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<インタビュー>Little Black Dress、独自のルーツと等身大の思いを詰め込んだ新曲「雨と恋心」を語る



 今年7月、1stシングル「夏だらけのグライダー」でメジャーデビューを果たしたLittle Black Dress(以下LBD)が、9月1日に2ndシングル「雨と恋心」を配信リリースした。前作に引き続き、プロデュースは川谷絵音が担当。LBDの艶やかな歌唱とスマートなバンドサウンドが雨の日の情景を想起させる、洗練された失恋ソングに仕上がっている。
 今回、ビルボードジャパン初登場となるLBDに、地元・岡山から上京した時の心情や、ONE OK ROCKから歌謡曲、さらにはミュージカルと、独自のルーツが生まれた背景、そして新曲「雨と恋心」が出来上がるまでの過程を、たっぷり語ってもらった。

高3で岡山から東京へ 付き人時代にMISIAから学んだこと

――今年7月にメジャーデビューをして、何か変化はありましたか。

LBD:テレビの音楽番組に出演させてもらったことは大きかったですね。ライブだけだと、地元の岡山の人たちに、私がどういう活動をしているのかがなかなか伝わりづらかったんですけど、テレビを通して活躍を見てもらうことができましたし、たくさんの反響もいただけて嬉しかったです。

――音楽番組で歌って感じたことは?

LBD:自分も含め、みんながワタワタしてる感じが楽しかったです(笑)。

――あはははは。バタバタしてますもんね、収録は。

LBD:スタッフさんや他のアーティストさん、みんなで1つのエンターテイメントを作っているというグルーブ感が楽しかったですね。あとは、やっぱりライブとは見せ方が違うなとも感じました。テレビは立体的じゃなくて、平面的なので、歌を聞かせる上でも、パフォーマンスを何倍か大きくした方がいいのかなって。これから経験を積んで、もっともっと華やかなパフォーマンスに進化していきたいなと思ってます。

――先に近況からお伺いしてしまいましたが、改めて、現在に至るまで道のりを振り返っていただきたいなと思います。小さい頃から音楽好きだったんですか。

LBD:そうですね。4歳の時からミュージカルを習ってて。歌と踊りと演技、その中でも歌うことが好きで、歌うことで前に出たい、表現者になりたいと思っていたんですね。その後、高校に上がった時に叔父からアコースティックギターをもらって。一人で歌うための手段として、ギターを始めました。最初は、J-POPでその時賑わってた阿部真央さんやONE OK ROCK(以下ワンオク)、サカナクションのカバーを歌ってました。そこから弾き語りでライブ活動を始めたんですけど、とある時に、ライブハウスのオーナーさんから、「曲作り始めてみたら」と言っていただいたので、オリジナルの曲を作りを始めて。それが高校2年生ですね。その半年後にオーディションで上京することが決まって……。

――ギターを手にしてからとんとん拍子に進んでるように見えますね。

LBD:ふふふ。でも、小さい頃から歌が好きで、表現者になりたいっていう軸があったので、自分的にはやっと動き出したという感覚でしたね。

――上京時はどんな気持ちでしたか。

LBD:高校3年生になると同時に転校して上京したんですけど、最初は家族にも反対されていたし、心配もされていて。学校の友達にもお別れするときに、転校が決まってることを打ち明けたんですね。強い覚悟を持って決めたことだったので、別れを惜しむ間も無く、上京して。<何かを得る時には、何かを捨てなければいけない>っていうワンオクの曲(「欲望に満ちた青年団」)に背中を押され、新幹線の中で一人で泣く、みたいな感じでした。あとは強がってましたね。「もう決めたんだから! 成功してやる」っていう気持ちでした。

――当時はどんなアーティスト像を夢見てましたか。

LBD:今も変わらないんですけど、七変化できる、いろんな顔を持った表現者になりたいなと思ってましたね。小さい頃に、役に化けるミュージカルをやっていたので、表現とはそういうものだって体に叩き込まれていて。

