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熊木杏里【熊木杏里 live in 池袋東武百貨店 2F】
2003.2.22(土)at 池袋東武百貨店2F|セットリスト
彼女のライヴにこうして足を運ぶのは今夜で3度目になる。1度目は日本テレビ内のスタジオで催された彼女の初ライヴ。2度目は初ライヴの数日後に、セカンドシングル「咲かずとて」のキャンペーンも兼ねて行われた新宿のHMVのインストアライヴ。そして、3度目となる今夜は、池袋東武百貨店中央館2Fにある広場。そこに特設されていた白いステージの上で彼女はライヴを行う。編成はHMV新宿店の時と同様、彼女の歌と吉俣 良のピアノのみという、彼女の歌声の魅力を、最大限に引き出せるシンプルなものになっている。
ファン達に囲まれたその白いステージに今夜の主役、熊木杏里が吉俣氏と共に登場。ステージ上に用意されたイスに座り、緊張しているのか、それとも純粋に嬉しいだけなのか、とても良い笑顔をのぞかせる。「ライヴを楽しみたい」という気持ちの余裕が出てきているのかもしれない。吉俣氏のピアノに乗せて今夜最初に披露された曲は、彼女のデビュー曲「窓絵」。左手でゆるやかにリズムをとりながら、その優しい歌声に想いをの乗せていく彼女。その姿を見ながら会場に集まった皆の表情もゆるやかに変わっていく。この「窓絵」が世に発表されてから早一年・・・改めてこの曲の存在感の大きさを感じさせられる。
その「窓絵」に続いて披露された曲は「わちがひ」。なんとこのタイミングで一ヶ月以上先にリリースされるファーストアルバム「殺風景」の収録曲を披露。初めて耳にする・・・
独りとふたり 君とひとり ふたりも独り 君とひとつ
・・・というフレーズに優しい表情で耳を傾けるファン達。ライヴが始まって10分も経たない段階で、彼女の歌声から創られる空間に皆包み込まれていた。確かに今夜の彼女の歌声は、過去二度体験したライヴ以上に心地よい包容力があった。その日ごとのコンディションやシチュエーションによって歌声が持つ“力”が変化するのはよくあることだが、今回の彼女の場合、その“変化”は“成長”と呼ぶべきかもしれない。
3曲目は今夜のメインナンバーと呼んでいいだろう、昨日リリースされたばかりの新曲「今は昔」。ただの通行人や買い物客が足を止め、彼女の歌声に耳を傾ける・・・。こういったフリーライヴやインストアライヴならではの醍醐味的光景がこの曲を披露している際に見受けられた。それも10代~20代の若者だけでなく、その若者達の父親や母親の年齢層の方々が足を止めていたのが印象深かった。やはり彼女の歌声と音楽性は幅広い層に受け入れられる要素が強いようだ。
「なんかある種、動物園の人気のある動物みたい・・・(笑)」と、自分を囲んで見入っているファン達を見ながら言ったあと、小さな声で「幸せな気分でいっぱいです。」と、口にした熊木杏里。この後、披露された「ちょうちょ」を含む全4曲のライブ自体がしっかりと僕に、そしてファン達の心に残る内容であったことはおそらく間違いない。ただ、さりげなく彼女が言った「幸せな気分でいっぱいです」というこの言葉が、この場面が、なぜか僕にとってはとても感動的であった。他の曲に比べて少し力強く元気に歌い上げる「ちょうちょ」の披露が終わると、あたたかい拍手に包まれながら、彼女が深くお辞儀をした。そして、頭を上げた彼女の表情が登場時より良い笑顔になっていたのを僕は見逃さなかった。嬉しかった。
セットリスト
2003.2.22(土)at 池袋東武百貨店2F
- 01.窓絵
- 02.わちがひ
- 03.今は昔
- 04.ちょうちょ
Writer:平賀哲雄
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