Special
<インタビュー>Chara、デビュー30周年を飾るオーケストラ公演に向けて
2021年9月21日でデビュー30周年を迎えたCharaが、世界的に活躍する栁澤寿男の指揮によるオーケストラ公演【billboard classics Chara 30th ANNIVERSARY Premium Symphonic Concert 2022- Charaʼs Time Machine -】を兵庫と東京で開催する。神秘的で独特な存在感で愛と生の痛みや切なさを歌ってきたchara。 1991年のデビュー時は「ヒップホップ以降のソウル/ファンクを歌うシンガー」と位置付けられ、自身のライブではオルタナティブなロックミュージシャンが集った<オーロラバンド>を経て、近年はソウル/ニュージャズ周辺の若手ミュージッシャンとのセッションを精力的に行ってきた彼女は初となるシンフォニックサウンドとのコラボレーションでどんな融合を果たすのか。30年目にして果敢に新たな冒険に挑む彼女に話を聞いた。
デビュー30周年を振り返って「さらに言葉の面白さや奥深さを感じるようになってる」
――2021年9月21日にデビュー30周年を迎えました。これまでを振り返ったりしましたか?
Chara:2021年の12月に『Chara’s Time Machine Book』(小学館)を作ったからちょっと振り返りましたね。ビジュアル的にはまさに私の“Time Machine”みたいな感じになっているし、SUMIREとHIMIが素敵な対談をしてくれていて。すみれも大きくなって、今年の夏で27歳になるんだよ。びっくりしちゃうじゃん。
――(笑)。23歳の時にシングル『Heaven』でデビューしたCharaさんが4枚目のアルバム『Happy Toy』をリリースした頃の年齢になってますね。
Chara:面白いよね。私がすーちゃんを産んだのが26歳だから。HIMIは、私とは関係のないところでシンガーソングライターとしても活動してて。あの人も22歳だからね。
――デビュー30周年記念プロジェクト第3弾として、お二人がセレクトしたLP『CHARA'S TIME MACHINE』が3月14日に2枚同時リリースされます。
Chara:そうなんだよね。二人で相談したかどうかもわからないけど、3曲被ってたね。二人が好きな感じはだいたいわかっていたけど、すうちゃんは割と女の子っぽいフィールの選曲かな。HIMIはシングルではない「Violet Blue」を入れてて。
――以前、ライブでCharaさんとHIMIくんでデュエットしたこともありましたね。
Chara:前に「かあちゃんの曲の中で一番好き」って言ってたからね。面と向かって「あれはいいね」って言われた時は嬉しかったな。二人が被ったのは、16thシングル「ミルク」(1997)と21thシングル「大切をきずくもの」(2000)と、そこに17thシングル「DUCA」(1998)が入ってて。
――大ヒットアルバム『Junior Sweet』のオープニングナンバーである「ミルク」はライブでもお馴染みですし、「大切をきずくもの」は以前、「息子が生まれた時に遺書みたいに書いた」とおっしゃっていたのでわかりますが、「DUCA」が被るのは意外ですね。「ミルク」の次のシングルではありますけど。
Chara:そう、私も意外だった。へーと思って(笑)。ただ、すぅちゃんは「DUCA」ツアーのアンコールで抱っこして歌ったりしてたから、一緒にツアーを回った記憶があるのかもしれない。選曲理由は聞いてないんだけど、その3曲は何かあるのかなと思ったりしましたね。あと、私はライブをやるときに音楽で振り返ったりもしてて。ライブ前に選曲をするときにいろんなアルバムを聴き直したりするから。そうすると、言葉や声の使い方がいろいろ変化したり、進化したりするのがわかったりして。
▲「ミルク」ミュージックビデオ
▲「大切をきずくもの」ミュージックビデオ
――ご自身はどんな変化を感じてますか?
