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『THE MUSIC DAY』での鮮烈なパフォーマンスが話題 “令和の歌謡曲”シンガー「Little Black Dress」とは



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 川谷絵音が楽曲を提供した1stシングル『夏だらけのグライダー』でメジャーデビューを飾ったLittle Black Dress。日本テレビ系音楽特番『THE MUSIC DAY』(7/3放送)での鮮烈なパフォーマンスも話題のLittle Black Dressの音楽性をじっくりと紐解いてみたい。 Text:森朋之

未来が見通せない現在を生きる人たちに寄り添うLBDの音楽

 1998年生まれ、岡山県出身のシンガーソングライター=Little Black Dress(以下LBD)のルーツは、歌謡曲を中心とした昭和のポップソングだ。

 幼少の頃から家族が聴いていた歌謡曲やフォークソング――山口百恵、沢田研二、中島みゆき、ザ・フォーク・クルセダーズなど――に触れながら育ち、自然に影響を受けてきたという彼女は、高校入学と同時に叔父からギターを譲り受け、地元のライブハウスや路上でライブ活動をスタートさせた。その1年後には自ら作詞・作曲をはじめ、彼女のルーツである歌謡曲を基盤にした「幸せに隠れている“陰り”」をテーマにした楽曲を一つ一つ積み上げていった。当時の音楽シーンは、グループアイドルの全盛期。翳り、憂い、切なさをたっぷり含んだ楽曲を志向していたLBDは、その時点で既に、流行やトレンドとは一線を画す確固たるスタイルを持っていたと言っていいだろう。(実際、彼女の1stデジタルアルバム『浮世歌』の収録曲は、その多くが10代の頃に書かれた曲だという)

▲『浮世歌』収録「だるま落とし」

 独特の歌謡ロックによって地元の音楽シーンで存在感を強めていた彼女が大きな注目を集めたきっかけは、2016年9月に奈良県・春日大社で開催された【MISIA CANDLE NIGHT】のオープニング・アクトに抜擢されたこと。そこでクリエイティヴ・ディレクターの信藤三雄氏と出会い、「Little Black Dress」と名付けられたことで、ソロプロジェクトが本格的に始動した。2019年5月にデジタルシングル『双六/優しさが刺となる前に』でインディーズデビューを果たした彼女は、翌年4月は中国の人気テレビ番組『歌手 SINGER・当打之年』に出演し、MISIAと共演。推定視聴者数5億人の前で堂々たるパフォーマンスを見せつけた。また同年11月にはビルボードライブ横浜で単独公演を行い、元・男闘呼組の成田昭次とのセッションが実現。こうしたレジェンド級のアーティストとの共演も、彼女にとって大きな成長のきっかけになっているはずだ。

▲「哀愁のメランコリー feat.成田昭次」

 2021年5月にリリースされた1stデジタルアルバム『浮世歌』は、現時点におけるLBDの集大成と言っていい。既存のデジタルシングル「双六」「優しさが棘になる前に」「野良ニンゲン」「Mirror」「だるま落とし」「哀愁のメランコリーfeat.成田昭次」「心に棲む鬼」に加え、リード曲「妖精の詩」(荒木一郎のカバー)、ライブでも人気を得ている「ちょーかわいい」など全12曲を収録。昭和の歌謡曲のムードを令和のポップミュージックに昇華させた音楽性、喜怒哀楽をビビッドに描き出すボーカルを堪能できる作品に仕上がっている。その根底にあるのは、“浮世”という言葉に象徴される、この世の中に対する憂い、そして、市井の人々に対する思いだ。“浮世”とは、定まることがなく、辛いことが多い世の中のことを指す。思うようにはいかない日々、切なさ、虚しさを抱えたまま生きる人たちの心に寄り添い、“また明日もがんばってみよう”という気持ちに導いてくれる彼女の音楽は、未来が見通せない現在おいて、多くのリスナーの胸に響いているはずだ。

▲「妖精の詩」(荒木一郎カバー)

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川谷絵音が楽曲提供した珠玉のサマーチューン「夏だらけのグライダー」

 そしてこの夏、LBDはついにメジャーシーンへと進んだ。最初のシングルは、「夏だらけのグライダー」。作詞・作曲・編曲・プロデュースを川谷絵音が担当した、珠玉のサマーチューンだ。

▲「夏だらけのグライダー」

 冒頭でギター、ベース、ドラム、鍵盤が刺激的に絡み合い、次の瞬間、スムーズ&グルーヴィーなバンドサウンドへと移行。心地よく浮遊するメロディラインと<暑がりな猫の態度は 思わせぶりにも見せた>という歌詞によって、“夏の憂い”と称すべき楽曲の世界へと誘われる。10年代後半以降のネオソウル、オルタナR&Bの潮流を感じさせながら、LBDらしいポップソングに導く川谷のプロデュースは、さすがのひと言だ。レコーディングには、休日課長(Ba./ゲスの極み乙女。、DADARAY)、ichika(Gt./ichikoro)という川谷絵音の活動に深く関わるメンバーをはじめ、数多くのアーティストをサポートしている宗本康兵(Key)、GOTO(Dr)も参加。しなやかにして洗練されたサウンドを体現している。

 特筆すべきはもちろん、LBDのボーカルだ。ゆったりと流れるフロウを的確に描きながら、歌詞のなかに込めれた切なさ、諦念、そして、未来に対する微かな希望を滲ませる歌声は、まさに絶品。全体に流れる官能性と、爽やかに突き抜ける感覚を共存させた表現力にも強く惹きつけられる。2019年のインディーズデビュー以降、数多くの大舞台を踏み、実力派アーティストとの共演やセッションを幾度となく経験してきた彼女。「夏だらけのグライダー」を聴けば、シンガーとしての彼女の才能がさらに大きく開花しつつあることがはっきりとわかるはずだ。

 冒頭で紹介した通り、メジャーデビュー翌日の日本テレビ系音楽特番『THE MUSIC DAY』(7/3放送)への出演も大きな注目を集めた。休日課長、えつこなどを擁するバンドを従えて登場したLBDは、トレードマークの黒のギターを弾きながら、「夏だらけのグライダー」を歌唱。SNS上でも「Little Black Dressさん、歌うま。 そしてスタイルも良くてカッコいい」「リトルブラックドレスって人、宝塚の男役みたいな見た目! めっちゃ歌うまやし、かっこいい!」「緊張もあったと思うけど、堂々とした見事なステージでした! 格好良かった、可愛かった」といったコメントが寄せられていた。地上波の生放送は初めての出演だったが、そのインパクトは十分だった。

 この夏、LBDはさらに精力的な活動を展開する。7/15(木)にビルボードライブ横浜、7/19(月)にはビルボードライブ大阪で【Little Black Dress ワンマンライブ Special Guest 成田昭次】を開催。さらに9月には「夏だらけのグライダー」と同じく、川谷絵音が楽曲を提供した2ndシングルのリリースも予定されている。メジャーデビューをきっかけにして、彼女の存在はさらに広いリスナーに浸透するはず。彼女が生み出す“令和の歌謡曲”はここから、より多くの人々の心を動かし、包み込むことになるだろう。

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