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P!NK 全米初登場No.1 『ハーツ・トゥ・ビー・ヒューマン』発売記念特集



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 米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard200”で初登場1位に輝いた前作『ビューティフル・トラウマ』から約1年半ぶり、8作目となるスタジオ・アルバム『ハーツ・トゥ・ビー・ヒューマン』を、2019年4月26日にリリースしたP!NK(ピンク)。2000年のデビューから今年で19年目、来年でデビュー20周年を迎える“ベテラン”の域に達した彼女が、「自分も世界も、今よりもっとよくなるために」というテーマを基に創り上げた、集大成ともいえる最新作『ハーツ・トゥ・ビー・ヒューマン』は、米ビルボード・アルバム・チャートで前々作『ザ・トゥルース・アバウト・ラヴ』から3作連続で初登場1位を獲得。全英、全豪チャートを含む計8か国で初登場No.1を記録した本作が、どんな作品に仕上がったのか、20年にわたるキャリアと共にご紹介する。

世界のポップ・アイコン P!NKのキャリアをおさらい

 2000年2月、シングル「ゼア・ユー・ゴー」でデビュー。この曲が、処女作にして米ビルボード・ソング・チャートで7位まで上昇するヒットを記録し、同年4月に発売したデビュー・アルバム『キャント・テイク・ミー・ホーム』の大ヒットに繋げる。アルバムからは、2ndシングル「モスト・ガールズ」がアメリカで4位、その他主要各国でもTOP10にランクインし、華々しいデビュー・イヤーを飾った。大ブレイクした翌2001年には、クリスティーナ・アギレラ、リル・キム、マイアの4人でコラボレーションした、映画『ムーラン・ルージュ』の主題歌「レディー・マーマレイド」が自身初の全米No.1を獲得。同曲は、【2001 MTV ビデオ・ミュージック・アワード】で<最優秀ビデオ賞>を、【第44回グラミー賞】では<最優秀ポップ・コラボレーション賞>を受賞した。



▲Christina Aguilera, Lil' Kim, Mya, Pink - Lady Marmalade (Official Music Video)

 「レディー・マーマレイド」が大ヒットした2001年11月には、2ndアルバム 『ミスアンダストゥッド』を発表し、全米アルバム・チャートでは初のTOP10入り(最高6位)を果たす。1stシングル「ゲット・ザ・パーティー・スターテッド」はアメリカで4位、イギリス(UK)で2位を記録した他、各国でチャート上位にランクインし、【ブリット・アワード 2003】で<インターナショナル・ベスト・フィメール・アーティスト>を受賞するなど、今なお絶大な人気を誇るピンクの代表曲となった。次曲「ドント・レット・ミー・ゲット・ミー」、「ジャスト・ライク・ア・ピル」も続けざまに全米TOP10入りし、アルバムは全世界で1300万枚を超える大成功をおさめた。



▲P!nk - Get The Party Started (Video Version)

 2006年にリリースした4thアルバム『アイム・ノット・デッド』からは、「フー・ニュウ」、「ユー・アンド・ユア・ハンド」が2曲連続で全米チャート9位にランクインし、全英チャートでは1stシングル「ストゥーピッド・ガールズ」から3曲がTOP10入りした。同年には、ブッチ・ウォーカーやインディア.アリーなど、他方面のアーティストとも共演し、ジャンルの幅をさらに広げる。そして、2008年8月にリリースしたシングル「ソー・ホワット」で、リードシングルとしては初の全米No.1を獲得。当時離婚したばかりのケアリー・ハートが出演したミュージック・ビデオも話題を呼び、同年10月に発売した5thアルバム『ファンハウス』も、全米で2位、全英では初の1位獲得を果たした。



▲P!nk - So What (Official Music Video)

 2010年は、 デビューから10年間のキャリアを振り返るベスト・アルバム『グレイテスト・ヒッツ』を発表。往年のヒット曲のみならず、全米1位を記録した「レイズ・ユア・グラス」、同チャート2位の「ファッキン・パーフェクト」といった新曲も大ヒットし、「ベストは売れない」といわれているアメリカだけでミリオンを達成、ワールドセールスは500万枚を超える鮮やかな再スタートを切った。同年には、2008年に離婚したケアリー・ハートと再婚し、翌2011年6月に第一子となる女児=ウィローちゃんを出産する。

 2012年の6thアルバム『ザ・トゥルース・アバウト・ラヴ』からは、ロックバンドFUN.のボーカル=ネイト・ルイスとデュエットした「ジャスト・ギヴ・ミー・ア・リーズン」が全米3週のNo.1を記録し、翌2013年の年間シングル・チャート7位にランクインする大ヒットを記録した。「ブロウ・ミー(ワン・ラスト・キス)」(5位)、「トライ」(9位)もTOP10入りし、全米アルバム・チャートでも初の首位獲得を果たす。【第55回グラミー賞】では、本作が3度目となる<最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム部門>にノミネートされ、同年の<ビルボード・ウーマン・オブ・ザ・イヤー>に輝いた。2014年は、シティー・アンド・カラーのダラス・グリーンと<ユー・アンド・ミー>というユニット名義で、アルバム『ローズ・アヴェニュー』を発表。大ヒットには至らなかったが、高い評価を得た。



