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Awesome City Clubインタビュー:激動の2019年とアニバーサリーイヤーの2020年への展望



ACC インタビュー

 Awesome City Clubにとって2019年はバンドの体制変更とレーベルの移籍という大きな出来事に直面した年となった。そこで今回は、自身を取り巻く環境の事をはじめ、楽曲制作やライブとの向き合い方など次々と生じた変化について、メンバーに一年を振り返ってもらった。更に1月~3月にかけて行う毎月の新曲リリースやアルバムの発売、東阪ビルボードライブ/仙台retro BackPageで行う新春恒例となってきた【Awesome Talks Acoustic Show】の開催など、早くも積極的な動きが発表されている5周年イヤーとなる2020年の展望についても話が及ぶ充実の内容となった。

余計なものとか無駄なものとかを全部そぎ落として新陳代謝できたような実感がありますね、最近は。

−−Awesome City Club(以下、ACC)にとって、2019年はどんな1年でしたか?

atagi:バンドが始まって以来、一番大きな変化があった年だったんじゃないかな。メンバーが一人抜けて、レーベルも移籍して、半年間ぐらいは音楽以外の活動でバタバタしてました。ライブはその間も定期的にやってはいたんですけど、何て言うか……家庭内のことに目を向けていたような感じ。だからこそ、自分たちを見つめ直す良いタイミングにもなったし、メンバー同士で率直な気持ちや今後のことをたくさん話し合ったりできた。

PORIN:本音の会話は今までもずっとしてきましたけど、より核心づいた話し合いをたくさんできた気がします。あとはレーベルを移籍して、新しいチームで再スタートを切った時、そこでバンドが脱皮したような感じもあって。余計なものとか無駄なものとか、そういうものを全部そぎ落として新陳代謝できたような実感がありますね、最近は。

atagi:ACCは2020年1月に5周年イヤーに突入するんですけど、それだけ続けると足取りも決まってしまいがちで。例えば制作して、レコーディングやって、リリースしたらツアーを回って、みたいな。活動がルーティーン化してしまうんですよ。だから、何かきっかけが必要だったんだと思います。

モリシー:PORINが言った新陳代謝と似てるんですけど、“良い風が吹いてる感”があるなと感じていて。明確な理由は分からないんですけど、感覚として。そこまで派手な動きはなかった1年かもしれないけど、良い準備期間ではあったなと。

−−バンドの体制や環境以外に変化を感じた点はありますか?

ユキエ:デビュー5年目ということで、いわゆるフレッシュな期間は終わったのかなって思います。パフォーマンスがガラッと変わったわけではないけど、佇まいが大人らしくなったというか、良い意味で腰が低くなったというか。5年間続けてきたバンドとしての逞しさみたいなものを以前より感じるようになった気がしますね。

−−そういったバンドの成熟って、ライブのステージ上ではどんな瞬間に実感するものなのでしょう?

atagi:単純ですけど、些細なことで動じなかったりとか。あと、ライブ中って「自分が何をするべきか」ということばかり考えてしまいがちだけど、それだけじゃなくお客さんに「このライブで何を持って帰って欲しいか」とか「どういう体験をして欲しいか」とか、そういうことにまで意識を向けられるようになったと思います。

−−気持ちに余裕が生まれたと。

atagi:僕らは結成1年半でデビューさせてもらって、ずっと自分たち自身の研磨ばかりに集中していた気がするので、ようやく次のステップに進めたかなと。

PORIN:「もっとこの瞬間を楽しくするためにはどうすればいいんだろう?」みたいなことを考える余裕が持てるようになったのは、成熟したパフォーマンスに繋がってる感じがしますね。

−−PORINさんは自身のアパレルブランドを展開、最近だと小沢健二さんの作品にも参加するなど、ますます活躍のフィールドを広げていますよね。そういったバンド外の活動で得た糧はどのようにACCに還元されているのでしょう?

