を乗り越えようと」とコメント。における慈愛や祈りに通じる感情、そして、という力強い決意を放つこの歌は、ドラマ『DCU』の物語に沿っているだけではなく、数多くの困難が立て続けに起こり、まったく先が見えない世界を生きる人々に大きな勇気を与えてくれる。真っ直ぐな思いをストレートに描ける純粋さも、彼女の魅力だろう。

　カップリング曲も充実。「Reaching for the Stars」の、ピアノと歌からはじまり、オーガニックなバンド・サウンドへと移行するアレンジメントは、小林武史がもっとも得意とするところ。賛美歌のような神秘性と70年代ロックの力強さを共存させたメロディ、そして、幸せだった過去、苦難に包まれる現在、それでも希望の光を求めようとする意思を描いた歌詞がひとつになった、普遍的な力を備えたバラードだ。さらに「Swallowtail Butterfly ～あいのうた～」（YEN TOWN BAND）の英語詞カバーも収録。音数を抑えたトラックによって、彼女の繊細な歌の表情を堪能できる。

　すべての中心にあるのはもちろん、Lizabetのボーカルだ。豊かな声量や正確なピッチなどの技術的な部分も素晴らしいが、もっとも印象的なのは、その表現力。リスナーに語り掛けるような親密さと、大らかなカタルシスへと導くスケール感を併せ持ったボーカリゼーションは、天賦の才としか言いようがない。聴き取りやすい英語の発音を含め、グローバル・ポップのど真ん中で活躍できる才能だと断言したい。

　3月22日には公式YouTubeチャンネルにて「Another Day Goes By」のスペシャル・ライブ映像を公開。香港の美しい夜景を背景に、真っ赤なドレスに身を包んだLizabetが帆船の甲板から美しい歌声を響かせるパフォーマンスに対し、「This song touches my heart every single time」「声が透き通ってて美しすぎる」といったコメントが数多く寄せられた。楽曲のクオリティ、歌の魅力によって、純粋にリスナーを惹きつけてやまないLizabetのキャリアは、まだ始まったばかり。16歳の彼女がこの先、その歌声でどんな情景や思いを描き出し、人々にどんな影響を与えるのか。そのストーリーを世界中の音楽ファンと共有したいと思う。

Text by 森朋之