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イーグル・アイ・チェリー来日記念特集 ~実直な佇まいから醸し出される唯一無二の世界

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 イーグル・アイ・チェリーが、一夜限りのスペシャル・ライヴを行うことが決定した。精悍なルックスから放たれる、アーシーながらスタイリッシュなサウンドに乗せたスモーキーな歌声が間近で聴けるのだ。フォーク、ブルース、オルタナティヴ・ロックと様々な要素があるとはいえ、彼の音楽はその実直な佇まいから醸し出される唯一無二の世界を構築している。ここでは、その足取りを追っておきたい。

 イーグル・アイ・チェリーは、1968年にスウェーデンの首都ストックホルムで生まれている。彼の父は、ジャズ界では著名な米国人トランペット奏者のドン・チェリー。ドンは、ジョン・コルトレーンやオーネット・コールマンなどと共演歴があるレジェンドのひとりで、フリー・ジャズやインド音楽などを取り入れたワールド・フュージョンの先駆者でもある。アメリカだけでなく世界中を転々としながら演奏をしていた彼は、北欧に滞在することも多かった。その時に知り合ったスウェーデンの画家モニカ・チェリーと結婚し、生まれたのがイーグル・アイ・チェリーというわけである。

 その後ニューヨークへ移住し、12歳からニューヨークの学校へ通うことになった。その頃からイーグル・アイはドラマーとして活動を始め、いくつかのバンドを掛け持ちするようになる。また、16歳からはハイスクールで演技の勉強をし、俳優を志すようになった。学校の同窓生には、ジェニファー・アニストンやチャズ・ボノなどがいる。1988年の映画『ミスター・アーサー2』でも脇役としてクレジットされているが、本格的にその名を知られるようになったのは1993年に始まったテレビドラマ・シリーズ『South Beach』からだ。とはいえ、俳優としてはそれほど大きな成功を収めたわけではない。

CD
▲『セイヴ・
トゥナイト』

 1995年に父のドン・チェリーが亡くなり、そのタイミングでイーグル・アイは生まれ故郷のストックホルムに戻る。そして、音楽活動に専念することになるが、自宅のベッドルームで弾き語りを中心に録音していった音源をもとに制作したのが、デビュー・アルバムの『Desireless』だ。本作は当初スウェーデンの小さなレーベルから1997年にリリースされたが、翌年にはワーク・レコーズからも米国でディストリビュートされることになった。





 『Desireless』からシングルカットされた「Save Tonight」は、シンプルでストレートなフォークロック・サウンドと、ラブソングでありながらどこか内省的な歌詞が共感を呼び、世界各地でヒットを記録した。本国スウェーデンでは2位、アイルランドでは3位、英国で5位、そしてビルボードのHot 100でも5位まで上昇。イヤーエンドチャートにおいても、Hot 100では22位を記録している。

 また、アルバム自体もヒットを記録。全世界で400万枚以上の売上を達成したといわれているが、「Save Tonight」同様に決して派手な音作りをしているわけではなく、アコースティックギターを効果的に使った実直なサウンドとなっており、いわゆるシンガー・ソングライターとしてのイーグル・アイが等身大で浮かび上がるような内容だった。また、そのサウンドに似合った語りかけるような歌い口も彼の持ち味であり、多くの音楽ファンの共感を得た理由といえるだろう。アルバムのラストに収められたタイトル曲「Desireless」は、父ドン・チェリーの名盤『Relativity Suite』に収められた楽曲のインスト・カヴァーであり、そのことも話題を呼んだ。





 この成功をきっかけにして生まれたのが、サンタナとのコラボレーションだ。1999年に大ヒットしたサンタナのアルバム『Supernatural』で、「Wishing It Was」をマニー・マークやダスト・ブラザーズらと共作。シングルカットはされなかったが、アルバムはモンスターヒットとなり、グラミー賞も9部門で受賞。イーグル・アイの名前もさらに広まることになった。サンタナのヒットが続く2000年にリリースされたのが、セカンドアルバム『Living in the Present Future』だ。ダスト・ブラザーズやリック・ルービンがプロデュースに加わり、前作を踏襲したアーシーなサウンドで高く評価された。義姉のネナ・チェリーと共演した「Long Way Around」も収められ、デビュー作と並ぶ代表作に数えられている。

CD
▲『サブ・ローサ』

 イーグル・アイはその後も、映画『穴/HOLES』でも使用された「Don't Give Up」を含む『Sub Rosa』(2003年)、評価の高いライヴ・パフォーマンスを収録した『Live And Kicking』(2007年)、不動の作風を確立した『Can't Get Enough』(2012年)など決して多作とはいえないが、丁寧に作られた力作を発表。2018年には6年ぶりとなるアルバム『Streets Of You』を自身のレーベルより発表した。

 デビュー曲「Save Tonight」以降、いわゆるビッグヒットはないとはいえ、安定した活動を続けるイーグル・アイ・チェリー。とくにそのライヴは定評が高く、彼の歌の世界観がストレートに伝わるパフォーマンスを見せてくれるはず。この貴重な機会にぜひ間近でライヴを体感していただきたい。






 

 

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