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KAMIJO 『TEMPLE -Blood sucking for praying-』リリース記念インタビュー
国内外にファンを持つKAMIJOが2020年にかけて発表される三部作シングル第一弾『TEMPLE -Blood sucking for praying-』を11月27日にリリース。ヴィジュアル系ロックバンドLAREINE、Versaillesの活動を経て、現在ソロとしても活動するKAMIJOは2019年3月には、自身の夢でもあったオーケストラとの共演コンサートを行うなど、自身の音楽とその華麗な世界観の融合を追求してきた。この度発売される第一弾シングルのヴィジュアルには、アクションゲーム『悪魔城ドラキュラX・月下の夜想曲』などのパッケージ・キャラクターデザインを手掛けたイラストレーターの小島文美氏が起用されており、その美しさに心を奪われる。今回そのシングル・リリースに先駆けて、本作のテーマや自身が目指すその先、そして次作について話を伺った。
――このたび、三部作“PERSONA”の第一弾作品としてシングル『TEMPLE -Blood sucking for praying-』が発表されることとなりました。これまでKAMIJOさんは物語性の強い音楽作品を生み出していらっしゃいますが、今作にも過去作において重要な役割を果たしてきたルイ17世とサンジェルマン伯爵というキャラクターが登場するようですね。まずはKAMIJOさんがそもそもソロワークスの中でこのふたりを軸としたストーリーを描き出したきっかけについて、あらためて教えていただけますか?
KAMIJO:僕はこれまでにフランス語で女王を意味するLAREINE(無期限活動休止中)というバンドと、その後にはまさにヴェルサイユ宮殿の名を冠したVersaillesというバンドをやってきまして、ソロ活動を開始したのは2013年のことなのですが、その際に「ソロとしての自分は何について歌っていくべきなのか」ということを考えた時、やはりフランスの歴史に関わることを題材にしていきたいと考えたんです。そして、もし今の自分がフランス史上における誰かしらのことを歌うのであれば、僕はルイ17世について表現していきたいと思ったんですよ。
――ルイ17世とは、フランス革命で断頭台の露と消えたルイ16世の次男にあたる人物ですが、史実上ではわずか10歳にして亡くなってしまったそうですね。
KAMIJO:ただ、ルイ17世については実はそれ以降も秘かに生存していたという説があったんですよ。20世紀に入ってからそれは否定されることになりましたが、僕としては「もしルイ17世が生き続けていたとしたら……」というところから、ソロ活動のベースとなるストーリーを生み出していくことを始めていきました。それと同時に、僕の描く物語の中でのルイ17世は単なる人間ではなく、不死者として現代まで生き延びてきました。つまり、ヴァンパイアに化すことで彼は命を永らえたのではないか、と仮定したわけです。
――フランスの王になるはずだった人物が、ヴァンパイアとなってその後を生きるだなんて、とてもドラマティックなお話ですね。
KAMIJO:その状況に置かれたルイ17世が何を感じるのか? と想像すると、それはきっと孤独なんだろうなと僕は思うんですよ。たとえ誰かを愛したとしても、相手が人間であればいつかは老いて死んでいってしまう。結局、不老不死のヴァンパイアである自分は生き残ってしまうわけですからね。ここまでソロとして作ってきた作品の中では、そうしたことを中心に様々な物語を描いています。
――だとすると、ここから始まってく三部作“PERSONA”と、その第一弾作品となる『TEMPLE -Blood sucking for praying-』において、ルイ17世の物語は一体どのような局面を迎えることになるのでしょうか?