Chara:やっぱり言葉だね。子供を持つ前と後では全然違う。子供にとっては、親は身近にいる、一番影響力のある大人だし、発言したものは出したら引っ込められないでしょ。子供に影響力があるって思うと、言葉の重みをより感じたし、一方で、シンプルな言葉を使うことに抵抗がなくなっていった。使う言葉が広がったっていうのかな。若いときはさ、人が使ってる言葉はイヤだったのね。誰とも比べられない独特の言葉がいいって。だから、自然とミステリアスな方にいってたけど、普遍的な言葉も素敵なんだなと思うようになって、抵抗なく使うようにもなった。それが今、30年近くやってきて、さらに言葉の面白さや奥深さを感じるようになってるね。もともとメロディは好きだし、グルーブは大事にしてきたけど、今は言葉にも興味があるかな。
――言葉で言うと、近年は「恋」の旧字をほどいた「糸し糸しと言う心」や「親密さ」「愛を身篭る」などのキーワードが上がってました。
Chara:いまも“糸編”は相変わらず気になってる。例えば、“纏う”っていう言葉とかね。あと、“面影”がきてるね。コロナ禍での友達の死も関係があると思うけど、“面影”って言うワードを使いたい気持ちがある。私はさ、ずっとグルーブを大事にしすぎてて。もっと言いたいし、伝えたい言葉がいっぱいあるんだけど、リズムにのせるために無くすものも多かったのね。でも、なるべく無くしたくないっていう気持ちがだんだん強くなってきてて。グルーブを生かしながらも、これだけは言いたいっていうのをなるべく無くしたくない。言葉遊びも好きだし、オノマトペも好きだし、言葉のないところに込める感情も大事だけど、ここ数年は、その独特が強くなってきている気がするかな。
――いつか音符と言葉数に縛られないポエトリーリーディングのようなものも聴いてみたいです。29年目にお会いした時は「新しい私に出会いたい」とおっしゃってましたし。
Chara:私は冒険家だからね。いつも新しいものに興味あるんだよね。普通に音楽を楽しみたいし、生活も楽しみたい。私は音楽は生活の一部だと思ってて。自分がどういう生活をしているかが音楽に反映されていく。そういう意味では、新しい私になるに決まってるよね。スタッフがこれだけ新しくなってるから(笑)。
公演情報
【billboard classics Chara 30th ANNIVERSARY Premium Symphonic Concert 2022 - Chara's Time Machine -】
2022年3月27日(日)OPEN 16:00 / START 17:00
兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
2022年4月15日(金)
OPEN 17:30 / START 18:30
東京・Bunkamuraオーチャードホール
出演:Chara
指揮:栁澤寿男
管弦楽:
【兵庫】日本センチュリー交響楽団
【東京】東京フィルハーモニー交響楽団
編曲監修:山下康介
主催・企画制作:ビルボードジャパン(阪神コンテンツリンク)
後援:米国ビルボード
公演公式サイト
チケット:11,000円(全席指定・税込)※未就学児入場不可
一般発売 2022年2月26日(土)10:00~
チケット取扱いプレイガイド:
【兵庫】
ローソンチケット/チケットぴあ/イープラス/CNプレイガイド/楽天チケット
【東京】
ローソンチケット/チケットぴあ/イープラス
コンサートに関するお問い合わせ:
【兵庫】キョードーインフォメーション 0570-200-888 11:00~16:00(日曜・祝日は休業)
【東京】ディスクガレージ 050-5533-0888(平日12:00~15:00)
リリース情報
『CHARA'S TIME MACHINE (Selected by SUMIRE)』
2022年3月14日 リリース<完全生産限定盤(LP)>
MHJL-206 4,070円(tax in.)
『CHARA'S TIME MACHINE (Selected by HIMI) 』
2022年3月14日 リリース<完全生産限定盤(LP)>
MHJL-207 4,070円(tax in.)
関連リンク
Interview:永堀アツオ
Photo:辰巳隆二
Stylist:Shohei Kashima(W)
衣装協力:G.V.G.V./LALOH/MAISON SPECIAL
オーケストラ公演への想い「クラシックの方と融合する新しい形はあると思う」
――(笑)。2021年の秋に日本コロムビアに移籍され、マネージメントのスタッフも一新されましたね。
Chara:新しいスタッフさんたちだから、まだ緊張もあるよ。何か一緒に作ったりしないとわからないこともいっぱいあるし。まだみんな遠慮してるところもあるだろうし、それぞれの才能をどう発揮しようか模索してるところだけど、わかりやすく心機一転してて。チームが新しくなっているので、これから関係を深めていけたらいいな。
――移籍第1弾ワークと言っていいんですかね。オーケストラ公演の開催が決定しました。
Chara:新しいチームでの初仕事だね。コロムビアのスタッフさんのチームから、「やってみたいけどどうかな?」というお話をいただいて。とてもいい機会だし、ちょうどいいかなと思ったんだよね。まだツアーをたくさんやる状況にはなってないし、自分のライブでも換気の時間を入れた2部構成にしてて。クラシックは元々2部構成らしいし、お客さんもクラシックのコンサートは座って静かに聴くから。ただ、今回は2公演しかないんだよね。もうちょっとやりたいって思うかもしれないけど、20本でも10本でも1本でも、準備は同じなんで(笑)。だから、貴重なライブになると思います。
――クラシックのオーケストラとの共演の経験はありますか?
