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大塚 愛 『LOVE is BEST』 インタビュー
本人曰く"最終章であり、最初の章のアルバム"である『LOVE LETTER』リリース後、とにかくライブ三昧の日々を過ごしていた大塚 愛。ライブハウスツアーにアリーナツアー、多くの夏フェス出演に毎年恒例のアニバーサリーライブ。更には今年11月より【大塚 愛 LOVE is BEST Tour 2009】と題した、ペアしか参加できないツアーも開催する。今回のインタビューでは、何故に今年の彼女はライブモードで、またこのタイミングで初のラブソング・ベスト・アルバム『LOVE is BEST』をリリースすることになったのか。その真相を訊いた。
いろんな思い出とかを引き連れての今の自分
--多分、今年一番ライブを観させて頂いているのが大塚 愛なんですが、なんで2009年はこんなにもライブ三昧になったんでしょうか?
大塚愛:昨年12月に5thアルバム『LOVE LETTER』を発表した後に、またいつもみたいにシングルを立て続けに出そうとは考えていなくて、一度自由なことをやってから、いろいろ組み立てていこうかなと。そういう自分の中のプランがあって、とりあえず今年度はライブをたくさんして、いろいろと自分で学ぶ期間にしようと思ったんです。
--まず自身初のライブハウスツアー【大塚 愛 LOVE LETTER Tour 2009 ~チャンネル消して愛ちゃん寝る!~】がありました。
大塚愛:ライブハウスの使い方をあんまり分かっていなくて。でも回を重ねるごとに「何をゴールにするのか」っていうのを考えるようになって、最終公演ぐらいでようやくそれを掴めた感じでしたね。
--僕が観たZepp Tokyo公演では『ロケットスニーカー』が2回も披露されたんですが、あの楽曲をどこまで爆発させられるかっていうのもあのツアーのテーマにはあったのかなって。
大塚愛:そうですね。でもそれがしっかり形に出来たと感じるのは、その後のアリーナツアー【大塚 愛 LOVE LETTER Tour 2009 ~ライト照らして、愛と夢と感動と・・・笑いと!~】の方で。やっぱりアリーナですごく走りたくて。でもあの距離を全速力で走った後に歌うのは「しんどいなぁ!」って思いました(笑)。
--そのアリーナツアーは、ライブハウスツアーとは全く違うアプローチで、すべての楽曲をハイライトにするかのような、大塚さんの表現者としての本気を見させてもらったんですが、自分ではどんな印象を?
大塚愛:初めてメインステージ以外にもステージを創って、アリーナという会場をふんだんに使った、本当に小さいところでは出来ないことをやったので、すごく楽しかった。スタッフの力もあって、実現できたことがたくさんあったんですよね。だからすごく満足できてます。
--で、夏は夏フェスに多数出演。その中から【ap bank fes'09】をフォーカスしたいんですが。あの日の『愛』は僕が知る限り、パーフェクトな『愛』でした。自分ではどう?
大塚愛:おぉ! でもあの日はまず右肩も左肩も重かったですね(この日のステージ、彼女の右側では桜井和寿(MR.CHILDREN)、左側では小林武史が演奏していた)。重かったし、もう一生出会えないかもしれない、奇跡だなと思いました。あと去年【ap bank fes'08】に出させてもらったときに「この楽曲はすごく合うだろうな」と思って今回『ネコに風船』を「どうしてもやりたい」って歌わせてもらったんです。そしたら小林さんの配慮で歌詞を出してもらうことが出来たので、私のことを全然知らない方も多かったと思うんですけど、より私の楽曲をダイレクトに伝えられたかなって。
--で、つい先日の【【LOVE IS BORN】 ~6th Anniversary 2009~】。野音では大雨が降りました。
大塚愛:本当に……まさかです。今あの日の映像の編集をしているんですけど、カメラが壊れてしまったので(笑)どういうモノになるのか。というか、DVDになるのか、謎。今回の【LOVE IS BORN】はコンセプトをかなりガッツリ決めて、ほぼ全曲ライブ用にリアレンジしてるんですよ。で、それに合わせて雨が降ってきてしまったのかなと(笑)。
--でもお祭りモードを加速させる自然演出になったと思います。あと、個人的には雨が降る前の『クムリウタ』『羽ありたまご』『Cherish』『扇子』のブロック。普段なら凄まじい集中力を用いて聴き手を圧倒するバラードナンバーがすごく優しく響いたのが印象的で。
大塚愛:ロックライブというテーマもあったので、なるべくそういう楽曲を多く集めたんですよね。そしたら「暗い楽曲が多いな」って改めて思ったりもしたんですけど(笑)自分的にも好きなブロックだったので、意外とスッと終わったというか。いつもよりどの楽曲も構えずに歌うことができたかもしれないです。
--そんなライブ三昧の1年の中でリリースすることになったラブソングベストアルバム『LOVE is BEST』。こうした作品を発表することになった経緯を教えてもらえますか?
