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<インタビュー>ENVii GABRIELLA、メジャー1stミニアルバム『Metaphysica』に込めた「何でもやる」という意思



 クールな楽曲とピンヒールでの本格的なダンスがかっこいい“オネエグループ”、という唯一無二のポジションを築いている通称“エンガブ”こと、ENVii GABRIELLA。2021年10月22日にキングレコードからメジャーデビューを果たし、3カ月連続デジタルシングルリリースでインディーズ時代とはひと味違う新たなエンガブ像を見せてきた。そして、3月9日にはメジャー1stミニアルバム『Metaphysica』をリリース。Billboard JAPANでは、同作についてインタビューを行なった。作品の魅力はもちろん、彼らの考え方や音楽への向き合い方も味わってみてほしい。

「Finally Found You」を1曲目にした理由

――昨年10月のメジャーデビューから3カ月連続楽曲リリース、今回のアルバムリリース、YouTubeチャンネル登録者数17万人突破と、順調な活躍をされていらっしゃいます。この現状をどんな風にとらえていらっしゃいますか。

Takassy:順調だというのは肌で感じています。よく3人で話しているのは、関わってくださる方が増えたよねということ。自分たちでやっていたインディーズの期間が長いので、その変化はすごく感じますね。スタッフの方が楽しそうにやってくださっているのを見ると、いい雰囲気でできているのかなって思います。

HIDEKiSM:やりたかった活動ができるようになって、それを実感している真っ最中なのでとにかく嬉しいです。その反面、プレッシャーに感じることも増えていて。関わってくださる大人たちの期待に応えたい、一緒に成功したいという思いが強いんですよね。でも、ネガティブな感情というよりも、その緊張がワクワクして楽しいというイメージ。そんな毎日を送らせていただけるのはありがたいですね。

Kamus:インディーズの頃にお世話になった方への感謝も忘れちゃいけないよね。初心を忘れないようにしよう、傲らないようにしよう、とよく3人で話しています。

――インディーズ時代のかっこよさはそのままに、今までにないテイストの楽曲もあったりと、デビューからの楽曲も話題になっていましたね。この3曲をリリースしたことで、心境的な変化はありましたか。

Takassy:キングレコードさんとの一番最初の話し合いの時に、『Metaphysica』をリリースすることまでは話に出ていたんです。リード曲も「THEオネエ」な曲にすることは決まっていたので、それまでにリリースする3曲は今までと全然違う曲を持ってきたかったという意図がありました。私たち3人ともサプライズがすごく好きなんです。なので、既定路線の楽曲をリリースして「ああ、よくいるオネエの人たちね」って思われるのがすごく癪だったんですよね。

HIDEKiSM:私たちの活動の中で一番大きくなっているのがYouTubeなんですけど、動画では面白おかしいことばっかり言ってるんですよ。そこで興味を持ってもらって、音楽を聴いてみようってなった時に「え、結構ガチじゃない?」みたいな裏切りもしたいなって。

Takassy:第1弾で「Moratorium」が来て、次にエンガブっぽい曲が来るかなと思ったら、80's風の「Dystopia」が来て。次はクリスマスイブのリリースだからハッピーな楽曲が来るだろうというところで一番ドぎつい「Cabaret」を出すっていう(笑)。全部どうやったら予想を裏切れるかを考えていました。


▲「CABARET」 Lyrics Video / ENVii GABRIELLA

――それに続いて、1stミニアルバム『Metaphysica』のリリース。アルバムのコンセプトは「様々な視点で捉えていく」、タイトルの「Metaphysica」は「目に見えない本質を追求していく」という意味が込められているとお聞きしています。

Takassy:メジャーデビューをして我々を目にしていただく機会が格段に増えました。オネエっぽいアルバムを出そうと思えば出せましたし、それが望まれているのかもしれないですが、「私たちは何でもやるよ」という意思を8曲で表現したかったんです。それで、全部違うジャンルの楽曲にして、コンセプトとタイトルを付けました。

――今回はシングルリリースされていない楽曲についてお伺いさせてください。1曲目の「Finally Found You」は、リード曲ではないんですよね。一般的にアルバムリード曲は1曲目に入ることが多いと思うのですが、あえてこの曲をはじめに持ってきた理由はあるのでしょうか。