Chara:そんなに長いギグではなかったんだけど、一度だけ、東フィル(東京フィルハーモニー交響楽団)さんとやったことがあって(『NEW CLASSIC GIG in JAPAN’08』/2008年8月)。その時はアレンジャーさんや演出の人とそんなにやりとりをしてなくて。私は歌うだけという感じだったんだけど、「やさしい気持ち」がすごく楽しかったなという記憶が残ってて。他の大変だったことはちょっと、忘れちゃいましたね(笑)。すごい楽しかったな、もっとやりたいなという印象があったから、30周年の記念の一環としてbillboard classicsさんのコラボは、とってもいいな、素敵なタイミングだなって思いましたね。
――あと、デビューの頃に……。
Chara:そうそう。テレビの企画でニューヨークのジュリアード音楽院に行って、学生さんとコラボしたことがあって。その時は全然うまくいかなくて、泣いちゃったりしてたね、私(笑)。「Violet Blue」をやったんだけど、なんか違うってなって。でも、どう違うのかを説明できないし、ダメだったのね。自分が足りなかったんだと思うな。そのあと、マジソンスクエアガーデンの前で、ブルックリンのゴスペルシンガー達と「Heaven」を歌って。めっちゃ雪が降っちゃったから、予定の半分くらいしか来てくれなかったんだけど、おじいちゃんやおばあちゃん達が素晴らしくて、いい感じだったんだよね。だから、テレビのストーリー的には、クラシックはダメだったけど、ゴスペルはよかったっていうストーリー仕立てだったと思う。私は別にクラシックがイヤなわけじゃないけど、ちょっと悔しい思いもしたのね。だから、30年経って、日本のクラシックをちゃんと勉強されてる方達とセッションするのは、すごいやりがいがあるじゃん。ジャンルじゃなくてね。音を愛する世界。今回は「Violet Blue」でリベンジするっていうことではないんだけど、クラシックの方と融合する新しい形はあると思うので、すごく楽しみですね。
――グルーブの人で、ファンクの人だと思ってる部分もあるので、クラシックとの融合がまだ想像ついてないんですよね。
Chara:ずっと昔に、私の親友に「どういうライブが見たい?」って聞いたら、「それはもちろん、クラシックとの共演がみたい」って言ってたのね。今、それを思い出した。そういう人がたくさんいるかもしれないね。どういう意味でその友達は言ったんだろうな。想像できないという意味を含んでいるのかもしれない。もしくは、生の楽器を聴くときの緊張、Charaがどこまで緊張させてくれるのか。または、それをどこから打ち破っていくのかとか。わかんないけど。なんか、起こすかもね! って思うのかな。ハラハラするのかな。
――近年はソウル/ジャズ寄りの若手ミュージシャンとセッションすることが多かったですし、オルタナティヴミュージシャンの集まりであるお馴染みの<オーロラバンド>の時はより自由に動き回っているイメージがあるので。
Chara:みんな歳をとると頑固になりすぎるじゃん。そうじゃない方が人間っていいだろうって思ってて。生きやすいというか、素敵な気がしていてるので。もちろん、アーティストさんには頑固なところが必要だと思うんだけど、私は意外と、実生活で頑固すぎて付き合いにくい人は嫌なんですよね。人生、そうじゃないのがいいから、いろんなやり方を挑戦したいと思ってて。ぶっちゃけ、うまくいかなくて泣いてもいいと思うし。
――あはははは。
Chara:ステージ上に立っていれば、つま先から頭まで、私の表現の1つになるからね。
――Charaさんとしては、どんなコンサートになりそうだなと想像してますか。
Chara:まだ譜面もアレンジもできてないんだけど、例えば、街だとすると、ここの建物はどかしたほうが光が入りますねとか、隙間作りの提案はしたいなと思ってる。その調整はこれからかな。たとえば、バンドがいても、私の「やさしい気持ち」はベースレスなんですね、基本。ベースが入るのは大サビだけ。だから、全部でやらなくてもいいし、曲によってはハープの方だけのところがあってもいいなとか考えてて。1stアルバム『Sweet』(1991)や2ndアルバム『SOUL KISS』(1992)の曲も歌いたいし、オーケストラ演奏だけを楽しんでいただくコーナーもあったらいいなと思ってて。私も1曲くらいは自分の曲をオーケストラ演奏だけで聴きたい。私、歌うのも好きだけど、曲を作るのが好きだからね。
――ご自身で何か楽しみにしてることはありますか。
Chara:2部はちょっといつものCharaの雰囲気にはみ出していきたいなと思ってます。あとね、かつて、『これもうライブでは歌えないな、難しくて』と思っていた曲をあえて歌ってみようと思ってて。5thアルバム『Junior Sweet』(1997)に入ってた「花の夢」は、当時のライブ以降、ほとんど演っていないんだけど、メニューに入れてる。私は逃げません! みたいな感じだね。そうやってトライしていかないとなと思ってて。そのままでもある程度はいい感じのCharaでいられるけども、もうちょっと先にあたらしい世界があるんじゃないかって。努力って大事だなと思うんだよね。努力するのは楽しいから。
▲「花の夢」Spotify