KAMIJO:今回は永遠の命というものが手に入るということを知った時、人間がどんな姿をみせることになるのか、どんな醜さをさらけ出すことになるのか、という点に着目しました。
――永遠の命の可能性ではなく、そこに翻弄されてしまう人間の醜さの方にフォーカスされたわけですね。
KAMIJO:なぜなら、醜くなってしまうことを想定していれば、逆にそれを避けて美しくいられるように努力することが出来るからです。だからこそ、僕は今回の物語の中で永遠の命が手に入るとなった時、その権利を奪い合う人たちがどんな醜さをさらけ出すことになるのか、ということを描いてみたかったんです。ちなみに、この物語の中ではルイ17世と共に登場するサンジェルマン伯爵という人物も重要な役割を果たしていくことになるのですが、彼はヨーロッパ最大のミステリーとも言われている存在で、4,000年の時を生きた過去も未来も知る男とされているんですよ。一節にはマリー・アントワネットやナポレオンなど、時代を先導した人たちに助言を与えていたという話がありますし、アメリカの建国にも関わっていたという説もあり、現段階では実在を否定出来ない人物なんです。
――KAMIJOさんが描かれてきたストーリーの中では、幽閉されていたルイ17世は音楽家・ベートーヴェンによって救い出されたということになっていますが、その指示を与えていたのがサンジェルマン伯爵であり、ルイ17世にヴァンパイアの血を与えたのも彼であった、となっていますよね。
KAMIJO:そうなんです。サンジェルマン伯爵をめぐる物語については、以前に出したアルバム『Sang』(2018年3月発表)でひとつの結末を迎えてはいたんですが、今回の三部作“PERSONA”を作って行くのにあたり、僕はまず『ペルソナ・グラータ』という小説風のシナリオを書きあげたんです(注:これは初回盤に約50ページのブックレットとして封入されている)。その中にも、ルイ17世と共にサンジェルマン伯爵が出て来ているんです。
――わかりました。では、ここからは実際にシングル『TEMPLE -Blood sucking for praying-』がどのようなプロセスをもって生み出されていったのかについて伺いたいと思います。音楽的な面で、KAMIJOさんが最も欲していた要素とは何でしたか?
KAMIJO:とにかく直球で行こうと思いました。特に表題曲の「TEMPLE -Blood sucking for praying- 」は、僕の中での王道とも言えるものに仕上がっています。
――クラシカルで荘厳で、それでいてヘヴィーでもあるというこの音像は、確かにKAMIJOサウンドの真骨頂という印象です。
KAMIJO:でも、いわゆるメロディックスピードメタル的なサウンドにしよう、とは全く意識しないで作ったんです。もちろん、以前はソロではあってもバンドサウンドを重視して、いかにメタルファンに受け容れられるか? という点を意識していたのですが、今回は純粋にKAMIJOサウンドとメロディーの美しさを追求していったら、自然と“こう”なっていたんです。
リリース情報
『TEMPLE -Blood sucking for praying-』
- 2019/11/27 RELEASE
- <初回限定盤 (CD+BOOK)>
- SASCD-102 3,500円(tax out.)
- 全6トラック(各曲インストゥルメンタルを収録)
- ハードカバーブックタイプ豪華ジャケット(約10,000文字のシナリオを掲載)、ミニポスター、ポストカード付属
- <通常盤>
- SASCD-103 1,500円(tax out.)
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ヴァンパイアの歌声とは、どんなものなんだろう?
僕は、ずっとそれを追い求め続けている
――KAMIJOさんの持つ美意識と、音楽センスを自然なかたちで凝縮すると、これだけのスケール感ある音が生まれるのですね。
KAMIJO:制作の過程としては、いつものように原作となるものを先に書くところから始めました。今回の場合はそれが『ペルソナ・グラータ』だったわけですが、一方で具体的な曲作りの面では今年の夏に出したシングルの表題曲「Eye of Providence」(2019年7月発表)を作ったことが、直接的に今回の「TEMPLE -Blood sucking for praying-」に影響したとも言えます。
――となると、「Eye of Providence」と「TEMPLE -Blood sucking for praying-」の関係性はいかなるものなのでしょうか?
KAMIJO:前者が“PERSONA”シリーズ全体のことを表したものだとすると、後者はその物語の中におけるルイ17世について歌ったものになります。そのことは、作品のアートワークを見ていただくと一番分かりやすいと思います。
――イラストレーターの小島文美氏が手掛けられた、つくづく美麗なジャケットデザインのことですね。
KAMIJO:僕は昔から小島先生の作品が大好きだったんですが、今回はたまたま御縁がありまして、ルイ17世を肖像画のようなテイストで描いていただくことが出来たんです。
――小説的なシナリオ、そのイメージを具現化した音と絵。さらに、今作でのKAMIJOさんはそこに歌詞と歌でも世界を表現されています。「TEMPLE -Blood sucking for praying-」の歌詞は基本的に英詞となっていますが、<美しいならばそれでいいじゃない!>というワンセンテンスだけが日本語となっておりますね。このような手法をとられた理由についても教えてください。
KAMIJO:最も言いたいことは、そのワンセンテンスに全て凝縮されているからです。もともとは全て日本語詞で、夏のツアーで歌った際も日本語で歌っていたんですが、この曲のメロディーやリズム感を最大限に活かす為には、英語で歌った方が良いと判断しました。あとは、この詞の中に出てくる“クリムゾンファミリー”という敵対勢力の存在を、ファンに対して隠しておく為に、敢えてツアー中は日本語のままで歌って、日本のファンに対しては少しぼやかしていた、という背景もありましたね。
――では、今回ヴォーカリゼイションについて、KAMIJOさんが大事にされたのはどんなことだったのでしょうか?
