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<インタビュー>後藤真希が語る、11年ぶり有観客ライブへの想い
後藤真希が11年ぶりとなる有観客ライブを、大阪と横浜のビルボードライブにて開催する。公演名に“Reply”と銘打たれている通り、昔からのファンはもちろん、最近になって出会ってくれた新しいファンに対しても、直接会って気持ちに応えたいという想いから、バンド編成のスペシャルなショーが企画されている。
1999年にモーニング娘。の3期メンバーとしてデビューし、昨年12月にはデビュー20周年を記念したオンライン・イベントを開催した彼女だが、自身のYouTubeチャンネルを中心とした幅広い活動はますます勢いを増しており、11月29日には10年ぶりの写真集『ramus』の発売も決定した。
今までのライブとは違ったものになるというビルボードライブ公演について、最近のジャンルレスな活動について、そして写真集の手応えについて、本人に話を訊いた。
「最近ファンになってくれた方にも会ってみたいなと思ったんです」
――有観客ライブとしては11年ぶりとのことで、まずは開催決定に至るまでの経緯を教えてください。
後藤真希:去年の12月、デビュー20周年を記念したオンライン・ライブをやらせていただいたんですけど、それも本来はお客さんを入れてやりたかったんです。それから約1年が経って、今年ならできるんじゃないかって。あとは、最近ファンになってくれた方にも会ってみたいなと思ったんです。
――新しいファンが増えているという実感ってどんなときに感じますか?
後藤真希:『Go To Channnel』という公式コミュニティがあって、登録してくれた方とDiscordというチャットで会話できるシステムがあるんですよ。そこでファンになってくれたきっかけとか年齢とかを聞いたら、YouTubeを見て知ってくれた高校生ぐらいの子もいたりして。それで「あ、新しいファンの方がいるんだ」みたいな(笑)。私はてっきり、コミュニティも昔からのファンが入ってくれるものという認識でしたので、とてもありがたいですね。
――それこそ前回のオンライン・ライブ【20th Anniversary SPECIAL ONLINE EVENT】でも、新規のファンの方からの反響もあったり?
後藤真希:前回はあまり感じなくて。そのときはまだコミュニティがなかったし。なので、前回は昔からのファンに向けて「お待たせ!」というような感覚でやったんですけど、今回は「初めまして!」な気持ちが強いですね。
「今回のライブは今まで私があまり作らなかったセットリストかもしれない」
――前回はライブの内容も、昔から応援し続けてくれているファンに寄り添うようなものだった?
後藤真希:そうですね。そういうセットリストでした。
――対する今回は、間口をより広げた内容になりそうですか?
後藤真希:今回は王道な曲も入れつつ、最近ファンになってくれた方は知らないであろう曲も、知ってもらいたいという気持ちで入れたり。もちろんファンが喜んでくれそうな曲も入れますけど、今回のライブは今まで私があまり作らなかったセットリストかもしれない…。
――それは新しいお客さんはもちろん、昔からのファンも嬉しいですね。
後藤真希:そうだといいですね。今回は初のビルボードライブなので、また違う雰囲気で曲を聴いてもらえるんじゃないかなと思っていて。
――お客さんとの距離が非常に近い会場ですからね。
後藤真希:どれぐらい近いんですか?
――ステージと最前席のあいだは2メートルです。
後藤真希:わーお。背の高いバスケット選手ぐらい(笑)。近いですね! 私はファンと絡むのが大好きなんですよ。皆さんは私と会うのが本当に久々だと思うので、もしかしたら私より緊張しているかもしれないですね(笑)。
「皆さんが思う今の後藤真希像を崩したくもないけど、
自分でもそれをどう作り上げようか模索している」
――イベントの出演等はあれど、後藤さんがホストとしてファンの皆さんを迎えるという意味では、およそ10年ぶりの機会になるのかと思いますが、後藤さんの中では緊張とわくわく、どちらが大きいですか?
後藤真希:自分でもわからなくて。絶対に緊張はするんだろうなと思いつつ、ただ、私はカメラ越しに見られるより、直接見てもらうほうが落ち着くんですよね。テレビ収録のほうが緊張する。あと、私はお客さんが実際にいるほうが歌いやすいので、やっぱりそれは楽しみですね。
――音源としてリリースしたり配信で届けるより、実際に同じ空間で直接届けるものという意識が強いんですかね。
後藤真希:歌いながらファンをイジりたいんですよね。
――というと?(笑)。
後藤真希:目線でイジっていくんですよ。私独特かもしれない(笑)。「私が今から10秒ぐらい見つめながら歌ったら、この人はどういう反応をするだろう」とか(笑)。それを見て楽しんでいる節があります。
――嬉しいイジりですけどね(笑)。当日はバンド編成で?
