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<インタビュー>20歳のウクレレ奏者=RIO、ウクレレとの出合いからデビューアルバムに至るまで 新次元のサウンドが生まれた背景を語る



 ウクレレ界の異端児にして革命児、もしくはアンファン・テリブル――。グローバルに活躍する弱冠の20歳のウクレレ奏者、RIOについてひとことで形容するなら、そんな風になるだろう。弱冠20歳ながら、これまでハワイの由緒あるウクレレ・コンテストで立て続けにグランプリを獲得し、世界的ピアニストの小曽根真とも共演。大御所ギタリストのリー・リトナーにもそのプレイを賞賛された。

 そんなRIOから届けられたのが、デビュー・アルバムの『RIO』。プロデューサーに迎えられたのはジャズ・ギタリストで、CRCK/LCKSのメンバーとしても活躍する井上銘だ。彼の的確なディレクションによって、フォークやカントリーからラテン、フュージョンまでが混在した本作は、奇跡的な調和と結構を保っている。そして「ウクレレってこんな音も出せるんだ!?」と本作を聴くと驚くはず。この楽器の未知の可能性を切り拓いたような濃密な一枚である。そんな『RIO』の内容はもちろん、ウクレレとの出合いから現在の活動までを訊いてきた。

Interview:土佐有明 / Artist Photo:伊原正浩

2オクターブちょっとしか出ない楽器で
どれだけその魅力が伝わるかを試してみたかった

――RIOさんは英語が堪能と伺いましたが、ご両親は日本人ですよね?

RIO:そうです。ただ、僕は自分から希望してインターナショナルスクールに行かせてもらいました。公園でたまたま仲良くなったのがブラウニー君っていう外国の子で、そこから外国の友達が増えて、幼稚園から英語のスクールにも行ってました。

――ウクレレとの出合いは?

RIO:初めて夏にハワイ旅行に行った時ですね。最初は見た目から入ったので、楽器かどうかもよくわかっていなくて。おもちゃみたいで面白そうだなってウクレレ屋さんで見ていたら、店員の方に「弾いてみたら?」って言われて。「え? これ音出るんだ」ってびっくりしました。店員さんが簡単なコードをいくつか教えてくれたので、だんだん遊び感覚で弾くようになって。

▲2011年開催【6th Annual Duke's Ukes Contest】より
RIO「Stars & Stripes Forever(John Philip Sousaのカバー)」

――素人からすると、ウクレレってギターに比べて弦の数も少なくいし、やれることが限られているように思うのですが。

RIO:確かに弦の本数や音域でいうとギターのほうが物理的に色々できますね。ただ、この弦が少なくて2オクターブちょっとしか出ない楽器で、どれだけみなさんにその魅力が伝わるかを試してみたかった。その想いが『RIO』には反映されていると思います。“最小現の音で最大の美しさを表現する”とでも言いますか。ギターはすでに色々なスタイルができあがっているけど、ウクレレはまだ未知の可能性が色々ある楽器だと思うんです。だから、ジャズのみならず色々な音楽をウクレレでプレイして、音楽的にもちゃんとした楽器ですよってことを知ってほしいですね。

――飲食店やスーパーで、J-POPの曲をウクレレで弾いたインストがたまに流れているじゃないですか。未だにそのイメージが強い人も多いと思うんですよ。

RIO:確かにそうですね。ウクレレっていったらハワイアンだと思う人もいますし。でも、ウクレレを弾いてる人はみんな、そう思われるのには慣れっこなんです。だからこそ、僕の演奏を聴いてもらいたい。今回のアルバムはウクレレの可能性を更に知って頂けるチャンスだなって。

――ギタリストの井上銘さんにプロデュースを依頼することになった経緯は?

