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グレース・ヴァンダーウォール 最新作『レターズ ヴォリューム1』リリース記念特集&インタビュー



Grace VanderWaalインタビュー

 グレース・ヴァンダーウォールが最新ミニ・アルバム『レターズ ヴォリューム1』を2019年12月25日にリリースする。本作品は各音楽配信サービスで絶賛配信中だが、日本のみでCDリリースされるとのことで、ファンには嬉しいニュースだ。脚光を浴びた『アメリカズ・ゴット・タレント』の優勝当時はまだ12歳だったグレースも現在15歳になり、新作にはティーンだからこそ感じる感情の揺れがグルーヴ豊かなサウンドに乗って展開されている。少女からちょっぴり大人びたティーンに成長したグレースの最新作をインタビューと合わせて紹介しよう。
★2017年6月にプロモーション来日したグレースの初来日インタビューはこちら

約2年ぶりとなるアルバムが完成

 ここで少し、グレースのことを簡単に説明しよう。グレースは2006年から放送が続いている人気オーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』のシーズン11(2016年)に出場。これまで『アメリカン・アイドル』や『Xファクター』といったオーディション番組でケリー・クラークソンや(優勝を逃したが)アダム・ランバート、ワン・ダイレクション、リトル・ミックスなどが誕生してきたが、彼らの才能を見出したのが、辛口審査員サイモン・コーウェルだ。サイモンに認められる=トップスターへの登竜門と考える者も少なくなく、その承認を求めて毎年世界各国で応募が殺到している。グレース・ヴァンダーウォールもその“サイモンに認められた”一人だが、グレースの優勝は彼女が初登場した回から誰もが予想が付いていた。当時12歳だったグレースは、ウクレレで演奏した自作曲「アイ・ドント・ノウ・マイ・ネーム」で、サイモンのみならず他ジャッジ、そして視聴者の視線をクギ付けに。その感動的なパフォーマンスが世界中で拡散されたことで、番組を観ていない人にも名が知られた。


 自身で作詞・作曲し、演奏するスタイルが“ポスト・テイラー・スウィフト”と称され、2016年にサイモンのレーベル<Syco Music>からリリースされたデビューEP『パーフェクトリー・インパーフェクト』が全米ビルボード・アルバムチャートで初登場9位を獲得したグレースは、2017年11月発売の1stフルアルバム『ジャスト・ザ・ビギニング』で、ショーン・ダグラス(オースティン・マホーン「ダーティ・ワーク」)、グレッグ・ワッテンバーグ(トレイン「ヘイ・ソウル・シスター」)ら著名プロデューサーらと全曲を手掛け、ソングライティングの才能を発揮している。



 そんな彼女の約2年ぶりとなるアルバム『レターズ ヴォリューム1』には、今年リリースされた「ユアー・ソー・ビューティフル」、「ウェイスト・マイ・タイム」、「アイ・ドント・ライク・ユー」に加え、今作のために書き下ろされた新曲3曲の計6曲が収録されている(国内盤CDには8曲収録)。このEPについてグレースは「とてもカラフルだけど落ち着いた色調で---とても分かりやすく自己表現されている作品」と説明。ファースト・トラックの「イントロ(グッチ・シューズ)」では<たった今 グッチの新しい靴をゲットしたんだ><大学資金を全て使い果たした 可愛く見えるために>と15歳の女の子には手が届かないハイブランドと、外見を気にするお年頃ならではの表現で、初っ端からグッと大人びた印象を持たせ、その周りの視線に敏感になるティーンの心情を映すかのように「ポーザー」へと続く。Poser(ポーザー)は“目立ちたがり屋・カッコつけ”を意味する単語だが、この曲を聞くと、なぜか見栄を張ったり、クールな素振りをしてしまったりと、今思うと恥ずかしくなるような昔の自分の行動を思い出してしまう。



