会場内のフロアの至るところで目に付く赤、青、黄、緑、桃色の科学戦隊（！？）フレンジャーの面々とLOVE。通常のグッズ売り場以外にもガチャガチャがあちこちに設置してあったりして、まるでお祭り騒ぎ。会場に一歩踏み入れた瞬間から大塚愛ワールドを体感できて、みんな本当に楽しそう。単独としては初となる横アリ公演、あらゆる面でぬかりなし。

　歓喜の叫び、手を叩く音を受けて、スクリーンにはあのビッグバンをイメージさせる映像が浮かび上がり、今ここで確かに生命が躍動していることを僕らはやけに鮮明に強く感じる。そして『5:09a.m.』、大塚愛は僕らの目の前に姿を現した。白いコートに身を包んだ彼女は、暗闇が光に変わる瞬間、その小さな体からすべてのエネルギーを放出して歌い叫ぶ。そして僕らに背を向け、その体を幻想的に揺らし、次に僕らの方へ視線を向けたときは満面の笑みで「横浜アリーナァァァ！」。あたたかい手拍子に包まれながら『ビー玉』『drop.』を軽快に披露。一気に笑顔とピースフルな空気に会場が包まれる。「君の隣はとっても好きよ」と歌って微笑む彼女にもちろん客席からは「かわいい！」の声。
　 「こんにちは、大塚愛で～す！ジャーン！」と、ピースマーク（笑）。「みんな元気かぁ！後ろの方も元気かぁ！前はもっと元気かぁ！横浜アリーナ！！」と、超ゴキゲンで叫びまくった後、「あま～い気持ちになってちょうだいっ！」と言って、彼女は『甘い気持ちまるかじり』を歌い始める。より気持ち良く伸びてゆく彼女の歌声と、彼女の世界観にピッタリのバンドサウンド。体も勝手に気持ち良く踊り出す。そんなみんなの姿を見て彼女も気持ち良さそうに体を揺らしながら『Birthday Song』をみんなと合唱。最後は彼女のピアノ演奏付きで、この上なく嬉しい気分をみんなにお届け！今日はここにいるみんなのハッピーバースディ！盛り上がらないわけがない。

　大塚はそのままピアノの前に座ったままで、今日ここに集まってくれたとても大切なみんなのために『フレンズ』を弾き語りで披露。彼女はそのままの形で『金魚花火』、そして『大好きだよ。』といった珠玉のバラードナンバーを立て続けに熱唱。彼女のライブに足を運んだことのないひとはあまり知らないかもしれないが、彼女のピアノの弾き語りは、実に感情的であり、まるでその歌の世界に完全憑依したように歌い綴られるそのひとつひとつのフレーズは、確実に聴き手の心を打つ。涙腺を緩ませるオーディエンスの前で、彼女は再びステージに戻ってきたバンドメンバーと共に『プラネタリウム』を披露。打ち上げ花火が花開く音が聞こえると、目の前と僕らの頭上に広がる満面の星空、そして文字通りプラネタリウムの星座たち。感動的。でも今夜の感動的なシーンはまだまだ目の前で繰り広げられていく。『Cherish』、シリアスな空気が自然とバンドサウンドにも力を与える。ジ～ンと体の中を駆けめぐる感動と心に浮かび上がる大切な存在。今まで披露された『Cherish』の中でのベストライブテイク。妖艶なカラーにステージが染まると、妙に色っぽい表情と動きを見せながら彼女は「だ～いすき～よ～」と、『黒毛和牛塩タン焼680円』を歌い始める。もう名女優としか言いようのない豹変ぶりと憑依ぶり。お見事。

　「ムンムンムラムラ、ちょっと興奮度が上がってきたよ！この横浜アリーナがノってくるときが来たぜぃ！」、キーボードのチャーリーがムーディなメロディを奏でだし、スカのリズムが刻み出されれば、大塚が歌うのはもちろんこの曲『東京ミッドナイト』。大塚もバンドもオーディエンスも実に良いテンションでその体を揺らし、とってもステキなミッドナイトぶり（？）。そしてグッドなタイミングでこの曲『SMILY』。思い思いにその手を振り上げ、「ラ～ラ～ラ～ラ～」と歌いながら大きくその腕を振って、楽しげにピースマークを決めて、やっぱり彼女も僕らも超笑顔！誰もの気持ちが軽くなり、大はしゃぎせずにはいられない状態になったところで、妙なアニメーションと写真のスライドショーと共に『ラーメン3分クッキング』！「み～そ」「しょうゆ」「と、とととととととととんこつ しおらーめん」のコール＆レスポンス＆大合唱（笑）。おふざけモードの、特に深い意味もない（失礼）おバカソングでこの横浜アリーナを熱狂の渦に巻き込んだ彼女の偉業は伝説となって語り継がれていくことだろう。「盛り上がってんのかぁ！？横浜アリーナ、盛り上がっていくぞぉぉ！こっからぶっ飛ばしていくから！」「バカが勝ち！盛り上がったもん勝ちやで！」と叫んだ後、強烈なバンドのメンバー＆オーディエンス紹介を経て、『U-ボート』で更に大はしゃぎ！誰一人、大塚愛が操縦する巨大なU-ボートに乗り遅れることなく、振るい落とされることもなく、気持ちをひとつに。右手の親指と小指を立てて振り上げる10,000人！ミス天井知らず（勝手に命名）が本気を出したらこの世界は何でもアリ、続けざまに『ポンポン』の強襲！横浜アリーナがポンポン一色に染まり上がる。大塚自身、もうどうなってもいいと思わせる大はしゃぎぶり。息が切れてもこのおバカな空間の現実離れした楽しさに彼女も僕らも「ポンポンポンポン」と叫ぶことをやめない。最後はバカデカイ花火の爆発音で終了！