RIO:今回のアルバム制作を最初に提案してくださった方が、「大御所とやるのもいいけど、できれば僕と年齢が近くて、エネルギーを共有できる方がいい」って言ってくださって。ただ、実は銘さんのことは結構前から知っていたんです。僕のファンでライブに来てくれる方が、銘さんのライブにもよく行っていて。その方が、僕の誕生日コンサートの時にプレゼントで銘さんのアルバムを僕にくれたんです。だから、15歳の頃にはもう銘さんを知ってたんですよ。

▲井上銘「1 Year Later」

――銘さんは具体的にどういうところで貢献してくれましたか?

RIO:銘さんは色々なバンドで演奏してきたので、バンド・サウンドが僕よりも明確に見えているんです。今回のアルバムで言うと「Wishy Washy」でオルガンを入れようというアイディアが銘さんから出てきて。僕は想像すらできなかったんですよ、最初。けど、銘さんが言うんだったら良いんだろうなっていう信用があったのでやってみました。結果的に大成功だったと思います。

――最初にデモテープ的なものは作りましたか?

RIO:作っていないです。最初に、簡単なメロディーとコードだけを弾いた動画を、YouTubeにメンバー限定でアップしたんです。「みんなこれを見て楽譜を追って、みなさんの好きなようにプレイしてください」って提示しました。

――『RIO』はスタジオ盤なんですが、ライブ盤のような勢いがありますね。テイク数も少なかったのでは?

RIO:そうですね。最初はある程度の構成が決まっているくらいで、そこからはみんなに自由に自分を表現をしてもらいました。キメもほとんどないし、録る度に毎回違う感じになって。テイク数も2つか3つくらいでしたね。どのテイクを採用するかは、最後はエネルギー重視で決めました。「ここ間違えた!」というのがあっても、熱い気持ちが入っていればオッケーでした。

――小学校4年生から6年生までハワイに住んでいたそうですが、その時に培ったものは今の活動にかなり活きているんじゃないですか?

RIO:はい、すごく大きいと思います。まず、ジャズで言うセッションがハワイでは日常的にあるんです。ウクレレを持って歩いてるだけで知らない人に声をかけられる。「君、ウクレレ持ってるね。一緒に弾こうよ」みたいなノリですね。それをハワイ語で「カニカピラ」と言うのですが、ウクレレを弾いていると勝手に人が集まってくる。急に道の真ん中で始まることもあったりしますし。あと、ハワイは観光スポットなんで、ホテルで演奏することもよくありました。その場のノリで「カモン・アップ・トゥ・ステージ!」って声がかかる。コードがわからなくても「僕の指を見てなんとなくやって」っていう軽いノリで。

――スタンダードもやったんですか?

RIO:基本的にカニカピラはハワイアンの曲が多いんですけど、ホテルでの演奏はみなさんのリクエストを受けつけるんです。その場その場でお客さんが聴きたい曲を尋ねて、すぐに演奏する感じだったんで。その時はポップスからジャズからボサノヴァまで、なんでもやってましたね。歌のバックとして入っていたので、自分の立ち位置や、他の楽器とどう合わさるかなどを考えたり、教えてもらったりしましたね。

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    「いつかウクレレがジャズやロックのバンドにいてもおかしくないぐらいに」
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アルバム制作を通して掴んだバンド・サウンドへの手ごたえ
「いつかウクレレがジャズやロックのバンドにいてもおかしくないぐらいに」

――今、洗足学園音楽大学に在籍中ですね。今年3年生だとか。

RIO:洗足に行こうと思ったのは、今回のアルバムにも参加してくださった有田純弘さんというミュージシャンとの出会いからです。高校の時にジャンゴ・ラインハルトが好きになって、「日本でジャンゴを好きな人って誰なんだろ?」って調べたら、有田さんにヒットして。じゃあ有田さんに会おうってライブに行ったんです。そしたら、「僕は洗足で教えてるんだよ」っていうので、じゃあ洗足に行こうと。そういう時の行動力にはなぜだか凄く確信が持てるんです。

――学科は?