HIDEKiSM:大変嬉しい質問ですね(笑)。

Takassy:この曲は我々としてもずっと歌い続けていきたい楽曲なので、絶対1曲目にしたいって言い続けていたんです。

HIDEKiSM:よくシングルカットされていないのに、ファンの方のアンケートや投票で絶対ランキングに入るアルバム曲ってあるじゃないですか。「Finally Found You」はそういう曲に成長すると思うんですよね。それに、どんな人が聴いてもその人に寄り添えるような楽曲になっていると思います。

――楽曲にはどんな思いが込められているんでしょうか。

Takassy:「Sexuality」というワードをあえて入れているんですけど、あまり重くは捉えてほしくなくて。そもそもこのアルバムタイトルの「Metaphysica」は「外側から物事を捉える」という意味なんですね。それを体現している楽曲というか。この曲をゲイである私たちが歌っているものだから、「ゲイの恋愛って大変そうだよね」って見えるかもしれないですけど、人間という外側からの視点で見るとヘテロセクシュアルでも一緒だと思うんですよ。同じように歌詞にあるような思いを抱くと思うんです。そういう意味でも「Metaphysica」というタイトルに一番近いメッセージ性があると思っています。

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「女優(仮)」はコロナが一番ひどかった時に生まれた

――3曲目の「Ride/Reboot」はいかがですか。

Takassy:実はこの曲、エンガブを結成する前に別のアーティストのコンペに出すための曲だったんです。でも、エンガブにハマりそうだったので戻して使っていたのですが、あんまりしっくり来ていないメンバーがいらっしゃって(笑)。

Kamus:誰だろ(笑)。

Takassy:男性アーティストの方へ提供予定だったので、男っぽすぎて歌っていてあんまりしっくりこないって言っていてたんですよ。ただ、ライブでやるとすごく盛り上がるので、ファンの方からは人気なんですね。『Metaphysica』に収録する、しないの話が挙がっていた時、今収録しないと二度と作品に入れないよねという話になって、Carlos Kさんにガラッとアレンジを変えてもらいました。HIDEKiSMさん、これなら大丈夫ですか(笑)?

HIDEKiSM:大丈夫よ(笑)! 自信を持ってお届けさせていただいています。

3人:(笑)

HIDEKiSM:違うの。嫌いだったとかじゃなくて、我々を知っていただく上でアレンジ前のテイストだとブランディングとしてどうなのかなっていうのが引っかかっていて。でもファンの方から収録してくださいっていう熱い要望があったので、私が勝手に凝り固まっていたのかなって後々思いました。



HIDEKiSM


――アレンジされたものを聴いていかがでしたか。

HIDEKiSM:今までのタイトルは「Ride」だけだったんですよ。それに「Reboot」がついてブラッシュアップされて。疾走感があってカッコいいなって思いました。

Kamus:めっちゃ他人事(笑)。

HIDEKiSM:すごいいいなって思ってる! 夜の首都高を駆け抜けたいなって(笑)。本当に私自身が納得して、収録させてもらった楽曲の一つです。

Takassy:全然違う8曲が入っているので、「Ride/Reboot」があっても違和感がないというのもありますよね。メンズライクなパフォーマンスも作ってもらっているんですけど、多角的にエンガブを見てもらうには良いのかなと思います。

――4曲目は「Sorry Not Sorry」です。

Takassy:この曲はリベンジソングじゃないですけど、今まで自分をバカにしていた人へというメッセージを面白おかしく歌っています。私自身が普段からここまで深い恨みを抱えているわけじゃないんですけどね(笑)。曲調的にハマりそうだったので、ちょっとイキってるオネエ像を出したくてこういう歌詞にしました。

HIDEKiSMKamus:あははは!

Takassy:自分たちのことを歌ってはいるんですが、こういうことを思っている人って結構いるはずなんですよ。世の中の人ってみんな性格悪いじゃないですか(笑)。だから誰にでも当てはまるというか。ムカつく人に対してみんなこう思うんじゃないかなと思って書きました。

――わかります(笑)。そして6曲目の「女優(仮)」もまた違った雰囲気の楽曲ですね。

Takassy:この曲はコロナが一番ひどかった時に生まれた楽曲です。

HIDEKiSM:アルバムの中で一番コロナの影響を受けている楽曲よね。

Takassy:そうなんです。私の知り合いで医療従事者の方がいるんですが、すごく頑張っていたんですよ。でも、世の中的に医療従事者はコロナが蔓延しているんだから忙しいのは当たり前という風潮があって。他の仕事の方も大変さが目立たなくなって、大変なことが当たり前になってしまっていましたよね。そういう時に言ってほしい言葉って労いの言葉や励ましの言葉じゃなくて、「ちょっと休んでいいよ」とか「辞めていいよ」とかだったりするんじゃないかなと考えていました。芸能人の訃報もありましたけど、そういう言葉を掛けていたら悲しいことにならなかったかもしれません。そんなことを思っていた時にふとこの曲が出てきました。今のご時世、誰もが女優のように笑顔を演じて大変さを見せないで仕事をしているけど、素に戻った時は相当メンタルがやられているし、世の中の叫びを反映した楽曲です。



Takassy


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振り付けはどのようにして作っている?

