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DAOKOインタビュー:2019年の変化 と ネクストステージへの視線

インタビュー

 女性ラップシンガーとして、独自の世界を切り開いてきたDAOKOが2020年3月に初の「ビルボードライブ」公演を開催する。15歳でニコニコ動画に投稿した楽曲で注目を集め、2015年のメジャーデビュー以降は、米津玄師とのコラボ曲「打上花火」をはじめ、岡村靖幸、中田ヤスタカ、MIYAVIといった個性豊かなアーティストとのコラボレーションを重ねながら、独創的なクリエイティビティで多くのリスナーを魅了。今年は初の個展や【Yellow Magic Children】への参加、生バンド編成でのライブで新境地を見せた彼女。常に進化を遂げる表現者としてのDAOKOに、2019年に起きた“変化”とネクストステージに向かう現在の心境を訊いた。

数十人を前にしたギャラリーライブから「始まった」2019年

──先ずは今年のDAOKOさんの活動を振り返ってみたいのですが、2018年の大晦日は第69回NHK紅白歌合戦に出場しましたね。

CD
▲『私的旅行』

DAOKO:そうでしたね。去年の12月に3rdアルバム『私的旅行』をリリースして、その後に初めての紅白に出たんですが、別世界のように感じて、すごく緊張しました。

──2月には、恵比寿のギャラリーKATAで、展覧会【DAOKO×SHINKAI BABA 気づき EXHIBITION「Enlightening my world】』を開催しました。

DAOKO:私の好きな写真家、馬場真海さんとコラボレーションした写真展だったんですが、そこで自分の絵も展示したり、初めてアコースティック・ライブをしたんです。ギャラリーなのでお客さんは限定数十人でしたが、一度生音でやってみたかったんです。2019年は、そこから色々始まった気がしますね。

──今年は生音ライブ元年になったわけですね。

DAOKO:はい。今まではライブも打ち込みだったので、初めて生で歌う楽しさに目覚めて、自分でもすごくのびのびと歌えた印象があったんです。元々バンド・サウンドは好きだし、バンドのライブもよく観に行くんですが、自分が歌うとこういう感じなんだと、まさに気づいて。そのアコースティック・ライブが好評だったので、色々発想が膨らんでいきました。

──3月にはYMO結成40周年を記念した、YMOゆかりのアーティストたちによるトリビュート・コンサート【Yellow Magic Children~40年後のYMOの遺伝子~】に参加。高野寛さん率いるYellow Magic Children Bandで2曲歌われましたね。

DAOKO:そこで初めて生バンド編成でのライブを経験しました。まさか私に声がかかるとは思わなかったので驚きましたが、片寄明人さんと一緒だったので参加することにしたんです。片寄さんは私のメジャー1st アルバム(『DAOKO』2015)のサウンドプロデュースを手がけてくださって以来のお付き合いで、また片寄さんと一緒に音楽がつくれたらと思っていたタイミングでもあったし、YMOも大好きなので思いきって参加することにしたんです。


▲Yellow Magic Children コンサート ダイジェスト

──ライブでは片寄さんとお二人で、DAOKOさんの「高い壁には幾千のドア」と、YMOの「在広東少年」を披露されましたが、初めての生バンドはいかがでしたか?

DAOKO:イヤモニなしで歌うのは初めての経験だったので緊張はしましたが、予想していた以上に楽しかった。最初は生バンドだと自分の声が負けちゃうかなと思っていたから生のドラムに加え、同期を使っていたんですが、YMCの時に生でもいけるのかもしれないと思ったのは大きかったですね。ただ、「在広東少年」は、さすがにハードルが高くて、自分がちゃんと歌えるのだろうかと不安でしたけど、ここは思いきって自分のカラー、歌い方で歌ってみようと。YMCのバンドは素晴らしいミュージシャンの方々ばかりだったから、私も歌いやすかったというのもありました。

──12月25日には、その時のライブ音源が『Yellow Magic Children #1』としてリリースされ、DAOKOさんの歌声も聴けますね。

DAOKO:私は年齢的にはYMOチルドレンよりさらに下の世代ですけど、YMOは今も幅広い層に聴かれているので、私も参加できて光栄でした。若い世代にもぜひ聴いてほしいですね。

──そのYMCをきっかけに、さらに生バンドへの興味も高まっていったんですね。

DAOKO:そうなんです。それで片寄さんに相談したら、プロデューサー視点で私の音楽に誰が適しているのかを考えてくださって、YMCでキーボードを弾いていた網守将平さんを紹介してくれたんです。網守さんのソロアルバムを聴かせてもらったら、すごく面白かったので、ぜひお願いしてみたいと。


▲網守将平 - 偶然の惑星 / Shohei Amimori - Coincidental Planet



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バンドとの演奏で実感した可能性

──DAOKOさんが音楽的に変化してゆくことは、7月の【DAOKO 2019 “気づき” LIVE – Enlightening my world】から明らかになってきましたね。

DAOKO:そうですね。7月のワンマンは、鍵盤は網守将平さん、ギターは永井聖一さんというステージでしたが、私の曲を網守さんにリアレンジしていただいて、原曲とはかなり印象が違って聴こえたと思うんです。いわゆるメジャーの代表曲を中心にしたライブではなかったので、お客さんには挑戦的に見えたと思うし、私も楽しみと同時に不安はあったんですが、片寄さんの「絶対カッコイイから大丈夫!」というお言葉もあり、思った以上に受け入れてくれて嬉しかった。そこで今までとは違う形式で新たに音楽にチャレンジしていくことを見せることができたかなと思います。それが基盤となって、次の東京・大阪でのドラムも入れたバンド編成でのツアーが実現したんです。