PORIN:細かいことは分からないんですけど、単純にすごく自信がつきます。音楽で表現してる以上、自信ってすごく大事だと思うし、確実にそれはバンド側にも還元できてるはず。あと、そういう活動をしているからこそ出会える人もいるし。

−−モリシーさんはいかがですか?最近はDAOKOさん、須田景凪さんといった若手アーティストのサポートもこなしていますが、そういった経験がACCの活動でも生きている実感はありますか?

モリシー:ありますね。やっぱり上手くなるんですよね、色んな人とやると。ACCはミドル・テンポな曲が多いですけど、例えば須田景凪くんはもともとボカロPをやっていたこともあってか、速いテンポの曲があって。「おじさん、ついていけるかな」って(笑)。ACCでもそういう曲をやるというわけではないんですけど、成長には繋がりますよね


▲須田景凪「パレイドリア」MV

ユキエ:モリシー、明らかに上手くなりました。基本的なカッティングのキレも良くなってたり。

PORIN:モリシーがそうやって色んな音楽活動をすることで、バンドとしても横の繋がりが広がった気がします。

−−今までで一番チャレンジングだった共演といえば?

モリシー:やっぱDAOKOちゃんですかね。「打上花火」という名曲でピアノを弾くという。もうプレッシャーが凄かった(笑)。それでけっこう大きいフェスに出ることも多かったし。

PORIN:色々な舞台を経験できたのはいいよね。

atagi:修羅場をくぐって強くなるみたいな。

モリシー:だいぶ怖いものがなくなってきました。

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今回僕たちは、自分たちなりのやり方でクオリティを最大まで上げる方法を選択したんです。

−−制作面ではいかがでしょう?ACCはメンバー全員が作詞作曲できるバンドじゃないですか。新体制、新環境に移ったことで制作の進め方に変化はありましたか?

atagi:新体制後で言うと、今のところ制作に関しては僕が主導でやらせてもらってます。その是非が結果として出るのはまだ先の話だと思いますね。

−−すでにアナウンス済みの新曲「アンビバレンス」を皮切りに、2020年1月から3か月連続でシングル配信、そして春にはアルバムのリリースも予定されています。アルバム制作はどこまで進んでいますか?

atagi:全然です(笑)。第2弾、第3弾シングルはレコーディングが終わったところです。

−−「アンビバレンス」は新体制初のシングルということで、特別な思い入れがあるのでは?

atagi:「新体制だからこういう曲にしよう」っていう発想はむしろ全然なくて。今の世の中、真贋を見極める力を持ってる人はたくさんいて、ちょっとした誤魔化しは効かない時代だと思うんです。だったら素直に“今の自分たちらしさ”を詰め込もうと思って。それは歌のテーマにしてもそうで、綺麗事だけじゃ納得してもらえない。でも、だからって現実的なことばかりでも希望が持てない。言ってしまえば、「アンビバレンス」はその狭間をそのまま描いた曲なんですよ。

−−それで曲名も“アンビバレンス(相反する感情を同時に抱くこと)”に?

atagi:そういう人間の二面性にフォーカスした曲なんです。これは大人になったからこそだと思うんですけど、正論ばかり言われてムカつくことってあるじゃないですか。その理屈だけでは処理しきれない、ある種の不条理も含めて曲にしたいなと思ったんです。

−−最初にデモを聴いた時、ほかの皆さんはどんな印象を抱きましたか?

モリシー:デモの時点ですごくギターを重ねていた記憶がありますね。何かを示したそうな匂いがプンプンしてました。

atagi:そうだ。デモの作り方を変えたんですよ。今さらコツを掴んだ実感があって。今までデモを作る時は、ギターの弾き語りかガッツリ打ち込みかの二択がほとんどだったんですけど、ちょうどいい“余白”というものが実は大事なんだなと。例えば制作会議の時、しっかり作り込んで「どうや!」って自信満々に持っていくものほど、意外と反応が良くなかったりする。かといってギター1本だけじゃノリが伝わりきらないし。


▲Awesome City Club - 4月のマーチ (Music Video)

PORIN:確かに。

−−皆さん的にはどういう心境なんですか?

