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大塚 愛『恋愛写真』 インタビュー
映画『東京フレンズ The Movie』に【a-nation'06】、先日の日比谷野外音楽堂での【大塚 愛[LOVE IS BORN]~ 3rd Anniversary 2006 ~】と、今年の夏も例年と変わることなく、良いペースで自身の表現力を磨いていた大塚 愛。彼女がここに来て、大きな転機を迎えていることが、今回のインタビューからは感じ取ることができた。
一瞬、もうこの仕事を辞めてもいいと思うほどの名曲を生みだし(野音で初披露した『ポケット』)、それに勝るとも劣らない名曲『恋愛写真』をこのタイミングで発表することができた背景には、これまでにはなかった並々ならない覚悟と自信、そして出逢いがあった。本当の意味での、正真正銘の大塚 愛の歌。そこに込められた想いを本人に語ってもらった。
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--前回の『ユメクイ』リリースタイミングでのインタビューをさせてもらってからすぐ『東京フレンズ The Movie』、観に行かせていただいたんですが、想像以上に面白くて、正直驚きました!自身では、あの映画にどんな印象や感想を持っていますか?
大塚愛:ビックリするぐらい、みんながいい人やなと思いましたね。出演者の皆さんが。
--いわゆるアーティストが主演を取る映画って色眼鏡で見られがちじゃないですか?でも『東京フレンズ The Movie』に関しては、大塚さんの演技にも違和感を感じませんでしたし、むしろ感動させられて、なんかホメ殺しみたいになってますけど(笑)実際のところ監督による演技指導みたいなモノはあったりしたの?
大塚愛:最初の方はやっぱり私が演技をするっていうのが初めての経験だったので、画面上にどんな風に映っているのか、よく分からなかったし。そういった部分で私の癖とかを永山監督に指摘してもらったりはしてました。
--ちなみに監督の永山耕三さんって、大塚さんから見てどんな人だったりするんですか?
大塚愛:良い歳の取り方をしたおじさんなんですよ!いろんな経験をなさっていて。女の子の演技指導までもするってことは、女心も分かってるのかな?とか思ったりもして。よく観察なさってるなとか、感じましたね。
--あと『東京フレンズ The Movie』のハイライトと言えば、サバイバルカンパニーのライブシーンだと思うんですが、クライマックスの『フレンズ』と『ユメクイ』のライブシーンには本当に感動させられました。あれは実際にお客さんを入れて行ったんですか?
大塚愛:はい。
--やっぱりあのシーンでは、大塚愛ではなくサバイバルカンパニーの岩槻玲として歌っている感覚って強かったんですか?
大塚愛:そうですね。ちょっと初々しさを出しながら歌いました。新人バンドのボーカルってところで。
--この手の質問はもしかしたらこれまでよくされてきたかもしれないんですけど、岩槻玲って大塚愛と似てるところあります?
大塚愛:あんまり似てないです(笑)。顔は一緒ですけど(笑)。
--(笑)。で、その『東京フレンズ The Movie』公開と同タイミングでスタートした今年の【a-nation'06】。今年は実際にまわってみていかがでした?
大塚愛:今年はなるべく自分の色をもうちょっと出したいなと思ってましたね。良い意味で世間が持つエイベックスのカラーとは異なったライブにしたいと思って(笑)。
--それはオープニングの映像からもう感じました(笑)。
大塚愛:(笑)。
--超ローテンションな「ダッダッダダッダッダッダダッダッダッダダッダッダッダダッ ファイ・・・」という声と映像と共に大塚さんのライブは幕を開けたわけですが(笑)あのオープニングのアイデアはもちろん大塚さんの?
大塚愛:そうですね。
--また『プラネタリウム』は、野外ということで、花火も音だけじゃなく本物の花火が上がったりして、感動した人も多かったと思うんですが、あれはずっと自分の中でも実現化したい演出だったんじゃないですか?
