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熊木杏里【杉山清貴アコースティックライヴ】
2003.5.9(金)at ハーモニーホール座間|セットリスト
とてもリラックスしたアコースティックスタイルで杉山清貴が歴代の数々の名曲を、いくつになっても変わらないクリアボイスで聴かせている。ここは、ハーモニーホール座間。現在、アコースティックツアー中の大御所アーティスト・杉山清貴のコンサート会場である。客席にはオメガトライヴ時代からの杉山清貴ファンだと思われる、おじさま、おばさま方が、とても気持ちよさそうに今夜の主役が奏でる歌声とギターの音色に酔いしれている。なぜ、そんなアダルトな場に私のような若輩者が居させていただいているかと言うと、「hotexpress」の読者にはもうお馴染みだと思われる“熊木杏里”が、所属レコード会社の大先輩各にあたる杉山清貴と、井上陽水のナンバーをセッションするという噂を聞きつけたからである。彼女自身もそうだったかもしれないが、まさかデビューしてから一年ちょっとの彼女がこんなチャンスを手に入れるとは思いもしなかった。が、彼女の歌声はきっと杉山清貴ファンの皆さまにも受け入れられる・・・そんな何の確証もない予感はあった。
とても緩やかな時間が流れている・・・そんな印象の会場で、「娘に近い(年齢的に)子がいまして・・・」と、杉山清貴が話し始める。彼女の出番のようだ。予想通り、かなり緊張した趣で“熊木杏里”がステージに登場する。そして、彼女の第一声、「熊木杏里です。杉山さんのオススメになりたいと思います」。もしかしたら自分の親ともほとんど年齢の変わらないオーディエンスを前に、客席を直視できない彼女。ただ、オーディエンスの視線はとても温かく、彼女が何かを口にする度に、皆笑顔で応えていた。自身のライヴとは全く違う温度をきっと全身で感じていたことだろう。緊張のあまり、言葉が空回りして少々“天然キャラ”として受け止められてしまってはいたようだが(笑)。
そんな通常とは全く違う状況下で、尊敬する井上陽水のナンバーを、杉山清貴のような大先輩と、セッションしてみせるというのだから、その緊張の度合いは客席からは計り知れない。しかし、大先輩の美しいギターの音色と、オーディエンスの暖かい空気にバックアップされながら、彼女は「心もよう」をそっと歌い始めた。懸命に緊張をはね除けながら。杉山の美しいアルペジオに乗せて、歌いながら徐々に歌の世界に入り込んでいく彼女。誰にも真似できないクリアボイスの持ち主のファンが、彼女の優しい歌声に魅力を感じ始める。そして、井上陽水の魅力を十二分に分かっている二人のハーモニーが会場に響き渡る。そのハーモニーがいかに心地良いものであったかは、大きな拍手をステージに送ったオーディエンスが表していた。
彼女のデビューのキッカケや曲の作り方をインタビュー形式に聞いていく杉山。すっかり彼女を受け入れた会場の空気はとても和やかだ。2曲目に「帰れない二人」を披露している間も、熊木と杉山が作り上げた陽水ワールドにオーディエンス一同じっくり聴き入っていた。
二人の短くも有意義なセッションコーナーが終了すると、会場に入場する際に手渡された“熊木杏里 アルバム「殺風景」”のチラシに目を通す人々が会場中で見受けられた。何処の誰かも分からない彼女が“気になる存在”へと変化したのだろう。20分にも満たない短い時間ではあったが、彼女にとって大きな収穫のあったステージになったはずだ。
セットリスト
【杉山清貴アコースティックライヴ】
2003.5.9(金)at ハーモニーホール座間
- 01.心もよう
- 02.帰れない二人
Writer:平賀哲雄
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