後藤真希:そうです。オンライン・ライブはオケだったので、これもめちゃくちゃ久しぶりですね。もちろん曲にはよるんですけど、バンドのほうが歌についてきてくれるので歌いやすいですよね。いつもと違う歌い方ができるというか。やっぱりオケだとCDのレコーディングのような雰囲気になるじゃないですか。
――そのあたりの生感も今回の見どころですね。
後藤真希:あとは、アレンジをどうするか。
――バンド編成ならではというのもあるし、きっと曲によっては年月を経てるからこその変化もありそうですね。
後藤真希:でも、長年のブランクがあるなかで、自分がどう変わってきたかなんてよくわからないんですよ。ずっと歌い続けてきたわけではない、なんなら歌っていない時間のほうが長いので。なので、皆さんが思う今の後藤真希像を崩したくもないけど、自分でもそれをどう作り上げようか模索しているというか。今までやっていたようなツアーであれば、まだなんとなくイメージつくんですよ。でも、今回はビルボードライブだし。
――当日になって新しい発見もありそうですよね。
後藤真希:1stステージやったら消化できるかもしれないです。
――初日の1stステージはある種の初々しさとか手探り感みたいな空気も楽しめるだろうし、2ndステージ以降は変わっていく後藤真希を見られるかもしれない。
後藤真希:ドキドキですね。
――今回のライブを発表したとき、どんな反響が寄せられましたか?
後藤真希:みんな歌ってほしい曲をリクエストしてくれましたね。あとは場所が場所なので、ファンの皆さんも「どうしよう、どういう雰囲気になるんだろう」となっていて、そういうのは見ていて楽しかったです。「デニムにパーカーでいいのかな」みたいな(笑)。あと、当日はお見送りをするので、そういう意味でもみんな「何を着ていこう」って(笑)。
――お見送りはどうしてやろうと思ったんですか?
後藤真希:私自身は常々、握手会とかはしたいと言っていて。ただ、今は時期が時期なのでそれはできないけど、お見送りという形だったらということで、今回やらせていただけることになりました。
「うるさくない会場でライブしたことないですから(笑)」
――コロナ禍以降での有観客ライブとしては初ですよね。やはり葛藤などもあった?
後藤真希:ありましたよ。だって私、うるさくない会場でライブしたことないですから(笑)。なんだかんだ、私が1フレーズ歌えば合いの手が入るライブだったので、黙って見られる経験がほとんどないんです。ただ、そのなかでもお洒落に見せられるような、合いの手がなくても楽しめるような雰囲気でやれたらいいなと思います。
――曲のリクエストも来たとのことでしたが、そのあたりを反映する予定は?
後藤真希:そうですね。数曲は反映されると思いますね。そういうセクションを作ろうかなと思っていて、ショーごとに違う曲を歌ってもいいのかな、とか。
――パフォーマンスの面で言うと、これまではやはり歌って踊るステージを重ねてきたかと思うので、その点でもチャレンジングになりそう?
後藤真希:コレオがいて、ダンサーズがいて、その中で自分やメンバーたちが魅せていくライブをずっとやってきたので、一人+バンドメンバーという編成で、しかも踊らないパフォーマンスで、どうやって私を見せたらいいんだろうって。過去のバンド編成のパフォーマンスも、例えば踊らないで歌うバラードだけでやったりしていて。でも、今回はフラットじゃないですか。妄想が追いつかないです。今日とか昨日とか、自分の過去のライブ映像を見てみたんですけど、全然違うよなって。衣装とかも含めて、色々と悩んでます。
「最近また自分で自分を発見しているような感覚になってます」
――久しぶりのライブに向けて手探りしながら準備を進めているかと思いますが、一方でご自身のYouTubeチャンネルでは最近のヒット・ソングを歌っていたり、ハラミちゃんのような若いアーティストとコラボしていたり、継続的に音楽との触れ合いを続けていらっしゃいますよね。
後藤真希:そうですね。ここ1年ぐらいは最新の曲を聴くようにしたり、YouTubeを漁って流行っているものを見るようにしたり。昔はそういうことはしなかったんですけど、いつの間にか色んな人に興味を持つようになったというか。10~20代前半の頃って、私はハロー!プロジェクトにいて、「もっとこうなりたい、ああなりたい」という願望も強くて、憧れの人の映像を何度も見て、その人のいいところを盗んだりとか、そういうのを繰り返してはいたんです。でも、10年前にファイナル・ライブをやって、そのあといったん、自分の中ですべてを捨ててリセットしようという気持ちになっていたんですね。なので、音楽から離れて、新しい曲を聴くことも歌うこともないような生活を何年も過ごしてきたんです。けれど、ここ1年ぐらいで音楽活動を再開して、「いまの私はこういう音楽が好きなんだな」みたいな、最近また自分で自分を発見しているような感覚になってます。
――ちなみに最近お気に入り曲は?