大塚愛:このアルバムのリリースが決まったのは最近というか、あまり早くなかったんですよ。最初に「ラブソングばっかり披露するライブをしたいな」っていう想いがあって、まずライブが決まって。その後にそのライブの元となるアルバムをリリースしようって話になったんです。
--では、その収録曲について触れていきたいんですが、まず新曲『Is』。すごくライブ然とした、バンド然とした音が鳴ってますね。
大塚愛:グルーヴ感がすごく感じられる楽曲に仕上げないと「ちょっともったりしちゃうな~」ってところもあって。かと言って、打ち込みも違うと思って。こういう感じのポップさが全面に出つつ、グルーヴ感がたっぷり感じられるバンドサウンド。っていうところに落ち着きました。
--あと、非常にナチュラルというか、ピュアな大塚 愛がこの楽曲の中には居る印象を与えます。自分ではどう思われますか?
大塚愛:あんまり過去に戻りたいっていう気持ちがなくて。過去の経験とか、いろんな思い出とかを引き連れての今の自分だから。それで、また今日の自分もまた過去の自分になって、また明日ヘ明日へ進んでいく。自分の後ろに立っている全ての自分を受け入れて、それを得ての明日になりたいなっていう。要するに「自分のことをもっと好きになろう」っていうことですね。そのためにはやっぱり「自分、可愛いな」って思える恋もしたいし、好きな人の前ではそういう自分で在りたいっていう。そういう歌です。
Interviewer:平賀哲雄
あんまり下品にエロい感じは好きじゃない
--「自分のことをもっと好きになろう」っていうのは、最近芽生えた発想?
大塚愛:ちょっと客観的に、冷静に、ゆっくりと「自分のことをもっと好きになろう」って思えるようになったのは、最近かもしれない。
--何がそんな大塚 愛にしたんだろう?
大塚愛:年齢ですかね(笑)。ちょっと前までは、そこまでの余裕がなかった。「これしたい、あれしたい」とか、そういう目先のことばかり見てて。「自分のことを……」みたいなことは恋愛では考えられなかったですね。
--続いて『One×Time』の進化形『aisu×time』、非常にぶったまげました。まずラッパーを大塚 愛の世界に招き入れたこと自体が衝撃だったんですが、これはなぜ?
大塚愛:元々好きなんですよ。でも好きなラップもあれば、苦手なラップもあって、その中で一番好きなのがRIP SLYMEだったので、彼にお願いをしました。
--この楽曲の世界観において、RIP SLYMEのSUさんにお願いをするっていうのが、また見事だなと思って。
大塚愛:(笑)。
--結果、大塚 愛史上最もエロくてオシャレな楽曲になったと個人的には感じています。自分ではどう?
大塚愛:そうですよね。SUさんは顔からしてエロいですからね。で、言われました。「君はね、人の顔を見て笑わない方がいいよ」って(笑)。
--SUさんのエロさも秀逸ですけど、大塚さんの息づかいもかなりのもんだと思います。
大塚愛:アハハハ!
--この手のスタイルにおける究極系ができた自負はあるんじゃないですか?
大塚愛:そうですね。あんまり下品にエロい感じは好きじゃないので、しっかりとした美しさや潤い感は、こういう楽曲を創るときにはすごく大事にしてるんです。それで、今回の『aisu×time』には男性が入ったことによって、私もより女性を引き立てられましたし、そこはすごく良いバランスだったなって思います。
--あと、せっかくのラブソングベストアルバムなので、他の収録曲についても触れていきたいんですが、まず『大好きだよ』。世に出てから5年の歳月が経っていますが、今の大塚さんにとってどんな楽曲に育ちましたか?
大塚愛:また違うこととかも気になり出すというか、今作のマスタリングでいろんな楽曲を一気に集めたときに、それぞれTDのエンジニアも違うし、そのときの私の感覚や耳も違うから「こんなにバラバラなんだ」って思って。その中で『大好きだよ』のボーカルはとにかくデカいんですね。「歌、でかっ!」って思う(笑)。その気付きは今後のTDとかにも生かしたいんですけど、でもこのときの『大好きだよ』のボーカルに関しては、これぐらいの方が前にはすごく出てくる感じがする。なんか、今はそういう面で過去の楽曲とかは見ちゃいますね。
--そもそもどんな想いや背景があって生まれた楽曲だったんですか?