大塚愛:どちらかというと、スタッフの夢じゃないですけど、スタッフの方が上げたがってましたね。
Interviewer:平賀哲雄
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--そんな【a-nation'06】での感動と興奮が冷めやらぬ中、9月9日、自身の誕生日に日比谷野外音楽堂で【大塚 愛[LOVE IS BORN]~ 3rd Anniversary 2006 ~】を開催。こちらは実際にやってみていかがでした?
大塚愛:今まで体験したことのない空間だったし、もうそれこそ新人の気分でやってましたね。あの会場は何かを意図的に作り込む必要がない空間だったので、より自然に、本当に曲だけで勝負するというか、その瞬間の音楽が作り出すフレーズだけで遂行できた、本来あるべき姿のライブが出来たと思いますね。
--あの日のMCで、初めてやったライブの話をしてましたよね。『さくらんぼ』を歌っても誰も「もう一回!」ってやってくれなくて、自分で叫んだみたいな話をしてましたけど(笑)実際厳しかった?
大塚愛:人前に立って歌うことにまだあまり自信がなかったんで、ライブが全然楽しめなかったんですね。『さくらんぼ』もリリース前だったので、自分で「もう一回!」と叫びました・・・(笑)。
--あと、あの日のライブ、本編のクライマックスの畳み掛けの前にかなぶんに襲われてましたね(笑)?そんなに苦手なの?
大塚愛:苦手ですね(笑)。あの瞬間は戦いでした(笑)。
--まぁあれも野音ならではって感じで(笑)。でもそういった部分も含めてナチュラルな空気が全体的に流れていたライブでしたよね。
大塚愛:そうですね。あんまり気張るのは、好きじゃないんで。普通に生活の中で歯を磨くのと同じぐらい心地良いモノがいいなって、あの日のライブでは思っていたので。
--で、あの日のアンコール。一番好きな自分の曲を歌うと言って、『ポケット』という未発表曲を披露されていましたよね?自分の気持ちを初めてと言ってもいいぐらい100%込めた曲と紹介してましたけど、今そういう曲を作ろうと思ったのは一体どんな心境から?
大塚愛:プレゼントをしたくなったんです、好きな人に。
--そんな大事な曲をあの日に披露しようと思ったのは?
大塚愛:「今まで作った中で一番良い楽曲だな」って思った曲なんですよ。だから今まで支えてくれたみんなへの感謝の想いを込めて、自分が一番良いと思う楽曲を聴いてほしいなと思って披露しました。
--『ポケット』が完成したときには、どんな気持ちに?
大塚愛:「もう辞めてもいいな」って、一瞬、思うぐらいの達成感はありましたね。
--今後リリースしたい気持ちは強い?
大塚愛:う~ん・・・元々リリースする予定で創った曲ではないので・・・。でも「みんなに聴いてほしい」という気持ちが生まれたときに初めてリリースするかもしれないです。
--そこまでの曲って人生に一度出来るか、出来ないかなんじゃないですか?
大塚愛:そうですね。よっぽど自分に覚悟と自信がないと出来ないと思いますね。
--素直な想いをストレートに綴ったナンバーという意味では、この曲とリンクするのが、この度リリースされることとなった『恋愛写真』もそうだと思うんですけど、この曲は元々どういった想いを綴ろうと作り上げたナンバーなのか、大塚さんの口から聞かせてもらってもいいですか?