後藤真希:MAISONdesさんの「ヨワネハキ feat. 和ぬか, asmi」は、曲の感じがタイプで聴いてます。あとは「忘れじの言の葉」という、アプリ・ゲームの曲があって。雰囲気がちょっと暗めなんですけど、ジブリみたいな不思議な世界を感じる曲でハマってますね。ダズビーさんのカバー動画も好きで。
――後藤さんはどんなところで新しい音楽と出会うことが多いですか?
後藤真希:「忘れじの言の葉」はTikTokを流し見していたら出会って。タイトルが書いてなかったので、次の日にマネージャーさんに調べてもらって知りました。あとは、Apple Musicのランキングを順番に流して、イントロから1コーラスぐらいまで試聴して、よかったらそのまま聴いたりして。
――「ヨワネハキ」もTikTokがきっかけでヒットしましたよね。
後藤真希:らしいですね。私はたまたまApple Musicで出会ったんですけど。
――後藤さんも、LiSAさんの「炎」のカバー動画はかなりの再生回数を記録しています。ご自身のコンテンツを作るとき、インターネット上のバズなどを意識したりすることは?
後藤真希:スタッフさんたちは意識していると思うんですけど、私自身は自分が楽しんでやることが一番だなと思っています。
――では、最近の動画で特にノッたものは?
後藤真希:Adoさんの「ギラギラ」とか。初めて聴いたときに衝撃を受けて、これは私も歌ってみたいと思って。“モーニング娘。としての後藤真希”とか“アイドルとしての後藤真希”のイメージを持っている人に「実は私、こういう曲も好きなんです」というアピールができるのが嬉しいんですよね。
――活動の幅を広げていくことで、今まで出せなかった自分を出せるようにもなってきた?
後藤真希:そうなんですよね。YouTubeではそういう自分を見せられるようになった気がしていて。コメント欄を見ていても、イメージが変わったと言ってくださったりして。
「“こんなごっちん見られるんだ”みたいな発見があればいいな」
――これも先日発表されましたが、新作の写真集を出されるとのことで。『ramus』というタイトルの由来は?
後藤真希:そもそも“ramus”って木とか枝のことなんです。私も最初は1本の木だったかもしれないけど、今まで活動してきたなかで愛情をたくさん注いでいただいて、皆さんに見守られて、今ではあちこちに枝を伸ばして立っていられる、みたいなイメージで。
――撮影はどちらで?
後藤真希:わりと近郊で(笑)。しかも、二日間で撮り終えたんですよ。でも、写真自体はオフな雰囲気というか、一人の自由な旅というか、そういう雰囲気で撮れていて。今までに出した写真集は、どちらかというとグラビア寄りのカメラマンさんに撮っていただいていたんですけど、今回はファッション誌でたくさん撮られているカメラマンにお願いしました。なので、写真の方向性も今までとちょっと違う、同性の方にも見ていただきたい内容になっています。自分がこれからもっと年齢を重ねていくなかで、この作品があることによって「この頃の自分はこうだったよな」とか、いい意味で記憶に残せるなと思っています。
――率直な手応えはいかがですか?
後藤真希:過去の写真を見ると、作り笑いとか無表情な自分が多かったんですよ。なんですが! 今回の写真を見て「今の私、こんなに笑ってるんだ」って自分自身でも気づけたんですよね。
――素が引き出されているんですね。先ほどの「こういう曲も歌えるんだ」という話にも繋がりそうな。
後藤真希:そうですね。よりナチュラルになってきたんだと思います。
――それでは最後に、公演に向けた意気込みやお客さんへのメッセージをお聞かせください。
後藤真希:ファンの皆さんと久々に会って、同じ空間でライブができるという時間が、自分自身も嬉しいし、その喜びを皆さんとも共有できたらいいなという気持ちです。あとは、「こんなごっちん見られるんだ」みたいな発見があればいいなと思っています。今回は大阪と横浜で1日ずつなので、チケットが取れなかった方もいるとは思うんですけど、これをきっかけに同じような機会を作っていけたらとも思っているので。とにかく今回はタイトルにもある通り、今までの皆さんの気持ちにお返ししていくような日になったらなと思います。
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