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タイ人YouTuber MindaRyn メジャー・デビュー記念インタビュー
アニソンをカヴァーしチャンネル登録者数90万人を誇る、タイ人YouTuberのMindaRyn(マイダリン)が、TVアニメ『神達に拾われた男』のエンディング・テーマ「BLUE ROSE knows」でアーティストデビューを果たす。
幼い頃よりアニメを見て育ったMindaRyn。歌うことが大好きだった彼女は、次第にアニメの主題歌を覚え、歌い始めるように。大学生になって、本格的なアニソン・シンガーを目指しYouTubeチャンネル『MindaRyn _ 』を開設、アニソンカバーYouTuberとしての活動をスタートする。現在では、動画の総再生数がおよそ6,000万回を数え、タイのみならず日本やインドネシア、台湾やアメリカなど世界中から注目を集めている。
透き通るようなハイトーン・ヴォイスの中に、凛とした力強さを内包するシンガーMindaRynは、なぜ日本のアニメ・カルチャーに惹かれたのか。タイでアニソンを歌うことの意義と難しさ、日本でアニソン・シンガーとしてデビューすることについて、どのような想いでいるのだろうか。彼女に、日本語でのインタビューを行った。
タイ出身のMindaRyn 日本のアニメ・カルチャーとの出会い
ーー子供の頃からお父さんの影響でアニメをよく観ていたそうですね。
MindaRyn:はい。父はX JAPANさんの大ファンで、日本のアニメやカルチャーなども大好きだったんです。それに、タイでは日本のアニメがよく放送されていて、『ドラえもん』や『ポケットモンスター』『デジモンアドベンチャー』などを観ていました。日本のアニメは色んなジャンルやストーリーがあって、とても魅力的です。そういう番組を観ているうちに、自然とアニソンの素晴らしさにも気づいていきましたね。しかも最近はNetflixなど、日本のアニメを手軽に観られるプラットホームが増えて、とても便利になりました。
ーーアニメの主題歌の良さは、どんなところにありますか?
MindaRyn:例えばLiSAさんの「紅蓮華」を聴くと、曲そのもののストーリーだけじゃなくて『鬼滅の刃』の色んなシーンが次々と浮かんでくるじゃないですか。アニメの主題歌には、そういう楽しさがあると思います。私のお気に入りのアニソンは、その時々で変わるんですけど(笑)、今はNetflixのアニメ『Fullmetal Alchemist(鋼の錬金術師)』を最初から見返していて、ポルノグラフィティの「メリッサ」や、YeLLOW Generationの「扉の向こうへ」にまたハマっています。
ーー『Fullmetal Alchemist(鋼の錬金術師)』の魅力はどんなところにありますか?
MindaRyn:物語の中の錬金術師の「掟」が好きで、ストーリーが完璧だと思います。主人公のエド(エドワード・エルリック)とアル(アルフォンス・エルリック)のエピソードは悲しいのですが、一緒に試練を乗り越えていく姿が素晴らしくて。戦いを続け、最後に求めていたものを取り戻せたことに感動しました。ハガレンに限らずアニメはファンタジーの描写が特に好きですね。実写だとリアルさが求められるので不自然になってしまうこともあると思いますが、アニメならどんなことも映像化できますから。
ーーMindaRynさんの出身のタイには、アニメやアニソン好きの友人はいましたか?
MindaRyn:私が子供の頃は、周りの友人たちは皆少女時代やKARAなどK-POPが大好きでした。アニソン好きの仲間ができたのは、自分のYouTubeチャンネル『MindaRyn _ 』を開設して、アニソンを歌った動画をアップするようになってからです。そこで応援コメントをつけてもらったり、同じYouTuber同士の交流が生まれたりしていきました。
ーーアニメ以外の日本のカルチャーにも興味ありますか?
MindaRyn:日本の料理やファッションが大好きです! 日本料理は素材の香りを大切にしていると思いますし、新鮮な魚料理もタイでは食べられません。タイ料理は調味料をたくさん使いますからね(笑)。あと、日本の好きなところは四季を感じられるところ。タイには季節が3つあるけど大体同じなので、春夏秋冬で全く異なる日本の四季は面白いなあって思います。
旅行も好きですね。4年くらい前から父とよく日本を訪れているのですが、一度、九州の別府へ行ったことがあって、由布院温泉がとても楽しかったです。これからの日本での生活が楽しみです。
ーーアニソン・シンガーになろうと思ったのは?
