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福原美穂“Something Beautiful Tour 2019”開催記念インタビュー ~さらなる10年に向けて新たなスタートを切った福原美穂が見据えるビジョン



福原美穂インタビュー

 2008年4月に「CHANGE」でメジャー・デビューを果たした福原美穂。2014年には活動の場をインディペンデントに移し、マーク・ド・クライヴ・ロウやジミー・ハリーから、mabanua、Shingo Suzukiらとコラボレーションした2015年のEP『Something New』で新たな境地を見せた彼女は、ライブを中心に活発に活動を続けながら、昨年にはデビュー10周年を迎えた。結婚・出産を経て、この7月には待望の新作EP『Love Don’t Come Easy』を発表、さらなる10年に向けて新たなスタートを切った福原美穂が見据えるビジョンとは。間もなく東名阪ツアーを控える彼女に話を聞いた。

「原点に戻るという意味でも、ちょうどこの10年のタイミングでいいかなと。」

−−昨年、デビュー10周年を迎えられたわけですが、今のお気持ちは?

福原美穂:メジャーを離れ、自分でやりだしてから、もう数年経ってるんです。何回も失敗して、いろんなことを勉強しながら、直接いろんな方に会っていて。メジャーにいた時とかだと、本当にその日その場で会ってそこで終わり、みたいな感じが多かったんですけど。この数年は、長くやられている方とも、あと10年前に会った人とも、いろんなタイミングで会うことができて、改めて繋がれて、「また何か一緒にやりましょう」ってやらせていただけて。直接ちゃんと顔を合わせてやれる機会が増えたのかなって意味では、まぁ失敗もたくさんあるんですけど(笑)、この先に繋がっていく関係を作れたのかなって感じです。

−−今年7月には、2015年の『Something New』以来となるオリジナル・スタジオ作品となるEP『Love Don’t Come Easy』を発表されました。プレスリリースでは、「20周年へ向け、次のステージを目指して、新たにUPOPO RECORDSを立ち上げ」てのリリースだとあります。

福原美穂:はい。今回から自分で100%原盤を持ってやるってスタイルに変えたんです。なので、また再スタートって感じで。
UPOPOはアイヌ語の「ウポポ」からきていて。女の人たちだけに限定されるみたいなんですけど、女性たちが輪になって屋内でいろんな作業するときにやる儀式のことなんです。歌いながら、たぶん掛け声とかなんだと思うんですけど、そういうのをやりながら仕事の効率を上げていく、そういう儀式のことをウポポって言うんですよ。言葉も可愛いし、意味もいいな、と。あと北海道出身なんで、小さい頃からアイヌ語には触れてきていて、原点に戻るという意味でも、ちょうどこの10年のタイミングでいいかなと。

−−『Love Don’t Come Easy』は、「この先の10年を見据えた」作品と位置付けられていますね。

福原美穂:そうですね。今回も英語曲が多いので。新しいステージで、海外の公演もいっぱいやっていきたいなと思っていて。これまでJ-POPしかやってきてないので、それだけじゃない、もっと音楽好きな面を深めて表現していけたらいいな、と。その第一弾リリースになります。

−−「音楽好き」と言えば去年、Spotifyでプレイリスト「POWER TO THE PEOPLE」を作ってらっしゃったじゃないですか。その1曲目がポスト・マローンだったのがちょっと意外だったのですが。

福原美穂:アハハハ、そうですよね(笑)。絶対にCD屋さんに行った時にポスト・マローンのところには行かないんですけど(笑)。私は10代の頃から、給料日に必ずCD屋さんに行って1万円分のCDを買うっていうのが毎月恒例で。今はサブスクの時代になって、けっこうサブスクリプション(・サービス)で聴くようになって。大好きなDJのプレイリストとか聴いて「カッコいいな」って思ったりして、チェックする幅はものすごく広がったんです。それで、ポスト・マローンも聴くようになって。ワールド・ミュージックもすごく好きですね。最近はインストにけっこうハマってて、インストばっかり聴いて。「これに歌メロ付けたいな」とか思ったり。音楽の聴き方も変わりましたね。
ヒップホップはぜんっぜん聴いてこなくて。でも、うちの旦那がヒップホップバカで。ものすごく詳しくて、彼からヒップホップの歴史を教えてもらったりしてるんです。クインシー・ジョーンズとか、私の好きなソウルの人たちのサンプリングとかもいっぱい使われてるんで、勉強してますね。

−−最近はもっぱらストリーミングで新しい音楽に触れるようになったと。

福原美穂:モノで欲しいものとか、ファンだったりすると、今でもCDで買うんですけど。ストリーミングで聴いて「これはもう絶対に盤で欲しい」とか、来日するアーティストのやつを買っておいて「絶対サイン貰う!」とか(笑)。音楽ファンなんで、買ったりもしてますね。

−−『Love Don’t Come Easy』を制作するにあたって影響を受けたりインスピレーションを得た音楽ってありましたか?

