糸井重里氏のつぶやきと、謎のアザ

－－先日、糸井重里さんがTwitterで中川さんについてつぶやいてたんですよ。「「おい、みんな。しょこたんくらい好奇心を持って、しょこたんくらい努力して、しょこたんくらい楽しんで、しょこたんくらい堂々とやれよ。」って朝礼で言う社長、いないかな。なんなら、おれ言ってもいいけど。」って。

中川翔子：私、努力なんてしてないのに……

－－例えばライブにしても、常に変化を求めて、挑戦して、進化してる。それはアーティストにおける努力だと思いますよ？

中川翔子：（恐縮して）そんな風に言って下さるのは世界にひとりだけですよ……

－－いやいやいや（笑）。みんなそう思っているからこそ、糸井さんもTwitterに書くんですよ。

中川翔子：嬉しいです！ 何でそんな風に思ってくれたんだろう……、「MOTHER2」やんなきゃ（笑）。

－－これだけ頑張って楽しんでいる人がいるんだったら、自分にもできるんじゃないかって元気付けられる。最近の中川さんを見ていて、プライドを感じるようになってきました。

中川翔子：その……、でも、ありますね。今、プライドって言葉を聞いて初めて思ったことでもあるんですけど、積み重ねてきたモノ、みんなと一緒に見えてきたモノ……。10年かかってやっと見えてきた気がします。
10年もかけて、っていうトンでもない遅さはあるんですけど（苦笑）、例えば色んな好きなモノがあっても、全てを追いかけるのは難しいですよね。大人になれば使える時間も少なくなるハズなのに、ライブに足を運んで一緒に楽しんでくれるって、凄い労力だと思うんです。

人生の時間を割いて、私に色々教えてくれる。そうやってみんなで積み重ねてきたモノを、自分のせいで壊すのは悔しいし、勿体無いし、自分がムカつく！ そういう気持ちがプライドなのかなって思います。
積み重ねてきたモノを、もっとブレずに真っ直ぐに貫き続けたいなって。普段はふにゃふにゃだし地盤がぬかるんでますけど（笑）、芯にはズドンと高い塔を建てて、どんどん高めていきたいですね！

－－そうした意識を持つ中川さんだからこそ、ファンにとっては多忙を極める状況での体調は心配になってしまいますよね。先日はブログで発表した謎のアザが話題になりました。

中川翔子：何だったんでしょうね、アレ？ 結局ラッキーだったのが、ウィルス性胃腸炎で病院に行った時ついでに血液検査もしてもらって、何でもないって分かったことで。Twitterとかでは、白血病説も上がってたみたいですね（笑）。確かに、熱もアザも出たし、思い返せば4月にロケで野草を食べてたりしてたんですけど、結果的には何でもなくてよかったです！

－－また、先日の【Shoko☆Cover Fes．2011 in NAKAGAWA BROADWAY】では、直前にウィルス性胃腸炎を患ってしまうという、壮絶な2DAYS公演になりました。

中川翔子：当たり前ですけど、ライブって完全に超元気な状態であっても、次の歌詞とか立ち位置とか、曲の順番、ノリ、その場でのMCとか……。毎回毎回、人生を懸けて挑んでいることなんですけど、ウィルス性胃腸炎になってしまって、正直、人生最大のピンチでした。3日間ほとんど何も食べられない、ガリガリ君しか食べていない状態で（苦笑）。

今までもツアー中に声帯炎になったりとか、色んなピンチがあったんですけど、物理的な意味での最大のピンチを何でか乗り越えられた。前日、39度でぶっ倒れていた状態を考えると、本当に不思議です。見えない力と、皆様のサイリウムの光が魔法をかけてくれたとしか思えないです。ひとりじゃ絶対できなかった！ 今回はかけがえの無い莫大な経験値をもらったと思います。

