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乃木坂46『帰り道は遠回りしたくなる』インタビュー ~新内眞衣、井上小百合、中田花奈が“過去の選択”について語る



インタビュー

 2018年11月14日、乃木坂46が通算22枚目のシングルとなる『帰り道は遠回りしたくなる』をリリース。表題曲のセンターは、年内をもってグループ卒業を発表している西野七瀬が担当した。そのミュージック・ビデオには、西野に関する過去のエピソードなど、各メンバーから寄せられた意見や想いも反映されている。仲間たちとは別の道を選び、新しい世界へと旅立つ者の背中をそっと後押しするようなこの曲に、メンバーはどんな共感を覚えたのか。今回は新内眞衣、井上小百合、中田花奈の3名に話を訊いた。

 またインタビュー後半では、ビルボードジャパンの総合チャートを参考に、乃木坂46の楽曲のチャート・アクションも見ながら、日頃どのように音楽を楽しんでいるのか、どこで新しい音楽と出会うのか、激動の日々を送る3人の音楽ライフを語ってもらった。

――22ndシングル表題曲「帰り道は遠回りしたくなる」について、まずはどんな第一印象を抱きましたか?

新内眞衣:ポジティブで明るい曲だなって思いました。卒業シングルってしんみりとなりがちですけど、この曲はわりとポップにまとまった印象でしたね。あと卒業シングルでいつも思うのが“イントロ泣ける説”。

井上&中田:あぁ~。

新内:「ハルジオンが咲く頃」とか「サヨナラの意味」とかもそうでした。「帰り道は遠回りしたくなる」はイントロからの歌い出しで泣けます。

――みなさんは“帰り道に遠回りしたくなった”経験ってありますか?

中田花奈:夜にお仕事が終わった時、二駅くらい歩いて帰ってもいいなっていう気分になる日とかありますね。一人で夜風に当たりながら、その日を振り返るために遠回りするんです。

井上&新内:分かるー!

中田:この時期最高なんですよ。12月とか1月は寒すぎるので、今くらいがちょうどいいんです。

――遠回りしてる時はどういったことを考えているのですか?

中田:その時の悩みについて考えてますね。音楽を聴きながら歩いていることが多いんですけど、曲が終わってもそのまま無音状態で、曲が止まったことにも気づかないくらい考えることに没頭しちゃうこともあります。

井上小百合:私も結構遠回りしちゃう派。細い道を通りたくなっちゃうんです(笑)。“この道どこに繋がってるんだろう”とか“多分、猫だったらあそこ入れるな”とか考えながら。でもこのあいだ失敗しちゃって、ずっと歩いてたら道が行き止まりになっちゃって。(笑)

新内:引き返すところを通行人に見られたりすると恥ずかしいよね。

――今作はヴィジュアルも冬らしさを全面に出していて、前作『ジコチューで行こう!』とは対照的な季節感ですが、みなさんは感傷的なウィンター・ソングとアッパーなサマー・ソング、どちらが好みですか?

新内:私は冬が好きなので、ウィンター・ソングばっかり聴いてます。

井上:私はロックが好きで季節感にはあまりこだわらないんですけど、乃木坂46で冬をテーマにした曲はあまりなかったので、今回のシングルは新しいなって思います。ジャケット写真は雪を降らせて撮ったんですけど、あれもなかなか珍しいことだったので。

――ミュージック・ビデオはストーリー仕立てになっていますね。前作は灼熱のベトナムを舞台にしたロード・ムービー風だったので、その点でも対照的です。皆さんはMVを見る時にどんなところに注目しますか?

中田:乃木坂46の曲ではストーリーものが好きなんですけど、好きなアイドルさんのMVだと、踊ってるシーンが多いほうが好きですね。乃木坂46だと「命は美しい」みたいな。

井上:私は「帰り道は遠回りしたくなる」のMVを撮ってくれた関和亮さんの作品がもともと好きだったんです。関さんは星野源さんのMVもたくさん撮っていて、「アドリブなのかな? 脚本なのかな?」みたいなシーンがすごく面白いんです。それで今回、自分が関さんの作品に出られるのが嬉しくて。

――実際に自分で出演してみていかがでしたか?

井上:シーンごとの設定も決まってはいたんですけど、監督は「アドリブでやってください」とおっしゃることが多かったので、“なるほど、こうやって作ってるんだな”というのが分かって面白かったです。



乃木坂46「帰り道は遠回りしたくなる」MUSIC VIDEO

――西野さんの人生が一つの分岐点で別れ、それぞれの世界線が並行して進んでいくような設定になっていますが、このMVを見てどんなことを感じますか?

