中川翔子【中川翔子マジカルツアー2009】

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中川翔子

中川翔子【中川翔子マジカルツアー2009】ライブ写真

2009.05.17(日) at NHK Hall｜ライブ写真＆セットリスト

　客電が灯され終了を告げるアナウンスが流れても、席を離れる者は少なかった。場内に流れていたBGMを誰かが歌い始めると、やがてそれは大合唱に変わる。感極まってステージに再々登場してしまった彼女は、共に歌おうとするも号泣。その小さな背中を支えるように、会場からはこの日一番の翔子コールが沸き起こる。両手で顔を覆い、うずくまるように頭を下げる彼女。幾つもの苦難を超えて辿り着いたその光景は、関わる全ての者たちの予測を遥かに超えた、奇跡と呼ぶに相応しい瞬間だった。

　「次逢う時まで怪我しない病気しない死なないで、貪欲にまた逢おうね！」大観衆に約束した初の全国ツアーから約1年。そのスケールをさらに広げて全国を駆け巡った中川翔子は、追加公演として紅白の舞台でもあるNHKホールでコンサートを行う。観衆の多くはコスプレに身を包み、さらにファンが企画したようだが、客席間では袋詰のサイリウムが関係者にまで配られている。暗転の後にキラキラと煌く魔法のホウキに乗ってしょこたんが登場すると、大歓声と共に輝く七色の海が広がっていく。魔法少女風の衣装を身に纏った彼女も、応えるように弾けるアッパーチューンをアクセル全開で畳み掛けた。

　直前に声帯炎を患ってしまい、この日のステージも危ぶまれたしょこたんだが、喉に注射を打つという強硬手段の結果、『1/2』のハイトーンメロディも見事に歌い上げるほどに快復した。また、この日はスクリーンとリンクした演出が目にも楽しく、『ストロベリmelody』ではショートケーキを模したステージと共にファンシーな衣装で登場。さらに映像内のしょこたんが魔法をかければ、バックダンサーに加えてステージへ招かれた無数のコスプレイヤーたちと共に、会場全員が『CAT Life』の猫々しい振り付けを。80's風アイドルテイストの『pretty please chocolate on top』も、これまでのツアーや過去のDVDで観て覚えたのか、多くの観衆が機敏なダンスを共に楽しんでいる。

　また、近年の音源でより女性的なしなやかさを携えた歌唱力を披露してきたしょこたんは、バラードが続くセクションでも見事に世界観を構築。『snow tears』はピアノ伴奏のみでの歌唱に挑戦し、歌手としての進化を見せつける。そして数多のコスプレ写真と共にこれまでの公演を映像で振り返ると、最後は怒涛の貪欲ロック5連発へ！会場が文字通り震撼する大盛況の中、「お前のドリルで天を突け！」と本編を締め括るのだった。

　アンコールの代わりとして場内から『空色デイズ』の大合唱が沸き起こると、中川翔子は飛び出すように再登場。実に20曲を超える『アニソンメドレー』を畳み込む。そして彼女の提案で急遽追加された『空色デイズ』の再演から、『Ivy』で大団円を迎えた所で冒頭のくだりに繋がっていくのだが、ここで改めて思うことがある。サイリウムや『空色』大合唱、思い返せばコスプレだってそうだ。それは誰かに強制されたものではなく、コンサートに参加する観客たちが貪欲に考え、自ら行ってきたことである。

だからこそ、しょこたんもスタッフも峻烈と評せるほどの覚悟でもって、「より楽しい」を目指した試行錯誤を続ける。そうしたひとつひとつの想いが積み重なって生まれる感動の瞬間。彼女の言葉を借りるなら、全員で「色んな文化を自分たちで作っちゃった」集大成がこの涙であり、このステージの全てなのだ。

　歌い終わった彼女は最後、でんぐり返しから土下座という最上級の感謝と共に笑顔を見せた。10月24日、彼女は初の武道館公演に挑戦するが、この日を体験した多くの者がまた集うことになるだろう。最後に全員で歌った楽曲の一節、“涙の種”が“笑顔の花”になるその日まで「きっといつまでもここにいるから」という言葉。中川翔子の奇跡はまだまだ続く。