――ミュージカルがルーツの1つにあると聞いて腑に落ちました。インディーズ時代の曲を聴くと、本当に曲ごとに歌声が違うし、シンガーソングライターだけれども、“私”を歌う私小説よりも、物語を感じる曲が多いなと思っていたので。

LBD:ギターも作詞作曲も歌う手段のために始めたことなので、弾き語りで歌うことや、作詞作曲することが目的なわけではないんですよね。あくまでも歌うことが中心で、曲によって性格があるから、その曲が持ってる性格を表現するという感じ。そこは今後も貫いていきたいですね。

――では、インディーズ時代はどんな日々でしたか。

LBD:恵まれた環境だったなと思っています。大物の方とのコラボレーション曲もあったし、付き人時代にお世話になった事務所の先輩のMISIAさんにも、いろいろなアドバイスをしていただいて。まだ新人で未熟ながらも、大きなステージに立たせてもらったりするときの精神力の持ち方とか、大物の方と向き合っていくためには、自分がそこまでのクオリティーを意識的に持っていかないといけないっていうことにも気づけた。いろんな修行をさせてもらった期間でしたね。

――MISIAさんから学んだことは?

LBD:ひと言で言うと、人間力がすごいんですよ。人とお話しするときにも、常に伝え方を考えているし、小さいことから大きなことまで、物事には全部意味があるっていうことも学びましたし。……なんというか、MISIAさんが音楽に愛情を込めらた時に生まれるパワーのすごさとか。そういうものを身に染みて経験したというか、愛情のシャワーを浴びたみたいな感じでした(笑)。これからもMISIAさんの背中を見させていただきたいと思いました。

――またインディーズ時代は、<歌謡ロック>というコンセプトを掲げてました。<歌謡ロック>という独自のジャンルを確立したのは?

LBD:自分が小さい頃に聴いていたルーツが歌謡曲で、青春時代に好きで、背中を押してもらってたのが邦楽ロックだったんですよ。その2つが自然とそこが合体して、自分から曲は生まれた時にそうなったので、後付けという感じですね。したんじゃなくて、そうなってたっていう。

▲「だるま落とし」

――歌謡曲というのは?

LBD:グループサウンドとフォークミュージックですね。私はおばあちゃん子だったので、祖母の車で移動してて。祖母が車でよくCDをかけていたんですけど、子供向けのCDよりも歌謡曲を好んで聴いていました。むしろそっちの方が童謡っぽいというか。フォーククルセイダーズの「帰ってきた酔っ払い」も子供向けの曲に聞こえてたし、寺尾聰さんの「ルビーの指輪」も自分の頭の中で絵本みたいな感じで聴いてて。私、妄想少女だったので。

――(笑)ちょっと早熟じゃないですか。背中丸めて指のリング抜き取ったりしてるけど……。(注:「ルビーの指輪」の歌詞〈背中を丸めながら 指のリング抜き取ったね〉より)

LBD:でも、小さい子って宝石とかが好きじゃないですか。だから、当時はキラキラしてる宝石の曲だと思ってて。歌詞がストーリーになってるから、コートを着てるおじさんの絵は浮かんでいたし、枯葉が舞うイメージもできた。松本隆さんの歌詞の世界観、すごいですよね。小さい子でも絵本のような物語が描ける。そういう一人遊びを楽しんでましたね。

――邦楽ロックの影響は?

LBD:めっちゃワンオクです(笑)。ファンでした。出会いはあんまり覚えてないんですけど、学校でも流行ってたし、友達も好きで聴いてて。私は単純なところがあるので、歌詞で言われたら、そう信じ込んじゃうんですよ。気合入る言葉を言われたら闘志を燃やしちゃうし。元気をもらってましたね。これがロックだ! っていう。

――(笑)その歌謡とロックを融合させた1stデジタルアルバム『浮世歌』はご自身にとってどんな一枚になってますか。

LBD:自分が現時点でやりたいことを詰め込んだので、今後、何に挑戦したとしても、原点回帰ができるようなアルバムになったって思います。この先、いろんなことに挑戦させてもらいたいんですけど、いつでも帰れる、大きな土台が作れたという安心感がありますね。

――やりたかったことというのは?

