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セリーヌ・ディオン 全米初登場1位『カレッジ』リリース記念インタビュー



Celine Dionインタビュー

 セリーヌ・ディオンが約6年ぶりとなる英語アルバム『カレッジ』をリリースした。11月15日に国外リリースされた本作で、セリーヌは実に17年ぶりに米ビルボード・アルバム・チャート Billboard 200で初登場1位を獲得している。前作『ラヴド・ミー・バック・トゥ・ライフ』から本作リリースまでのブランクの間に、セリーヌはラスヴェガス・レジデンシー公演を行っていたが、最愛の夫で、最強のマネージャーだったルネを闘病の末、2016年に亡くしている。セリーヌは当初、ルネが隣にいないレコーディングで、英語楽曲を歌うことに不安があったという。カナダ・ケベック州出身のセリーヌの母語はフランス語で、英語は世界デビューに備えて、ベルリッツで学んだ経緯があったからだ。
 そんなセリーヌに文字通り勇気を与えたのがアルバムのタイトルになった“カレッジ(勇気)”。これまでにもセリーヌに楽曲を提供したことがあるカナダ出身のソングライター、リズ・ロドリゲスが共作したタイトル曲では、セリーヌが13歳の時に出会ってから、ずっと一緒に目標を立て、計画を練り、よりベストなパフォーマンスを求めて努力を重ねてきた夫婦の歩みを彷彿させるようなストーリーが描かれている。この曲との出会いが不安を払拭し、若いソングライターの楽曲を積極的に取り上げて、新しいプロデューサーと組むという挑戦に迷いなく進むきっかけになったようだ。
 現在セリーヌは、大規模な全米ツアーを行っているが、その準備を重ねる多忙な合間を縫って、日本のインタビューに応じてくれた。
★2018年6月の10年ぶりの来日公演を記念して、セリーヌ・ディオンのキャリアを総ざらいした特集ページはこちら

「カレッジ」はこれまで私が経験してきた人生の旅を象徴している

――まず、いつ頃からアルバム制作を始められたのでしょうか?

セリーヌ・ディオン(以下:セリーヌ):2~3年前から制作に取り掛かり始めたの。感覚的にはこれまでの人生、常にアルバム制作に時間を費やしてきたように思えるけれどね。ただ、今回違ったのは夫がいない状態で、英語でレコーディングするのは初めてだったということ。当初は、どんな作品にしたいのか、明確なイメージを抱けずにいた。そんな私のもとに次々に候補曲が届き始めると、自然に心ワクワクして前向きな気持ちになれた。本当に素晴らしい曲ばかりで、ライターのみなさんに感謝しているわ。

――今回曲を提供してくれたソングライターは、どんな方達ですか?

セリーヌ:リズ・ロドリゲスやシーア、エッグ・ホワイトといった以前から曲を提供してくれている人は、ほんの一部。大半の人は、今回初めて楽曲を提供してくれたソングライターやプロデューサーよ。たとえば、デヴィッド・ゲッタ、スカイラー・グレイ、ビヨーン・イットリング、LPとか、サム・スミスの曲も歌っているわ。彼らの素晴らしい楽曲がこのアルバムに愛や情熱、勇気といったものを与えてくれたと思っている。

――そのなかでリズが共作した曲がアルバムのタイトルにもなった「カレッジ」ですが、この曲との出会いについて教えていただけますか?

セリーヌ:まさかこういう物語を持つ歌が届くとは思っていなかった。この歌の前にも私の手元に数多くの素晴らしい曲が寄せられていたけれど、「カレッジ」を聴いた時は、魂を揺さぶられた。この歌は、これまで私が経験してきた人生の旅を象徴していると感じたの。
私は、この3年間、自分の内側にあるはずの強さを求めてもがいていた。夫の死を嘆く日々は、まだ続いているけれど、友人やスタッフ、世界中のファンが私を支えてくれた。もちろん子供達もね。彼ら3人は、夫が私に贈ってくれた最高のギフトだから。「カレッジ」のような曲を歌うにはパワーが必要。ツアーを前に今、自分の内からパワーが沸き上がってくるのを感じているのよね。


――日本盤ボーナス・トラックを含めると、21曲もの多彩な曲が収録されています。そのなかで1stシングルに選ばれたのが「インパーフェクションズ」でした(不完全という意味)。この曲を共作し、プロデュースしたのがフィフス・ハーモニーのヒット曲「ワーク・フロム・ホームfeat.タイ・ダラー・サイン」などを手掛けてきた28歳のDJ、DallasKですよね。セリーヌとDallasKの組み合わせにちょっと驚いたのですが、この曲についてご紹介いただけますか?

tea:まさかこういう物語を持つ歌が届くとは思っていなかった。この歌の前にも私の手元に数多くの素晴らしい曲が寄せられていたけれど、「カレッジ」を聴いた時は、魂を揺さぶられた。この歌は、これまで私が経験してきた人生の旅を象徴していると感じたの。

――インドから遠いアメリカのバークリー音楽大学に進むことに周りから反対はされなかったですか?