──秋の【enlightening trip 2019】ツアーは、網守さんに加え、ギターに中村佳穂BANDなどで活躍中のギタリストの西田修大さん、ドラムはDATSやyahyelの大井一彌さん、ベースはLITTLE CREATURESの鈴木正人さんと気鋭のミュージシャンがバックアップ。DAOKOさんの新しい音楽観を伝えていましたね。

DAOKO:これまで以上にお客さんとの距離感が近く感じられたのは、やっぱり生のバンドだからなんだと思いました。バンドはステージの温度感や熱量がそのまま客席に伝わるんですよね。私もそのライブで初めて「グルーヴってこれなんだ!」って気がついたんです。ミュージシャン同士のプレイが盛り上がっていく感じがすごくスリリングで、面白くて、これがライブの醍醐味なんだなと。私自身もその演奏の中で自由に歌うことができて、そうすると声も伸びやかに出るとこがわかって、今まで歌いづらかった曲も歌えるようになったんです。

──ご自身の曲の新たな可能性が見えてきた?

DAOKO:そうなんです。今まで映像を駆使した視覚的にも刺激のあるステージをやってきて、それもとても素敵な経験だったんですが、生のバンドでしかできない世界ってやっぱりあるんですよね。

──東京の会場だった鶯谷のダンスホール新世紀の昭和レトロな雰囲気もよかったですね。

DAOKO:普段は社交ダンスのホールなんですが、私の音楽性ならそういう会場も似合いそうな気がしたんです。大阪もずっとライブをやってみたかった味園ユニバースにして、会場の雰囲気もふくめて私の世界観を伝えたかったんです。

「いまは好きなことを自由にやっているアーティストが輝いている時代」

──DAOKOさんはデビュー以降、様々なアーティストとコラボレーションを重ねていますが、今年はDAOKO × MIYAVI「千客万来」のリリースもありました。

DAOKO:元々ラッパーとして音楽を始めて、いまも気持ちはラッパーなので、フィーチャリング文化は親しみやすいです。コラボによって化学変化が起きて、自分の新しい扉が開くところが好きなんですね。MIYAVIさんとのコラボは、蜷川実花さんの熱いリクエストで実現したんです。MIYAVIさんの場合もそうでしたけど、コラボに関しては、「やってみたらすごく面白かった」というのが大半ですね。


▲DAOKO × MIYAVI - 「千客万来」 Music Video(映画『Diner ダイナー』主題歌)

──いままでにないラッパー/シンガーとして次々を新しい扉を開けていきましたが、その歩みを振り返ると?

DAOKO:私が好きなラップは詩を重視するポエトリー・リーディングだったので、いわゆるTHEヒップホップ・カルチャーの文脈とは違うんですが、そこで自分に合う居場所を見つけることができたのかなと思います。私が14歳の時に投稿を始めたニコニコ動画も、プロアマ関係ないところが自由で楽しそうだなと思ったんですが、気がついたら、あっという間にここまで来ちゃった(笑)。だんだん自分ができることが増えてきて、本当の意味での自由を味わえるようになってきたのもここ最近ですね。

──音楽を聴く環境と流通が大きく変化したこともアーティストの活動の方法を変えましたね。

DAOKO:私はデビューのきっかけからここまでインターネットと共に歩んで来た感じがあって、賛否はありますけど、配信やサブスクリプションは旬の美味しいものをすぐに届けられる良さがあるし、アーティストを自由にしてくれる部分もあると思うんです。ニコ動に投稿していた頃も曲が出来たら即アップロードしていたので、今の時代のスピード感は自分には合っているのかもしれないですね。

──今年はDAOKOさんにとっては節目の年になったと思いますが、いまはその変化の渦中にいる?

DAOKO:そうですね。いまは好きなことを自由にやっているアーティストが輝いている時代が来ているように感じるんです。右も左も分からないまま十代でデビューして、ようやくこれからの自分のビジョンが見えてきたところなので、私もやりたいことに振り切って前に進みたいですね。私自身、自分の中のブームもその都度変わっていくし、聴いている音楽のジャンルも、ロック、テクノ、70年代のシティポップや歌謡曲と幅広い方だから、これからもサウンドは変わっていくと思うんですが、自分の声と言葉があれば自分らしさは出すことができるのかなと。

──来年の2月には、東京・大阪・名古屋で【二〇二〇 御伽(おとぎ)の三都市 tour】があり、3月には初の「ビルボードライブ」のステージが控えています。

DAOKO:3都市ツアーは5人のバンド編成なんですが、ビルボードライブは、鍵盤(網守将平)とギター(永井聖一)にチェロ(四家卯大)が入るアコースティック編成になるので、ツアーとはまた違う世界になると思います。ビルボードライブのステージは、m-floのフィーチャリングゲストとして1曲だけ歌った経験があるんですが、ワンマンは初めて。自分がライブを観に行く場合もキャパがそれほど大きくない会場の方が感動することが多いし、しっとりした聴かせる曲とか、ビルボードライブの雰囲気に合うセットリストにしたいですね。私もすごく楽しみにしています。

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