LBD:自分が作詞作曲したオリジナル曲に関しては、自分から生まれた子供に、性格をつけて、服を着させてあげたというか。しっかりと着飾って、世に出してあげたという気分です。あとは、歌謡曲方式で、プロフェッショナルな作詞家や作曲家さんの提供していただいた楽曲を歌うこともやりたいことの1つだったので、「心に棲む鬼」や「妖精の詩」が歌えたことも楽しかったです。もう1つはコラボレーションですね。成田昭次さんと令和のデュエットソング「哀愁のメランコリー」を歌えたり、小さい頃に聴いていた「ピタゴラスイッチ」の栗コーダーカルテットさんとジブリの世界観みたいな曲を作れたのも嬉しかったです。

▲「哀愁のメランコリー feat.成田昭次」

――自作自演だけじゃなく、楽曲提供やコラボもありなんですね。シンガーソングライターという肩書きだけども、そこは割と柔軟なんですね。

LBD:そうですね。芯にあるのは「歌いたい」ということなので。例えば、どなたかに曲を書いていただく機会があって、デモを聞かせてもらったときに、歌いたいっていう気持ちが生まれたら、もうすぐにでも歌っちゃいます(笑)。歌が好き、歌うのが好きで、表現することが好き。伝えたいことがあれば自分で書くし、伝えたいメッセージがすんなり入ってくる曲をいただければ、それを歌って表現するしっていう感じですね。

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音楽も人が奏でるものだから、1曲1曲に性格がある

――メジャーデビューが決まった時はどんな心境でしたか。

LBD:めちゃくちゃ嬉しかったです。2019年くらいから準備していたんですけど、コロナ禍になってしまって。進みたくても進めないもどかしさもあったので。やっとスタートに立てたっていう気持ちですね。ただ、自粛期間中も私の中では結構充実はしていて。1か月で30曲くらい制作したりしていたので、自分の中ではずっと忙しかったですね。コロナ禍が明けるっていう感覚は来ないだろうなって思っていたので、明けるのを待つよりも、動き続けないといけないなって感じてました。

――川谷絵音さんプロデュースによるメジャーデビューシングル「夏だらけのグライダー」を最初に受け取った時はどう感じましたか。

LBD:川谷絵音さんだ!ってなりました。あははははは。

▲「夏だらけのグライダー」

――でも、<歌謡ロック>ではないですよね。そこに抵抗はなかった?

LBD:私、歌謡曲は歌謡曲というジャンルではなくて、今もあると思っていて。いわゆる商業的なプロフェッショナルが集って生み出すものが歌謡曲で、ニューミュージックもシティポップも歌謡曲だし、現代で言うと、Ado「うっせぇわ」やYOASOBI「夜を駆ける」も全部ひっくるめて歌謡曲だと思ってるんですね。だから、私の中では、歌謡曲ができるっていう喜びがありました。

――そういう意味では、川谷さんは間違いなくプロフェッショナルな音楽クリエイターですもんね。もう1つ、歌い方もこれまでとは違いますよね。

LBD:それは、川谷さんから「歌う時に声が変わるけど、この曲はしゃべり声のままで歌ってみてほしい」って言われて、挑戦してみました。

――可愛い女の子の声になってますね。

LBD:「ちょーかわいい」でもやった方法ですね。曲の性格を生かすためにすることは全く抵抗がないんです。むしろ、望んでいたことですね。だから、曲が良くなった、やったー!っていう感じ。

――この曲の女の子はどんな性格でしたか?