福原美穂:スペシャルズとかエイミー・ワインハウスとか、ですかね。プロデューサーと色々聴きながら、「この感じいいよね」とか話してましたね。別にその曲をパクるということじゃなくて、ムードとか……、「この音場みたいなところでやりたいよね」っていう話をしながら聴いてたのは、スペシャルズだったりエイミーだったり。わりとレゲエっぽい感じのもありましたね。アース(・ウィンド&ファイアー)とかも聴いてました。

−−「Work It Out」はまさに、ホーンの感じとかアースっぽいですよね。

福原美穂:そうですね。ファンキーな感じで。「I Want You」も最初はトラックで、ファンクな感じだったんですけど、生で録りたくなって、日本でバンド集めて、アレンジもこっちでやって録り直して。これは完全にプリンスとかに影響を受けてて。アレンジした人(高野勲)もプリンス大好きなんで。



−−今回、『Love Don’t Come Easy』の全4曲のうち、「JOY」を除く3曲をジャスティン・グレイとやっています。ジョス・ストーンやマライア・キャリー、デボラ・コックスなどを手がけてきたことで知られるジャスティンとは、過去にも『Soul Extreme』シリーズで3曲やってましたが、今回改めて彼とやろうと思ったのは?

福原美穂:彼のことが好きで。人間も最高なんです。ジョークとか言いながらも、仕事をきっちりする人で。
ロスに行っていろんな作家さんに会ったんですけど、lazy(怠惰)な人がいっぱいいて。「作ろう」って言ってこっちは時間作ってスタジオ押さえてやってんのに、曲ができない、みたいなことが何度もあって。でもジャスティンはすごくフォーカス(集中)する人なんです。すぐ答えを見つけてゴールを作って、3~4曲のアイディア出して。パパっと仕事を一緒にしてくれるので、日本人の私にはすごく合うんです。
それで久々に彼に会いたいなと思って連絡したら、たまたま私がロスに行ってるタイミングで彼のスケジュールが空いてたんで、「じゃあ何かやる?」「やろう」って感じで作ったんですよ。びっくりしてましたけどね、子供連れてったんで。「え? ママになったんだ!?」みたいな(笑)。楽しかったですね。

−−3曲については、ジャスティン・グレイ、ローレン・ダイソンと3人で書いたというクレジットになってますが、どういう風に制作を進めていったんでしょうか?

福原美穂:曲はジャスティンと書いたんですけど、やっぱり英語詞のものが欲しいということを相談して、「じゃあ、ローレンっていう、いい作家がロスに来てるから、一緒にやろう」って、たまたまそこもタイミングが合って。ふたりとも作業が早いんで、「はい、この1行歌って!」みたいな感じの作業をずっとやってました。

−−「I Want You」はリリースよりも前に、スペシャル・ゲストとして出演したシトラス・サンの昨夏の来日公演で披露されてましたよね。ということは音源自体は1年以上前にはできていた?

福原美穂:できてました。2年前ぐらいですかね。ジャスティンは(リリース時期について)全然気にしてなかったんですけど。まぁでもレゲエの曲(表題曲「Love Don’t Come Easy」)もあったんで、このタイミングで出さないと。本当はね、他のアーティストに提供したかったんですけど。結局自分でやっちゃいました。



−−では、特に自分のための曲とか、他人に提供する曲とか、そういうことは考えずにレコーディングした?

福原美穂:そうですね。全然レゲエの曲とか作るつもりなかったんですけど、「いいじゃん、そのベース」みたいになって、どんどんレゲエの曲になって(笑)。「なんでこれ作ったんだっけ?」って。私、全然レゲエ・アーティストじゃないし、「レゲエな曲は使えないと思うんだけど」なんて言ってたら、「じゃあパプリッシャー(音楽出版社)に預けて、誰かに提供しようか?」って話になって。でもなかなか提供先が無くて。好きな曲なんで、「もったいないな、じゃあ私が歌う!」ってことで、結局私の曲に。

−−でも仰るとおり、「Love Don’t Come Easy」みたいなストレートなレゲエをやるのには驚きました。

福原美穂:ふたりでフィリス・ディロンとかも聴いてて、「これスゲェんだよ!」とかってヴィンテージ・レゲエとかについて喋ったりしてて。そうしたらジャスティンは感覚がやっぱりすごいんで、ちょっと違う感じでベースラインとかをすぐ作ってきたりして。ふたりで「いいじゃん、いいじゃん!」って言って録る、みたいに生まれたんです(笑)。



−−高野勲さんがアレンジを務めた「I Want You」は、先ほど「生演奏でやりたくなって録り直した」と仰ってましたが、最初から80sというかプリンスみたいな感じを狙ってたんですか?

福原美穂:最初ジャスティンが作ってたトラックもそんな感じだったんですけど、「この軽さもいいな」と思いながらも、この数年一緒にやってるツアー・メンバーとレコーディングも一緒にやることで高まるグルーヴみたいなのを作りたくって。それでスタジオに入ってツアー・メンバーを集めて。そうするとライブですぐできるんで(笑)、そういう意図もあって。

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福原美穂からビデオメッセージが到着!


▲福原美穂 Video Message for Something Beautiful Tour 2019

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