RIO:ジャズコースでギター科なんですけど、ウクレレ科は当然ないので(笑)。僕だけ特別に譜面も「ギター(ウクレレ)」みたいな感じで書かれていて。教える側も難しそうですけど、有田さんだとうまくいくんですよ。彼はバンジョーやマンドリンなど色々な楽器を弾くし、「ウクレレだったらこれができるんじゃない?」っていうアイディアを一緒に考えてくれて。なので、洗足に行ってよかったと思ってます。

▲RIO「Transit」
※有田純弘がバンジョーで参加

――それにしてもジャンルレスなアルバムですね。ラテンとかフュージョン、フォーク、カントリーまで色々詰まっていて。

RIO:そうですね。好きなように選んだら、ジャンルが混ざったものになりましたね。銘さんともジャンル的な話は特にしてなくて。どちらかというと、こういう世界観や光景を音で作りたいよねっていう話をしました。僕がこういうところに行きたいって弾いたら、銘さんはすぐキャッチしてくれるので。基本、言葉がなくてもそれぞれ音で感じ取ってくれて。

――先程オルガンの話になりましたけど、こういう楽器は一緒にやりやすい、やりづらいというのはありますか?

RIO:それはないと思うんです。少なくとも僕の中ではない。個々の音をじっくり聴いて、音の隙間を探っていけば、必要なものが自然と見えてくるので。自分の主張をそのままって出すのもひとつの選択肢ですけど、主張しすぎて皆のことを忘れてしまってはダメだと思っていて。周りの音をちゃんと聴いていれば、相性の悪い良いは存在しないと思います。

――ライブってこれまではどういう編成でやってきたんですか?

RIO:僕ひとりでしたね。ウクレレ一本でも基本的には音楽として成立するので。

――じゃあ、今回バンド・サウンドに挑戦してみて、かなり新鮮だったんじゃないですか?

RIO:そうですね。レコーディングはただただ夢が叶ったっていう嬉しさでいっぱいでした。いつも頭の中で鳴っていた音が今回現実になったわけで。それも、ひとりひとりのメンバーの個性が明確に出るレコーディングだったので、嬉しくて嬉しくて。レコーディング中はもうただただニヤニヤしてました、マスクの中で(笑)。

――アルバムのメンバーでレコ発をやるんですよね?

RIO:そうです、もちろん!

――これからアルバムを聴いてくれる方にはどんな想いがありますか?

RIO:正直、最初はどの音がウクレレなのかわからない人もいると思うんですよ。でも、ゆくゆくはそれを変えていきたい。ウクレレがジャズやロックのバンドにいてもおかしくないぐらい認知度をあげたいんです。どこかにウクレレっぽい音がするぞっていうのを、まず皆さんに見つけて頂いて、そこからは僕と同じ景色が見られる。そういうアルバムになっていると思います。

――でもRIOさん、英語が流暢に話せるってミュージシャンとしてかなり大きなアドバンテージですよね。ミュージシャンとして、海外でやっていく可能性も広まるわけで。インターナショナルスクールに行かれて正解だったのでは?

RIO:そうですね。基本的に、僕は音楽というものは世界共通の言語で、どんな人とでもコミュニケーションができるものだと思うんです。でも、演奏を見て感動して咄嗟に話しかけたり、仲良くなりたいなと思って(SNSで)メッセージをしようと思う時は、英語が使える。楽しく学んでいた英語のおかげで、ありのままの自分の気持ちを言葉でも表現して伝えられるんです。それは本当に良かった。特に今回のレコーディングでは、ドラムのダニエル・バエデールさんとは英語でのコミュニケーションだったのですが、他のメンバーもみんな英語が喋れるので、スムーズに進めることはできたと思います。なので、基本レコーディング中とかは半分英語で話していたかもしれないです(笑)。

RIO 井上銘「RIO」

RIO

2021/12/15 RELEASE
TMCJ-1002 ¥ 3,300(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.Transit
  2. 02.Joker
  3. 03.You Know
  4. 04.My Favorite Things
  5. 05.Waltz for Beth
  6. 06.Asa Branca~O Ovo
  7. 07.Mother
  8. 08.Wishy Washy
  9. 09.This Nearly Was Mine

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