LBD:令和女子ですね。高円寺で買った花柄の古着のワンピースを着てそうだなって思い描いてました。でも、トレンドを掴むのがはやくて、生きていくのは上手というイメージでした。川谷絵音さんの曲を好きな人は、絶対に好きだろうなって思いますね。

――続く2ndシングル「雨と恋心」も川谷絵音によるプロデュース曲になってます。

LBD:はじめて聴いたシチュエーションが、今年の5月の頭だったんですけど、MISIAさんのライブのオープニングアクトを務めるために河口湖に行っていて。ホテルで寝ていたときに、朝、7時くらいにピコンってラインがきて。まだ半分寝ぼけた状態で聞いてみたら、「歌いたい!」って飛び起きて。そのくらい、歌えるっていう喜びが最初に入ってきた衝撃があった曲でしたね。

▲「雨と恋心」

――その「歌いたい」と思うかどうかか感覚的なものですよね。

LBD:そうですね。理屈じゃない、感覚的なものですね。人と一緒でフィーリングです。音楽も人が奏でるものだから、1曲1曲に性格があるんですよね。ほんとに雨が降ってた時でスッと入ってきましたし、気づいたときにはもう歌ってましたね。

――(笑)この曲はどんな性格ですか。

LBD:すごく日本人ぽい女の子。私は「上を向いて歩こう」のように、ちょっとから元気が入った、日本人の心情を歌った曲を常に目指して描いてて。前向きでいたいいけれど、ちょっと愚痴もこぼしてみたいんだよっていうような感じ。「なんでこんなに日本女子の心がわかるんだ、絵音さんは!」って思って。

――失恋ソングですよね。

LBD:そうですね。ケーキ屋さんに行って、フィナンシェを買っていくのがすごく女性っぽいなと思って。女性は単純なことで気分をポジティブに持っていけるんですよね。フィナンシェは、ケーキ屋さんでレジ横に売ってるんですけど、ケーキだけ買いに行った時はなかなか買わないんですよ。でも、この子は買ってる。きっと、そのくらい自分へのご褒美を欲しってる状態なんですよね。そういう細かいところがすごいなって思いますね。

――ちなみにLBDさんにとっての自分へのご褒美は?

LBD:やっぱり美味しいものを食べること。特に辛いものかな。自分で辛いスープを作って、唐辛子をめっちゃ入れて食べたり。あとは、事務所のスタッフさんに、「お寿司食べたいな~」「焼肉食べたいな~」ってささやいて、お美味しいものを摂取してます(笑)。

――(笑)今回のレコーディングはどんなアプローチでしたか。

LBD:本当は最初から最後まで転調せずに同じキーだったんです。でも、頭と真ん中は美味しいところだから、違う風に聞かせたいと思って、「後半から転調してもいいですか」って提案させていただいて。あとは、川谷さんがお忙しかったので、ライン上だったんですけど、歌入れの時に「ここの歌詞を変えていいですか」って送ったら、すぐに既読がついて、変更した歌詞が返ってきて。すごくプロフェッショナルな現場でした。歌のレコーディング的には、もう泣いてもいいくらい感情的に、飾らずに、思うがままに、心の底から解き放つ感覚で歌ってます。

――心の中では泣いてるような湿り気がありつつ、足取りは軽やかなんですよね。

LBD:うんうん、強いイメージですね。見た目は強い女の子ほど、こういう弱い心を持っていたりするので私の等身大だなって思いました。だから、今回、MVでは曲調もUKロックの要素もあったので、女版ビートルズを意識して、カッコいい感じにしてみました。そのまま、飾らずに、等身大のLBDでやってます。

――ライブっぽいところもありますよね。

LBD:ライブですごい盛り上がるんだろうなって思いますね。ライブで生のバンドでやるとなったら、歌が引っ張っていく感じで意識して歌うと思う。歌が先頭に立って、指揮者みたいになって、バンドがついてきてくれるようなテンション感で歌いたいし、早く人前で歌いたい気持ちでいっぱいです! こんな素敵な曲、早く聴いてほしいし、本当に早くライブがしたいです!

――みんなの前で歌いたいという気持ちがひしひしと伝わってきてます。今後はどう考えてますか。

LBD:以前よりも、心の拠り所としての音楽が求められているような気がしてるんですね。私は日本が元気になってほしいので、止まらずに活動を続けていきたいなと思いますね。私はワンオクとか、好きなアーティストの人たちが歩みを止めないことに勇気をもらったので、今度は私が歩みを止めずに、そういう背中を見せられたらなと思います。

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