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<コラム>2ndアルバム『オリオンブルー』は飛躍の一枚 ~“シンガーソングライターとしてのUru”の魅力とは(Text by 柴那典)



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 Uruに対してどのようなイメージを持っているだろうか。2013年にYouTubeチャンネルを立ち上げ、新旧問わず数々の名曲をカバーする100本に及んだ動画をアップしたUru。2016年のデビュー時点で総再生回数は4,400万回以上を記録していたというインパクトから、そんなUruを“シンガー”と捉えている人もいるかもしれないが、それ自体は数年前の話。後にコラム本編で詳述されるが、3月18日にリリースする2ndアルバム『オリオンブルー』では多くの楽曲を作詞作曲している。“シンガー”としての側面、そして“ソングライター”としての側面を音楽ジャーナリストの柴那典に紐解いてもらうことで、“シンガーソングライター”Uruを浮かび上がらせることにした。

 また、2月9日に配信リリースされ、『オリオンブルー』にも収録されている「あなたがいることで」は、本コラムが公開された3月18日の19時時点で、Billboard JAPANダウンロード・ソング・チャート“Download Songs”で6週連続トップ10を、ストリーミング・ソング・チャート“Streaming Songs”で5週連続トップ25をキープ中で、週を追うごとに順位を上昇させている。同曲は作詞作曲をUruが、編曲を小林武史が務めており、TBS系 日曜劇場『テセウスの船』主題歌となっている。チャート上でも目立った動きを見せつつあるUruのチャートアクションも絡めながらレビューしてもらった。

ソングライターとしてのUruの成長

CD
▲『オリオンブルー』

 Uruが2ndフルアルバム『オリオンブルー』をリリースした。

 まさに飛躍の一枚と言っていいだろう。きっと、その包み込むような歌声が、さらに多くの人たちを魅了することになるはずだ。

 ブレイクの兆しはすでに表れている。

 きっかけになったのはアルバム1曲目に収録されている「プロローグ」だ。TBS系 火曜ドラマ『中学聖日記』主題歌として書き下ろされたこの曲は、Billboard JAPANダウンロード・ソング・チャート“Download Songs”(2018年12月31日付)で1位を記録。総合ソング・チャート“Hot 100”でも6位と、自身最大のヒット曲となった。


▲Uru「プロローグ」YouTube ver.

 そのチャートアクションにも特徴があった。それは、配信開始から一ヶ月以上かけてじわじわと順位を上げていったこと。つまり楽曲自体の持つ魅力が原動力になって支持を広めていったわけである。ドラマのストーリーがクライマックスに向かうと共に、切ない恋心に寄り添う歌に胸を掴まれた人が増えていった。

 2020年2月9日にデジタルリリースされた「あなたがいることで」も反響を広げている。TBS系 日曜劇場『テセウスの船』主題歌のこの曲は、Billboard JAPAN HOT BUZZ SONG(2020年2月24日付)で、Official髭男dism、米津玄師、King Gnuらに続いて6位にランクイン。過去と未来を見据えながら大切な人へのかけがえのない今の思いを歌い上げるミディアムバラードのこの曲は、Uruの真骨頂を示すような一曲だ。

※Billboard JAPAN HOT BUZZ SONGは、ダウンロード・ツイート数・動画再生回数の3指標によるハイブリッド指標。


▲Uru「あなたがいることで」

 アルバムには、この他にも「remember」「願い」といったシングル曲を収録。2016年にシングル『星の中の君』でメジャーデビューを果たしてから約4年。2017年12月にリリースした1stアルバム『モノクローム』を経て、リリースを重ねるごとに着実に世に浸透していったUruの足跡が刻み込まれている。

 そして本作から感じ取れる“飛躍”には、もう一つの意味がある。それはソングライターとしてのUruの成長だ。

 もともと唯一無二の声と確固たる表現力を持つ彼女。メジャーデビュー前からYouTubeに数々の名曲のカバーを投稿しその動画がSNSを介して徐々に広まることで注目を集めてきたキャリアや、出身や年齢などほぼすべてのプロフィールが非公開だったこともあり、フォーカスがあたってきたのは、あくまで“声”だった。


▲宇多田ヒカル「First Love」 by Uru


▲ロビンソン「スピッツ」 ピアノアレンジ COVER by Uru

 その延長線上にあったのが、1stアルバム『モノクローム』だった。アルバムのタイトルは、Uruがメジャーデビュー前から投稿してきた動画でのモノクロ映像の色合いを想起させるもの。「The last rain」などUru自身が作詞作曲を手掛けたナンバーも収録されているが、収録曲の大半は作曲家の提供による楽曲で、いわば“ヴォーカリストとしてのUru”の魅力を伝える一枚だった。



 対して『オリオンブルー』は“シンガーソングライターとしてのUru”の魅力を感じさせるものになっている。収録曲の大半がUru自身の作詞作曲によるもので、そのことによって彼女自身のアーティストとしての魅力がさらに花開いている。編曲はトオミヨウや小林武史、Kan Sanoなど名うての音楽プロデューサーたちが担当し、その才能を絶妙に引き出している。

 ちなみに、Uruは、2020年1月8日にリリースされた木村拓哉のアルバム『Go with the Flow』にも、「サンセットベンチ」「I wanna say I love you」の2曲を提供している。B'zの稲葉浩志や槇原敬之などそうそうたるアーティストたちが作曲家として並ぶアルバムの中でもその2曲が埋もれない存在感を放っていることも、Uruのソングライターとしての個性を示していると言えるだろう。


▲木村拓哉「サンセットベンチ」 short ver.