大塚愛:好きな彼のことを想ってただ書いたんです。そしたらそのデモテープが引っ掛かって、初めてエイベックスに呼ばれてこの楽曲を歌うことになったんです。そのときの松浦さんは怖かったなぁって(笑)。
--また、個人的に収録されていることに意外性を感じたのが『さくらんぼ』。この楽曲を入れようと思ったのは?
大塚愛:ザ・ニコイチ(二個でひとつ)みたいな楽曲なので、このアルバムとリンクしたツアー【大塚 愛 LOVE is BEST Tour 2009】のペアチケットもそうなんですけど(このツアーのチケットはペアチケットのみで販売。入場時は必ず2名揃っていないとNGなど、特別なレギュレーションを掛けている)、ニコイチっていうところで真ん中に収録しようと思って。
--こちらも今更な質問になってしまいますが、そもそも創ったときはどんな想いを込めていたの?
大塚愛:あの~、そもそもこの楽曲にはそんなに期待していなかったんです(笑)。アレンジ掛けるまでは。自分の家で普通に打ち込みをしていた感じではそんなに目立った楽曲でもなかったし。そんな「もう1回!」にみんな引っ掛かると思わなかったし(笑)。
--ただ、先日の【LOVE IS BORN】東京公演もそうでしたが、今もなお、1日に2回やっても飽きられない楽曲として強い存在感を誇っています。何なんですかね、この子のこの力は。
大塚愛:いろんな場面で「こいつは何なんだろう?」って私も思います。でも今聴いてみると、全部が揃ってるんですよね。それは音楽的に優れているとか、そこじゃないところで。すべてが揃ってすごく前へ前へ出てくるんですよ。だからTDも打ち込みもすべてが奇跡的に上手くハマった楽曲なんだろうなって。
--あと、ラブソングベストと言うからには収録しない訳にいかない『恋愛写真』、しかも今作には春バージョンが収録されています。
大塚愛:『恋愛写真』を好きって言ってくださる方が多くて。この前、平井堅さんもこの楽曲に対して「萌え、萌え」言ってくれていましたし(笑)。それで、今作に『恋愛写真 -春-』のバージョンを入れようと思ったのは、『恋愛写真』で離れた2人がもう1回出逢って寄り添っていくところを描いているので、今回のコンセプトには合ってるなって。それで選びました。
--2008年5月1日 パシフィコ横浜で披露された『恋愛写真 -春-』は僕の中で永遠なのですが、大塚さん自身にとってもこれほど表現のし甲斐があるナンバーはそういくつもないんじゃないですか?
大塚愛:そうですね。こんなに「愛してる」という言葉を、慎重に、大事に歌う楽曲はないですし。
--並々ならない想いを込めてラブソングを歌う大塚 愛。それを一番多く体感させてくれたのが、僕にとっては『恋愛写真』だったんです。どの『恋愛写真』も全部憶えてるんですよね。ワンマンライブのはもちろんですけど、【MTV VIDEO MUSIC AWARDS JAPAN 2007】とか、そういう……
大塚愛:MTVのときはね、ウチのスタッフがステージから落ちたんですよ。それで「死んだ!?」と思ったら生きていたんですけど。
--それが涙を呼んだと。
大塚愛:はい、その切なさが。
Interviewer:平賀哲雄
自分の中での『ポケット』離れでもあります
--(笑)。あと、今作は『恋愛写真 -春-』と『ポケット』が続け様に聞こえてきて幕を閉じます。この2曲の並びには大塚さんの強い想いを感じるんですが、実際のところはどう?
大塚愛:そうですね。やっぱり『ポケット』は入れたいと思っていました。かつ『ポケット ~Last Love Letter~』という弾き語りの形に戻すことで、楽曲そのものの良さが伝わればいいなと思って。
--自分の1番大切な楽曲をもう一度別の形にして作品に残す。その作業は大塚さんにとってどんな意味を持つモノだったんでしょう?
大塚愛:自分の中での『ポケット』離れでもあります。『ポケット』が出来たときは、この楽曲にすごく感謝もしたし、いつでも『ポケット』が自分の中で1番だったんですけど……。やっぱり、時は止まらないもので、そこからまた離れていかなきゃいけないし。それで、今回のこのテイクで、私の中で『ポケット』はもういいかなと。それぐらい愛せたかなって。
--では、今作に収められている、他のニューレコーディングバージョンについてもお話を伺いたいんですが、まず『甘えんぼ~Wedding~』。
大塚愛:そんなにガラリと変わった訳じゃないんですけど、とりあえず全部生になって、より幸せ度が上がって150ぐらいまで行ってます。
--そして『ふたつ星記念日~新婚日和~』。このタイトルにこのアレンジ、完璧だと思いました。どんなイメージの発展でこの形に?