 ことあるごとに争ってしまう、“大好きだけど、なんだか気に入らないことも多い”相手との複雑な関係性を歌った「アイ・ドント・ライク・ユー」には、ジュリア・マイケルズの「イシューズ」や今話題の「ア・ハー」、イマジン・ドラゴンズの「ビリーヴァー」、ホールジーの「バッド・アット・ラヴ」などを手掛けたジャスティン・トランターが参加。前述曲のように痛みや心の葛藤をディープなサウンドで醸し出すサマが歌詞と見事にマッチしている。壁紙の色とカーテンが、何となくシーアの「シャンデリア」を彷彿とさせるミュージックビデオで、グレースは感情を爆発させるように踊ったり叫んだりしており、これまでとは違う新たな一面を見せている。そこから一転、最新ツアーのタイトルにもなっている「ユアー・ソー・ビューティフル」は、本人の言葉を借りると「ロマンティックかつ、人を力づける曲」だ。<あなたって本当にステキ それを自分でも分かってるでしょ?>と優しく呼びかける彼女の歌声が聞いていてとても心地いい。



 甘酸っぱい恋心と若いがゆえに許される時間を持て余す贅沢さをテーマにした「ウェイスト・マイ・タイム」は聞いていて微笑まずにはいられないし、本作の随所に登場するニューヨーク・マンハッタンを舞台にしたファイナル・トラックの「ザ・シティ」は、ジェラシーたっぷりのラブソングに仕上がっている。これら6曲を聞いて感じるのは、グレースの声の成長ぶりだ。前作『ジャスト・ザ・ビギニング』はハスキーな歌声が彼女の魅力でもあったが、今作では、そのハスキーさが押さえられ、深みと奥行きが増している。またサウンドにも変化が出ている。前作には、彼女の代名詞であったウクレレが前面に登場していたが、本作ではそのウクレレを封印し、コーラスのレイヤーや、ビート重視のアンビエントなサウンドに挑戦している。 “まだ15歳”だからこそ、いろいろ実験も吸収もできるだろうし、『アメリカズ・ゴット・タレント』の優勝からたったの3年で、ここまで大きく成長を遂げた彼女の今後が楽しみだ。

 次ページでは、全米ツアー中の今年8月に収録されたグレースのインタビューを掲載。また、好きな映画/TVドラマのファン度を試す米Billboardのスペシャル映像も公開。ここまで彼女の音楽面での成長ぶりを紹介してきたが、15歳らしさを感じさせるリアルなグレースもチェックしてほしい。

Text: Mariko Ikitake

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ありのままの自分でいられるようにインスピレーションを与えられたら嬉しい

――新しいツアーのタイトル【Ur So Beautiful】は、ニュー・シングルと同じですが、このツアータイトルに込められた想いを教えてください。

グレース・ヴァンダーウォール(以下グレース):【Ur So Beautiful】にした理由は、この新曲の新しい世界が今回のツアーと同じような雰囲気を持ってると思ったから。このツアーのオープニング曲で、人々にその新しい世界を紹介するような感じになっているから、新曲とツアーは繋がっているの。

――2度目のヘッドライン・ツアーですが、前回との違いや、今回のツアーの見どころ、自身にとって最大のチャレンジだと思うところはどんなところですか?

グレース:今回はセットリストの大半が新しい曲で、昔の曲は少しだけ。個人的にはそれが気に入ってるんだけど、オーディエンスの中にはそれを好ましく思っていない人がいるのも分かってる。だから、最大のチャレンジは前回とすごく違うところだと思う。それをすごく気に入ってくれる観客は沢山いて、私はステージ上でいい反応をもらって力をもらってるんだけど、前回のようなツアーを期待しているファンもいるから、そういう観客をガッカリさせずに、同時に自分がハッピーになれるステージを披露することが、今回のチャレンジ。

――これまでの公演で何か思い出深いエピソードはありますか?

グレース:オーマイゴッド、ツアーのいい思い出は沢山あるからそれはすごく難しい質問。(アリゾナ州)フェニックスでの公演を終えたばかりなんだけど、観客が本当に盛り上がってて、すごく楽しかった。あと、ツアーバスの中で、バンドメンバーとスタッフと一緒に毎晩ショーの後にお祝いをして楽しんだのが、すごくいい思い出。

――ステージに上がる前のルーティーンはありますか?