もう二度と逢えない大好きな人

－－確かに2日目の終盤は、衝撃的なエネルギーを感じさせるアクトになっていました。

中川翔子：中野っていうこともあるし、（病院の）夜勤の先生が良い人だったっていうのもあるし（笑）、自宅、病院、ライブ会場が全部近くて、何より来てくれた人たちがあたたかかったってことですね。
カバーライブとかバンドさんがいないとか、自分の中には色んな不安要素があったんです。音もイチから全部作ったので、重ねに重ねてギリギリまで変更もしたりして。初日をやってみてセットリストを変更したりとか、正直、頭の中はパンクしていたんですけど、逆に覚醒状態で挑めたので、身体があそこまで追い込まれていて良かったのかも……って思っちゃうくらい（笑）。
改めて、ライブは人生を懸けてやるもんだ！ って思い知りました。全ての人たちの人生の貴重な時間とお金と想いが圧し掛かるモノなんだ！ って。凄い勉強になりました。

－－関係者や取材陣に対しては、事前にセットリストが配られますが、そこに書いてあった選曲と本番とでは、所々変更になっていた点に驚きました。

中川翔子：師走で忙しい時期の平日に、遠征してくれた方もいるみたいだし、2日間とも参加してくれた人もたくさんいたみたいなので、「ただのカバーライブにはせんぜよ！」って想いがありました。わがままな意見に応えてくれた現場の皆さんのパワーもありがたかったです。
やっぱり後悔したくなかったんですよね。2011年は自分にとってジェットコースターのような1年で、大ピンチが突然来るんですけど、それを補って余りある嬉しさが必ず起きるんです。それを2日間に分かりやすく凝縮したのが、【Shoko☆Cover Fes．2011 in NAKAGAWA BROADWAY】でした。 プロとしては凄く申し訳ないんですけど、結果、やれて良かった！ これまで本当に生温く生きてきたし、体力もないし心も弱いしネガティブだしって、自分というものを信じられなかったんですけど、今回はちょっと……、「やるじゃねえか！」って褒めてやりたいと思いました。

－－そして、芸能活動10周年を迎えた2012年、第1弾シングル『ホロスコープ』をリリースしますが、シンガーとしての成長を感じさせる1曲になりました。

中川翔子：記念イヤーの始まりだし、ロックでガンガンいくのかと思っていたので、バラードと聞いた時には「おや？」って感じたんです。でも、全然一筋縄ではいかないし、ロックバラードだし、全音符のメロディが多いので、おなかから力を込めて、全力で振り絞って歌わないといけない曲で。
たぶんコツがあるんでしょうね、良い感じに力を抜くというか……。冬の星空って、寒ければ寒いほど、空気が澄んで星空が輝いて見えるし、真冬の星座が全天で一番明るいし派手だし――― そんなバランスを大事にしました。
何年も歌っていく内に、人生が追いついていくたびに、新しい発見があったり、進化していく可能性を秘めた曲に違いない！ って思っているので、これから歌っていくのが楽しみです！

－－歌詞はmeg rockさんと山本陽介さんの連名になっていますが、聴く人によって色んな捉え方ができる内容になっています。個人的には、“なんてことない 僕らの日々には戻れない”という詞に、今の日本を感じました。

中川翔子：私は、もう二度と逢えない大好きな人、ですね。逢えないかもしれないけど、見ててくれてるし、だからこそ恥ずかしくないように生きなきゃ！って。ピンチな時も嬉しい時も、「見守ってくれている！ 大丈夫！」って思うし、思いたい。それが自分の心を助けてくれるって思いました。
歌詞の内容は凄く哀しくて、「もう逢えないのかもしれない……」って思うんですけど、涙で見えなくても、二度と届かなくても、何度も手を伸ばして……って、絶対に負けない心を持っている主人公が気に入っています、良いガッツを持っているなって。どんな逆境にあっても、こうありたいです。