新内:その時その時の選択次第で人生って変わっていくんだなぁって思いますね。私が出演しているラジオで以前、乃木坂46の2期生のオーディションに行って、二次審査で落ちてしまった子からメールをいただいたんですけど、私と同い年だったんです。もしかしたら私もその子のように、乃木坂46のメンバーではない、全く違う人生を歩んでいたかもしれないし、だからこそ人との出会いは本当に大切だなって思いました。出会いがあるなら別れもあるのが必然なので。

――皆さんはこれまで乃木坂46として活動してきて、自分の選択を振り返ったりすることはありますか?

井上:いっぱいあるなぁ。

中田:毎日「あの時こう喋ってたらどうなってたかな?」って考えちゃいます。お仕事ではもちろんですし、普段の会話でも「この受け答えしてたらもう少しウケたかな? もっと良い空気になってたかな?」って振り返っていちいち反省してます。ネガティブなのかもしれないです(笑)。

井上:私もそういうの本当に多くて…。前にネット通販で海外から取り寄せた商品が全然違う住所に発送されてしまったことがあったんです。そのマンションに実際に行って「この部屋番号に間違えて荷物を届けてしまったんですけど…」って管理人さんに相談したり、やれることは全部やったんですけど、結局その商品は戻ってこなくて買い直したんです。そしたら出品者の方から「すみません。売り切れてしまいました」って連絡がきてキャンセルになっちゃって。「注文時にちゃんと住所確認してればあの商品をゲットできたのに!」って後悔しました。

――住所を打ち間違えてしまったんですか?

井上:前に住んでた住所から変更せずにそのまま注文しちゃったんです。あと、駅の駐輪場に自転車を止めた時、帰り際に精算番号を間違えて別の自転車の駐輪代を払っちゃったこともあります。しかも、その自転車が結構長い間そこに置かれていたもので、なかなか高額なお金を払っちゃって。それも「ちゃんと番号を確認しておけばよかったのに~」って思いました。あとあの……

新内:めちゃめちゃあるじゃん(笑)。

――もう一個くらい聞きましょうか(笑)。

井上:iPadのパスワードを自分で設定したのに忘れちゃったんです。なのでケータイ・ショップに持っていったら「それはApple Storeに持っていかないと無理です」って言われて、Apple Storeに持っていったら「個人情報に関することなので」って断られちゃったんですよ。もう全部初期化。「ちゃんとパスワードをメモしてたら…」って思いました。そういうことばっかりです(笑)。



――今作のカップリングには、中田さんが歌唱メンバーとして名を連ねている「日常」が収録されています。シングルの中でも一際アグレッシブで、バンド・サウンドが映えるナンバーですね。

中田:今までいろんなアンダー曲を作っていただいたんですけど、この曲は特にアンダーらしさが出てる曲だなって思いました。アンダーはライブが多いので、かっこいいダンス・ナンバーが多いんですけど、この「日常」はその集大成感があるなって思います。今作のアンダー・メンバーでは久々に東京でライブをやらせていただくんですけど、全国ツアーが一通り終わってアンダー・ライブ自体も集大成になるところなので、そこがこの曲ともリンクしてる。

――MVはダンス・シーンがすごくダイナミックで、全体的にメッセージ性の強い仕上がりになってますね。

中田:そうなんです。ダンス以外のシーンは不思議な世界観になっていて、何回も見ていろんな解釈をしてほしいです。ダンス・シーンとは衣装も情景も全く違う雰囲気になってます。



乃木坂46「日常」MUSIC VIDEO

――そんな22ndシングルが2018年最後のリリースで、12月には上海でのライブが控えています。海外単独公演としてはグループ初ですが、イベント出演などを含めると海外ライブ自体はこれまでも何度かありましたよね。12月のライブに活かせそうな発見はありましたか?

井上:海外ライブでは言葉が通じないので、表情や踊りでどうにか表現して伝えなくちゃいけないんです。なので初期の活動を思い出すんですよね。後方のお客さんから攻めていくんです。前方のお客さんは距離の近さもあって盛り上がりやすいけど、どうしても後ろのお客さんは置いてけぼりにされてしまいがち。だからちゃんと後ろにも届くように分かりやすく表現する。

――フリを大きくしたり?