▲P!nk - Just Give Me A Reason ft. Nate Ruess (Official Music Video)

 2016年は、4月に映画『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』の主題歌「ジャスト・ライク・ファイア」をリリースし、通算15曲目の全米TOP10入り(最高10位)を果たす。同年12月には第2子となるジェームソン君を出産するも、翌2017年8月には早くも「ホワット・アバウト・アス」でアーティスト活動を再開し、同月開催の【2017 MTV ビデオ・ミュージック・アワード】では、特別賞となる<マイケル・ジャクソン・ビデオ・ヴァンガード・アワード>を受賞。出産から1年経たずして、鮮やかな復帰劇を果たした。10月にリリースした7thアルバム『ビューティフル・トラウマ』は、2017年度の女性アーティストとしては最高記録の初動40万ユニット数を記録し、自身2作目となる全米アルバム1位に輝いた。

 そして今年2019年は、<ハリウッド・ウォーク・オブ・フェーム>に、アーティスト・ネームが刻まれたことが話題を呼び、2月に開催された【第61回グラミー賞】では、<ベスト・ポップ・ヴォーカル・アルバム>にノミネート。同月に開催された【ブリット・アワード 2019】では、栄誉ある<功労賞>を初のインターナショナル・アーティストとして受賞し、史上初の偉業を成し遂げる。翌3月に敢行されたUSツアー【ビューティフル・トラウマ・ワールド・ツアー】が続く中、最新作『ハーツ・トゥ・ビー・ヒューマン』が4月26日にリリースされた。


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▲P!nk - Live at The BRIT Awards 2019

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~世界は今よりもっといい場所になるはず~
通算8作目の最新作『ハーツ・トゥ・ビー・ヒューマン』

 主要各国で初登場1位に輝いた『ハーツ・トゥ・ビー・ヒューマン』は、リスナーの心に響く素晴らしいアルバムだった。一通りやりきって、悟りを得たような余裕すら感じる。およそ1年半を費やして完成させた最新作『ハーツ・トゥ・ビー・ヒューマン』も前作同様、政治的要素を含んだメッセージ性の高い作品で、彼女の歌は、もはや社会全体におけるイノヴェイター的役割を果たしている、といえるだろう。

 2月にリリースされた、アルバムからの先行シングル「ウォーク・ミー・ホーム」では、「世界全体が間違ったことで溢れている」と、不穏な世の中について悩み、訴えている。ソングライターとして加わったのは、ショーン・メンデスやザ・チェインスモーカーズ等のヒットを手掛けた、NYの音楽プロデューサー=スコット・ハリスと、「ジャスト・ギヴ・ミー・ア・リーズン」の共演で意気投合した、ネイト・ルイスの2人。ミュージック・ビデオを手掛けたのは、大ヒット映画『グレイテスト・ショーマン』(2018年)を担当したマイケル・グレイシーで、歌詞に沿ったストーリー仕立ての映像も話題を呼んだ。曲調も、どこか『グレイテスト・ショーマン』の「ディス・イズ・ミー」を彷彿させるバロック・ポップ的サウンドで、パワーを抑えて諭すように歌うピンクのボーカルワークも素晴らしい。同ビデオでは、映画にも登場したようなレトロなダンスを、一部披露している。



▲P!nk - Walk Me Home (Official Video)

 翌3月には、アルバムからの2ndシングル「ハッスル」をリリース。オープニングを飾る同曲は、未練がましい男を振り払う“芯の強い女性”が描かれていて、スリリングな展開やパワーボイスが、ピンク“らしい”一曲に仕上がった。彼女の凄いところは、歌のパワーが一向に衰えないこと。間もなく40歳を迎えるというのに、デビュー当初よりも勢いが増しているというのは、他の女性アーティストではなかなか成し得ないことだ。制作陣には、人気ロックバンド=イマジン・ドラゴンズのフロントマンであるダン・レイノルズがクレジットされている。



▲P!nk - Hustle (Lyric Video)

 アルバムの発売直前に公開され、「大統領が好きなふりをしよう」というインパクト絶大なフレーズが登場する「キャン・ウィー・プリテンド」は、ロックとエレクトロ・ミュージックを行き来するニュージャージー州のトリオ・ユニット=キャッシュ・キャッシュをゲストに招いた意欲作。サウンドは一昔前のダンス・トラック……という感じが否めずだが、「つまらない現実から逃避し、踊って忘れよう」というテーマにはぴったりハマっているし、EDMに乗せたピンクのボーカルは、ある意味新鮮に聴こえる。キャッシュ・キャッシュの3人に加え、ワンリパブリックのライアン・テダーもソングライターとして参加した。



