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ジュリア・フォーダム 来日記念特集 ~日本への感謝を込めた、彼女の“ピースサイン”

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 80年代から2000年代まで、誠実な歌声を日本に届けてくれるジュリア・フォーダム。日本でも大ヒットした「ハッピー・エヴァ―・アフター」はもちろん、ジャジーなサウンドも交えた大人の歌声を聴かせてくれる彼女の多彩なライブがやってくる。その魅力を音楽ライターの服部のり子氏に解説してもらう。

 2015年にビルボード東京で行われた来日公演で、ジュリア・フォーダムは、ピースサインを高く掲げながら登場した。その姿に浮かんだのは、『ハッピー・エヴァー・アフター』や『チャイナ・ブルー』といった歌だった。80年代に南アフリカや中国で起きた不幸な出来事にインスパイアされて書いた“愛の歌”だ。やはり心は、いつも平和の闘士なのかと思ったが、後日インタビューで話を聞くと、「日本との絆に対して、感謝の気持ちを示したくてね。手を振るのはちょっとカジュアルかなと思ったからなの」と微笑みながら答えてくれた。ピースは、“ありがとう”のサインだったのだ。この時にあらためて思ったのは、イメージばかりが先行しているのかもしれないということだった。



▲ 「Julia Fordham - Happy Ever After」


 彼女の日本での知名度は、『ハッピー・エヴァー・アフター』が1989年に人気ドラマの主題歌に選ばれたことで高まった。歌は、大ヒットとなり、ふわりまろやかなヴォーカルの魅力もあり、たちまち注目のアーティストとなった。その魅惑のアルト・ヴォイスは、今も変わることなく温かく、彼女自身も1988年のデビュー時からヒットの有無とか、流行とかに左右されることなく歌い続けている。  具体的には昨年本国UKで、ビヴァリー・クレイヴェン、ジュディ・ツークという女性3人で制作したアルバム『Woman To Woman』がリリースされて、上質のハーモニー、成熟した女性達の知的な音楽で魅せた。また、日本でも2014年にジャズのアレンジでヒット曲を歌うアルバム『ザ・ランゲージ・オブ・ラヴ』をリリース。「自作曲とは異なり、歌の主人公を演じるように歌うのが楽しい」と語り、まだまだ秘められているシンガーとしての可能性を見せた。




 ソングライターとしては寡作家で、共作などで楽曲を量産するよりは、ひらめきが下りてくるのを待つタイプ。だから、次々に新作を発表することはないけれど、そのなかで誠実な心を歌で伝えることを何よりも大切にしている。このところ毎年のようにビルボード東京のステージに立っているけれど、彼女自身が日本でのライヴをいつも待ちわびるのは、その心が言語を超えて伝わっていることを実感できるからだ。それが冒頭で触れたピースサインにつながっている。

 大ヒットから30年を経た今でも、ライヴで『ハッピー・エヴァー・アフター』が始まると会場が沸き立つ。色褪せない人気と、多くの人が思い出と歓喜を共有できる曲がある素晴らしさを実感しつつ、でも、と思うのは、ジュリア・フォーダムの魅力は、それだけではないということ。それをぜひライヴで体験してもらいたい。ジャジーなヒット曲のカヴァー、ギターの弾き語り、優しい微笑み、平和へのメッセージ……。彼女の多彩な魅力をたっぷり満喫できる。


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ジュリア・フォーダム「コレクション ベスト・オブ・ジュリア・フォーダム」

コレクション ベスト・オブ・ジュリア・フォーダム

2007/03/14 RELEASE
TOCP-53650 ¥ 1,938(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.ハッピー・エヴァー・アフター’98
  2. 02.時のゆくえ(’98ヴァージョン)
  3. 03.マンハッタン・スカイライン
  4. 04.ロック・アンド・キー
  5. 05.微笑にふれて
  6. 06.ガールフレンド
  7. 07.明日を夢見て
  8. 08.すこしだけ大胆に
  9. 09.愛の面影(’98リミックス)
  10. 10.East West-風の道標-
  11. 11.キリング・ミー・スローリー
  12. 12.キッド
  13. 13.気づいてほしいの
  14. 14.愛はミステリアス
  15. 15.ハッピー・エヴァー・アフター(オリジナル・ミックス)

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