井上:そうですね。今年のドーム・ツアーではモニター越しの演出が結構あって、カメラに向けての表現になっちゃうことが多かったんですけど、海外ではそこまで大規模ではなく、小さな会場でやらせてもらうことが多いので、モニターなしでもちゃんと後ろまで表現が届くように意識してます。

新内:9月に初めて中国でライブさせてもらったんですけど、頑張って中国語を覚えて行ったんです。でも段取りやダンスに集中してるうちに忘れちゃって。そういうのをちゃんと完璧にしていきたいですね。その時のライブでは「ちゃんと喋れたらもっと好きになってくれるかも」っていう実感があったので。

中田:コールの入れやすい曲だとすごく盛り上がります。松村沙友理がMCをやってる『BiLiBiRiNGO』っていうネット番組が中国の『ビリビリ動画』っていう動画サイトで配信されてるんですけど、そこでライブのコールの話になったんです。そしたら「日本語でコールするよ」ってコメントしてくれたり、実際に日本語でコールをコメントしてくれたりしたんですよ。番組的には「超絶可愛い!」を中国語に訳して、中国語でコールするのが面白いだろうってことになってたんですけど、きっと中国のファンの方にとっては日本語でコールするほうが楽しいのかなって思いますね。

新内:たしかに、私も韓国語の曲をたまに聴くんですけど、やっぱり日本語バージョンより韓国語バージョンのほうが好きだなって思っちゃいます。

――なるほど。それでは皆さん、2018年も残りわずかですので、今年の活動で個人的ハイライトがあれば教えてください。

井上:私は『東京2020パラリンピック大図鑑』という番組でシドニーに1週間行きました。ウィルチェアーラグビーの世界選手権に密着取材したんですけど、それがすごく楽しかったです。日本では2年後のオリンピックに向けてすごく盛り上がってるけど、パラリンピックのことももっと知ってもらいたいなって思いました。

――日本代表は見事優勝を勝ち取りましたね。

井上:そうなんです! でも、まだまだ世間的な知名度がないために、選手の方々も実費で海外に行ってるんですよ。チームの中には高校生の選手もいるんです。その子は学校との両立とかお金のことを考えて、強化合宿には参加せずにシドニーに行きました。ウィルチェアーラグビーの知名度がもっと上がって、みんなが盛り上がってくれたら、選手たちの環境ももっと良くなるだろうし、そうなったら2年後のパラリンピックでも絶対に金メダルを取れるなって、私は確信してます。その瞬間を日本の皆さんとぜひ共有したいですね。

中田:私は10月の【アンダーライブ全国ツアー2018 ~北海道シリーズ~】ですね。久々にセンターに立たせていただいて、座長も務めさせていただいたんですけど、同時期に『美少女戦士セーラームーン』のミュージカルもあって、ツアーのリハーサルになかなか出られなかったんです。そんな中、メンバーやスタッフさんに助けてもらうことが本当に多くて、すごく大変だったけど良い思い出です。「みんながいて良かった」って思える瞬間がたくさんありました。

――座長として具体的にどういった関わり方をしたのでしょう?

中田:スタッフさんと一緒にセットリストを考えたり、MCで一人で喋ったり。ただ、メンバーに対して何か呼びかけたりするより、背中で語る、というか。メンバーの気持ちを一つにするために、私から何かするのではなく、みんなに気付いてもらえるように動くことを心がけました。

新内:私は2月に初めて個人として舞台に出演させていただきました。乃木坂46のメンバーが主演だったり、メンバー何人かで出させてもらう舞台は、それぞれ助け合いながら一緒に成長していくことができたんですけど、一人で初めて外の舞台に立たせていただいたら、「こんなにもできないんだ」って反省することばかりでした。でも、舞台出演の新しい楽しさを知ることもできたし、まだまだ頑張らなきゃいけないことがたくさんあることも分かって、すごく刺激を受けました。乃木坂46の中だけでは学べないことにたくさん気づけた舞台でしたね。



――Billboard JAPANのチャートは複数の指標を組み合わせることで作られています。CD売上、ダウンロード、音楽ストリーミング、ラジオでのオンエア、CDの読取回数を示すルックアップ、ツイート数、動画再生回数の7つです。

中田:ツイート数では流行りを知れそう。

新内:(2018年度の暫定年間チャートを見て)米津玄師さんが1位! 私も最近よく米津さんの楽曲を聴いてます。

井上:「帰り道は遠回りしたくなる」も入ってる。発売前からランクインすることもあるんですね。(※インタビューは発売前に実施)

――それがこのチャートの特徴の一つです。Twitterでバズったり、ラジオでパワー・プッシュされたり、MVがたくさん見られたり、商品として発売される前にもその音楽と触れる機会はたくさんありますから。例えば「帰り道は遠回りしたくなる」は、10月17日にMVが公開されて、その週のチャートでは動画再生回数5位、ツイート数4位、総合では27位に入ってます。

新内&井上&中田:えー、すごい!