PORIN:良いものは良いんですけど、たしかに余白があったほうが新しいイメージを描きやすいですね。アタさん(atagi)、今まではけっこうガチガチに作ってきたもんね。あと「アンビバレンス」に関しては、アレンジャーさんの存在が大きかったと個人的に思っていて。

−−初共作ですか?

PORIN:初です。今までで一番、アタさんとハマった方だと思います(笑)。なので頼もしかったですね。制作中、お互いにすごく生き生きとしてたし。音楽シーン的にも近いところにいる方なんですけど、年齢とか感性も近いなって思いました。コミュニケーションも取りやすくて、歌録りのディレクションも分かりやすかったです。

ユキエ:今回ドラムはフルで打ち込みなんですけど、それもatagiくんが生き生きしてた理由の一つだと思うんです。今までは「バンドだから」っていう気持ちがどうしても働いちゃって、「生のサウンドもっと増やしたほうがいいよね」とか「せめてドラムは生がいいよね」とか、良くも悪くも呪縛があって。でも、打ち込みには打ち込みの良さがあるし、ちょうど同じリズム隊であるベーシストが抜けたタイミングもあって、「もっと自由でよくない?」みたいなノリが今回はすごくあったんです。

atagi:それはたしかにあるかも。

−−ACCのサウンドといえば、生楽器と打ち込みを上手く使い分けて、レトロモダンの絶妙な配分を狙う、みたいな印象がずっとあったんです。その視点で言えば、この「アンビバレンス」はグッとモダンに寄った、同時代性を非常に感じる楽曲になってますよね。


▲Awesome City Club - アウトサイダー (Music Video)

atagi:現代のトラック・メーカーって、例えばキックの音一つとっても、めちゃくちゃ時間を使ってこだわり抜いてる。僕はそれがいわゆる“クオリティ”というものに大きく関わると思っていて。一方で、バンドが生楽器でレコーディングする時、必ずしもクオリティの向上だけに集中できるとは限らない。スタジオが使える時間にも限りがあるし、その中で「急いで録りましょう」って状況になった時、ノリとか音の質感にまで神経が行き届くのかと言われたら、僕は届かないと思う。今回僕たちは、自分たちなりのやり方でクオリティを最大まで上げる方法を選択したんです。

−−すでに第2弾、第3弾シングルも収録済みとのことですが、現時点で思い描いているアルバムの展望などはありますか?

atagi:以前からメンバーで話し合ってきたのは、2019年は人生の中で起こりうる“すれ違い”というものに妙に因果がある1年だったということなんです。それを自分たちらしく、軽やかに歌にできないかなと思っていて。第1弾の「アンビバレンス」も、ある意味で自分の中にある“すれ違い”をテーマにした曲だし。アルバムもその1本筋を通して作ってみようかなと。

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新春なので、自分たちのこれからの“姿勢”みたいなものが分かるライブになったらいいですね。

−−そして、2020年1月には仙台 retro BackPage、そして東阪ビルボードライブでの【Awesome Talks Acoustic Show 2020 ~New Year Special~】が控えています。アコースティック・ライブは毎年恒例になりましたね。

atagi:どういう形で定着したか覚えてないんですけど、ACCの中でアコースティック・ライブのブームみたいなものがあったんです。下手したらバンド・セットよりいいかもしれない、みたいなことを感じる瞬間もあって。アコースティックだと歌がよりしっかり聴こえるし、グルーヴも生々しいから、普通のライブだったら音楽に埋もれてしまうような人間性が見えやすい。その感じが自分たちには向いてると思っていて。そしたらいつの間にか新春恒例の企画になってました。

PORIN:ビルボードライブでの公演は大きかったですね。あのステージに自分が立つ日が来るとは思ってなかったですし。

atagi:俺も死ぬまであのステージに上がることはないと思ってました(笑)。草野球チームがいきなり「東京ドームで試合するぞ」ってなったら、そりゃ緊張するじゃないですか。そういうイメージです(笑)。僕自身、名だたるアーティストのライブを見に行っていた場所だし、そんな場所に自分が立っていていいのかって感じで。