大塚愛:これも好きな人への想いを歌った曲ですね。私、好きな人の写真を持ち歩くことはあっても、部屋に飾るっていうのはこれまでしたことがなかったんですけど、その部屋に飾った写真がすごく愛に包まれた写真なんです。その写真をそのまま曲にしたくって。その好きな人と私の世界観をそのまま込めたのがこの曲です。
--この『恋愛写真』のサビの中で何度も歌われる「ただ、君を愛してる」というフレーズは、映画『ただ、君を愛してる』のタイトルにそのまま起用されることになったりしてますけど、そういう意味では元々あった曲なんですね。
大塚愛:そうですね。
--大塚さんのすごくプライベートな世界観と映画の世界観がリンクした上での流れだったわけですね。
大塚愛:はい。この曲は元々あって。それとは別に映画の話を頂いた感じなんです。そしたら、映画の台本の中でもかなり写真が大事な要素になっていて、しかも主人公の二人(誠人(玉木宏)と静流(宮﨑あおい)が映っていた写真の感じが、先程話した私が持っている写真とさほど違いがなくて。で、「これは元々創ろうとした曲をそのまま創り上げよう」と思って、映画関係者の皆さんにこの曲をお聴かせしたら「これはピッタリだ」的な意見を頂いて。それからしばらくして、映画のお披露目直前になって「映画のタイトルを変えます」と聞いて、そしたらそれが『ただ、君を愛してる』だったっていう。
Interviewer:平賀哲雄
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--そうして完成した映画『ただ、君を愛してる』には、どんな感想を?
大塚愛:簡単に説明しやすい映画でもあるんですけど、感じなきゃいけない部分がすごくこの映画、深いんですよ。恋する人すべてに観てほしいなと思いましたね。
--ちなみに『恋愛写真』の「ただ、君を愛してる」というフレーズは、どんな心境が生み出したモノなんですかね?
大塚愛:やっぱり嘘を付くのは嫌いだし、嘘めいた言葉を並べてもどっか胡散くさい曲になっちゃうなと思っていて。で、「なんとなくちょっと好きだな」とか、そういう気持ちで綴った曲ではないから、すごく気持ちも深いし、単純ではないけど、その中にある真実だけは写真に浮かび上がってるなと思って。それで生まれた言葉ですね。
--歌入れに関しては、特別意識したこととかはありました?
大塚愛:静かなところほど大事にしました。そういう意味では、今までいろんな曲を歌ってきましたけど、この曲は相当難しい。
--それでも大塚さんはこの先、この曲にしっかりと想いを込めて歌い上げていくと思うんですが、この曲もまたすごく大切な曲になっていきそうな予感がしてるんじゃないですか?
大塚愛:はい、二番目に大切な曲ですね。『ポケット』の次に大切な曲。
--今ここに来て『恋愛写真』や『ポケット』のような素直な想いを歌った曲を発表していっているのは、どうしてなんでしょう?
大塚愛:人間的に覚悟ができる自分になったんだと思います。ちょっと前までは「まだおちゃらけていたい」って感じだったんですけど。まぁでもそこは出逢いが大きいと思います。こういう曲を自分が書きたいと思えるぐらいの人に出逢えたから『恋愛写真』も『ポケット』も書けたと思うし、この先もそういう出逢いがあればこういう曲は書けると思うし。嘘は書けないですからね。
--で、『恋愛写真』でストレートな想いを切々と歌い上げた後は、ちょっとハニカんで。みたいな感じで今作の2曲目には『ハニカミジェーン』というナンバーが収録されていますが、この曲はどんなイメージを膨らませながら作っていった感じなんでしょう?
大塚愛:パリでショッピングをしながら石畳の道を歩いているジェーン。のイメージ(笑)。
--(笑)。ちなみにそのジェーンのモチーフになっている人物はいるんでしょうか?
大塚愛:本当は男性なんですけど、名前が男の子よりも女の子の方が良かったんで(笑)。
--結構テンション的には高いときに書いた詞なんだろうなと思ったりもしたんですけど。
大塚愛:そうですね。すごくポジティブな歌っていうか、良いところをとにかく見ようって意識して書きましたね。でも悪いところもちゃんと理解はできる。というか、理解するべきと思って書いた詞ですね。
--またこの曲、アレンジ面にかなりの拘りを感じるんですけど。
大塚愛:アレンジは難しかったですね。ちょっとでもロックなコードだと、ジェーンがパリで歩けなくなるんで(笑)。「そうじゃない」って何度もツッコミながら創り上げていきました。ちょっと間違えれば子供っぽくなっちゃうし。ドラムがロールしてるから、行進っぽく聴こえちゃったりもするし。それをバランスよく、カジュアルに整えていって、やっとパリを歩くことができました(笑)。
--大塚さんの曲って、実は絶妙なバランスで成立している曲が多いですよね。
大塚愛:そうなんですよね~。
--そして今作3曲目には、先程も触れた【大塚 愛[LOVE IS BORN]~ 3rd Anniversary 2006 ~】の音源が収録されていました。『羽ありたまご』、蝉の鳴き声入りバージョンですが(笑)今回この曲をセレクトしたのは?