――そしてリード曲の「ハッピーハッピーウェイウェイドンチー」。「意味なんて考えず、今日は楽に行こう」というテーマがありますが、このテーマを掲げたのはなぜなのでしょうか。

Takassy:年末に何時間も音楽番組を見てたんですが、始めから最後まで「頑張ろう」、「愛は大事だ」、「命は大切だ」という感じの曲ばかりだったんですよね。その年のホットな曲が並ぶわけですから、コロナが流行っていた2021年はそういう曲が集まって当たり前なんですけど、なんだか疲れちゃって(笑)。「頑張るのはもうわかった」って思っていた時に、リード曲は歌詞に意味のない曲が良いなって思ったんです。で、そのちょっと前のYouTubeでこの人(HIDEKiSM)が「ハッピーハッピーウェイウェイドンチー」って言っていて、その語呂とリズム感がめちゃくちゃいいな、タイトルこれにしよう、と(笑)。


▲「ハッピーハッピーウェイウェイドンチー」Music Video (Short ver.) / ENVii GABRIELLA

――このタイトルになった時、HIDEKiSMさんはどう思われましたか?

HIDEKiSM:狂ってるなって思いました(笑)。バカみたいって!

TakassyKamus:(爆笑)

HIDEKiSM:でも深く掘り下げていくと、その狂ってる、バカみたいってすごく大切なんですよね。Takassyの「すでにみんな頑張っているから、もうバカになりたいよね」っていう気持ちがすごく感じられましたし。最初にデモを送ってもらった時は、終始爆笑で「最高! これこれ、こういうのが欲しかった」みたいな。でもこの曲、歌ってみると結構難しいんです。だから、あんまりバカになれないの(笑)。

――(笑)。Kamusさんはこの曲を聞いてみていかがでしたか。

Kamus:インディーズ時代に出してる「オダマリナサイ」、「豪華ネェサン」に続き、どんなものが来るのかなと思っていたら、これが来て。タイトルも相まってかなり笑いましたね。



Kamus


――振りもハードとのことですね。

Kamus:「ハッピーハッピーウェイウェイドンチー」のサビの振り付けは、先輩ダンサーの電撃チョモランマ隊・EBATOさんにつけていただいていて。結構激しいので、体幹を鍛えるトレーニングにもなると思います。

Takassy:クラブで飲みながら夜通し無我夢中で踊った、明け方の疲労感を1曲で体験できる(笑)。

Kamus:難しいことはしていないんですけど、400メートルを全力疾走した後みたいな感じ。

Takassy:MV撮影の翌日、わけわかんないところが筋肉痛になったりね(笑)。

HIDEKiSM:もちろんハイヒールも履いているから、やばいよね。

――MVの見どころはありますか?

Kamus:サビで我々がどこまでバカになっているか、ですね。もしくは一緒に踊っていただけるなら、どこまで一緒にバカになれるか試してほしいです。

Takassy:あとはガニ股でドリフみたいなステップを踏むところね。

Kamus:そうですね。かっこよく踊っちゃダメなんです。

HIDEKiSM:だから私、これを歌ってる時に「本当にこれでよかったのかな?」って思っています(笑)。思い描いていた歌手になれたのかなって思うときあるんですけど、バカになってるから「もういっか!」って。それで歌い終わった頃にはハッピーになって、「これでよかったんだ」って思うから不思議!

――MVが楽しみです(笑)。Kamusさんが手掛けられた振りで大変だった楽曲はありますか?

Kamus:「Dystopia」かな。だけど、完成して気持ちよかったのは「Cabaret」。

Takassy:「Dystopia」はどうして?

Kamus:今までにないテンポ感だったし、歌詞も愛について語っている一方で応援ソングにもなっているので、その表現をどうしようって。なかなか形にするのが難しくてすごく悩みました。逆に「Cabaret」は最初にTakassyから世界観を聴いた時に制作意欲がすごく湧いて、作っていて一番楽しかったです。



Kamus


――振り作りのインスピレーションはどこから受けているんですか?

