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<コラム>メディアに頼り切るプロモーションはもう終わり?デジタルプラットフォーム活用のススメ



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 近年、音楽アーティストのプロモーション方法が変化している。

 多くの人がデジタル端末を持つ現代。情報収集やゲームや映画、映像、読書、音楽など多くの娯楽が手の平サイズにおさまるようになった。ここ数年の音楽のヒットをとってみても、YOASOBIやAdo、瑛人などTikTokやYoutubeから人気に火が付いた例も多い。特にTikTokの場合、楽曲が聴取されることではなく一般のリスナーに利用されることでヒットする例もあり、音楽ヒットにおけるネットの存在は時を経るごとに大きくなっている。

 このような時代の変化に伴い、音楽業界の中でも動きが生まれている。それまでテレビや雑誌等を中心にして行われることが多かったプロモーションが近年、SNSや動画プラットフォームを利用した自社コンテンツによって行われる例が増えているのだ。

 2019年よりYoutubeチャンネルで運営されており、絶大な注目度を誇っている一発撮りコンテンツ<THE FIRST TAKE>はそのうちのひとつだ。白い背景にマイクというシンプルな画は観る者にインパクトを与えた。ここに登場するのはLiSAやLittle Glee Monsterなど人気アーティストが中心。普段は中々見ることのできない歌唱前の緊張した面持ちまで収められている、貴重なコンテンツだ。YouTubeに投稿される歌ってみた等を見てみると、これをオマージュしたであろうステージセットの動画を多数見ることができる。

▲<THE FIRST TAKE>DISH// (北村匠海)「猫」

 2020年9月からは若手アーティストが多く出演する<blackboard>もYoutubeにて運営されている。その他、アーティストによるTikTokへの投稿やSNSでの発信など、事務所や本人などによるプロモーションは、今や見ない日がない身近な存在となっている。

▲<blackboard>川崎鷹也「魔法の絨毯」

 外部メディアを仲介させることなく発信することは、発信者、消費者ともにメリットがある。

 発信者、アーティスト側としては、コンテンツの更新頻度や内容を自由に決めることができることが最大の利点だろう。発信方法、頻度、ボリューム感など所属アーティストや本人に合った発信、宣伝ができるのは、表現を生業とするアーティストにとって大きなメリットだ。アーティストの魅力を一番伝わりやすい形で打ち出すことができる。

 また、ある種形式的になる危険性もあるメディア仲介型の宣伝よりも、作りこまれすぎていないコンテンツを発信しやすいのも特徴だ。Youtubeではモデルやインフルエンサーがモーニングルーティーンと称して身支度を整える前の朝の様子を映したり、Youtuberによる日常的な動画などが人気を博している。身構えずにとっつきやすいコンテンツは消費者としても気軽に受け取りやすいだろう。作りこまれすぎていないように見えるコンテンツの方が、手元の端末で思いついたときに日常的に受け取るには気楽なのだ。今まで見ることができなかった素顔に近い部分などを知ることができるという点でも魅力を感じる。

 アーティストであれば弾き語り等を行うことで音源やテレビ歌唱とは異なる味を出すことができるし、自身の表現の中で最適なプロモーション方法を選び取ることができる。また、活動に直結しているコンテンツだけでなく、ゲーム実況やメイク紹介などが公式チャンネルで発信されることも多い。興味や趣味を通じてファンと繋がるという、アーティスト活動そのもののみではない交流も可能なのは、仲介なしに発信するゆえにできることだろう。

▲ビッケブランカ公式チャンネルより『フォートナイト』実況生配信

 多くのSNSでは、コメント機能などを使用してコミュニケーションをはかることもできる。このようなプラットフォームの仕組みも相まって、どこか親近感が湧くような身近さを感じることができるのがテレビ等とは異なった近年のネットコンテンツの良さでもある。

 福岡県出身シンガーソングライターのRanも公式Youtubeチャンネルにて発信をしている。2020年12月から5か月連続配信リリースをしているRanが、演奏者1人を迎え新曲をセッション形式で演奏をする企画、One by Oneでは、音源と異なるバージョンでの歌唱を楽しむことができる。生本直毅のエレキギターとのセッション「行方」は軽快なギターに重なるRanの声が後半になるにつれ表情がより豊かになっており、セッション特有の盛り上がりを感じることができる。キーボードに宮田'レフティ'リョウを迎えた「華たち」では、ゆったりとしたテンポに抑揚のあるRanのボーカルが乗ることで切なさが際立っており、音源よりさらに表現がふくよかになったパフォーマンスを見ることができる。

▲「ねえ」One by One Ver.

 また、Ran公式チャンネルでは演奏コンテンツだけでなく、インタビュー動画の発信も行っている。文字情報だけでは伝わらない言葉の間やニュアンスを伝えることができるインタビュー動画は、アーティストの楽曲に対する思考を知るのに最適であるし、人柄にも触れることができるようでもある。20歳である彼女の飾らない部分はゲーム実況からもみることができる。様々な毛色の動画を公式チャンネル一か所で見ることができるのも、利便性が高く、メリットと言えるだろう。

▲「ねえ」インタビュー動画

 時代とともに移り変わっていくプロモーション方法。もちろん、閉鎖的になりやすいなどの懸念もある。それも踏まえ、自由度の高いプラットフォームからアーティストに最適なコンテンツを打ち出していくことが必要だ。

文:村上麗奈

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