グレース:バンドメンバー達とハグをする。それだけ(笑)。お守りのようなラッキーチャームも持ってるけど、ショーのために付けることはないかな。もし私がそれを身に付けてショーをやったら、ちょっと落ち着かないかも。だけど、この妙なリボン(左手首にミサンガのようなリボンを結んだもの)は2年ぐらい前、すごく退屈してた時に付けてみたらクールに見えたから、それからずっと付けていて、今では私の一部。一度も外したことがなくて、付けてないと裸みたいな気分。それから(左人指し指の)シルバーの指輪も私にとって特別なもので、いつも付けてる。親友がプレゼントしてくれたの。

――オーディエンスの中には、あなたと同世代やもっと小さな子供たちも多いのでは? 彼らにとってコンサートに行くことは、そう頻繁にあることではなく、特別なイベントであり、インスピレーションにもなると思います。そんな彼らに、どんな時間、体験、インスピレーションを与えられたら嬉しいと思いますか?

グレース:(ため息をついて)確かに私のファンは、子供達が多い。彼らが、ありのままの自分でいられるようにインスピレーションを与えられたら嬉しいな。12~13歳の頃って、すごく変で、すごく自分が気になる年頃だから。まるで昨日のことのように、自分がどんな気分だったか覚えてるから、彼らに私がリアルな人間だってこと、私は彼らの気持ちが理解できるってことを分かって欲しい。

――今年はすでにシングルを4曲もリリースしており、クリエイティブ・モードに入っているようですね。でも、曲作りに行き詰まるときもあるのでは?

グレース:もちろんあるし、とても苛立たしく不快になるけど、そうなったら、時々、外に出るようにしてる。外って私にとってすごくセラピー効果があって、外の空気を吸い込むだけでリフレッシュした気分になれる。あとは、あまり深刻に考えすぎないようにしてる。私の曲の多くは、スタジオでナチョスとか、ランダムにそういうことを歌ってる間に生まれていて、「待って、今のいい曲だ」って言って、そこから曲作りを続けるの。

――『アメリカズ・ゴット・タレント』で優勝したことで人生が大きく変化しましたが、その結果、良かったことや嬉しかったこと、逆に嫌なことや大変だったことはなんでしょうか?

グレース:一番良かったことは、今の私が最高にハッピーなこと。こうして音楽を作ってツアーをする以外の人生は想像できないし、この活動のおかげで、今の私が形成されたと思う。悪い面は……ない! だって、大好きなことをやってお金を稼いでるんだもん。私はずっとノーマルなティーンエイジャーの人生にはフィットしなかったし、これが私に適した人生。一つだけ大変なことがあるとしたら、それによって生じるストレスかな。私はすごく落ち着いた人間だから、そう簡単にはストレスを感じないんだけど、人間って自分がいる環境を反映するものでしょう。だから、周りで何かが起こったら、その環境が私に悪影響を与える可能性はあるし、私が悪影響を受けたら、私の環境にも問題が出てくるかもしれないとは思う。

――1stアルバムをリリース以降、自身の声やパフォーマンス、自己表現の仕方、さらには音楽の好みなどに変化を感じますか?

グレース:全てが劇的に変化した。クレイジーだけど、その一つ一つが進化したと私は思う。前よりずっと正直になって、まだ伸びしろがあると思ってる(笑)。

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私は今、完全にまた新しくスタートしてるって気がする

――2020年は映画『スターガール(原題)』の公開が控えていますね。この作品が女優デビューになるようですが、今後、本格的に女優活動をスタートする予定ですか?