−−何か印象に残っているアーティストはいますか?

atagi:SMV(スタンリー・クラーク、マーカス・ミラー、ヴィクター・ウッテンのベーシスト3人組ユニット)とか。あと、クリス・デイヴはメンバーみんなで見に行きました。もの凄いメンツがステージに立ってるのに、少し目線を上げるだけですぐ見える位置にいて。ビルボードライブに出る海外アーティストって、ステージを作り込むというより、すごくラフで楽しそうに演奏するじゃないですか。それがとにかく印象的で、自分たちのライブでもあの雰囲気を出しつつ、良い演奏ができたら最高だなって思ったんですよね。


▲Chris Dave - Medley (Pt. 1)

−−それこそアコースティック編成の「アンビバレンス」がどういった感じになるのか気になります。

atagi:それがめっちゃ良いんですよ!最初はアコースティックは無理だなと思ってたんですけど、いざ試してみたらこれがなかなか。

PORIN:ACCはそういうの多いよね。

−−他にもそういった曲が?

atagi:「今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる」って、自分で言うのも変なんですけど、ちょっとイナたいけどカッコいい、みたいなギリギリのラインなんですよ。だからアコースティックだと絶対イナたくなっちゃうだろうなって思ってたら、意外と良かったり。


▲Awesome City Club – 今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる (Music Video)

−−2018年のビルボードライブ公演では、男女ヴォーカルを入れ替えるという面白い試みもしていましたよね。今回も楽しみです。

atagi:新春なので、自分たちのこれからの“姿勢”みたいなものが分かるライブになったらいいですね。

PORIN:5周年イヤーをビルボードライブで景気良く始めようと思います。

−−ほかにも2020年は様々なことにトライしていくとか。

PORIN:すでにガンガン準備してます。来年のACCはすごく忙しないと思うので、皆さんしっかりついてきてくださいって感じです。

−−目標の一つとして掲げているのが、【Welcome to Awesome City】と銘打ったカルチャー・フェスの開催ですよね。

atagi:2020年はオリンピックもあるし、自分たちのアニバーサリー・イヤーでもあるので、そのタイミングでACCの周りにある文化をみんなと共有して、それがジャンボリーになれば最高だなって思ったんです。たぶん「Awesome Cityって何なんだ?」という疑問に対する一つの答えになるだろうなと。

−−それでは最後に【Awesome Talks Acoustic Show 2020 ~New Year Special~】に向けた意気込みをお聞かせください。

atagi:メンバー全員が本当に楽しみにしてるライブだし、そのワクワクはきっとお客さんにも伝わると思うので、みんなで一緒に素敵な光景を作りたいです。

ユキエ:ビルボードライブでしか味わえない特別な時間ってあると思うんです。私たち自身もその空気を感じながら演奏したいし、同じように観てる方々にも感じて欲しい。いや、絶対感じられると思うので、一緒に楽しみましょう。

atagi:逆に一つ質問いいですか?

−−なんでしょう??

atagi:前にビルボードライブでやらせてもらった時、会場の雰囲気に尻込みしたのか、来なかった友だちが一人いたんですよ。僕は「一人でも全然大丈夫だよ」って話したんですけど。そういう人ってどう説得すればいいですかね?

PORIN:でも、ドレスコードとかはないんですよね?

−−ないですよ。Tシャツ、短パン、サンダルでいらっしゃるお客様もいれば、会社帰りにフラッと一人でいらっしゃる方もいます。もちろんドレスアップして雰囲気を楽しむのもアリです。それぞれが自由なスタイルで楽しんでいただける場所なので、お友だちにもそうお伝えください(笑)。

atagi:その友だち以外にも同じようなことを感じている人がいるかもしれないので、今回の公演ではそういう人たちにこそ来てもらいたいですね。

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