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ハートウォーミングな愛情 / ゾクっとするような“冷たさ”

 では、“シンガーソングライターとしてのUru”の魅力とはどういうものなのか。アルバム収録曲をいくつかピックアップしながら解説していきたい。

 「プロローグ」は、Uruの音楽にとっての大事なパートナーとなってきたトオミヨウがアレンジを担当。浮遊感を感じさせるイントロから徐々に音が重なりドラマティックな盛り上がりを作っていく。サビの「あなたを探してる」というフレーズを歌う前の一瞬、音がすっと止まるところもUruの息吹とあいまって耳をひきつける。メロディと言葉とサウンドが一体となって声の響きを引き出しているところにUruのアーティスト性の特徴がある。


▲Uru「プロローグ」Premium Studio Live

 同じくトオミヨウがアレンジを手掛けた「remember」は、アニメ映画『劇場版 夏目友人帳〜うつせみに結ぶ〜』主題歌として書き下ろされた一曲。おおらかな節回しから、サビで一気に開けていくような展開を持つ曲だ。ピアノとアコースティックギターを軸にしたラブソングの「今 逢いに行く」と「頑な」のアレンジもトオミヨウが担当。さらに、傷を負い悔しさを味わいながらも諦めずに挑み続ける思いを歌った「頑な」では、ひかえめだけれど芯のあるサウンドでメロディを支えている。“癒やし”のイメージを持たれることの多いUruの歌声だが、“秘めた強さ”を表現する「頑な」のような曲もアルバムの中で大きなポイントを担っていると言えるだろう。


▲Uru「remember」×『劇場版 夏目友人帳 ~うつせみに結ぶ~』コラボレーションMV YouTube ver.

 「あなたがいることで」は、日本を代表する音楽プロデューサーである小林武史が編曲。「あなたが僕を信じてくれたように 次は僕がその手を握るから」というフレーズがとても印象的だ。ドラマ『テセウスの船』の物語に寄り添う内容でありつつ、普遍的な情愛を描いた楽曲になっている。「久々にオーセンティックな真のバラードの名曲ができたのではないか、と自負しています」と、小林武史はコメントしている。

 「space in the space」と「PUZZLE」は、キーボーディスト/トラックメイカーとして活躍しつつ、CHARAやUAや大橋トリオなど数々のアーティストのプロデュースを手掛けるKan Sanoが編曲を担当。特に「そんなことより僕と宇宙を見ようよ」「本能のままに揺れ合って 理性はとっくに失って」とファンタジックなトリップを歌う「space in the space」は、アーバンなテイストと洗練されたビートで、アルバム中でも随一のお洒落な仕上がりになっている。





 “シンガーソングライターとしてのUru”という点で言えば、「marry」と「いい女」にも注目したい。どちらもラブソングなのだが、恋人同士の情景や関係性を俯瞰で描いた、ある種ストーリーテラー的な曲なのである。バンド「Ovall」のリーダーでもあり矢野顕子など数多くのアーティストの作品に参加するShingo Suzukiが編曲を担当した「marry」は、曲名のとおり結婚式の場をイメージさせるような、フォーキーなサウンドに乗せて二人の愛の歩みを振り返る曲。一方、「いい女」は心が離れてしまった二人の関係を描く別れの曲。曲中では別居のための引っ越しの情景が描かれる。「ねぇ、これはどうしようか あなたが持っていてよ いらなくなったら捨てていいから」という歌詞がリアルだ。ハートウォーミングな愛情と、ゾクっとするような“冷たさ”の両方が表現されているのも、アルバムの幅広さを象徴していると言えるだろう。





 Uruの歌声は、しっとりとしたナチュラルな心地よさを持っている。そして彼女のソングライティングのセンスも、その声の響きと通じ合っている。落ち着いたトーンの言葉を重ね、聴き手を激しく煽ったりするようなことはほとんどない。アレンジも派手に奇をてらうようなものはない。それでも、単にシンプルなポップソングというわけでもない。胸のうちにそっと何かを残していく。そういう不思議な作用をもたらすのが、『オリオンブルー』であらわになったUruの“色”と言えるのではないだろうか。今の時代だからこそ、この包み込むような“色”が幅広い世代の人たちを魅了することになるはずだ。




Text by 柴那典

Uru「オリオンブルー」

オリオンブルー

2020/03/18 RELEASE
AICL-3844 ¥ 3,000(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.プロローグ
  2. 02.今 逢いに行く
  3. 03.あなたがいることで
  4. 04.space in the space
  5. 05.marry
  6. 06.願い
  7. 07.Don’t be afraid
  8. 08.頑な
  9. 09.いい女
  10. 10.PUZZLE
  11. 11.Scenery
  12. 12.横顔
  13. 13.remember
  14. 14.Binary Star <Special Track>

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