――「インフルエンサー」はCD売上もすごいのですが、ストリーミングでたくさん聴かれているみたいです。

新内:年末にたくさん披露したから、その時期は特に聴いていただける機会が多かったかも。

――おっしゃる通り、「インフルエンサー」は2017年3月に発売されたシングルですが、2018年1月8日付に総合9位、翌週の15日付には総合7位にまで再浮上しています。どちらの週もCD売上やダウンロードより、ストリーミングのほうが順位が高いですね。

中田:すごく聴いていただけたんですね。

――乃木坂46の場合、作品ごとに傾向が違うのも面白いです。「逃げ水」のチャート・アクションを見てみると、ルックアップが根強いんです。

中田:本当だー。「インフルエンサー」と全然違う。

井上:不思議。なんでだろう?

新内:サマー・ソングだから夏の全国ツアーで「いい曲だな」って思ってもらえて、改めて聴いてもらえたとか?

――たしかにルックアップはライブと関連することが多いです。ツアーが始まると、ファンの方が予習や復習することで順位が上がってきたりすることがあります。

中田:なるほどー。

――皆さんは普段、どのように音楽を聴いていますか?

新内:ここ最近はストリーミングで聴いてます。それまではCDを買ってました。学生時代は友達と買ったCDを貸し借りすることで、新しい音楽を知ることが多かったですね。私、もともとバンド系はあまり聴かなかったんですけど、仲の良い友達がバンド好きだったので、そういった音楽も聴くようになりました。

――ではストリーミングを使い始めて以降、新しい音楽とはどんな媒体で出会いますか?

新内:ラジオとか…。

井上&中田:ラジオかなぁ。

――3人ともラジオなんですね。最近出会ったお気に入りの音楽を教えてください。

中田:『バナナムーンGOLD』っていうバナナマンさんのラジオで、お二人がそれぞれ流したい曲を持ってきて、ディレクターさんがどちらの曲をオンエアするか決めるっていう企画があるんですけど、その時に設楽さんがオススメした“新しい学校のリーダーズ”さんが良かったです。一度共演したことはあったんですけど。

――どんな響き方をしたんですか?

中田:H ZETT Mさんとコラボした曲がかっこよすぎて。喋ってる時はわちゃわちゃしてるのに、歌声はドスが効いていて、曲もすごく迫力があるんです。そのギャップに惹かれました。もし日村さんが持ってきた音楽が流れてたら知ることもできなかったので…設楽さんありがとうございました(笑)。

井上:私の場合、好きなアーティストはほとんどラジオで知ることが多いんですけど、逆に普段あまり聴かないジャンルでハマったのが、中島みゆきさんの「糸」。

――おぉここにきて。

井上:お店でカツ丼食べてたら流れてきて、「めっちゃいい曲! めっちゃいい歌詞!」ってなりました。歌謡曲はあまり聴く機会がなかったので。

新内:カラオケで友達が歌ってる曲を好きになることも多いですね。ポルノグラフィティさんの「ライン」を友達が歌っててハマりました。

――カラオケでは世間的に有名な曲だけでなく、例えばアルバムに収録されている隠れた名曲と出会う機会もありますよね。それでは最後に皆さん、それぞれ今年のヒットソングを教えてください。

中田:私はCreepy Nutsさんの「スポットライト」。アルバムの曲なんですけど、すごく好きです。

新内:私は安室奈美恵さんの「Love Story」。今年は引退のこともあって、たくさん聴きましたね。

井上:私はサンボマスターさんの「ラブソング」。もともとサンボマスターさんが好きだったんですけど、好きなアニメのEDで好きなキャラクターがこの曲をカバーして歌っていて、感動して泣いちゃいました。





Interview by Takuto Ueda

Photo by Yuma Totsuka

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乃木坂46「帰り道は遠回りしたくなる」

帰り道は遠回りしたくなる

2018/11/14 RELEASE
SRCL-9982 ¥ 1,069(税込)

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Disc01
  1. 01.帰り道は遠回りしたくなる
  2. 02.キャラバンは眠らない
  3. 03.知りたいこと
  4. 04.帰り道は遠回りしたくなる -off vocal ver.-
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