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向井太一『PURE』インタビュー 「僕はもっとまっすぐなタイプだなって自分で思いました」
「僕はもっと真っ直ぐなタイプだなって自分で思いました。」
J-POPの次世代を担うR&B/ポップ・シンガー、向井太一のメジャー2ndアルバム『PURE』が11月28日にリリースされた。海外のモダンなR&Bやビート・ミュージックのあり方とも共振しつつ、日本語のポップスとして強度の高い表現を生み出し続けている向井太一。新作『PURE』は、向井本人にとっての“バック・トゥ・ルーツ”的な側面もありつつ、現代のポップ・ミュージックとして、より真っ直ぐでポジティブなエネルギーの感じられる傑作となった。この力強い前進の背景には何があるのか。インタビューにて話を聞いた。
「オンリーワンでありたい欲」
――今回のアートワークは、向井さんご自身がディレクションされたそうですね。すごく印象的なビジュアルですが、どのように作ったのでしょうか?
向井:僕は、ビジュアルと楽曲が、あまり結びつかないようにしています。昔から「音楽性や声が見た目と違う」って言われ続けてきたんですけど、いまは逆にそれが強みなのかも……と思っていて。音楽だけを聴くと、ポップ・シーンとは少し外れているのかも知れないけど、そのハードルを下げる役割がアートワークにあれば良いのかなと。今回は、あるブランドのルックからインスピレーションを受けていて、壁紙から衣装まで、完全に僕の最近のテイストを詰め込んだ感じになっています。
――ビンテージでヨーロッパ的な雰囲気もありますよね。
向井:そうですね。貴族っぽいナードさを出したくて。新作は、新しいテイストもありつつ、自分の音楽的なルーツに沿った曲も多いので、そういう雰囲気も感じてもらえるように、少しクラシカルな感じが出れば良いなと思っていました。歴史って、創造と破壊の繰り返しだと思うんです。古いものをそのままやるんじゃなくて、それを破壊して、どう組み替えて、新しく構築するかが、ビジュアルでも音楽でも自分の中でのテーマになっていて。それを表現できたらいいなと思いました。
――6月にリリースされたEP『LOVE』のビジュアルもそうでしたが、中性的なニュアンスもありますよね。日本人の男性シンガーで、そういうイメージを打ち出している人って意外といないなと思ってハッとしました。
向井:シンガーソングライター感が出過ぎず、アートとして捉えられるようなものにしたい、ということはよく考えています。
▲向井太一 / Siren (Produced by tofubeats)
――わざとズラして、化学反応を生み出そうとしている?
向井:いや、ただ単に「自分が好きだからそうしている」部分が大きいですね。昔のR&Bって、マッチョで、ブリンブリンのネックレス付けて、バギーパンツを履いて……みたいな感じがあったんですけど、いまは他のアーティストの方も、「これがR&Bだ」「ヒップホップだ」みたいなビジュアルの型にハマっていないので、本当に自分が好きなファッションで、自分が好きなイメージで作っています。でも、どうしてもいまは、カルチャーがストリート寄りなので、僕のファッションも含めて、全くトレンドと真逆なところに行っているので、なかなか種蒔きの時間が長い気がしますね。
――いわゆる“ハイ・カルチャー”的な背景は、向井さんの中では強いんですか?
向井:そういうわけではないですね。去年まではバチバチにストリート寄りでした。でも、今年に入ってから全く変わってしまって、服も全部捨てました(笑)。
――ガラリとモードが変わった?
向井:ここまで変わったのは久しぶりですね。靴も去年はスニーカーばっかりだったんですけど、もう一切履かなくなりました。パンツのシルエットも前はバギーだったんですけど、いまは細身ものを履くことが多いです。
――変化の理由は?
向井:気分……としか言えないんですけどね。メゾン系のブランドとかもストリートとかスポーツの要素が強くなりすぎてしまって。僕はもともと天邪鬼な性格なので、流れと外れたことをしたくなるっていうのが自分の中にあるんだと思います。
音楽もそうですけど、ナンバーワンよりもオンリーワンでありたい欲がすごい強いんです。「こいつはちょっと違うよね」って思われる人になりたい。もちろん、いつかはナンバーワンにもなりたいんですけど……承認欲求が激しいですよね(笑)。
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