大塚愛:当時創ったときはどうしても同棲っぽい匂いしか出せなかったんです。自分が若かったっていうのもあって。でも、今の方がもうちょっと新妻的な匂いを醸し出せると思って、それで生まれ変わらせたのがこの楽曲ですね。
--それにしても"新婚日和"とか"Wedding"とか、ラブソングベストアルバムを出すこと自体もそうですけど、そしてこの予想が当たっちゃったらアレなんですけど、大塚さん、結婚するんですか?
大塚愛:それね~、間に合ってなかったですね~!合わせたかった!「しまった!」って感じです(笑)。でも発売日までには何とか……。
--なんとか結婚して頂いて(笑)。
大塚愛:アハハハハハ!
--そんな大塚さんのいろんな想いが詰まった『LOVE is BEST』とリンクしたツアーが11月よりスタートします。今作ととコンセプトをリンクしたスペシャルライブを繰り広げるそうで。一体どんな世界を生み出そうと企んでるんですか?
大塚愛:ステージ上としては、音の良さをとにかく出したいなと思っています。とにかく"生"ということを一番大事にしたいなと。ただ、ガンガンうるさい感じというよりかは、すごく包まれる音作りになると思います。
--これは取材陣もペアじゃないと入れないんでしょうか?
大塚愛:もちろんです!
スタッフ:そうなの!?大塚愛:連れてきてください(小指を立てる大塚さん)。
--分かりました。男かもしれないですけど(笑)。
大塚愛:(笑)。
--あと、今年は『LOVE is BEST』の制作以外はとにかくライブ中心の一年でしたが、秋冬のツアーが終わったあと、2010年はどんな展開を考えていたりするんでしょう?
大塚愛:そこはですね、言いたいんですけど……言えないです。
--アルバム『LOVE LETTER』までがひとつの区切りだとしたら、その次のステージで何をするか、どんな楽曲やストーリーを打ち出すかって結構な重圧だと思うんですが。
大塚愛:いや、逆に今フリーな感じでやっているので、そんなに「あー、今後どうしよう?」みたいなことはなくて。フリーの中でのマイペースに切り替えていこうかなと思っているところです。
--2010年は楽しみにいろいろ待っちゃっていい感じ?
大塚愛:そうですね!
--では、最後になるんですが、読者の皆さんにメッセージをお願いします!
大塚愛:上手いことやって2人で来て下さい(笑)。
大塚 愛『LOVE is BEST』 レビュー
この名前に生まれたからなのか、未だ誰にも語らぬ大恋愛が過去にあったからなのか、その理由は知る由もないが、大塚 愛はラブソングに命を懸ける。人生を注ぐ。どうしようもないぐらい込み上げてくる愛を爆発させる。
すべての過去の自分を受け入れて、今よりもっと愛して愛される自分で在ろうとする『Is』で幕を開いて、RIP SLYMEのSUと超密着した美しきエロスソング『aisu×time』を囁く彼女。収まりの付かない『大好きだよ。』というエモーションを炸裂させたかと思えば、新妻的な匂いを醸し出した『ふたつ星記念日 ~ 新婚日和 ~』で幸せに満ちた生活をイメージさせる。そして誰にも汚すことのできない大切な想いを詰め込んだ『恋愛写真 -春-』で涙を誘い、最後は世界で一番好きな君への歌『ポケット』の弾き語り。まともに歌うこともままならないほど愛した歌へ、最後のラブレターを贈る。とても嬉しくて、優しくて、悲しくて、切ない、愛に生きて、これからも愛に生きていく彼女だから生み出せたラブストーリー。
彼女は「こんな恋愛をしてきて、あんなことがあってね、それで……」と自身の恋愛を軽々しく語ることは決してない。だから歌に想いだけを乗せる。こんなにもラブソングに対して真摯で、必死で、すべてを懸けられるアーティストを僕は知らない。
Interviewer:平賀哲雄
LOVE is BEST
2009/11/11 RELEASE
AVCD-23921 ¥ 3,204(税込)
Disc01
- 01.Is
- 02.aisu×time
- 03.大好きだよ。
- 04.チケット
- 05.君フェチ
- 06.HEART
- 07.ふたつ星記念日 ~新婚日和~
- 08.さくらんぼ
- 09.Strawberry Jam
- 10.drop.
- 11.甘えんぼ ~Wedding~
- 12.キミにカエル。
- 13.甘い気持ちまるかじり
- 14.恋愛写真 -春-
- 15.ポケット ~Last Love Letter~
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