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森高千里『30周年Final企画「ザ・シングルス」Day1・Day2 LIVE 2018 完全版』リリース記念インタビュー



2017年に歌手デビュー30周年を迎えた森高千里が、2018年5月27日(日)&28日(月)の2日間にわたってシングル全45曲を発売順に歌唱したライヴの模様を完全収録した映像作品『30周年Final企画「ザ・シングルス」Day1・Day2 LIVE 2018 完全版』が5月22日(水)にリリースされる。結婚・育児によるブランクを経て、2012年から徐々に活動を再開、今年1月からは36ヶ所37公演を行う21年ぶりの全国ツアー〈「この街」TOUR 2019〉をスタートさせるなど、精力的な活動を行っている森高。平成に大きなムーヴメントを起こした代表的な女性ソロアーティストである彼女は、50歳という節目と新元号のはじまりを迎えた2019年に、どんな思いでステージに立っているのだろうか。

リアルに感じてもらえるのは、本当のことを書いているから

――今回リリースとなる『30周年Final企画「ザ・シングルス」Day1・Day2 LIVE 2018 完全版』に収録されている2日間のライヴを振り返って、どのような思いを持っていらっしゃいますか。

森高千里:シングルを発売順に歌うという企画はありそうでなかったので、30周年企画として開催するにあたっては、すごく面白いと思いました。ただ、いざリハーサルが始まって、通して歌ってみると、いつものコンサートのように盛り上がりなどの流れが作れなくて、 “すごく不安”でした(笑)。曲数も普段より多いですし、発売順に歌うということはなかったので、不思議な感覚でした。MCは、昔あったことを思い出しながら、以前のファンクラブの会報を見たり、スタッフに聞いてみたり準備して。そういう情報収集みたいなことが大変でした。ステージでは、曲を説明し出したら止まらなくなってしまって、MCだけでもすごく長くなっちゃったんですけど。ライヴの時間もとても長かったですし、一日終わってもまだ半分も終わっていなくて、面白かったんだけど大変だったという感じでした。

――実際に歌ってみて、曲について気が付いたこと等はありましたか?

森高:シングル曲のライヴということもあって、どちらかというと身についている曲が多いので、新たに気付いたこととかはそれほどなかったですね。ただ、ステージセットで後ろにシングルのジャケットを飾っていたので、それも振り返りながら喋ったりしていましたし、「ああ、このときはこうだったな」とか、その場で喋りながら思い出すようなことはありました。

――ジャケットを見て行くと、レコード盤のジャケットが途中から短冊形のCDジャケットになっていて、長いキャリアの変遷を見ることができますね。

森高:そうですね、ちょうどレコードからCDに変わる時期を経験している世代なので、面白い世代ですね。

――特に印象に残っている曲はありましたか。

森高:う~ん、あんまり自分では特にこの曲というのはないかなあ。聴いてくださる方が、「この時こうだったな」とか「ここからファンになったな」とか、いろんなことを感じながら、懐かしがったり思い出にひたってみたり、それぞれの感覚で聴いていただければ嬉しいなというコンサートだったので。

――自分は森高さんと同世代なんですけど、「ザ・ストレス」をリアルタイムで聴いたときに“ストレスが地球をダメにする”という、身近なことをスケールの大きな話に飛躍させるすごい歌詞を書く人だなって強烈に印象に残ったんです。当時から歌詞を生み出すためにやっていたことってありますか。

森高:自分で作詞をするようになってからは、メモはよくとってました。いろんなアイディアだったり、友だちの話を聴いて面白いなと思ったことをノートに書いたり。当時は携帯電話もなかったので、最初の頃は書く物がないと留守番電話に入れたりとか(笑)。あとはお店のコースターの裏に書いたり、箸袋に書いたりとか。そういうことはすごくやっていました。でも私の場合は曲先行なので、曲を何度も聴いて「今回は失恋の曲だな」とか「今回はポジティブな明るい曲にしよう」とか「海をテーマに書こう」とか、曲からイメージして書いたメモを見て、そこから広げて行ったりしていましたね。

――歌詞のユニークさってよく言われると思うんですけど、ご自身ではどう感じていたのでしょうか?

森高:昔から詞を書いていたとかではなくて、「書いてみれば?」と言われて、自分を表現するにはすごく良いことだなと思って、与えてもらったきっかけを無駄にしないようにチャレンジしようと思って書き始めたんです。最初は、AメロBメロがあってサビがある、みたいなことも全く知らないで書き始めたので、途中でディレクターさんに見せたときに、どれがAメロでどれがサビなのかいまいち伝わらなかったりするぐらい、本当に書き方がわからなくて。書いていくうちに、サビの部分にキャッチーな言葉を持ってきたり自分の言いたいことを持ってきたりということが段々わかってきた感じだったので、面白いとか変わってるねって言われることさえも、よくわかってなかったというか。「そうなんだ、自分の詞って変わってるんだ?」みたいな感覚でした。

