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<コラム>りりあ。「私じゃなかったんだね。」、その“素直さ”と世間への広がり方に注目



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共感される失恋ソングはどのように広がったのか

 TikTokフォロワー130万人を誇る、次世代シンガーソングライターりりあ。が歌う「私じゃなかったんだね。」がYouTubeで190万再生を突破して注目を集めている。


▲りりあ。「私じゃなかったんだね。」

 装飾を削ぎ落としたシンプルに感情を揺さぶる、魔法めいた歌声が素晴らしい。

 もともと“失恋したので曲にしました”と初めて実体験を歌にしたとSNSへ投稿したことで話題となっていた本作。今年5月には、TikTokへ投稿した弾き語り動画から火がつき、ファンの熱い要望もあり10月4日に配信曲としてフルヴァージョンがリリースされた。まず動きを見せたのはLINE MUSICのリアルタイムランキングだった。初登場にして8位を記録。音楽シーンの“いま”を知りたい際、世の中の話題性と時差なく連動するこのランキングは信憑性が高い。


@riria_0000 オリジナル曲です…#オリジナル曲 #弾き語り #ギター #singer ♬ 私じゃなかったんだね。 - りりあ。

 そして、YouTubeにてプレミア公開と同時に、ミュージックビデオが“人気急上昇”として注目を集め、これまで後ろ姿しかSNSで発表していなかった実写ミュージックビデオの出演者がティーンから絶大な人気を誇る莉子、杢代和人であることが明らかとなった。動画のコメント欄をみれば、どれだけこの楽曲が多くのリスナーの共感、支持を集めているかがわかるはずだ。ユーザーそれぞれが、SNSにおいて自分ごととして受け止め、過去の恋愛事情を寄せるなど感情を呼び起こすスイッチとなる共感が高まっている。

 「私じゃなかったんだね。」は、タイトルが物語る通り未練ある恋心を歌った失恋ソングだ。歌いはじめから回想が巡る。ピアノと絡み合うギターが牽引する、愛する人へのエモーショナルな想い。初の実写ミュージックビデオによって、歩んできた歴史が映し出されていく。注目ポイントは、涙を感じさせるヴォーカリゼーションの儚さが伝わる妙。後半転調し、一瞬暗転したのちの“私じゃないなら”に一言で、思わず鳥肌もののせつなさが伝わってきた。

 ラストへ向かって心の奥底に眠っていた本音があらわれる“「私以外で幸せになれるはずない」 他で幸せになってね なんて嘘だよ。”という強烈なパンチラインからのギターのフィードバック。そしてタイトル“「私じゃなかったんだね。」”と、手書き文字がアップであらわれる瞬間、思わず心が締め付けられた人は多いのではないだろうか。

 本作をBGMにTikTokでファンや楽曲を好きになったリスナーによるUGC(ユーザー生成コンテンツ)、ファンアートも増えている。ふと思った。かつてでいう億単位のレコーディング・システムがテクノロジーの進化によって無料プラグイン、はたまた手軽にアプリケーションとして機材を入手できるようになった2021年という近未来の世界。レコーディングにおいてどんなアレンジメントもミックスもエディットもエフェクトもかけられる時代。しかしながら、りりあ。が解き放つ人の営みを描いたピュアネスを歌い上げていくシンプルかつ情念の強い、ストーリーテーリングのフレッシュさに着目すべきだ。こんな歌い手は他には存在しない。断言しよう。

 勢いは止まらず、Spotifyの人気プレイリスト『RADAR:Ealy Noise』、『ティーンカルチャー』、『キラキラポップ:ジャパン』などにもリストイン。10月13日には、フジテレビ『ノンストップ!』へ出演。“若い女性を中心に共感の失恋ソング”として弾き語りを披露。自らのYouTubeチャンネルでは、優里と共に「私じゃなかったんだね。」をコラボした動画も投稿している。作品を伝えるインフラが増え、楽曲を知るコミュニティーが多様化した現在。止めどなく作品の魅力を多様に伝え続けることは“いま”の時代とても大切だ。


 ちなみに、りりあ。はトイズファクトリー内のストリーミングにフォーカスしたレーベル・VIAに所属するアーティストである。11月18日にはレーベル設立1周年となったVIAにはりりあ。のほか、TAKU INOUE、羽生まゐご、WONとネット上で独自の人気を誇るアーティストが所属。時代の流れにフレキシブルに対応しながら新しいことにチャレンジできる環境にいることもまた、りりあ。にとっては大きいことだろう。

 まさに、りりあ。の代表曲「浮気されたけどまだ好きって曲。」をしのぐ勢いを感じさせるのが本作なのかもしれない。まだまだ再生回数も伸びていくことだろう。

 人との距離を感じることが多かったパンデミック時代。恋愛に対する考え方、距離感が変わってしまった人も多いかもしれない。しかし、変わることもあれば変わらないこともある。そんな“いま”だからこそ、“心が感じるままの素直さ”を吐き出した失恋ソング「私じゃなかったんだね。」に、若いリスナーから評価が集まるのは時代の真理だと思う。

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