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特集:ザ・なつやすみバンド~唯一無二の個性を持つバンドの変遷

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 ザ・なつやすみバンドが初のビルボードライブ東京公演を行う。しかも、1stステージはインディーズ時代の傑作デビュー・アルバム『TNB!』の再現と初期の楽曲で構成したスペシャルステージ、2ndステージは新作アルバム『Terminal』を中心にオールタイムの名曲群で構成したステージになるという。ここでは唯一無二の個性を持つバンドの変遷を紹介しよう。

 ザ・なつやすみバンド(以下、TNB)の結成は2008年。ヴォーカルの中川理沙は、当時大学のサークルでカヴァー・バンドに関わっていたが、オリジナルをやりたいという気持ちのもと軽い気持ちで結成したという。なお、バンド名は「毎日がなつやすみだったらいいのに」という思いから名付けられた。ライヴを重ねるうちにインディー・シーンで少しずつ注目を集めるようになり、2010年に5曲入りCD-R『なつやすみの誘惑』をリリース。当時はギターも加わった編成で、シューゲイザー的な要素もあったそうだ。

 TNBが大きな転機を迎えたのは、その直後のこと。ギタリストが脱退し、何度かサポートを務めていたMC.sirafuが正式加入する。MC.sirafuはすでにceroやあだち麗三郎など数多くのサポートをこなし、自身も「片想い」というバンドで活躍するなど下北沢を中心としたインディー・シーンでは高く評価されていたため、TNBへの加入はこの界隈では話題となる。これで、中川理沙(ヴォーカル・ピアノ)、高木潤(ベース)、村野瑞希(ドラムス)、MC.sirafu(スティールパン、トランペット)という現在のメンバーが固まった。

CD
▲『TNB!』

 叙情的で透明感のある中川の歌はもちろん、サウンド面でもピアノがメインのギターレスで、スティールパンなどが聞こえてくるトロピカルな雰囲気は非常に斬新で、TNBはじわじわとその名を広めていく。2011年に開催されたイベント「Shimokitazawa Indie Fanclub 2011」では入場規制が行われるなど、ライヴの動員も増えていく。そして、2012年に満を持して発表したのが、ファースト・アルバム『TNB!』である。蝉の声から始まるなつやすみ感たっぷりの本作は、ノンプロモーションながら口コミでじわじわとセールスを伸ばしていき、第5回CDショップ大賞にノミネートされるなどバンドの評価を高める一作となった。

 その後もライヴやイベントへ積極的に参加していくと同時に、タワーレコード限定のシングル「めくらまし!」、短冊型の8cmCDシングルが話題となった「サマーゾンビー」、配信限定のEP「s.s.w」などリリースも定期的に行っていった。2015年にビクター内のレーベル、スピードスターよりメジャーデビューアルバム『パラード』をリリースする。疾走感あふれるエイトビートのポップ・ロックから、しっとりと聴かせるバラード、そしてチェンバー・ロックやポスト・ロック的なひねりの効いた楽曲まで並び、前作からさらにTNBの魅力をアップデートさせて提示してみせた。またこの年は大規模なツアーを行うと同時に、イベントにも積極的に参加。ライヴバンドとしてもさらに評価を高めた。

CD
▲『PHANTASIA』

 媒体での露出も増えていき、NHK Eテレの子供番組『シャキーン!』への楽曲提供も行う。工作をテーマにした「D.I.Y.~どこまででもいけるよ~」は、番組のコンピレーション・アルバムにも収録された。その後も「速度のうた」を書き下ろしている。一方で、米国のバンド、オブ・モントリオールのジャパン・ツアーに帯同するなど、ジャンルを超えて幅広い活動を行った。そして2016年にはメジャーでの2作目となるサード・アルバム『PHANTASIA』をリリース。冒頭の「ファンタジア」のような深みのある世界観に加え、TNBのポップ性を抽出したかのような「Odyssey」や、ヒップホップ・ユニットの嫁入りランドをフィーチャーした「GRAND MASTER MEMORIES」などを収め、前作以上にシンプルでキャッチーな作品になった。 リリース直後には、FUJI ROCK FESTIVALにも出演。音楽ファンには無視できないバンドとして、その地位を確立した。






CD
▲『映像』

 TNBはさらに進化を遂げる。2018年に4作目にしてバンド結成10周年記念となるアルバム『映像』をULTRA VYBEよりリリース。ブラジルやアルゼンチンのコンテンポラリーな音楽からの影響が強く、独自の音楽性との融合でさらにTNBサウンドが進化した。mitsumeや空気公団の山崎ゆかりとコラボレートするなど、外に向かっている感覚もこれまで以上で、まさにバンドの新たなステージが始まったといえるだろう。そして、2019年には初の合宿レコーディングを行いミニ・アルバム『Terminal』を発表。これまでにない短期集中の制作スタイルにより、彼らにとってはもっともアグレッシヴな印象の作品に仕上がっている。珍しくギターの音色が印象に残るのも特徴だ。なお、このミニアルバムは“旅行三部作”としてシリーズ化され、第二弾、第三弾も予定されているというから期待したい。

 先述の通り、今回のビルボードライブ東京公演は、ファースト・アルバムの再現を中心とした1stステージと、新作『Terminal』のお披露目となる2ndステージとの2部構成となっている。これまでのTNBを総括するような内容になると同時に、バンドの新しいはじまりにもなるはずだ。ぜひこれまでの彼らの軌跡を追いながら未来を想いつつ、スペシャルな一夜を楽しんでいただきたい。

 

 

 

 

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