Kamus:まずTakassyの中で出来上がっているイメージを聞いて、そのイメージに近い映画やアーティストさんを教えてもらったり、ダンスのトーンやスピード感を聞いたり、細かくすり合わせをしています。だいたい夜中に振りを作るんですけど、「ここどうしよう?」っていう箇所がでてくるんですよね。それでTakassyに電話するんです。

Takassy:この間も夜中の3時半に電話がかかってきました。

Kamus:でも出てくれるんですよ(笑)。それでつい長話しちゃったり。そういうのも振りを作る楽しい部分なんですよね。

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レコーディングが毎回戦いになる

――HIDEKiSMさんは今回のアルバムで印象に残っているエピソードなどありますか?

HIDEKiSM:今回のアルバムも含めて私たちの曲って幅が広いので、楽曲によって歌い方が違うんですよね。そのディレクションをTakassyがしてくれるんですが、その都度ディスカッションがあるのでレコーディングが毎回戦いなんです。

Takassy:あはは!

HIDEKiSM:「こういう歌い方のほうが雰囲気が出るよね」とかアドバイスをもらって、自分の引き出しを漁りまくって歌ってるんですが、その引き出しをTakassyが増やしてくれているというか、自分との戦いに付き合ってもらっているというか。今までって自分の引き出しが少なかったから、なんでこういう歌い方ができないんだろうっていたたまれなくてレコーディングがすごく嫌いだったんですよ。でも、Takassyに付き合ってもらって声の振り幅や歌い方が広がって、レコーディングが楽しみになりました。その自分自身の成長もこのアルバムで表現できたのかなって思います。



HIDEKiSM


――幅広いジャンルの楽曲というお話が出ましたが、楽曲を作っていらっしゃるTakassyさんはこれだけのアイデアをどこからインプットされているのですか?

Takassy:好き嫌いしないってことですかね。私、もともとは1つ好きな曲があるとそれしか聴かないタイプだったんです。でも、横浜のバーでお客さんからリクエストが入った曲を必ず歌うっていう仕事をしていた時にそれが変わりました。リクエストされるのがすごく古い曲だったり、80’sロックだったり、ビートルズだったり、グループサウンズだったり、バラバラだったんですね。そこでジャンルに関係なくかっこいい曲っていっぱいあるんだって勉強できました。最近はインドのチャートを聴いているんですけど、R&Bやハウスっぽい楽曲も、いわゆるインド音楽もランキングに入っていてすごく面白いんです。そういったものを普段から聴くようにしていますね。



Takassy


HIDEKiSM:今回のアルバムで言えば、Carlosさんがアレンジをやってくれたことでさらに楽曲の幅も広がったよね。

Takassy:そうね。キングレコードさんから「Carlosさんはジャンルにこだわらない方だから、たぶんエンガブに合うよ」って紹介いただいたんですが、本当になんでも作れる方。Little Glee Monsterの楽曲もやれば、アニソンもやっていらっしゃったり。そんなCarlosさんの力もあって柔軟にエンガブの世界を表現できるようになりました。

――この先も、ドンドン進化していきそうですね。それでは最後にこの先の目標や夢を教えてください。

HIDEKiSM:えー、飲み屋とか?

Takassy:やめてよ、本当に行き着く先じゃん!(笑)

3人:(笑)

Takassy:いろんなインタビューで言っているけど、有名音楽番組に出るとか、武道館でライブをするとか、「有名になったよね」って言われることは全部やり尽くしたいです。今、口に出したら恥ずかしいようなことも、堂々と「やりたい」って言いたい。

HIDEKiSM:オカマたるもの欲張りなんですよ。ジャンルレスな音楽をやっているのも、結局欲張りだから。なので、活動していく上での目標も欲張りでいたいですね。

Takassy:そうね。あとはコンセプトアルバムとか、2枚組とか、アルバムの形体は全部やりたいよね。Kamusっちは何やりたいの?

Kamus:大体一緒かな。ホールツアーとか、ドームツアーとか。あとは、いつまでもこうやって笑っていられたらいいわね。




ENVii GABRIELLA「Metaphysica」

Metaphysica

2022/03/09 RELEASE
KIZC-662/3 ¥ 4,400(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.Finally Found You
  2. 02.CABARET
  3. 03.Ride / Reboot
  4. 04.Sorry Not Sorry
  5. 05.DYSTOPIA
  6. 06.女優(仮)
  7. 07.Moratorium
  8. 08.ハッピーハッピーウェイウェイドンチー

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