KAMIJO:ヴァンパイアの歌声とは、どんなものなんだろう? と想像しながら、それをひたすら目指して歌っています。きっと、ヴァンパイアの歌声は麗しくて素晴らしいはずですからね。僕はこの曲に限らず、ずっとそれを追い求め続けているんですよ。
――当然、その点についてはカップリング曲の「Conspiracy」でも徹底されているのではないかと思いますが、こちらはどのような場面を描いたものになるのか、少し解説をいただけますでしょうか?
KAMIJO:「Conspiracy」の舞台は現代のアメリカです。その背景にはサンジェルマン伯爵がアメリカの建国に関わっていたというエピソードも関係していて、ここでのサンジェルマン伯爵とルイ17世はエミグレ制度という、人間の血で発電するという新しいエネルギーシステムをアメリカに広めようとしていまして、それにともない様々な組織や陰謀と対峙していく中での一場面が「Conspiracy」では表されているんです。こちらは現代が舞台ということもあって、サウンド・アプローチの面でもEDMの要素やシンセサイザーを取り入れたものになっています。
――こちらの歌詞は、日本語でのサスペンス要素やSF要素、世界規模なエネルギー利権問題にまで踏み込んだ内容となっておりますね。ここから三部作“PERSONA”がいかなる展開をみせていくのか、聴いているとますます興味深くなってきます。
KAMIJO:この物語や詞を書くのにあたって、結構いろいろなことを調べました(笑)。かなり事実に基づいた表現をしているので、「どこまで本当で、どこまでがフィクションなんだろう?」と受け手の皆さんに楽しんでいただけたら嬉しいです。
――リアルとヴァーチャルの狭間で展開されていくのが三部作“PERSONA”であると考えると、これを読み解いていくこと自体も我々にとっては楽しみのひとつとなりそうです。
KAMIJO:先ほど、僕は今回のテーマが「永遠の命が手に入るとなった時、人がどんな醜さをさらけ出すことになるのか」であると言いましたが、一方で別のテーマもここには含まれているんです。それは、今は個人で発信を出来る時代であるということについてなんです。
――近年SNSの隆盛は著しいですものね。
KAMIJO:ええ。次の第二弾作品ではこの物語はさらに展開していくことになります。登場人物としては、ナポレオンも出てくることになりますね。音楽だけではなくシナリオの続きも楽しみにしていただきたいですね。
――現代にナポレオンが!? これはどうなってくるのか期待大ですね(笑)。それにしても、KAMIJOさんはミュージシャンでもあり、シンガーでもあり、テキストを操る小説家のようでもあり、アートワークを指揮する美術監督、全体を統括するプロデューサーのようでもおられます。果たして、肩書きとしては何者であると認識すれば宜しいのでしょうか?
KAMIJO:何でも屋ですね(笑)。やはり、僕はアーティストですから。何かを表現することに制限は必要ないと思うんですよ。何かを作りだす以上は自分で完成させたいし、何かを完成させることが最高に楽しいんです。さらには、それを受け手の方々に喜んでいただくことが何より嬉しいですしね。これからも、僕は自分自身が欲しいものを皆さんに向けて呈示していきたいと思います。
KAMIJO直筆サイン入りポスターをプレゼント!
今回のインタビューを記念して、KAMIJOサイン入りポスターを1名様にプレゼント。ポスターには、なんと本人直筆でご希望の名前を入れてお送りします。
応募方法:2019年12月8日(日)23:59までに、Billboard JAPANの公式Twitterアカウント(@Billboard_JAPAN)をフォロー&ハッシュタグ#KAMIJO_BBJをつけてツイートしてください。下記の注意事項をご確認の上ふるってご応募ください!
・当選者の方には、@Billboard_JAPANよりダイレクトメッセージ(DM)をお送りさせていただきます。当選時に@Billboard_JAPANをフォローされていない場合、当選は無効となります。
・当選はDM通知および賞品の発送をもって代えさせていただきます。
リリース情報
『TEMPLE -Blood sucking for praying-』
- 2019/11/27 RELEASE
- <初回限定盤 (CD+BOOK)>
- SASCD-102 3,500円(tax out.)
- 全6トラック(各曲インストゥルメンタルを収録)
- ハードカバーブックタイプ豪華ジャケット(約10,000文字のシナリオを掲載)、ミニポスター、ポストカード付属
- <通常盤>
- SASCD-103 1,500円(tax out.)
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