――ユーモアがあるからこそ、リアルに説得力もあるというか。「勉強の歌」なんかはそうだと思うんですけど、あらためて聴くと“しゃくだけど勉強には にんじんと同じくらい 栄養があるみたいよ”って、勉強の上に子どもが嫌いなものをさらに被せてくるところがすごいですよね。

森高:そうですよね(笑)。この曲はアニメの主題歌ということで勉強をテーマに書こうと思ったんですけど、実際に自分も勉強が好きな嫌いかと言えば好きじゃなかったし、にんじんも嫌いだったので(笑)。それでそういう歌詞が出てきたんですけど、歌詞になる言葉は実際にあったことが多いですね。自分が経験していなかったことでも友だちに聴いた話とか、元は意外と実際にあったことだったりするので。そういう意味で言うと、リアルに感じてもらえるのは、本当のことを書いているからだと思います。

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「名前入りのポスター」を自分がもらえるんだったら嬉しいだろうな

――映像作品『30周年Final企画「ザ・シングルス」Day1・Day2 LIVE 2018 完全版』では、どんなところに注目して見てほしいですか。

森高:わかりやすいところで言うと、衣装も20代の頃にやっていたコンサートをオマージュしているんです。「森高と言えばこのコンサートのこういう衣装だよな」という期待を裏切らない、衣装をアレンジしながら作っていて、その頃の衣装に似ているけど形や素材が違ったり、今だからこそできる衣装になっているので、もともと観に来てくださったことがある方は、曲と照らし合わせることができると思います。私の場合は曲と衣装はセットだと思っているので、その感覚で見てもらえるとより楽しめると思います。




――特典映像に収録されているライヴで、派手なスパンコールの衣装でリッケンバッカーを弾いていますよね。これは森高さんのイメージのひとつになっていると思いますが、もともとご自身の志向で生まれたものなのでしょうか。

森高:そういうわけではないんですけど、レコーディングとかでギターを弾くようになってから、スタッフがギターを持つならこれがカッコイイよってリッケンバッカーを勧めてくれたのがきっかけです。最近ライヴをよくやるようになってから、曲によってはギターを弾きたいなと思ってまた使うようになりました。

――今回、レコチョクが展開する「WIZY」(ウィジー)で「30周年ライヴ映像完全予約生産版」を予約購入された方に「名前入りのポスター」が特典としてついてきたり、収録楽曲のライヴ音源のCDもついて、それをスマホでも聴くことができるプロジェクトが展開されています。このようなアーティストとファンの想いについてはどのようにお感じになりますか。

森高:「名前入りのポスター」を自分がもらえるんだったら嬉しいだろうなって思います。自分も他のアーティストのコンサートを観に行くこともあるんですけど、すごく勉強になることもありますし、ただただファンとして楽しむときもあったり様々なことを感じるんです。逆に自分のコンサートに来てくれる方には、「こうやったら楽しんでもらえるだろうな」って考えたり。私はMCでお客さんと喋ることが多いんですけど、それは、自分がファンとしてコンサートを観に行って、直接自分と喋れなくても話しかけてくれたり会話のキャッチボールをしたりするのはすごく楽しいし、自分だったらやってもらいたいなとアーティストに対して思うからなんです。そういう感覚で、自分のコンサートでやってみたいアイディアもいろいろと出てきますね。

――森高さんがデビューして以降、近年はYouTubeや音楽配信等、音楽の聴き方がすごく変わってきていますよね。そうした音楽を取り巻く環境についてはどのように感じていらっしゃいますか。

森高:自分がデビューした頃にレコード盤からCDに変化する流れを経験してきて、活動を再開してから当時はなかった音楽配信をやるようになって、最初は不思議な感覚がありました。よくわからなかったというか、ブランクがあった分「ああ、そういう風になってるんだ」という、取り残されているような感覚が最初はあって。でも自分でやるようになって、すごく面白いなって思うようになりました。ネットで調べたいときに調べられるし、音楽に触れる時間が増えるというのも良いことだと思うし。あと、子どもがすごく音楽が好きで常に聴いているので、今はこういう世代にこういう音楽が流行ってるんだなって教えてもらったりとか。逆に私の80、90年代の音楽を若い人たちが聴いて知ってくれてコンサートに来てくれたりとか、現代だからこそできるやり取りみたいなものもありますよね。そういう感覚で聴いてくれたりコンサートに来てくれるのもすごく嬉しいですし、私も若い世代の音楽を聴いてカッコイイなと思ったりもします。

――現在行われている全国ツアーの客席にも、若い世代のお客さんの姿がありますか?

森高:だいたいは、同世代の方が多いですけど、中には若い人同士で来てくれたりとか、親子で来てくれているようなお客さんもいますね。そういうお客さんを見るとすごく嬉しいです。

――21年ぶりの全国ツアーとなりますが、始めてみていかがですか?

