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【特集】ザラ・ラーソン 世界が待ち望んでいた新作『ポスター・ガール』



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 次世代ポップスター、ザラ・ラーソンが約4年ぶりの新作『ポスター・ガール』を発表した。2015年に自国スウェーデンでリリースした「ラッシュ・ライフ」で注目を浴びた彼女は、その圧倒的な歌唱力とキュートにもクールにも妖艶にも染まるルックス、そしてオープンなキャラクターが世界中でウケ、すぐさまヨーロッパはもちろん、欧米、アジアを飛び回るスターへと変貌。その逸材を世界が放っておくはずがなかったのだ。

 国際的なブレイク、そして2020年のコロナ禍を経て完成したファン待望のニュー・アルバムには、バラエティ豊かなサウンドに乗った彼女のリアリティ溢れる感情が収録。過去作から格段とレベルアップしたザラ・ラーソンに出会えるはずだ。本作のリリースを記念して、国内盤のライナーノーツを執筆した新谷洋子氏にアルバムの聞きどころを解説してもらった。

 ザラ・ラーソンを見ているとつくづく、グローバルなスケールの21世紀型ディーバだなと思う。その理由は枚挙に暇ないが、例えば、ビヨンセを究極のロールモデルに掲げていることがひとつ。ほかにもR&B/ソウル界の偉大なシンガーたちに憧れて幼い頃から喉を鍛えてきたザラは、見た目には不似合いなくらいにタフで迫力のある歌声を誇る。でも、自身の表現においてはジャンルに縛られていない。スウェーデン人でありながら最初から世界を舞台にした活動を志し、ネイティブに近い英語を操って、各地のプロデューサーやソングライターとコラボ。広い意味での世界標準のポップ・ミュージックを志向して、自身の作品制作に取り組むだけでなく、デヴィッド・ゲッタの「ディス・ワンズ・フォー・ユー」にヴォーカルを提供したり、TWICEの「MORE & MORE」にソングライターとして関わったり、軽やかなフットワークで音楽作りをエンジョイしてきた。


 また、社会意識の高さも21世紀型ディーバの必須条件だが、ザラはフェミニストを自認し、環境問題だろうとジェンダーの問題だろうと自分の言葉で論じて、舌鋒の鋭さで物議を醸すこともしばしば。そしてオーディション番組出身者であることも、デビューに至るルートとして、彼女の世代には珍しくない。中でもザラが出演したのは、地元で現在も放映中の『Talang』。世界各地で独自ヴァージョンが制作されている、英国の人気オーディション番組『ブリテンズ・ゴット・タレント(Britain's Got Talent)』のスウェーデン版だ。2008年、彼女は10歳にしてその第2シーズンの決勝に進み、セリーヌ・ディオンの名曲「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」を歌いこなして優勝。華々しいスタートを切っている。

 もっとも、本人はすぐにでもデビューしたい気持ちだったそうだが、さすがに早過ぎると判断され、デビュー・アルバム『1』が北欧諸国で登場したのは2014年のこと。ザラが16歳の時だ。同作はスウェーデンでナンバーワンに輝いて快調にブレイクを果たし、その後の数年間には「ラッシュ・ライフ」(スウェーデンで最高1位、英国で同3位)や「ネヴァー・フォーゲット・ユー feat. MNEK」、「エイント・マイ・フォールト」といったシングルが、続々ワールドワイドなヒットを記録。2017年に満を持して世界デビュー・アルバム『ソー・グッド』を送り出すのだ。



 英国からMNEKやスティーヴ・マック、アメリカからザ・モンスターズ&ストレンジャーズ、カナダからSTINT……といった具合にインターナショナルなコラボレーターを迎え、EDMやエレクトロ・ポップ、R&Bにダンスホールなどなど幅広くジャンルを網羅する『ソー・グッド』は、地元のチャートで再び1位を獲得。ヨーロッパ各地でトップ10入りし、アメリカでも100万枚のセールスを達成して、彼女は難なく海外進出を果たす。冒頭で触れた器の大きさを踏まえれば、まあ、当然の展開だろうか?

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待望の新作に豪華クリエイターが参加

 以来ザラは精力的にツアーを行なう傍ら、じっくりと時間をかけてこのたびお目見えするニュー・アルバム『ポスター・ガール』のレコーディングを進めてきた。プロデューサーと共同ソングライターに関しては、今回も前作と同じく、世界中の才能を集めている。ザ・モンスターズ&ストレンジャーズ及びスティーヴ・マックを引き続き起用する一方、特筆すべきはやっぱり、同じスウェーデンが生んだ現代ポップ界最大のヒットメイカー=マックス・マーティンが、「スティック・ウィズ・ユー」の共作者としてクレジットされていることかもしれない。そして、エグゼクティヴ・プロデューサーに名を連ねるジャスティン・トランター&ジュリア・マイケルズの売れっ子ソングライター・コンビ(ジャスティン・ビーバー、ブリトニー・スピアーズ)が多くの曲に関わり、ほかにもプロダクションでスウェーデンのマットマン&ロビン(セレーナ・ゴメス、カミラ・カベロ)や英国人のスタースミス(エリー・ゴールディング、ジェス・グリン)の参加を得るなど、新旧ミックスの豪華なラインナップがセッションに加わった。