セリーヌ:サウンドを含めて、これまで私が歌ってきた曲とは多少異なる曲よね。ここで歌詞の解釈を語り、それをリスナーに押しつける気持ちはないけれど、曲を通して表現しようとしているのは、その日にはその日だけの特色があるということ。いいことも悪いことも含めて、夢や目標に満ち溢れた日もあれば、いろいろなことが重なり合って、身動きが取れない日もあるでしょ。
曲のなかで、<私には私なりの不完全さがある>と歌い、また、<自分の心を修復している途中なのに、あなたの心までは支えられない>という表現もある。さきほども言ったようにルネの死を嘆く日々がまだ続いていて、精神的に乗り越えなくてはいけないことがいっぱいある。絶望のなかに光を見つけたり、自分を鼓舞したりするのって難しいわよね。
そんな私を心配してか、「誰か新しい人を見つけられたか?」とか、「いつかまた愛を見つけられると思う?」とか、聞かれることがよくある。でも、私自身は3人の息子にルネの面影を見る毎日だし、ルネの存在をいつでも私の中に感じている。誰かに恋することは絶対ない、とは言い切れないけれど、今のところ自分の感情や状況、問題、不完全さと向き合うことに精いっぱい。でも、不完全さって決して悪いだけのことでもないと思うのよね……。


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誰かにとって、楽しい時も、悲しい時も心の支えとなるような存在になってくれたら

――新しいソングライターが多いなか、今回もシーアの「ベイビー」と「ハート・オブ・グラス」の2曲を歌っていますね。以前、彼女の才能を絶賛していたと思いますが……。

セリーヌ:そうなの。初めてシーアの曲を聴いた時、あまりの素晴らしさに卒倒するかと思ってしまった(笑)。聴き手に曲を届けるアプローチがすごくおもしろいの。それが彼女を唯一無二の存在にしていると思う。
シーアを初めて知った時、顔をウィッグで隠していたので、それをトレードマークにしている人なのだと認識していたけれど、私が会ったスタジオではウィッグを外していたの。その素顔もエキセントリックで、“ゴーイングマイウェイ(=我が道を往く)”の人だった。自分の表現に対してとても正直なタイプ。もし、箱の中で歌うのが最上の表現方法だと考えたら、きっとそうするはず(笑)。そういう型破りなところも好きだし、自分の音楽の魅せ方をよくわかっているシンガー・ソングライターだと思う。その一方で、人柄は優しくて、愛情深い人。カラーストーンをあしらったかわいいネックレスを私にプレゼントしてくれたこともあった。美しくて、寛大で、親切、さらに笑いに満ち溢れたハッピーな女性よ。それともうひとつ、私は、あのハスキーな歌声のトリコでもあるわ。



――多彩な楽曲を聴き、こういうタイプの歌を聴くのは初めてでは? と思うこともありました。アルバム『カレッジ』に接するなかで、チャレンジングな意欲作、という言葉が浮かんできたのですが……。

セリーヌ:これまでとは異なるサウンドの曲もあるし、チャレンジングな試みも確かにあったわ。たとえば、いつもはアルバムのレコーディングを通して、マイクをひとつに決めるわけだけれど、今回は曲によっていろいろなマイクを使い分けてみたの。そのうえでマイクに近づいて歌ってみたり、「ラヴァーズ・ネバー・ダイ」のように歌の最後にセクシーな吐息のような声を入れてみたり。今までよりもテクノロジーと遊んでみたイメージかしら。「もう少しここを誇張してみたら、意外とよくなるかも」なんて考えながら、試行錯誤する場面が多かった。だから、完成するまでにこんなにも時間がかかってしまったわけだけれど、自分がクリエイティヴである時は、どんなリスクも怖くないもの。このように自由に制作させてもらえたことに感謝しているわ。


――さきほど愛、情熱、勇気というキーワードが出ましたけれど、新作を通してリスナーにどんなメッセージを伝えたいですか?

セリーヌ:誰にも困難に直面する時がある。そんな時に心が通じ合える曲や、心が救われる曲があれば、苦しみから少しは解放されると思う。音楽には人々に手を差し伸べられる力があると私は信じたい。
だって、音楽をきっかけに結婚を決める人もいるし、大切な人を亡くした時に音楽に支えてもらったという人もいるはずよね。『カレッジ』に収録された曲が誰かにとって、楽しい時も、悲しい時も心の支えとなるような存在になってくれたら、と思っている。人生に悲劇が起こらないことが最高だけれど、何度かそういうことが訪れてしまうもの。私もそういう経験を経て、今こうしてアルバムを完成させることが出来た。『カレッジ』は、私の誇り。ファンのみなさんを失望させないことを願っているわ。

――さて、アルバムの発表を待たずに、ワールド・ツアーが本拠地のケベックからスタートしますよね。今回のツアーについて教えていただけますか?

セリーヌ:開始直前の今、新しいツアーにとても力強いものを感じているの。ステージに立ちながら、天国のルネに「今度は、私がみんなの支えになりたい」と知らせる場になるとも思っている。ツアーについては、いつもオーディエンスと直接交流を持てるところに魅力を感じている。リアクションが返ってくると本当にうれしい。観客が一緒に歌ってくれると、自己紹介をしなくてもお互いにわかりあえている気持ちになれるのよ。長いキャリアがあってもコンサート前は、緊張するし、不安にも襲われる。でも、一旦ステージに上がれば、楽しさが勝ってしまう。いつだって最高のステージになると信じられるのよ。

――日本では昨年6月に約10年ぶりの来日公演が行われましたが、来年あたりに来日公演が再び実現することはありそうですか?

セリーヌ:10年ぶりというのはフェアではなかった。もっと早く日本に行くべきだったと思っている。私だけでなく、バンドもスタッフもみんな日本が大好きなの。愛と情熱に溢れ、他者を敬い、アートを愛していると感じられるからなの。また、日本を訪れることを楽しみにしている。できるだけ早い時期に日本のみなさんにお会いしたいと思っている。再会を私自身が楽しみにしています。またお会いしましょう!!

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