MindaRyn:さっきも言ったように私は自分のYouTubeチャンネルを作ったのですが、その時には「アニソン・シンガーになりたい」という気持ちはありつつも、それが実現するとは思っていませんでした。でも、今の事務所やLantisさんから連絡をいただき、様々なサポートをしてもらったり、レッスンをさせてもらったりしていくうちに、少しずつ夢が現実に変わっていきました。
ーーシンガーとしての道に進んでいくことに迷いはありませんでしたか?
MindaRyn:悩みました。でも、せっかく訪れたチャンスだし、今しか出来ないことは今やるべきじゃないかって。その決断に後悔はないですね。
▲デビュー記念番組「はじめよう!MindaRyn」
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Text:黒田隆憲
チャンネル登録者数90万人超えという人気のきっかけは
ーー『MindaRyn _ 』は、現在チャンネル登録者数90万人を超えているんですよね。どうしてそこまで人気なのでしょう?
MindaRyn:『MindaRyn _ 』を始めた当初は、そこまでフォロワー数も多くなかったです。でも、いろんな国のYouTuberとコラボしたり、動画の撮影をカメラマンにお願いしたり、様々な人のサポートのおかげでクオリティが上がっていき、それに並行してフォロワー数もどんどん増えていきました。
ーーMindaRynさんの声は、パワフルだけど透明感があってとても魅力的です。どうやってその「歌声」を身につけたのでしょうか。
MindaRyn:どうやってかはわからないですが、私は歌うほど、声が伸びていくようです。レコーディングの前にも結構歌ってから、臨みます。あと、実は、日本に来て初めてボイス・トレーニングに行ったんですよね。そうしたら、これまでの自分の歌い方は改善できる部分がたくさんあることが分かり、レッスンに通いながらブレスの仕方などテクニカルな表現方法を先生に指導してもらいました。それから発音ですね。例えば「つ」「す」「ず」など、タイ語にはない発音が日本語にあるので、それを使い分ける練習に苦労しました。
ーーアニソンを歌う楽しさはどこにありますか?
MindaRyn:アニソンは日本とタイだけではなく世界中で人気があるので、同じアニメを好きな人と国籍や男女年齢問わず、どんどん繋がっていくのが本当に嬉しいです。『MindaRyn _ 』のフォロワーは半分がタイ人だけど、次に多いのがインドネシア人。後はベトナム人や日本人……いろんな国の人が見てくれています。一度、インドネシアでライブをやったことがあるのですが、アニメ関係の大きなイベントで、ティーンエイジャーを中心にたくさんの人が集まっていました。
ーーMindaRynさんが好きなアニソンシンガーは?
MindaRyn:LiSAさん、TRUEさんが大好きです。これまで歌ってきた楽曲の中で、LiSAさんの曲が一番多いと思いますね。とても可愛いのに声がパワフル。以前、タイで『AFA(ANIME FESTIVAL ASIA)』が開催されたときにLiSAさんのライブを観る機会があったのですが、ステージ・パフォーマンスもすごくエネルギッシュで圧倒されました。楽曲でいうと、最初に話した「紅蓮華」と「crossing field」(『ソードアート・オンライン』アインクラッド編のオープニングテーマ)が特に好きです。
▲『紅蓮華 - LiSA』| cover by MindaRyn
ーーちなみに、日本語や英語はどうやって勉強したのですか?
MindaRyn:最近になって本格的に勉強するまで、日本語は全然上手じゃなかったんですよ(笑)。ただ、小さい頃からずっとアニメを観てきたことは、きっとリスニングの勉強になっていたと思います。英語は学校でも習いましたが、それよりもゲームなどをやっているうちに上達したのだと思います。あと、『MindaRyn _ 』のカバー楽曲トラックを作ってくれているのがインドネシア人のクリエーターで、その人と英語でやり取りをしたり、友人と会話をしたりしているのも勉強になっていますね。
ーー人気ボカロP、れるりりさんのデビュー10周年オリジナル&ベストアルバム『羞恥心に殺される』に参加することが決まった時は、どんな心境でした?