森高:今、めちゃくちゃ楽しいです。初めて観に来てくれるお客さんも多いと思ったので、聴きたい曲をなるべく歌いたいと思ってセットリストを考えて、今回もシングル曲メインでベスト盤に近い内容になっているので、楽しんでもらえるんじゃないかなって思います。久しぶりに歌う曲って緊張して余裕がないときもあるんですけど、今回のツアーは歌いなれてる曲が多いし、心に余裕があるというか(笑)。自分でも楽しみながら歌えています。それに、お客さんがすごくあたたかいというか、「うちの街に来てくれてありがとう!」っていう、待っていてくれた感が伝わってくるんです。それがすごく嬉しいですし、ツアーをやっていて良かったなと思います。

――先日の「Love music」(4月20日フジテレビでOA)で特集されたツアーの密着映像では、ご自身で打ち上げのお店を選んだり、ご当地名物を食べていらっしゃる様子が放送されていましたが、ツアー先へ行く前はその土地のことをご自身で調べたりされているのでしょうか?

森高:20代の頃にやっていたツアーのときも、コンサートが終わった後にはここに食べに行きたいとか、移動日にはここで観光したいとか、結構自分で調べるタイプだったんですよ。今は、便利でいろんなものを調べられるので、調べ始めるとキリがないんですけど(笑)、グルメ番組とか旅番組もすごく多いので、自分が行く街が出ていたらメモしておいて、スタッフさんに伝えて準備していただいたりしています。

――ツアーの移動中に焼きそばとうどんを一緒に食べている姿を見て、非常に勇気付けられました。「森高千里もやっているから大丈夫だ」みたいな(笑)。

森高:あはははは! 私も自分で見ていて、炭水化物と炭水化物だなあって思いましたけど、美味しかったですよ(笑)。

――とても楽しみながらツアーをやっているのが伝わってきました。

森高:楽しみながらやってますね。ご当地の食べものって、そこで食べるから余計に美味しいと思うんです。その街の雰囲気の中で食べる方がその土地に行った感じがありますし、コンサートの前の楽しみも作っている感じです。

――ちなみに、ステージに上がる前は緊張するんですか?

森高:う~ん、もちろん緊張はしますけど、「今日はどんなファンの人たちが来てくださっているのかな?」っていう感覚での、始まる前のほどよい緊張という感じです。今回のツアーでは、緊張よりも楽しみの方が勝っているかもしれないですね。

――番組では「体力はあるほうです」というコメントもありましたけど、ツアーに向けての体力作りなどもやっていらっしゃるのでしょうか。

森高:はい、いつもツアーが始まる前は、走ったりウォーキングしたり泳いだり、体力作りをしてからリハーサルに入っています。

――もともと、体を動かしたり好奇心を持って色んなところに行くのがお好きなんですね。

森高:そうですね、体を動かすのはもともと好きですね。

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やりたいと思うことを、これからも躊躇することなくチャレンジしていきたい

――そうした変わらない森高さんがいるからこそ、今回のようなリリース、ツアーにもお客さんがいらっしゃるのだと思います。育児を経ての活動再開から現在の活動に至っているわけですが、この30年間でアーティストとして人前に立つことについて、心境の変化はありましたか。

森高:20代の頃には考えられなかったと思うんですけど、今この年齢になってステージに立てているというのは、私にとっては奇跡に近いんです。本当にファンの人たちに感謝したいなって思っています。20代当時に全国ツアーをしていた頃に比べると、人としての経験も重ねてきて、物事に対して落ち着いて考えられるようになって、コンサートの流れとかMCにしても、余裕が出てきていることを自分で感じますし、楽しめるようになりました。やっぱり20代のときは本当に必死にやりこなさないといけないっていう感覚だったので。今はそれだけではない部分で表現できるようになったところが違うのかなって思います。

――30年間これだけは貫いてきた、ということはありますか。

森高:コンサートということで言うと、「まず自分が楽しむ」ということですね。まず自分が楽しんで、それを伝えたときに返ってくるものがあるんだろうなって思っていますし、自分が楽しんでいないと、来てくださったお客さんも楽しませることができないので。それはずっと変わらないと思います。

――この作品は、新しい元号「令和」でリリースされるわけですが、新しい時代に向けてこれからどんな活動をしていきたいですか。

森高:つい最近50歳になって、そのときに自分でもそこからまたスタートだなと思いましたし、元号が変わる年と一緒だというのも、すごく気が引き締まる感じがしています。自分がやりたいと思うことを、これからも躊躇することなくチャレンジしていきたいですね。

――ではこの作品を手に取った方に改めてメッセージをお願いします。

森高:なかなか、あるようでない企画のコンサートだったので、私自身にとっても何年か経った後に思い出のコンサートになっていることは間違いないと思うので、それが映像化されたことはすごく嬉しいです。観に来てくれた方が改めて観ても楽しめると思いますし、残念ながら当日来られなかった方にも、コンサートの空気感を感じ取っていただけるはずなので、思い思いで楽しんでいただければ嬉しいです。


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