▲P!nk - Can We Pretend (Lyric Video) ft. Cash Cash

 「ハーツ・トゥ・ビー・ヒューマン」は、21歳の新生R&Bシンガー=カリードとのデュエット曲。マルーン5、ファイヴ・セカンズ・オブ・サマー、ショーン・メンデス等人気アーティストを多数手がける、女性シンガーソングライター=テディ・ガイガーと、日本ではオースティン・マホーンの「ダーティ・ワーク」のプロデュースで知られる、音楽プロダクション=ザ・モンスターズ・アンド・ザ・ストレンジャーズが手掛けたナンバーで、カリードに“寄せた”ブラック・ミュージック的アプローチも感じられる傑作だ。アコースティック・ギターの優しい音色と、ピンクのナイーヴなボーカルが、曲の世界観を“音”だけで伝えてしまうから凄い。カリードは、同4月にリリースした2ndアルバム『フリー・スピリット』が、全米アルバム・チャートで自身初のNo.1獲得を果たしたばかりの、今最も脂の乗っているR&Bシンガー。彼の母親がピンクを聴いていた世代(ファン)だそうで、ピンクにとっては息子とデュエットしているような感覚……なのかもしれない(?)



▲P!nk - Hurts 2B Human (Lyric Video) ft. Khalid

 ロックとエレクトロが融合した「(ヘイ・ホワイ)ミス・ユー・サムタイム」 は、過去の作品でもおなじみの売れっ子プロデューサー=マックス・マーティン(ジャスティン・ティンバーレイク、ケイティ・ペリー、ブリトニー・スピアーズ等)と、シェルバック(テイラー・スウィフト、ケシャ、アデル等)による共作。彼らが生み出すサウンド・センスはもちろんのこと、ラップのように音程を安定させず繋いでいくヴァースや、エフェクトのかかったピンクのボーカルも、今までにはない斬新さがある。ダンスホールっぽいリズムの「マイ・アティック」も、彼女の作品の中では新しいタイプの曲調だ。「トライ」や「ブロウ・ミー(ワン・ラスト・キス)」等を手掛けたグレッグ・カースティンは、日本でも高い人気を誇るベックのベック・ハンセンと共に「ウィー・クドゥ・ハヴ・イット・オール」で再タッグを組んだ。この曲では、フー・ファイターズのテイラー・ホーキンスがドラムを担当している。

 「ラヴ・ミー・エニウェイ」で共演したのは、2度のグラミー受賞歴があり、【第61回 グラミー賞】では3部門でノミネートされた、米カントリー・シンガーのクリス・ステイプルトン。両者の風格が漂う、ピアノとギターでシンプルに仕上げたこの曲は、ジャンルの枠を超え、幅広い層に支持されそうな傑作だ。クリスに加え、ベテランソングライターのアレン・シャンブリンも制作に参加している。バラード曲では、LAを拠点とするシンガーソングライター=レイベルとデュエットした「90 デイズ」や、アコースティック・ギターの弾き語り「ザ・ラスト・ソング・オブ・ユア・ライフ」、日本盤ボーナス・トラックとして収録された、マレン・モリスやラスカル・フラッツなどカントリー系アーティストを多数手がけるバズビーとの共作曲「モア」も好曲。

 その他、 自己嫌悪を露わにしたサシャ・スローン(カミラ・カベロ、アン・マリー等)との共作「ハッピー」や、2人の子供をもつ母親になったからこそ説得力をもたせる、エモーショナルなピアノ・バラード「サークル・ゲーム」、女性シンガーソングライターのシーアが制作した、“シーア節”全開の「カレッジ」など、クールなパッションに満ちた佳曲が揃いも揃っている。「完璧じゃないことについて歌う」―その信念もしっかり貫いた、今、彼女が表現したい全てが詰まったアルバムだ。

 本作の発売直前、ピンクはアメリカのトーク番組『エレンの部屋』に出演し、SNSを荒らす人達に対し、こんなことを話していた。「匿名だと急に勇敢になって、失礼なこと言うでしょ。意地悪だし、悪意に満ちているから嫌いなの。でも、時間があるときにはコメントで対処するし、彼らの考え方だって変えられると信じているわ」と。現代社会の問題に、アーティストではなく、いち個人としてきちんと向き合い、それを表現している姿勢には感服した。本作『ハーツ・トゥ・ビー・ヒューマン』には、そういった思いや訴えが、たくさん綴られている。言語は違えども、日本のリスナーにも彼女の熱い想いを、音を通して感じていただきたい。




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