　大はしゃぎして心地良い疲労感に包まれていた僕たちの目の前に、華麗に舞う一人の女性の姿。やがて彼女の背中には羽が生え、空を舞う。しかしその羽は無惨に散りゆき、彼女はそれでも必死に空を飛び続け・・・僕らの頭上に舞い落ちる無数の白い羽。壮大なオーケストレーションに包まれながらその光景は鮮明に僕らの目と心に焼き付いていく。そしてその無数の白い羽の中から現れた大塚愛は、アカペラで「青い空に高く 今なら飛べるかな もしこのまま 落下しても いまはそれでもいい」と歌い上げる。傷ついた心を優しく包み込んでくれるかのようなバンドサウンドの中で彼女は『羽ありたまご』を、その世界に完全移入して歌う。そして彼女の背後の巨大なカーテンが開かれ、そこには30名以上から成るオーケストラの姿が！どれだけ彼女がこの曲に強い思い入れがあるかよく分かる演出。いつまでも忘れられそうにない貴重な光景と音楽を堪能させてもらった。曲はそのままの編成でこれまた名曲『ネコに風船』。オーケストラ効果はもちろんあってだが、大塚の歌声から浮かび上がる想いがやけに胸を締め付ける。至極、幸せの瞬間。彼女にとっても僕らにとっても。こんな形で大塚愛の音楽を体感できる幸せはここにいる誰にとっても、何ものにも代え難いものだ。

　 満面の笑みで大塚、「よかったらみんな一緒に歌わへんかと思って」と、まるいまるい些細な彼女とみんなの円（縁）、人と人の繋がりを感じられる幸せをみんなで歌声に換える『LOVE MUSiC』。スクリーンには赤い小さなハートと、この曲に綴られた詞が映し出され、その言葉ひとつひとつを大切に大切に想いを込めて歌う彼女と、それに反応する僕らの思いと声。愛の音楽は、僕らの目の前にとてもとても美しい光景を生み、その中で誰もがその愛と幸福に満たされていた。

　頬に流れた涙を拭き取り、もうすっかり定番となった「もう一回」コールをステージの奥の大塚愛に向けて叫び続けるオーディエンス。その想いに応えてステージに舞い戻る大塚。「もういっちょ汗かいていいかい！横浜アリーナ！」と気合い満点で彼女が叫ぶと、負けずと叫び倒すオーディエンス。そして毎度おなじみのなが～いMCタイムを経て（本人曰くいつもの5倍ぐらい今日は長かったそうだ（笑））、ウ～～～～～ファイッ！アクセル全開で『フレンジャー』が披露され、今夜最後のたたみかけがスタート。ライブでの映えっぷり問題なし、今日から俺たちみ～んなフレンジャー！そんな愛すべきフレンジャーたちとこれからこんな日々が送れますようにと、『Happy Days』！彼女がマイクをみんなに向ける度、「ハッピーデイズ！」と叫んで高く高く飛び上がる10,000人。揺れる横浜アリーナ。めちゃくちゃ良い表情で大塚、客席との柵も跳び越えちゃってハイジャンプ！本来キーボードのはずのアキノリも、センチメンタル・バス時代を思い出させる大太鼓で参戦！「こんなに楽し過ぎちゃっていいのかしら？」と心配させる余裕も与えないハッピーぶり。そして曲はオーラス、とんでもないスーパーハイテンションで『さくらんぼ』の大熱唱＆大合唱＆大はしゃぎ！！！舞い散る銀テープをキャッチして、みんなプリプリしたさくらんぼみたいな顔になって大はしゃぎ！「おおきに！」と大塚は叫ぶと、みんなと一緒に最後のハイジャンプ！そして心でガッツポーズ。全力で走り倒した大塚は、息を切らしてヨレヨレに。それでも「もう一回」コールをやめないみんなはやがて演奏なしで「笑顔咲くぅ～」と歌い出し、それに応えて大塚、「わーたし、さくらんぼ～！！」と叫んで蘇生。バンドサウンドも再び響き渡り、もう一度みんなで大熱唱＆大合唱＆大はしゃぎ！！！
　 完全燃焼の面持ちでバンドメンバーと横一列になって手を繋ぎ、礼。そして本当に幸せそうにファンのみんなに手を振る彼女。最後はマイクを使わずに「おおきに！！」と叫び、ステージを後にした。その姿を見ながら僕の頭に浮かんだ言葉は「大塚愛、この女最強につき（笑）」。