大塚愛:『羽ありたまご』っていう曲が今まで作ってきたモノの中で一番奇跡的な生まれ方をした曲なんですよ。で、最近すごく弾き語りを求められる機会が多くなってきているので、今回は「弾き語りを入れよう」ってことになって。そのふたつの要素からこの曲が選ばれた感じですね。
--以前も『羽ありたまご』は、最も自分が表現したい音楽の中のひとつと言ってましたが、このピアノの弾き語りバージョンになると、どんな印象を持たれますか?
大塚愛:オリジナルはどちらかと言うと、落下していくイメージの強いサウンド作りをしていたんですけど、弾き語りバージョンを聴くと、包まれるような、あたたかい感じがしますね。どちらかと言うと、跳ぶための羽じゃなくて、自分の身を包むための羽って感じがして。その変化には自分でもビックリしました。
Interviewer:平賀哲雄
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--そんな聴き応えのあるナンバー3曲が収録された今回のシングルもDVD付きの方には、ミュージッククリップが収録されるそうですが、『恋愛写真』のミュージッククリップはどんな内容になっているんでしょうか?
大塚愛:本当かどうか分からないんですけど、このクリップを初めて見たウチのスタッフが泣いたそうです(笑)。映画『ただ、君を愛してる』の影響もあると思うんですけど、恋をしたくなるミュージッククリップだと思いますね。
--観られるのを楽しみにしています!あと、今後の予定の方なんですが、どんな展開を考えたり予定していたりするんでしょう?
大塚愛:当分はこの『恋愛写真』を長~く聴いてほしいなって思うし、映画『ただ、君を愛してる』も長~く観てほしいなと思うので、そこに集中していきたいです。
--では、毎度毎度ですが、最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします!
大塚愛:(笑)。え~っと、とにかく良い!
--本日はありがとうございました!
大塚愛:あ、ちょっと待って(笑)。ブックレットが太いんです、今までより。
--内容が充実していると。
大塚愛:えぇ。ブックレットも太いし、16ページもあるんです。ミュージッククリップもかなり良い作品に仕上がっているので、いつもよりちょっとお得感があると思います。最後に、この秋、映画「ただ、君を愛してる」共々、『恋愛写真』をよろしくお願い致します。
映画 『ただ、君を愛してる』
大塚愛の『恋愛写真』が今年最も切なく愛おしいラブソングなのであれば、それが主題歌となるこの映画『ただ、君を愛してる』は、今年最も切なく愛おしいラブストーリーである。ただ永らく生きることより命懸けで恋をする人生を選ぶ少女と、臆病でコンプレックスの固まりで自分の想いを好きな人に告げることもできない青年。そんな正反対の性格の誠人(玉木宏)と静流(宮﨑あおい)が織り成す物語は、始まりから最後まで純粋無垢さに溢れており、その力の大きさには感服させられる。
大人になるに連れ忘れていくこと。日々の生活の中で見失ってしまうこと。僕らが本来求めていたモノはこんなにもシンプルで、まっすぐな想いだった。と、万人が気付かされるであろう名画。・・・なんて少々堅苦しく紹介してしまったが、それだけの内容の作品をキラキラ眩く、可愛らしく、そして前向きに描いている今作は、やはり素晴らしい。
10月28日(SAT)全国ロードショー
原作:市川拓司 「恋愛寫眞 もうひとつの物語」(小学館)
監督:新城毅彦
出演:玉木宏/宮崎あおい/黒木メイサ/小出恵介
Interviewer:平賀哲雄
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