MindaRyn:れるりりさんのことはもちろん知っていましたし、れるりりさんが作った曲も『MindaRyn _ 』で歌っていたので本当に驚きました。アルバムの中で私が参加した曲「愛してる」はとっても可愛らしい愛の歌で、大好きです。
▲れるりり feat.MindaRyn「愛してる」
ーーそして11月には、TVアニメ『神達に拾われた男』のエンディングテーマ「BLUE ROSE knows」を歌うことが決まりました。
MindaRyn:この曲には、『神達に拾われた男』の作品世界にある「自分の心の声を聞いて、やりたいことをやろう」というメッセージが込められているのですが、それは私自身にもリンクするテーマでもあります。なので、曲が持つパワーをそのまま受け継ぎ聴いてくれた人に届けようという気持ちで歌いました。
ーーこの曲のメッセージが、MindaRynさんとどうリンクするのでしょうか。
MindaRyn:小さい頃にアニソンを好きで歌っていた時も、『MindaRyn _ 』を開設してからも、私は色々な人から「どうしてアニソンを歌っているの?」「日本の曲を歌ってどうするの?」とよく尋ねられます。最初にお話ししたように、私の周りでは日本のアニメに詳しい人が多くないので、私がなぜそんなに夢中になっているのか分からないのだと思います。
でも私は、そういう人たちの声を全く気にしなかった。なぜなら、自分のやりたいことをやり続ければ、例え今それがカタチにならなくても、いずれは自分に返ってくるからです。
ーーシングルに収録された、「START」と「Sincerely (English Version)」の聴きどころについても教えてください。
MindaRyn:「START」はとても明るくポジティブなエネルギーがあります。なので、悲しいときに聴いてもう一度スタートを切るための勇気が出る曲になったら嬉しいです。「Sincerely」は、TRUEさんのカヴァーです。この曲も、この曲がオープニングテーマとして使われたTVアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』も私は大好きで、英語ヴァージョンを歌わせてもらえてとても光栄です。原曲はバラードですが、私のバージョンはもっとロック寄りになりました。歌詞もとっても綺麗で、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のシーンが思い浮かぶと思うので是非聴いてみてください。
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Text:黒田隆憲
コロナ渦でのタイの状況 そしてこれからの目標は
ーー現在、タイではコロナはどんな状況ですか?
MindaRyn:タイはだいぶ落ち着いています。ただ、7月前後はかなり大変でした。ちょうどその頃に「BLUE ROSE knows」のレコーディングを行なっていたのですが、私はタイのスタジオに入り、日本のスタッフさんたちにリモートでディレクションしてもらいながら作っていきました。
ーーロックダウン中、MindaRynさんはどんなふうに過ごしていたのでしょうか。
MindaRyn:通常、『MindaRyn _ 』では毎週1曲ずつカヴァーを公開していて、映像は外で撮影しているのですが、自粛期間中は外出することが出来なかったので、作業は全て自宅で行いました。私が家でレコーディングを行い、友人へ送ってミキシングをしてもらって映像は室内で撮影。そうやって自粛期間中も週1でカヴァーを公開し続けました。
ーーじゃあ、結構忙しかったのですね。
MindaRyn:そんなこともないです。退屈だったので、何かやらなきゃと思って初めて編み物を始めたのですが、クマのぬいぐるみを作ったりして(笑)、とても楽しかったです。
ーーこれからは、どんな活動をしていきたいですか?
MindaRyn:いろんなジャンルの曲を歌いたいし、いろんなアーティストさんとコラボレーションしたい。できれば憧れのLiSAさんやTRUEさんと同じステージに出られるように頑張りたいです。あと、いつか日本で声優にも挑戦してみたいですね。そのためにはもっと日本語を頑張らなきゃ(笑)。
ーーでは最後に読者へのメッセージをお願いします。
MindaRyn:私はタイ出身のアニソン・シンガーで、日本では外国人のアニソン・シンガーは珍しいかもしれないですが、オープンなマインドで聴いてもらえれば嬉しいです。これから日本でのお仕事を頑張りたいと思っていますので、みなさんが私の曲を聴いてくれることを心から願っています。
▲MindaRyn「BLUE ROSE knows」
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Text:黒田隆憲
BLUE ROSE knows
2020/11/18 RELEASE
LACM-24065 ¥ 1,430(税込)
Disc01
- 01.BLUE ROSE knows
- 02.START
- 03.Sincerely (English Version)
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