――【Chara’s Time Machine】というタイトルにはどんな思いを込めてますか。
Chara:妹の旦那で私の義弟がアメリカ人なんだけど、彼が【Chara’s Time machine】がいいって言ってくれて。彼は元々Charaのファンで、妹と知り合ったんだけど。いい感じのフィールがあって私も気にいっていますし、30周年記念のものは全て統一感があっていいなと思って。今までの集大成という雰囲気が出るし、よくある<Anniversary Live>よりも好きだなって。「タイムマシーン」という私の曲もありますし、音楽を聴くと時空を超えて思い出がよみがえったりするし、いろいろな意味合いが出ていいねって思ったんです。
――「タイムマシーン」(1997)は15枚目のシングルで、アルバム『Junior Sweet』に収録されてましたね。
Chara:Charaというアーティストが成功したアルバムだね。あのアルバムでは、渡辺善太郎、テイ・トウワ、土屋公平、大沢伸一、アシュレイ・イングラムを始め、私がやってみたいアーティスト全員と共演できた。やりたいことができるのって成功じゃないですか。結果的には枚数も売れたから、レコード会社としても成功なんだけど、クリエイターとしては、やりたい人とやらせていただけることが嬉しいよね。で、「タイムマシーン」は、名越(由貴夫/YEN TOWN BAND)くんと、今は亡きbloodthirsty butchersのようちゃん(吉村秀樹)がオケを作って、私がメロディを乗せて。アレンジにはホッピー(神山)さんに入ってもらったのね。ホッピーさんはお父さんがクラシック指揮者のご家庭で育ってて。チェロのちょっとしたラインとか、ピアノも全部の指をつかわないで、ドとソだけとか。名越くんがCharaの曲に対してよく言ってくれる“毛細血管みたいなアレンジ”を施してくれて。そういう曲なので、好きで大切にしてますし、今回も楽しみにしておいて欲しいなと思いますね。
▲「タイムマシーン」ミュージックビデオ
――以前は観客全員で合唱する曲になってました。
Chara:確かに。シンプルで大きな譜割りのメロディだから。今は心の中で歌う感じだね。とにかく、今、なかなか普通のライブハウスは気をつけていて行かない方もいると思う。職業的にも行けないとかね。でも、クラシックのコンサートは日本では元々声を発しないし、いい緊張感を楽しむものだったりするから、今回は行きたいと思う方もいるといいなと思う。ま、生の音。私の声もそうですけど、生楽器の中に自分が包まれて入っているような感覚を味わってほしい。人間はやっぱり時々は体で体感することが必要だと思うんだよね。素敵な緊張感とともに、心がいろんな筋肉運動ができるきっかけなるといいなとほんとに思ってて。私はジャンルに関わらず、いろんな音楽が好きなので、今回はクラシックの方と愛を紡げればいいなと思っているし、みんなにも一緒にその糸に入って欲しいですね。
公演情報
【billboard classics Chara 30th ANNIVERSARY Premium Symphonic Concert 2022 - Chara's Time Machine -】
2022年3月27日(日)OPEN 16:00 / START 17:00
兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
2022年4月15日(金)
OPEN 17:30 / START 18:30
東京・Bunkamuraオーチャードホール
出演:Chara
指揮:栁澤寿男
管弦楽:
【兵庫】日本センチュリー交響楽団
【東京】東京フィルハーモニー交響楽団
編曲監修:山下康介
主催・企画制作:ビルボードジャパン(阪神コンテンツリンク)
後援:米国ビルボード
公演公式サイト
チケット:11,000円(全席指定・税込)※未就学児入場不可
一般発売 2022年2月26日(土)10:00~
チケット取扱いプレイガイド:
【兵庫】
ローソンチケット/チケットぴあ/イープラス/CNプレイガイド/楽天チケット
【東京】
ローソンチケット/チケットぴあ/イープラス
コンサートに関するお問い合わせ:
【兵庫】キョードーインフォメーション 0570-200-888 11:00~16:00(日曜・祝日は休業)
【東京】ディスクガレージ 050-5533-0888(平日12:00~15:00)
リリース情報
『Chara'S TIME MACHINE (Selected by SUMIRE)』
2022年3月14日 リリース<完全生産限定盤(LP)>
MHJL-206 4,070円(tax in.)
『Chara'S TIME MACHINE (Selected by HIMI) 』
2022年3月14日 リリース<完全生産限定盤(LP)>
MHJL-207 4,070円(tax in.)
関連リンク
Interview:永堀アツオ
Photo:辰巳隆二
Stylist:Shohei Kashima(W)
衣装協力:衣装協力:G.V.G.V./LALOH/MAISON SPECIAL
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