 こうしたメンツと完成させた『ポスター・ガール』は結果的に前作から4年ぶりのアルバムとなり、この間に彼女は10代に別れを告げて23歳になったわけだが、4年分の成長の跡は歴然とアルバムに表れている。そもそも長年バレエを習い、ダンスをこよなく愛するザラは、『ソー・グッド』をアップビートな踊れる曲を中心に構成していた。その点は本作でも変わっていないものの、ジャンルにこだわらない人だけに新たな方向性を打ち出し、昨今リバイバル中のディスコやハウスの4つ打ちビート――「ポスター・ガール」や「ライト・ヒア」や「FFF」――と、トラップ――「トーク・アバウト・ラヴ feat. ヤング・サグ」や「スティック・ウィズ・ユー」――が、サウンドの柱として浮上。レトロなテイストとモダンなテイストを交錯させて、一定の統一感をアルバムに与えている。

 と同時に、全体的にメロディックさを強調した曲作りを意識したことも明らかで、それがヴォーカリストとしての彼女からも新鮮な表現を引き出した。そう、前作ではとにかく挑発的で強気に攻める曲をパワフルに歌う印象があったザラだが、本作では甘くて切ない余韻を残す、抑えた歌声を多用。どちらかというと引き算のアプローチで、複雑なシチュエーションに直面した時の心の葛藤を、繊細に、巧みに描出。悩みながら答えを見極めていくような曲が目立ち、2枚のアルバムを聴き比べると、19歳と23歳、ティーンエイジャーと大人の女性、くっきりと異なる女性像が浮き彫りになるはずだ。

 そんなアルバムのジャケットとして、彼女は自身の姿が映るポスターを背にして、大きな夢に胸を膨らませているかのような面持ちのユニークなヴィジュアルを用意した。少々ナルシシスティックではあるものの、目標とする自分に近づこうとする向上心や自己肯定、そして、ポップスターとしてお手本であろうとする気持ちと受け止めることも可能だろう。或いは、パーフェクトに見える公の場の自分と、アップもダウンもある一人の生身の人間としての自分を対比させているのだろうか? アーティストとしてスケールアップし、グレーな感情も浮き彫りにしたこのアルバムにはどの解釈も合致するのだが、果たしてどんなメッセージを込めたのか、ぜひとも本人に意図を訊ねてみたいところだ。

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『ポスター・ガール』オススメ5選!

「トーク・アバウト・ラヴ feat. ヤング・サグ」

現時点の最新シングルは、アメリカ人のマイク・サバス(リゾ、リトル・ミックス)がプロデュース。カミラ・カベロの「ハバナ」を始め、多くの客演曲がヒットしている人気MCのヤング・サグをゲストに迎えたザラは、クールなトラップ・サウンドに背景に、本気で恋に身を投じるべきか否か迷いながら、敢えて決断しない曖昧な状態を楽しんでいる。ミュージックビデオでは、プロのダンサーである現在のボーイフレンドと共演して、彼女自身もダンスの実力を存分に披露。


「ニード・サムワン」

独りでもハッピーだと強がっていながら誰かに心惹かれている――そんな葛藤を描いた歌詞と、ヘヴィなベースがリードするディスコ・サウンドという、本アルバムの象徴的な要素が反映された1曲だ。共にスウェーデン出身の人気プロダクション・デュオ=マットマン&ロビンと、ソングライターでありソロ・アーティストとしても活躍するヌーニー・バオ(カーリー・レイ・ジェプセン、ケイティ・ペリー)の参加を得て、地元の音楽的才能をショウケース。


「WOW」

共作とプロデュースは、カリードをフィーチャーした「サイレンス」やアン・マリーとの連名で発表した「フレンズ」ほか、無数のダンスヒットやリミックスワークでお馴染みの覆面DJ/プロデューサーのマシュメロ。恋する気持ちの高揚感を、彼のドラマティックなプロダクションで盛り上げている。サブリナ・カーペンターが主演のNetflixオリジナル映画『Work It~輝けわたし!~』の挿入歌に選ばれたことを機に、サブリナ自身をフィーチャーしたリミックスも、昨年9月にお披露目された。


「ルーイン・マイ・ライフ」

2018年10月に本作から逸早くリリースされ、スウェーデンと英国のチャートでトップ10入りしたトラップ仕立てのシングル曲で、ザラは終わってしまった恋の刺激を忘れられず、元カレに戻ってきて欲しいと懇願している。相手に主導権を委ねているようにも聴こえるため、アンチ・フェミニストではないかと批判されもしたが、強いだけじゃないところを見せたほうがリアリティがあると判断したのだとか。プロデュースはザ・モンスターズ&ストレンジャーズだ。


「オール・ザ・タイム」

こちらは日本盤にのみ収められたボーナストラックで、2019年6月発売のシングル曲。前述したヌーニーのほかに、マイリー・サイラスやハリー・スタイルズといった大物の信頼を集めているイルシー・ジューバーがザラと共作し、プロデューサーにはスウェーデン人のロータスIV(サム・スミス、リタ・オラ)を起用した。『ソー・グッド』の若々しいエネルギーを引き継ぎながら、本作の4つ打ち路線を予告しており、明るいトーンとは裏腹に別れた彼の思い出に浸っている、ホロ苦い1曲。


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