想い続けていれば、人の念は消えない

中川翔子：震災の直後もそうだったんですけど、日本人の真面目さと強さ。明日がどうなるのかが分からない時でも、目の前にある仕事から逃げずに、取り掛かっていく所が凄いと思いました。コツコツ積み重ねてきたことがあって、今の日本がある。きっと素敵な未来があるに違いないし、ここに生まれてきて良かった！ っていう想いの強さ。百恵ちゃんも歌っていましたけど、何億光年 輝く星にも 寿命があるし……。
宇宙の中には、ビッグバン直後に収縮に向かう宇宙もあるそうなんです。「宇宙のクセに、誕生してすぐ死ぬとは何事か!?」って怒りたくなるんですけど（笑）、それくらい永遠って言葉は不確かですよね。それなのに、この曲の詞に“永遠”って何度も出てくるのは、人は死んでも絶対、無にならないって、間違いなくそう思うから……。

宇宙すら信用できなくても、絶対！ 絶対！ 絶対！ って想い続けていれば、人の念は消えないと思います。逢えない状況があったとしても、空を見上げれば何千年も前の人たちが作った星座が、必ずそこにある。自分ひとりじゃひとつの星だけど、他の人たちや出来事との出逢いが星座になっていくし、自分の運命とか別れとか、かけがえの無いモノたちを積み重ねて……。自分の人生を、ホロスコープに例えると面白いなって思います。

－－ホロスコープって、占星術で使用する天体配置図を指すそうですね。

中川翔子：どんな状況も受け止めていかなければいけないし、どんな人とも必ず別れはやってくる。乗り越えなければいけないと思いながらも、負けそうになる心もあって、それでも結局乗り越えていってる。……そんなことをグルグル考えながら、答えが出ないまま生きていってるし。う～ん！ って考え込むんだけど、それがまた他のくだらないことで気が変わっちゃったりとか（笑）。
都会育ちだったので満天の星空の下に育った訳ではないんですけど、パッと空を見上げて「宇宙がある！」って思うと、今起きていることがリセットされるんです。宇宙って便利だなって。

－－“宇宙は便利”って凄い言葉ですね（笑）。

中川翔子：小5の夏に、「お爺ちゃん、あの凄い光ってる星は何!?」「木星だよ！」っていう会話から木星に恋をして、木星の絵を書いたり写真を切り抜いて張ったり。大学ノートをこしらえて、中野区で賞を獲り、そこから毎日、木星のことを考えてきたんです。シングルで星にまつわる曲を歌いたかったっていうのは、megちゃんもずーっと考えてくれていたと思うんですけど、今回のタイトルを決める時、「ホロスコープで！」って強引に奪い去りました（笑）。

－－中川さんは震災以降、表現者として変化を自覚する部分はありますか？

中川翔子：何万回聴いたハズの曲も、全然違って聴こえるようになったし、凄くシンプルな日本語の意味が、いっぱい入ってくるように、見えるようになってきました。そして、歌うこと ―――それはみんなと一緒に歌うことも、誰かを観に行って一緒に歌うことも、日々の鼻歌でも、何気なく出てきたメロディでも、心が歌わなければ出てこないですよね。歌うって本当に必要なことなんだって思いました、絶対にあるべきモノなんだって。

－－5月の連休には、大阪と東京で初の野外単独コンサートが決定しました。個人的には、「どうせなら雨降っちゃえ！」と思っていますが……

中川翔子：もはやこうなったら降ってくれって思いますよね？（笑） グッズで雨具を作ろうと思ってます。とりあえずは……、野外ってことなので水をかけてみたいんですよ！ 縁日も出したいし、夕暮れの時間に重なってくれたら、サイリウムがキレイに見えるんだろうな、とか。後は……、ドＳ曲を歌っていきたいです（笑）。
やっぱり、みんなで作るライブにしたいですね！ グッズですか？ 雨具、ビニ傘とか……、クリオ寝子たちが最近、洗練されてきて被り物とかも似合うようになってきたので、色々作りたいですね。10周年にかけたグッズとかもあるし……、もりもりアイディアは出てきてます！