グレース:『スターガール』で演じるのがものすごく楽しかったから、機会があったら女優活動も楽しいだろうなって思う。この映画は高校生活を楽しんでいる女の子が、大人になる過程を描いた映画。私が演じたスターガールは、もともとホームスクールをしていて、高校の同級生たちの批判とかを体験したことがなく、怖いもの知らず。そんな彼女が学校に戻ったことで人々が彼女と対立するの。この映画は本が基になっていて、映画は本にきちんと沿った作品になってる。

――演技には前から興味があったのですか?

グレース:昔、ちょっと女優になりたいと思ったことはあったけど、その道を追いかけたいとは一度も思わなかった。なんていうか、うん、興味はなかった(笑)!

――撮影で楽しかった、チャレンジだった点は?

グレース:一番難しかったのは、自分で全然コントロールできないこと。音楽と同じようにクリエイティブな作業だけど、音楽は私が全てをコントロールできて、全てのサウンドをコントロールできるから、人々に聞かせる曲は、私が創造したいと思った通りの形になっているの。でも、映画はコントロールができなくて、私はベストを尽くしただけ。例えるなら、私が曲を歌って、その場を立ち去って、他の誰かが曲を作っているような感じ。

――あなたはまだ15歳ですが、普通の15歳には起きないような出来事をたくさん経験しています。あなたの人生を本に例えたら、今の人生はどのチャプターだと思いますか? そして次のチャプターはどんなものにしたいですか?

グレース:今の私は第2章にいると思う。私は今、完全にまた新しくスタートしてるって気がしていて、それは素晴らしいのと同時にものすごく大変なことでもある。でも、気づかないうちに最終章に突入して、これが全然成功しないで、学校に戻って大学進学のこととか考えなきゃならなくなってる可能性もある(笑)。

――数年前、憧れの存在としてフランキー・コスモスやアリアナ・グランデ、マイリー・サイラスを挙げていましたが、経験を積み、かつ実際に様々なアーティストに出会ってきて、今リスペクトするのは誰ですか?

グレース:今でも彼女達が大好きだけど、最近は(他のアーティストから)インスピレーションを受けることは少なくて、自分自身にフォーカスしながら、とにかく本当にやりたいことをやって、毎日一歩ずつ進んでいくっていうライフスタイルを送っているから、私の周りにいる人達にインスパイアされてる。有名人ではない私のクルー、チームのメンバー達が、アリアナ・グランデやマイリー・サイラスよりも、私をインスパイアしてくれる。

――前回の来日から早くも2年が経ち、日本のファンはすぐにでもあなたに会いたいと待ち望んでいます。前回の来日で印象深かったことはありますか?

グレース:全てが印象深かった。素晴らしく美味しい料理も、ビルも、風景も、ファッションも、人達も、全部覚えてる。仕事をしていた時のことも、取材を受けた時のことも、TV番組に出たことも、読書したことも、パフォーマンスしたことも、全てをはっきり覚えてて、また日本に行くのが待ち遠しい。

――(ハローキティの可愛いリュックを持っているのを見て)キデイランドには行きました?

グレース:ノー! 行きたい!

――最後に日本のファンへメッセージをお願いします。

グレース:こんにちわ、私のことを応援してくれて、私の音楽を聞いてくれて、ずっと私の活動を支えてくれて、本当にありがとう。みんなのことが大好き。またみんなに会う日が待ちきれない。だから出来るだけ早く、日本に戻れるといいな。


Billboard.com 人気企画『Quizzed』 with ズーイー・デシャネル
~『New Girl ~ダサかわ女子と三銃士』~

 好きな映画/TVドラマのファン度を試す米Billboardの人気企画シリーズ『Quizzed』。今回は、2011年~2018年に放送された人気ドラマ『New Girl ~ダサかわ女子と三銃士』より、主人公ジェスを演じたズーイー・デシャネルが、『New Girl』が大好きなグレースを突撃。ズーイーを目の前にして検定前から涙が止まらないグレースがとてもキュートだ。○×問題やトリビアなど様々なクイズに正解し、無事検定をクリアしたグレースにズーイーからエピソードに登場したFeeling Stickのミニサイズがプレゼント。最後はテーマ曲をデュエットして盛り上がった。

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